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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第258話「二代目」

その日、石田から、念話が、届いた。



# 連絡


『八百屋』





誠。



「石田さん」




石田。



『相談が、ある』



# 誠


誠は、少し、驚いた。




「珍しいですね」




石田。



『そうか?』




誠。



「いつも、俺が、話しかける方でした」



# 石田


石田は、しばらく、黙っていた。





それから、言った。





『……今日は、私から、話したい』



# 誠


誠は、静かに、待った。





「はい」



# 内容


石田。



『私は、外宇宙から、来た』




誠。



「はい」




石田。



『そして、一万三千年、ここにいる』



# 石田


「石だ」



石田は、続けた。




「変わらん、はずだった」




誠。



「はい」



# 石田


「だが」



石田は、続けた。




「最近、気づいたことが、ある」



# 誠


誠は、身を、乗り出した。




「何ですか」



# 石田


石田は、しばらく、間を、置いた。





『……私も、いずれ、機能を、失う』



# 誠


誠は、その言葉に、動きを、止めた。





「石も、寿命が、あるんですか」




石田。



『分からん』




石田は、続けた。




『だが、寝石の、ことを、考えると』



# 誠


誠は、頷いた。




「三千年、眠ってました」




石田。



『あれは、機能の、低下、だったのかもしれん』



# 石田


「私も、いつか」



石田は、続けた。




「同じように、なるかもしれん」



# 誠


誠は、しばらく、その言葉を、考えていた。





そして、聞いた。





「石田さん、それで、どうしたいんですか」



# 石田


石田は、少し、間を、置いた。





『……記憶を、渡したい』



# 誠


誠は、その言葉の、意味を、考えた。




「渡す、というのは」




石田。



『次の、者に』



# 石田


「私が、覚えている、ものすべてを」



石田は、続けた。




「誰かに、渡しておきたい」



# 誠


誠は、しばらく、考えていた。





そして、聞いた。





「渡せる相手が、いるんですか」



# 石田


石田は、しばらく、答えなかった。





それから、言った。





『分からん』




石田は、続けた。




『それを、聞きに来た』



# 誠


誠は、少し、笑った。




「俺に、相談ですか」




石田。



『他に、聞ける相手が、いない』



# 誠


誠は、しばらく、考えていた。





そして、聞いた。





「石田さん、記憶って、どうやって、渡すんですか」



# 石田


石田は、しばらく、考えた。





そして、言った。





『分からん。……試したことが、ない』



# 誠


誠は、少し、笑った。




「じゃあ、一緒に、考えましょう」



# 会議


賢者と、一色が、呼ばれた。



# 賢者


「石が、記憶を、譲渡する」



賢者は、しばらく、考えていた。




「前例が、あります」




誠。



「あるんですか」



# 賢者


「田中さんです」



賢者は、続けた。




「田中さんは、じいさんから、色々な言葉を、受け継ぎました」



「はい」




賢者。



「それも、記憶の、一種の、譲渡です」



# 誠


誠は、頷いた。




「言葉で、渡す、ということですね」




賢者。



「はい」



# 提案


一色が、続けた。




「石田さんに、伝えることが、できます」




誠。



「はい」




一色。



「聞き取り体制、既に、あります」



# 誠


誠は、頷いた。




「じいさんの言葉集と、同じ、方法ですね」




一色。



「はい。……ただ」




一色は、少し、間を、置いた。




「五千万人分、記録することに、なります」



# 誠


誠は、その数字に、しばらく、動かなかった。





「多いですね」




一色。



「はい」



# 提案


誠は、しばらく、考えた。





そして、言った。





「じゃあ、それも、教科書に、しませんか」



# 誠


「石田さんが、誰かに、記憶の渡し方を、教える」



誠は、続けた。




「それが、次の石にも、使える方法に、なります」



# 賢者


賢者は、しばらく、その提案を、聞いていた。





そして、頷いた。





「良い、考えです」



# 石田


誠は、石田に、伝えた。




「石田さん」



『なんだ』




誠。



「記憶を、人に、渡すことに、しませんか」




石田。



『人に?』




誠。



「はい。……村の人が、聞き取って、記録します」



# 石田


石田は、しばらく、考えた。





それから、言った。





『……人間に、渡って、意味が、あるのか』



# 誠


誠は、少し、考えた。




「田中さんの、じいさんの言葉」




石田。



『うん』




誠。



「人に、渡って、今も、使われてます」



# 誠


「毎朝、店を開ける時、みんなが、思い出します」



誠は、続けた。




「あなたの記憶も」



「はい」




誠。



「そうやって、使われるかもしれません」



# 石田


石田は、しばらく、黙っていた。





それから、静かに、言った。





『……頼む』



# 準備


こうして、また、新しい、聞き取りが、始まった。



# 参加者


村人が、また、集まった。





田中も、参加した。



# 田中


田中。



「わしも、てつだうで」




石田。



『……お前が?』




田中。



「にたもんどうしや」



# 田中


「なまえを、おぼえること」



田中は、続けた。




「わしにも、できる」



# 石田


石田は、しばらく、黙っていた。





それから、少し、笑ったような、声を、出した。





『……頼もしいな』



# 誠


誠は、その様子を、見ていた。





そして、静かに、思った。





(——また、繋がっていく)



# 田中


田中が、聞いた。




「やおや」



「はい」




田中。



「あんたも、てつだうか」



# 誠


誠は、少し、笑った。




「もう、体力が、ないです」




田中。



「そうか」



# 誠


「でも」



誠は、続けた。




「見てるだけで、いいです」



# 田中


田中は、しばらく、その言葉を、聞いていた。





そして、頷いた。





「みとってくれ」





その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「じいちゃん、石田さんから、相談がありました。石にも、寝石さんみたいに、機能が落ちることがあるかもしれない、って。それで、記憶を、誰かに、渡しておきたい、って言われました。田中さんのじいさんの言葉が、人に受け継がれて、今も使われてることを話しました。あなたの記憶も、そうなるかもしれません、って。石田さん、頼む、って言ってくれました。それで、また聞き取りが始まりました。田中さんも、手伝うことになりました。名前を覚えること、俺にもできる、って。石田さんが、頼もしいな、って言ってました。じいちゃん、また、繋がっていきます。俺は、もう、体力がないので、手伝えません。でも、見てるだけで、いいそうです。田中さんが、見といてくれ、って言ってくれました。じいちゃん、明日も、見ます」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。



まだこの時の誠は知らない。石田の記憶が、いつか、思わぬ形で、この星の未来を支えることになるとは。



——そしてもう一つ、まだこの時の誠は知らない。


「見ているだけでいい」という自分の言葉が、これから先、何よりも大切な役割になっていくことを。



——今は......まだ、誰も——知らない。

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