↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/617

第45話「戦争準備」

戦雲が近づいてから、半月が過ぎた。


⸻


村は、これまでにない、慌ただしさに包まれていた。


⸻


⸻


「田中さん、また、研ぎ物の依頼が!」


⸻


トビアスが、汗だくになりながら、店に駆け込んできた。


⸻


「今日だけで、もう、何本目だ……」


⸻


誠の店の軒先には、朝から晩まで、剣や槍を持った兵士たちが、列をなしていた。


⸻


⸻


「田中殿、これも、頼む」


⸻


「これも、急ぎで、お願いします」


⸻


⸻


誠は、トビアスや、他の弟子たちと共に、休む間もなく、研ぎ物の作業に、追われ続けていた。


⸻


「シャッ、シャッ……」


⸻


祖父から教わった、あの音が、店中に、絶え間なく、響いていた。


⸻


⸻


「これで、何本目でしょうか」


⸻


トビアスが、疲れた様子で、尋ねた。


⸻


「もう、数えるのを、やめました」


⸻


誠も、腕の疲労を、感じながら、そう答えた。


⸻


⸻


一方で、薬草の確保も、深刻な課題として、誠の頭を悩ませていた。


⸻


「田中さん、薬草の在庫が、思うように、増えません」


⸻


エリナが、帳簿を見つめながら、不安げに、報告した。


⸻


「栽培地を広げても、成長には、時間がかかりますし……」


⸻


⸻


「周辺の農家にも、声をかけてみましょう」


⸻


誠は、これまでの人脈を頼り、周辺の村々を、忙しく、駆け回ることになった。


⸻


⸻


「田中さんのところは、いつも、世話になってるからな。少しでも、力になれるなら」


⸻


以前、避難民の炊き出しで、協力してくれた農家の主人たちが、快く、薬草の栽培に、手を貸してくれた。


⸻


しかし——


⸻


「それでも、まだ、足りないな……」


⸻


戦争が本格化すれば、必要となる薬草の量は、これまでの比ではないことが、誠にも、次第に、分かってきていた。


⸻


⸻


「鈴森、皆瀬、力を貸してくれ」


⸻


誠は、手紙で、旧友たちに、協力を仰いだ。


⸻


「田中、うちの一族の縄張りにある、薬草に似た植物も、提供できると思う。詳しく、調べてみる」


⸻


鈴森からの、返事が届いた。


⸻


⸻


「田中くん、私たちの一族の知識も、活用できるかもしれない。湿地帯特有の、殺菌効果のある植物の情報を、まとめておくね」


⸻


皆瀬からも、心強い協力の申し出が届いた。


⸻


⸻


「黒崎、竜崎、桜庭も、それぞれ、準備を進めているようだ」


⸻


誠は、これまでの再会を通じて築いた、多くの繋がりに、改めて、感謝の念を抱いていた。


⸻


⸻


「田中よ」


⸻


ある日、黒崎が、村を訪れた。


⸻


「我が魔導の知識、少しは、役に立つかもしれん。防御結界の構築なら、心得がある」


⸻


「本当に、助かるよ」


⸻


⸻


「フッ……闇の力も、時には、光となる、ということだな」


⸻


「その、いつもの、言い回し……」


⸻


誠は、思わず、苦笑いした。


⸻


⸻


しかし、それでも、戦争の準備というものが、これまでの誠の経験とは、全く異なる種類の困難であることを、誠は、痛感し始めていた。


⸻


⸻


「アルフレート様は、どうされているのでしょうか」


⸻


エリナが、心配そうに、尋ねた。


⸻


⸻


その頃、王都では、アルフレートが、各地から集められた、様々な冒険者や、戦士たちと共に、戦略の練り直しに、追われていた。


⸻


⸻


「アルフレート様、こちらが、各地から集まった、戦力の一覧です」


⸻


部下の一人が、分厚い書類を、差し出した。


⸻


アルフレートは、それを、真剣な表情で、確認していった。


⸻


⸻


「思ったより、集まりが、良いな」


⸻


「はい。アルフレート様の、これまでの功績を、慕う者たちが、多く、志願しております」


⸻


⸻


しかし、アルフレートの表情には、これまでにない、深刻な影が、宿っていた。


⸻


「小競り合いは、既に、始まっているのだったな」


⸻


「はい。国境付近で、既に、数度の、衝突が報告されています。幸い、まだ、死者は出ておりませんが……」


⸻


「時間の、問題か」


⸻


⸻


アルフレートは、静かに、そう呟いた。


⸻


⸻


数日後、アルフレートが、久しぶりに、村を訪れた。


⸻


「田中、準備の方は、どうだ」


⸻


「研ぎ物と、薬草の確保に、追われています。でも、皆が、協力してくれて、なんとか、進んでいます」


⸻


⸻


「そうか」


⸻


アルフレートは、少し、安堵したような、表情を見せた。


⸻


⸻


「田中、正直に言おう」


⸻


「はい」


⸻


「私も、これほどの規模の、戦争の準備は、初めてだ」


⸻


⸻


誠は、少し、驚いた。


⸻


「アルフレート様でも、経験のないことが、あるんですね」


⸻


「当然だ。これまでの魔王軍との戦いとは、また、違う種類の困難がある」


⸻


⸻


「人間同士の、争いだからこそ、余計に、複雑なのかもしれん」


⸻


アルフレートの言葉には、これまでにない、重みが、感じられた。


⸻


⸻


「アルフレート様も、不安を、感じることが、あるんですね」


⸻


「もちろんだ。私とて、万能ではない」


⸻


⸻


その言葉に、誠は、少し、意外な気持ちを覚えた。これまで、常に、堂々としていたアルフレートの、素の姿を、垣間見た気がした。


⸻


⸻


「田中、これから、共に、乗り越えていこう」


⸻


「はい」


⸻


⸻


その夜、誠は祖父のノートに、こう書き加えた。


「戦争の準備が、本格化してきた。研ぎ物、薬草の確保、そして、仲間たちとの連携。やることは、山積みだけど、皆が、それぞれの立場で、力を貸してくれている。アルフレート様も、これまでにない、不安を、感じているようだった。じいちゃん、大きな戦いを前に、みんな、それぞれの形で、必死に、準備を進めているんだな」


⸻


⸻


窓の外、二つの月が、まだ、静かに、しかし、どこか、緊張感を、孕みながら、輝いていた。


⸻


⸻


まだこの時の誠は知らない。この小競り合いが、この後、本格的な戦争へと、発展していくことになることを。


そして、この準備期間が、誠にとって、そして、彼を取り巻く全ての人々にとって、これまでで最大の試練への、序章に過ぎなかったことも——今はまだ、知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。