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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
戦争

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第53話「手紙と、カラオケ大会」

祭りの企画会議も、大詰めを、迎えていた。



「せっかくの機会だから、皆にも、声をかけてみようと思う」



誠は、そう、心に決めていた。



これまで再会してきた、同級生たち。それぞれ、遠く離れた場所で、それぞれの立場を、生きている。もし、この祭りに、一人でも、二人でも、来てくれたら——




誠は、その夜から、机に向かい、一通一通、丁寧に、手紙をしたためていった。




「黒崎へ。今度、村で、祭りを開くことになった。もしよければ、顔を出してくれ」



「竜崎、鈴森、皆瀬へ。祭りの日程が、決まった。皆で、集まれたら、嬉しい」



「グランデルさんへ。妖精族の皆さんにも、ぜひ、来ていただきたい」




書いているうちに、誠の頭には、次々と、これまで出会った、様々な種族の顔が、浮かんできた。




「そうだ、あの人たちにも」




誠は、これまで、縁があった、様々な種族——妖精族、虫人族、霧霊スライム族、そして、他にも、これまでの旅で、助け合ってきた、幾つかの種族にまで、次々と、手紙を、送ることにした。




「田中さん、そんなに、たくさん、送るんですか」



エリナが、山積みになった、手紙の束を見て、少し、驚いた様子で、尋ねた。



「うん。誰が、来てくれるかは、分からないけど……。とりあえず、声をかけてみようと思って」




誠は、少し、照れくさそうに、笑った。



「せっかくの祭りだから、賑やかになったら、嬉しいなと思って」





手紙の準備と並行して、祭りの、催し物についての、話し合いも、続けられていた。




「田中さん、目玉になる企画、何か、考えつきましたか」



村長が、期待を込めて、尋ねてきた。




「実は……」



誠は、少し、考えを、まとめてから、切り出した。



「予算が、限られているので、大掛かりなことは、できません。でも、皆で、気軽に、盛り上がれる、催しを、考えてみました」




「どんな、催しですか」




「歌を、歌う会、というのは、どうでしょうか」




「歌う、会?」




「はい。楽器も、道具も、あまり、必要ありません。皆が、順番に、好きな歌を、歌う。それだけの、催しです」




誠は、そう説明しながら、内心、少し、緊張していた。この世界に、日本の「カラオケ」のような文化があるかどうか、分からなかったからだ。




「田中さん、それは、良い考えかもしれません」



エリナが、目を輝かせた。



「お金が、かからず、誰でも、参加できます。それに、皆の、意外な一面も、見られるかもしれません」




「歌の、上手い下手は、関係なく、楽しめる場に、したいと思っています」




「田中さんらしい、企画ですね」




村長も、深く、頷いた。



「よし、それも、祭りの目玉の一つに、加えよう」




こうして、限られた予算の中、村人たちの、知恵と、協力によって、祭りの準備は、着々と、進められていった。




「田中さん」



竜崎が、企画会議の合間に、そっと、尋ねてきた。



「あの、手紙、色んな種族に、送ったんだってな」



「ああ」




「本当に、誰が、来てくれるか、分からないな」



「うん。でも……」



誠は、少し、笑った。



「せっかく、これまで、色んな縁を、繋いできたから。一人でも、多くの人と、笑い合える日に、なったらいいなと思って」




竜崎は、その言葉に、深く、頷いた。



「田中らしいな、それも」





準備は、あわただしく、しかし、着実に、進んでいった。




「田中さん、屋台の場所割り、決まりました」



「田中さん、灯りの演出、黒崎さんが、準備を、進めてくれています」



「田中さん、カラオケ……いえ、歌う会の、順番表、作りましょうか」




村人たちの声が、次々と、届く中、誠は、忙しくも、充実した日々を、過ごしていた。




「田中さん、手紙の、返事は、まだ、来てませんか」



エリナが、ふと、尋ねた。



「まだ、何も」



「そうですか……」




「まあ、遠方の人も、多いから。すぐには、返事も、届かないだろうし」



誠は、そう言いながらも、内心、少し、期待と、不安を、抱いていた。




(誰が、来てくれるだろうか)




その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「祭りの準備が、進んでいる。同級生たちに、たくさん、手紙を送った。誰が、来てくれるか、分からないけど、少しでも、賑やかになったらいいなと思う。カラオケ……歌う会も、企画した。お金がなくても、皆で、楽しめる場を、作りたい。じいちゃん、明日は、どんな、祭りに、なるんだろう」




窓の外、二つの月が、静かに、祭りの前夜を、照らしていた。




まだこの時の誠は知らない。この手紙が、一体、どれだけの、思いがけない再会を、この祭りに、もたらすことになるのかを。


そして、いよいよ、明日——村を挙げての、祭りが、始まろうとしていた。

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