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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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閑話「オーガのウー」

ある日。





——ミネルが——妙な、ことを——言い出した。







「——ウーは——強いのか」








「——え?」







——誠が——顔を——上げた。







「——考えて——みよ」








——彼は——腕を——組んだ。







「——あやつは——三年——文字を——教えて——おる」






「——石も——彫って——おる」






「——だが——戦う、ところを——見た、ことが——ない」








「——確かに」







「——聞いて——みるか」









## 質問






「——ウーさん」







——誠が——学び舎を——覗いた。







「——ウ」






「——お強いんですか」








「…………」







——ウーは。






——鑿を——置いた。







——そして——言った。








「——つよい」








「——即答ですね——!!」







「——ほんとうやから」








——彼は——けろり、と——言った。







「——どれくらい——ですか」






「——まけたこと——ない」








「——一度も——ですか——!!」






「——ウ」








「…………」







「——では——見せて——ください——!!」







——セレスが——飛び込んできた。








「——いつから——おったのだ——!!」






「——最初からです——!!」









## 試合






——荒野に——輪が——描かれた。







——観客は——五万を——超えていた。








「——多すぎます——!!」







——誠が——絶叫した。







「——実況しますので——!!」








「——最初の——相手は——!!」






「——私だ——!!」








——マギスが——進み出た。







「——大魔術師です——!!」






「——手加減はせぬ——!!」









——ウーは——輪の——中に——立った。







——構えない。






——ただ——立っている。








「——構えぬのか——!!」






「——ウ」








「——舐めるな——!!」







——マギスが——杖を——掲げた。







「——我が——身に——宿りし——炎の——精霊よ——!!」








——ウーは——腕を——組んだ。







「——ウ」








「——紅蓮の——力を——我に——与え——!!」







——ウーは——右足を——半歩——引いた。







「——ウ」








「——燃え盛る——炎を——もって——!!」







——ウーは——左へ——二歩。







「——ウ」








「——敵を——焼き尽くせ——!!」






「——ファイアボール——!!」








——ドゴォォォン——!!







——炎が——飛んだ。







——だが。







——そこに——ウーは——いなかった。








「——なぜだ——!?」







——マギスが——絶叫した。







「——ウ」








——ウーは——少し——離れた——ところに——立っていた。








「——待て——!!」







——マギスが——叫んだ。







「——今のは——初級だ——!!」






「——ウ」








「——次は——中級だ——!!」









——だが。






——結果は——同じ、だった。








「——大地に——眠りし——精霊よ——!!」







——ウーは——三歩——下がった。







「——大地を——割り——!!」







——ウーは——さらに——二歩。







「——ロックブラスト——!!」








——ゴゴゴゴゴ——!!







——巨大な——岩が——突き出した。







——だが。







——ウーは——岩と——岩の——間に——立っていた。







——完全に——安全、だった。








「…………」







「——なぜ——分かる」








——マギスが——震える——声で——尋ねた。







「——えいしょう」








——ウーが——答えた。







「——詠唱?」






「——ながい」








「——それだけか——!?」






「——ウ」








「…………」







「——待て——!!」







——マギスが——抗議した。







「——魔法とは——詠唱で——魔力を——練るのだ——!!」






「——ウ」








「——ゆえに——長い——!!」






「——ウ」








「——長いから——強い——!!」






「——ウ」








「——強い——魔法ほど——詠唱が——長い——!!」







「——ウ」








——マギスは。






——頭を——抱えた。







「——では——我らは」






「——わざわざ——敵に——予告して——おるのか——!?」








「…………」







——ウーは。






——少し——考えた。







——そして——言った。








「——ウ」








「——納得するな——!!」







——マギスが——絶叫した。








「——コメントが——!!」







——セレスが——叫んだ。







「——"言われてみれば"、"三十年——気づかなかった"、って——!!」









## 勇者






「——次は——私だ——!!」







——レオンが——進み出た。







「——レオンさん——!!」






「——剣士に——詠唱は——要らぬ——!!」








——彼は——胸を——張った。







「——確かに」






「——だが——必殺技は——ある——!!」








「…………」







——広場が。






——妙な——空気に——なった。








「——レオンさん」







——誠が——静かに——言った。







「——なんだ」






「——長いですよね」








「——長い——!!」






「——駄目じゃ——ないですか——!!」








「——構わぬ——!!」







——レオンは——剣を——構えた。







「——行くぞ——!!」








——ウーは——立っている。







「——これが——俺の——!!」







——ウーは——待つ。







「——仲間との——絆と——!!」







——ウーは——待つ。







「——これまでの——旅と——!!」







——ウーは——待つ。







「——世界を——救いたいという——!!」







——ウーは——待つ。







「——俺の——!!」







——ウーは——待つ。







「——熱き——魂を——込めた——!!」







——ウーは——待つ。







「——究極——必殺——!!」







——ウーは——待つ。







「——アルティメット——!!」







——ウーは——待つ。







「——ブレイブ——!!」







——ウーは——待つ。







「——ギャラクシー——!!」







——ウーは——待つ。







「——エクス——!!」







——ウーは——待つ。







「——カリバァァァァァァァ——!!」








——その——瞬間。







——光が——集まり始めた。






——地面が——震えた。






——風が——吹き荒れた。







「——おおおお——!!」








——観客が——沸いた。







「——出る——!!」






「——本物だ——!!」








——そして——ウーは。







——レオンの——真横に——立っていた。








「…………え?」







「——ウ」








——ドゴンッ——!!







「——ぐはあああ——!!」








——レオンが——吹っ飛んだ。







——必殺技は——出なかった。








「…………」







——荒野が。






——静まり返った。








「——待て——!!」







——レオンが——起き上がった。







「——今——必殺技を——出す——ところだった——!!」






「——ウ」








「——最後まで——待て——!!」







——ウーは——首を——傾げた。







「——ウ?」








「——"ウ?"、では——ない——!!」







「…………」








——ウーは。






——真剣な——顔で——考えた。







——そして——言った。








「——たたかい」






「——うむ」






「——さきに——こうげき」








「…………」







「——ふつう」








「…………」







——レオンは。






——黙った。







——そして——ぼそり、と——言った。








「——それは——そうだな」








「——認めるな——!!」







——ミネルが——叫んだ。









## 短縮






「——ならば——!!」







——レオンが——立ち上がった。







「——技名を——短くする——!!」








「——ウ?」







「——見よ——!!」








——彼は——剣を——構えた。







——そして——一呼吸。







「——斬る——!!」








——速い。







——今までとは——違った。







「——ウ——!!」








——ガキィィン——!!







——剣が——ぶつかった。








「——どうだ——!!」







——レオンが——笑った。







「——ウ」






「——短いだろう——!!」








「——ウ」






「——これなら——読めまい——!!」








「…………」







——ウーは。






——一歩——下がった。







「——何を——する——!!」






「——ウ」








——彼は——剣を——構えた。







——二人が——睨み合う。







——静寂。







——そして。







「——ウ」








「——ぐはっ——!!」







——レオンが——倒れた。








「…………」







——荒野が。






——凍りついた。








「——今のは——何だ——!!」







——レオンが——起き上がった。







「——ひっさつわざ」








「——名は——!?」






「——ウ」








「…………」







「——技名が——"ウ"、なのか——!?」








「——ウ」






「——短すぎる——!!」








「——ウ」






「——認めるな——!!」









## 理由






「——ウーさん」







——誠が——尋ねた。







「——ウ」






「——なぜ——短いんですか」








「…………」







——ウーは。






——しばらく——考えて。






——そして——言った。








「——ししょうが」







「——お師匠が——?」






「——おしえた」








「——何を——ですか」








——ウーは——指を——折った。







「——わざを——さとられるな」






「——こえを——だすな」






「——かまえを——みせるな」






「——よびどうさを——けせ」








「——全部——守ってますね」






「——ウ」








「——では——なぜ——"ウ"、と——言うんですか」








「…………」







——ウーは。






——ぽつり、と——言った。








「——さみしい」








「…………」







——荒野が。






——静まった。








「——え?」






「——なにも——いわないのは——さみしい」








——ウーは——静かに——言った。







「——だから——ひとつだけ」








「…………」







「——それが——"ウ"、ですか」






「——ウ」








「…………」







「——コメントが——止まりました——!!」







——セレスが——言った。







——そして。







「——一斉に——"泣いた"、って——!!」









## 挑戦






——だが——挑戦者は——続いた。








「——俺には——技名など——ない——!!」







——ゴウが——構えた。







「——ウ」






「——無言で——行く——!!」








——二人が——走った。







——一撃。





——二撃。





——三撃。







——ウーは——三手先を——読む。






——ゴウは——四手先を——読む。






——ウーは——五手先を——読む。






——ゴウは——六手先を——







「——ウ」








——ゴウが——倒れた。







「——なぜだ——!!」







「——かんがえすぎ」








——ウーが——答えた。







「——なんだと?」






「——かお」








「——顔?」






「——かんがえてる——かお」








「…………」







——ゴウは。






——顔を——覆った。









## 賢者






「——最後は——私だ」







——ミネルが——進み出た。







「——ミネルさん——!?」






「——記録を——全部——調べた」








——彼は——眼鏡を——押し上げた。







「——お前の——力には——法則が——ある」






「——ウ」








「——技の——前に——必ず——微かな——予備の——動きが——ある」







「——ウ」








「——それを——読んで——おるのだ——!!」






「——ウ」








「——ならば——!!」







——ミネルが——笑った。







「——予備の——動きを——完全に——消せば——!!」








「…………」







——ウーは。






——静かに——頷いた。







——ミネルが——構えた。







——無駄な——動きは——一切——ない。







——そして。







「——ウ」








——ミネルが——倒れた。







「…………」







「——なぜだ……」








——彼が——地面から——顔を——上げた。







「——けんじゃ」






「——なんだ……」








「——かんがえすぎ」







「…………」








「——かんがえてる——あいだに——さんて——すすんだ」








「——そんな……」







——ミネルは——力尽きた。









## 決着






「——では——最後の——挑戦者です——!!」







——セレスが——叫んだ。







「——誰ですか——!!」






「——田中さんです——!!」








「——聞いてません——!!」







——誠が——絶叫した。







「——虚空の——ご要望です——!!」








「——僕、戦えません——!!」






「——出て——ください——!!」









——誠は——渋々——輪に——立った。







——ウーが——向かいに——立つ。







「——ウ」








「——ウーさん」






「——ウ」






「——手加減して——ください」








「——ウ」







——ウーが——構えた。







——そして。







「…………」








——動かない。







「——ウーさん?」






「…………」








「——どうしました」






「…………」








——ウーは。






——長い、こと——立ち尽くした。







——そして——構えを——解いた。








「——よめん」








「…………」







——荒野が。






——静まり返った。








「——なんだと——!?」







——ミネルが——起き上がった。







「——よめん」








——ウーが——繰り返した。







「——なぜだ——!!」






「——よびどうさが——ない」








「——消して——おるのか——!!」






「——ちがう」








——ウーは——首を——振った。







「——では——なんだ——!!」








「…………」







「——こうげきする——きが——ない」








「…………」







「——だから——よめん」







——ウーは——静かに——言った。







「——なにも——してこない」








「…………」







「——僕、戦えませんので」








——誠が——けろり、と——言った。







「——ウ」








——ウーは——頷いた。







——そして——ぽつり、と——言った。








「——いちばん——こわい」








「…………」







「——なぜですか——!!」








「…………」







——ウーは。






——長い、こと——黙って。






——そして——言った。








「——さんねん——まえ」







「——はい」






「——じゅうまんで——せめた」








「…………」







「——あんたは——なにも——せんかった」







——ウーは——静かに——言った。







「——いもを——だした」








「…………」







「——あれが——いちばん——こわかった」








「…………」







——荒野が。






——完全に——静まった。








「——なぜですか」







——誠が——静かに——尋ねた。







「…………」







「——よめんかった」








——ウーは——ぽつり、と——言った。







「——さんびゃくねん——たたかってきた」






「——ぜんぶ——よめた」








「…………」







「——あれだけ——よめんかった」








「…………」







——誠は。






——深く——頭を——下げた。








「——すみませんでした」






「——ウ?」






「——怖い——思いを——させました」








「…………」







——ウーは。






——首を——振った。







——そして——低く——言った。








「——ありがたかった」








「…………」







「——まけて——よかった」








「…………」









## 登録






——後日。






——受付で——問題が——起きた。








「——技名を——登録します」







——エリナが——筆を——構えた。







「——ウ」






「——短すぎるわ」








「——ウ」






「——書けないの」








「——ウ」







——エリナは——ため息を——ついた。







——そして——書いた。








*——技名:「ウ」*





*——詠唱時間:なし*





*——予備動作:なし*





*——回避可能時間:なし*





*——備考:世界最速*








「——書けました——!!」







「——ウ」









——ちなみに。






——ギルドに——新しい——決まりが——できた。








*——【ウーと——立ち合う——場合】*





*——技名を——叫ぶべからず*








「——守れますか」







——誠が——尋ねると。






——レオンは——即座に——言った。








「——無理だ——!!」







「——なぜですか——!!」






「——叫ばねば——気合が——入らぬ——!!」








「…………」







「——ウ」








——ウーが——ぽつり、と——言った。







「——なんて——ですか」






「——わかる」








「…………」







「——おれも——さみしいから——いう」








「…………」







「——同じですね」








——誠が——微笑んだ。







「——ウ」









——それ以来。






——荒野では——妙な——光景が——見られるように——なった。








「——これが——俺の——究極——必殺——!!」







——レオンが——叫ぶ。







——ウーは——待つ。







「——アルティメット——ブレイブ——!!」







——ウーは——待つ。







「——ギャラクシー——エクス——カリバァァァ——!!」







——そして——最後まで——待つ。







——技が——出る。







——ウーは——避ける。








「——ウ」







「——ぐはっ——!!」








「——結局——勝つのか——!!」







——ミネルが——叫んだ。







「——ウ」








「——では——なぜ——待つ——!!」







「…………」








——ウーは。






——ぽつり、と——言った。








「——ききたいから」








「…………」







「——かっこええ」








「…………」







——レオンが。






——地面で——泣いていた。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「ミネルさんが、"ウーは強いのか"、と。三年見てるのに、戦うところを見たことがない。……本人に聞いたら、"つよい"、って即答。"まけたこと ない"、と。三百年、一度も。……試合になった。五万集まりました。……マギスさんが詠唱を始めたら、ウーさん、詠唱に合わせて動いて、着弾点から外れてた。なぜ分かるのか聞いたら、"えいしょう"、"ながい"、それだけ、って。……マギスさんが、"魔法とは詠唱で魔力を練るのだ。長いから強い"、と抗議したけど、途中で気づいてました。"では我らは、わざわざ敵に予告しておるのか"、って。ウーさんが頷いて、"納得するな"、って叫んでました。……レオンさんは、必殺技の名前が長い。"アルティメット・ブレイブ・ギャラクシー・エクスカリバー"。……言い終わる前に、ウーさんが真横にいました。……"最後まで待てよ"、って怒られて、ウーさんが、"たたかい"、"さきに こうげき"、"ふつう"、って。レオンさんが、"それはそうだな"、って認めてました。認めるな、って。……短くしても駄目でした。ウーさんの技名は、"ウ"。短すぎるだろ、って。……なぜ短いのか聞いたら、お師匠が、"技を悟られるな。声を出すな。構えを見せるな。予備動作を消せ"、と教えた、と。……では、なぜ"ウ"、と言うのか。……"さみしい"、って。何も言わないのは寂しいから、一つだけ。……コメントが止まって、一斉に、"泣いた"、って。……ゴウさんは、"かんがえすぎ"、"かんがえてる かお"、で負けた。ミネルさんは予備動作を完全に消したのに、"かんがえてる あいだに さんて すすんだ"、で負けました。……最後に、なぜか僕が出された。……そしたら、ウーさんが構えを解いて、"よめん"、って。……理由が、"こうげきする きが ない"、でした。何もしてこないから、読めない。……そして、"いちばん こわい"、って。……三年前、十万で攻めた時、僕が芋を出した。あれが一番怖かった、と。三百年戦ってきて全部読めたのに、あれだけ読めなかった、と。……すみませんでした、怖い思いをさせました、って謝ったら、首を振って、"ありがたかった"、"まけて よかった"、って。……後日、技名を登録しようとして、エリナが、"短すぎるわ。書けないの"、って困ってました。結局、"ウ"、で登録。備考が"世界最速"。……ギルドに、"ウーと立ち合う場合、技名を叫ぶべからず"、という決まりができた。守れますか、って聞いたら、レオンさんが、"無理だ。叫ばねば気合が入らぬ"、って。……ウーさんが、"わかる"、"おれも さみしいから いう"、って。同じですね。……それ以来、ウーさん、レオンさんの技名を最後まで聞くようになりました。そして避けて、"ウ"、で倒す。……なぜ待つのか聞いたら、"ききたいから"、"かっこええ"、って。レオンさん、地面で泣いてました。じいちゃん、あの人、強いです」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。三百年——一度も——負けなかった——オーガが。




——なぜ——「まけて——よかった」、と——言ったのかを。


そして——「攻撃する——気が——ない」、という——それが。




——この、世界で——最も——読めない——構えで——あることも。





——今は……まだ、負けた——本人しか——知らない。

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