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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
戦争

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第48話「牢の中の誰か」

敗戦から、半月が過ぎた。



村には、隣国——ガルディア帝国と名乗る国——の兵士たちが、駐留するようになっていた。



「田中さん、また、税の取り立てが……」



エリナが、疲れた表情で、そう報告した。



「わかりました、すぐに、準備します」




属国となったこの国では、様々な制約が、課せられるようになっていた。それでも、日々の暮らしを、続けていくしかなかった。




「田中殿」



ある日、竜崎が、深刻な表情で、店を訪れた。



「聞いたか。王都で、捕虜になった、我が国の兵士や、貴族たちが、牢に入れられているという話」



「捕虜、ですか」




「ああ。その中に、少し、気になる噂がある」



竜崎が、声を潜めて、続けた。



「見慣れない、しかし、どこか、人間くさい振る舞いをする者が、牢の一角に、いるらしい」




誠は、思わず、身を乗り出した。



「まさか……」



「詳しいことは、分からん。だが、田中の、"探し人"の可能性は、あると思う」




その頃、誠の頭には、もう一つ、気になっていることがあった。




「あの、レールガンという武器……」



誠は、静かに、呟いた。




「あれは、この世界の、通常の技術とは、明らかに、違う」



誠は、これまで、村での生活、そして商会の運営を通じて、この世界の技術水準を、ある程度、把握していた。




(レールガンって、確か、電磁力を使って、弾を撃ち出す、現代の兵器のはずだ)




誠の脳裏に、ふと、ある考えが、浮かんだ。




(もし、この世界に、あんな兵器があるとしたら……それを作れる人間は……)




「もしかして、また、同級生の誰かが、関わっているんじゃないか」



誠は、思わず、そう口にした。




「同級生?」



竜崎が、驚いた顔で、聞き返した。



「ああ。あの武器、僕たちの世界の、現代兵器の知識がなければ、作れないはずなんだ」




「つまり……」



「レールガンを作れるほどの技術者が、僕たちの、同級生の中に、いるかもしれない」




竜崎は、しばらく、考え込むように、腕を組んだ。



「確かに、俺たちの知識で考えれば、あり得ない話じゃないな」




「もし、そうだとしたら……」



誠は、複雑な思いを、抱かずには、いられなかった。




これまで出会った同級生たちは、皆、この世界で、それぞれの形で、懸命に、生きていた。しかし、今回、もし、その武器の開発に、同級生が関わっているとしたら——



その人物は、意図せずして、誠たちの国を、敗北に導いた、当事者の一人、ということになる。




「田中、もし、本当に、そうだったら、どうする」



竜崎が、静かに、尋ねた。




誠は、しばらく、考え込んだ。




「……会ってみたい」



「会って、どうするんだ」




「責めたいわけじゃない。ただ、あいつが、どんな思いで、この世界を、生きてきたのか。それを、知りたいと思う」




竜崎は、深く、頷いた。



「田中らしいな」




「アルフレート様は、今、どこに?」



誠は、話題を、変えるように、尋ねた。




「森の方に、行っていると聞いている。敗戦の混乱に乗じて、魔物の活動が、活発化しているらしくてな」



「勇者としての、役目は、まだ、続いているんだな」



「ああ。政治的な責任は、問われなくとも、あの人の、戦う役目自体は、変わらないみたいだ」




その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「敗戦で、この国は、属国になった。捕虜の中に、また、同級生がいるかもしれないという噂を聞いた。それに、あのレールガンという武器も、もしかしたら、同級生の誰かが、関わっているのかもしれない。もし、そうだとしたら、いつか、会ってみたい。責めるためじゃなく、あいつが、どんな思いで、この世界を、生きてきたのか、知りたいから。じいちゃん、この世界での再会には、時々、こんなにも、複雑な形も、あるんだな」




窓の外、二つの月が、静かに、しかし、どこか、緊張感を、孕みながら、輝いていた。




まだこの時の誠は知らない。この「レールガンを作った同級生」という存在が、この後、思いがけない形で、誠の前に、姿を現すことになることを。


そして、その再会が、これまでのどの再会とも異なる、複雑な感情を、誠にもたらすことになることも——今はまだ、知る由もなかった。

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