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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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閑話「秘密の、暴露大会」

きっかけは。





——やはり——セレスの——一言、だった。







「——暴露大会を——やりましょう——!!」







「——嫌な——予感が——します」








——誠が——即座に——言った。







「——虚空の——ご要望です——!!」






「——どんな——ですか」








「——"職業ごとの——本当の、ところが——知りたい"、って——!!」








「…………」







「——荒れますよ」






「——荒れた、方が——伸びます——!!」








「——正直——ですね——!!」









## 一、勇者






「——では——一番——レオンさん——!!」







「——望む、ところ——!!」








——彼は——高座に——上がった。







「——では——勇者の——秘密を——申す——!!」








「——おおお——!!」







「——必殺技の——名は——長い、方が——勝てる——!!」








「…………」







「——どういう——意味ですか」








「——聞け——!!」







——レオンが——構えた。







「——"我が——刃は——黄昏を——裂き——星辰を——貫く——光の——奔流——!!"」






「——"其の——名は——!!"」








「…………」







「——長いです——!!」






「——まだ——続く——!!」








「——それで——どうなるんですか」






「——大抵の——魔物は——逃げる——!!」








「…………」







「——え?」






「——言い終わる——前に——な——!!」








——レオンは——けろり、と——言った。







「——では——技は——!!」






「——ない——!!」








「——ない——!?」






「——そんな——技は——知らぬ——!!」








「…………」







——荒野が。






——静まった。







——そして——魔物の——側から。







「——ウ」








——ウーが——手を——挙げた。







「——なんだ——!!」






「——しっとった」








「——なんだと——!?」






「——ながいから——にげてた」








——ウーは——けろり、と——言った。







「——なぜ——逃げた——!!」






「——きくのが——めんどう」








「…………」







「——効いて——おったではないか——!!」









## 二、魔術師






「——二番——マギスさん——!!」







「——うむ」








——大魔術師が——上がった。







「——我の——秘密は——詠唱だ」







「——長いですよね」








「——長い」







——マギスは——頷いた。







「——なぜだと——思う」






「——威力の——ためですか」








「——違う」







——彼は——静かに——言った。







「——では——なんですか」






「——楽だからだ」








「…………」







「——え?」






「——唱えて——おる——間に」








——マギスは——けろり、と——言った。







「——仲間が——片付けて——おる」








「…………」







「——最低です——!!」







——誠が——叫んだ。







「——合理的だ——!!」








「——待て——!!」







——レオンが——立ち上がった。







「——では——私が——長く——喋って——おる——間は——!!」






「——我も——長く——唱えて——おった」








「——では——誰が——戦って——おったのだ——!!」








「…………」







——二人が。






——同時に——ゴウを——見た。








「——私だ——!!」







——武闘家が——胸を——張った。







「——すまぬ——!!」






「——構わぬ——!!」









## 三、僧侶






「——三番——ルナさん——!!」







「——あら」








——聖女が——上がった。







「——では——回復の——秘密を」







「——お願いします」








「——一番——効くのはね」







——ルナは——澄まして——言った。







「——"大丈夫?"、ですわ」








「…………」







「——魔法では——ないんですか」






「——魔法は——魔力を——使いますの」








——彼女は——けろり、と——言った。







「——"大丈夫?"、は——使いませんわ」






「——ただの——節約です——!!」








「——ですが——効きますの」







——ルナは——静かに——言った。







「——意外と——立ち直る——方が——多うございます」








「…………」







「——桃さん」







——誠が——尋ねた。







「——本当ですか」






「——本当です」








——桃が——真面目な——顔で——頷いた。







「——七割の——方は——それで——治ります」








「…………」







「——では——僕も——できますね」






「——三十年——なさって——おります」








「…………え?」







「——毎日——四百十二軒——回って」








——桃は——静かに——言った。







「——"何か——困ってませんか"、と」








「…………」







「——同じ、ものです」









## 四、戦士






「——四番——グランデルさん——!!」







「——おうよ——!!」








——鬼族が——上がった。







「——戦士の——秘密は——一つだァ——!!」







「——なんですか」








「——筋肉で——大抵——片付くゥ——!!」








「…………」







「——それだけですか」






「——それだけだァ——!!」








——彼は——指を——折った。







「——"押せ"——!!」






「——"壊せ"——!!」






「——"持て"——!!」






「——"考えるな"——!!」








「——四つ目が——駄目です——!!」







——一色が——叫んだ。







「——なぜだァ——!!」






「——後始末を——してるのは——私です——!!」








「…………」







「——三十年——泣きながら——直してます——!!」








「——すまん——!!」







——グランデルが——泣き出した。







「——泣くの——早いです——!!」









## 五、盗賊






「——五番——ジンさん——!!」







「…………」








——鈴が——ちりん、と——鳴った。







「——秘密は——なんですか」






「——宝箱だ」








——ジンが——ぼそり、と——言った。







「——開けるんですよね」






「——置く」








「…………え?」







「——迷宮に——置いて——帰る」








——彼は——静かに——言った。







「——なぜですか」






「——翌日には——冒険者の——荷が——増えて——おる」








「…………」







「——中身は——!?」






「——知らぬ」








「——空じゃ——ないんですか——!!」






「——空だ」








「——詐欺です——!!」






「——箱は——本物だ」








「…………」







——だが——アカリが——手を——挙げた。








「——ジン様」






「——なんだ」






「——今も——なさって——おりますか」








「——して——おる」







——ジンは——けろり、と——言った。







「——どこに——ですか——!!」






「——里の——道端だ」








「——中身は——!!」






「——芋だ」








「…………」







——荒野が。






——静まった。








「——入れてるんですか——!!」






「——入れて——おる」








「——なぜですか——!!」






「——腹が——減って——おる——者が——おるからだ」








——ジンは——ぼそり、と——言った。







「——だが——施しは——受け取らぬ」






「——ゆえに——落ちて——おる、ことに——する」








「…………」







「——いくつ——ですか」







——誠が——尋ねた。







「——毎日——三十だ」








「——三年——ですか」






「——三十年だ」








「…………」







「——ジンさん——三年——前に——来ましたよね」








「…………」







——ジンが。






——固まった。







「——言うな」






「——向こうの——世界でも——ですか」








「——言うな——!!」









## 六、聖女(続き)






「——ルナさん——もう一つ——ありますよね——!!」







——セレスが——叫んだ。







「——ございませんわ」








「——祈りの——時間です——!!」






「…………」








「——九割は——昼寝だ、と——伺いました——!!」







「——瞑想ですわ」








——ルナが——澄まして——言った。







「——いびきが——聞こえましたが——!!」






「——祝福の——呼吸ですわ」








「——苦しい——!!」







——荒野が——笑った。








「——ですが」







——桃が——静かに——言った。







「——それで——よろしいのです」








「——え?」






「——四百年——働いて——おられます」








——桃は——けろり、と——言った。







「——九割は——寝て——いただきたいくらいです」








「…………」







——ルナが。






——顔を——背けた。








「——余計な、ことを——おっしゃらないで」









## 七、賢者






「——七番——ミネルさん——!!」







「——うむ」








——賢者が——上がった。







「——賢者の——秘密は——一つだ」







「——なんですか」








「——知識が——増えるほど——面倒が——増える」








「…………」







「——例を——お願いします」








「——よかろう」







——ミネルは——咳払いした。







「——"それに——触ると——世界が——滅びます"」






「——"え?"」






「——"だから——触るなと——申しました"」








「…………」







「——それ——三十年——前ですね」







——誠が——静かに——言った。







「…………」








「——人工太陽ですか」






「——言うな——!!」








——ミネルが——絶叫した。







「——止めましたよね」






「——止めた——!!」








「——でも——僕たち——作りましたね」






「——作った——!!」








「——すみませんでした」






「——今更——謝るな——!!」








「…………」







「——だが——な」







——ミネルが——ふと——言った。







「——あれが——なければ——今の——世は——ない」








「——え?」






「——影も——弓も——衛星も——な」








——彼は——低く——言った。







「——ゆえに——訂正する」






「——何を——ですか」








「——"触ると——面倒が——増える"、だ」







——ミネルは——静かに——言った。







「——"だが——触らねば——何も——始まらぬ"」








「…………」







「——コメントが——!!」






「——"急に——名言"、って——!!」









## 八、魔王






「——八番——魔王さん——!!」







「——うむ」








——魔王が——上がった。







「——三月ぶりの——高座ですね」






「——初めてだ」








「——秘密は——なんですか」






「——書類だ」








「…………え?」







「——勇者より——多い」








——魔王は——けろり、と——言った。







「——何の——書類ですか——!!」






「——魔物の——雇い入れ」






「——迷宮の——修繕」






「——四天王の——休みの——申請」








「——休みが——あるんですか——!!」






「——年に——二十日だ」








「——ちゃんとしてます——!!」







「——当然であろう」








——魔王は——真面目な——顔で——言った。







「——では——世界征服は——!!」






「——副業だ」








「…………」







「——本業は——!?」






「——書類だ」








「——それ——役所です——!!」







——アカリが——叫んだ。







「——そうであろうな」








——魔王は——ぼそり、と——言った。







「——ゆえに——七百年——飽きて——おった」








「…………」







「——今は?」







——誠が——尋ねると。






——魔王は——顔を——背けた。








「——飽きて——おらぬ」








「——なぜですか」






「——三月——旅に——出た」








——彼は——静かに——言った。







「——七百年で——初めてだ」








「…………」







「——それと——飯を——持たされた」








「…………」









## 九、四天王






「——九番——四天王の——皆さん——!!」







「——うむ——!!」








——三人が——上がった。







「——一人——足りません——!!」







「——それが——秘密だ——!!」








——炎の——将軍が——胸を——張った。







「——え?」






「——会議は——四人——揃わねば——始まらぬ——!!」








「——それで——?」






「——必ず——一人——休む——!!」








「…………」







「——日程を——調整する——!!」






「——また——一人——休む——!!」






「——また——調整する——!!」








「——始まらないですね」






「——始まらぬ——!!」








「——その——間に?」






「——勇者が——城まで——来る——!!」








「…………」







「——それで——負けてたんですか——!!」






「——さようだ——!!」








「——ちなみに——今日は——!!」






「——氷が——休みだ——!!」








「——今日も——ですか——!!」









## 十、スライム






「——十番——皆瀬さん——!!」







『——出るの?』








「——お願いします——!!」







『…………』








『——最初の——一匹は』







——十二番が——揺れた。







『——新人研修中』








「…………」







「——どういう——意味ですか」








『——迷宮の——入り口に——いるでしょ』







『——あれ——研修』








「——何を——教わるんですか」






『——逃げ方』








「——習得できましたか」






『——ない』








「…………え?」







『——スライムに——逃げ方は——ない』








——十二番は——ぽつり、と——言った。







『——だから——研修だけ——ずっと——続く』








「…………」







「——ひどいです——!!」






『——ひどい』








「——今は?」







——誠が——尋ねると。






——十二番は——揺れた。








『——今は——十二個に——分かれてる』







『——逃げなくて——いい』








「…………」







『——毎日——喋る——相手も——いる』








「…………」









## 十一、竜






「——十一番——藤原さん——!!」







「——うちか」








——天井の——穴から——首が——伸びた。







「——秘密は——なんですか」






「——寝返りや」








「——え?」






「——一回——打つとな」








——藤原は——けろり、と——言った。







「——災害に——指定されるねん」








「…………」







「——五十メートルですからね」






「——せや」








「——本人は?」






「——寝ぼけとるだけや」








「…………」







「——それで——王国が——避難訓練を——始めるねん」








——藤原は——ため息を——ついた。







「——迷惑な——話や」






「——迷惑を——かけてる、方ですよね」








「——せや」









## 十二、受付






「——十二番——エリナさん——!!」







「——私?」








——妻が——きょとん、と——した。







「——受付の——秘密です——!!」






「——秘密なんて——ないわ」








「——ございます——!!」







——アカリが——手を——挙げた。







「——え?」






「——一番——強うございます」








「…………」







「——そんなこと——ないわ」






「——先月の、ことです」








——アカリが——帳面を——めくった。







「——酔った——鬼族が——受付で——暴れました」






「——ありましたね」








「——エリナ様が——肩を——お叩きに——なりました」







「——それだけよ」








「——次の——瞬間——土下座して——おりました」








「…………」







——荒野が。






——静まった。








「——何を——言ったんですか」







——誠が——尋ねると。






——エリナは——けろり、と——言った。








「——"お子さん——待ってるわよ"、って」








「…………」







「——それだけですか——!!」






「——それだけ」








「——強いです——!!」







——セレスが——絶叫した。







「——コメントも——"最強"、って——!!」









## 十三、村人






「——十三番——ルカさん——!!」







「——僕——村人ですか」








「——ご出身が——!!」






「——そうですけど」








——ルカは——高座に——上がった。







——そして——しばらく——考えて。







「——秘密じゃ——ないですけど」








「——どうぞ——!!」






「——野菜は——毎日——育ちます」








「…………」







「——それだけですか」






「——それだけです」








——ルカは——静かに——言った。







「——勇者様が——世界を——救ってる——間も」






「——魔王様が——書類を——書いてる——間も」






「——毎日——育ちます」








「…………」







「——収穫が——遅れると」







——彼は——顔を——上げた。







「——そっちの、方が——世界の——危機です」








「…………」







——荒野が。






——静まり返った。








「——コメントが——止まりました——!!」







——セレスが——言った。







——そして。







「——一斉に——"それだ"、って——!!」









## 十四、八百屋






「——十四番——田中さん——!!」







「——また——ですか」








「——ご要望です——!!」







——誠は——渋々——上がった。








「——秘密なんて——ないです」






「——何か——!!」








「…………」







——誠は。






——しばらく——考えて。






——そして——言った。








「——今日の——葉物が——安いです」








「…………」







「——それだけですか——!!」






「——それだけです」








「——今——世界の——話を——してます——!!」






「——安いんです」








——誠は——真面目な——顔で——言った。







「——潮が——戻って——雨が——増えたので」






「——三十年で——一番——安いです」








「…………」







——荒野が。






——ざわめいた。








「——三十年で——一番——か——!!」






「——買いに——行くぞ——!!」






「——ウ——!!」








「——待って——ください——!!」







——セレスが——叫んだ。







「——まだ——大会中です——!!」








「——安いのだぞ——!!」







——ミネルまで——立ち上がっていた。









## 十五、ラスボス






「——最後——十五番——!!」







——セレスが——必死に——場を——戻した。







「——ノワールさん——!!」








「——うむ」







——首領が——上がった。







「——ラスボスの——秘密だ」








「——なんですか」






「——稽古を——して——おる」








「——何の——ですか」






「——負ける——稽古だ」








「…………」







「——見せて——ください——!!」








——ノワールは——構えた。







——そして。







「——ぐわあああ——!!」








「…………」







「——もう少し——迫真で——!!」







——部下が——叫んだ。







「——はい——!!」








「——素直——!!」







——荒野が——笑った。








「——なぜ——稽古するんですか」







——誠が——尋ねると。






——ノワールは——静かに——言った。








「——勇者が——来るからだ」






「——はい」






「——勝ってしまうと——困る」








「…………え?」







「——あやつらは——命懸けで——来る」








——彼は——ぼそり、と——言った。







「——勝てば——死ぬ」






「——ゆえに——負ける」








「…………」







——荒野が。






——静まった。








「——待って——ください」







——レオンが——立ち上がった。







「——では——三十年——前の——あれは」








「…………」







「——手加減か——!?」








「——言うな」







——ノワールが——顔を——背けた。







「…………」








「——ありがとう——ございました」







——レオンが——深く——頭を——下げた。







「——礼を——言うな——!!」









## 締め






「——では——結果です——!!」







——セレスが——板を——掲げた。







「——虚空の——皆さんの——投票——!!」








「——第一位——!!」







——彼女は——間を——取った。







「——ルカさん——!!」








「——僕——!?」







——ルカが——飛び上がった。







「——理由が——書いてあります——!!」








「——なんですか」






「——"それが——一番——大事な——秘密だった"、って——!!」








「…………」







「——それと——!!」







——セレスが——読んだ。







「——"三十年——見てて——気づかなかった"、って——!!」








「…………」







——ルカは。






——照れて——うつむいた。







——そして——ぽつり、と——言った。








「——師匠に——教わりました」








「——教えてません」







——誠が——言った。







「——毎日——やってました」








——ルカは——微笑んだ。







「——それが——教える、ってことです」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「セレスさんが、暴露大会をやりたい、と。虚空のご要望だそうだ。……レオンさんが、"必殺技の名は長い方が勝てる"、って。言い終わる前に魔物が逃げるから。技は、実はない。ウーさんが、"しっとった。ながいから、にげてた。きくのが、めんどう"、って。効いてました。……マギスさんが、"詠唱が長いのは楽だからだ。唱えてる間に仲間が片付けておる"、って。最低です。二人とも長いと、誰が戦ってたのか——ゴウさんでした。……ルナさんが、"一番効くのは、大丈夫?、ですわ。魔法は魔力を使いますが、それは使いませんの"、って。節約です。でも、桃さんが、"本当です。七割の方はそれで治ります"、って。……しかも、"田中様は三十年なさっております。毎日四百十二軒回って、何か困ってませんか、と。同じものです"、って。……グランデルさんが、"筋肉で大抵片付く"。押せ、壊せ、持て、考えるな。四つ目で一色さんが、"後始末をしてるのは私です。三十年、泣きながら直してます"、って。……ジンさんが、"宝箱は開けるより置く方が儲かる"、って。中身は空。でも、今は里の道端に置いてて、中身は芋。腹が減ってるのに施しを受け取らない人がいるから、落ちてることにする。毎日三十。三十年。……ジンさん、三年前に来ましたよね、って言ったら、"言うな"、って。向こうの世界でも、でした。……ルナさんの祈りの九割は昼寝。"瞑想ですわ"、"いびきが"、"祝福の呼吸ですわ"。でも、桃さんが、"四百年働いておられます。九割は寝ていただきたいくらいです"、って。……ミネルさんが、"知識が増えるほど面倒が増える"、って。"触ると世界が滅びます"、って言ったのに、僕たち、人工太陽を作りました。すみませんでした。……でも、"あれがなければ今の世はない。ゆえに訂正する。触ると面倒が増える。だが、触らねば何も始まらぬ"、って。……魔王さんは、"書類だ。勇者より多い"。雇い入れ、修繕、四天王の休みの申請。年に二十日、休みがあるそうです。世界征服は副業。本業は書類。それ、役所です。……四天王は、"会議は四人揃わねば始まらぬ。必ず一人休む"。その間に勇者が城まで来る。今日も氷の方が休みでした。……皆瀬さんが、"最初の一匹は新人研修中。教わるのは逃げ方。でも、スライムに逃げ方はない。だから研修だけずっと続く"、って。ひどいです。でも、"今は十二個に分かれてる。逃げなくていい。毎日喋る相手もいる"、って。……藤原さんは寝返り一回で災害指定。本人は寝ぼけてるだけ。……エリナが、暴れた鬼族を、肩を叩いて土下座させてた。何を言ったのか聞いたら、"お子さん、待ってるわよ"、って。それだけ。強いです。……ルカが、"野菜は毎日育ちます。勇者様が世界を救ってる間も、魔王様が書類を書いてる間も。収穫が遅れると、そっちの方が世界の危機です"、って。……コメントが止まって、一斉に、"それだ"、って。……僕は、今日の葉物が安いです、としか言えなかった。三十年で一番安いので。皆、買いに行こうとして、セレスさんに止められてました。……ノワールさんが、"ラスボスは負ける稽古をしておる"、って。勇者は命懸けで来るから、勝つと死ぬ。だから負ける。……レオンさんが、"では三十年前のあれは"、って。"言うな"、って。あの人、深く頭を下げてました。……優勝は、ルカ。"それが一番大事な秘密だった"、"三十年見てて気づかなかった"、って。……師匠に教わりました、って言うから、教えてません、って答えた。"毎日やってました。それが教える、ってことです"、って。じいちゃん。あの子、僕より、上手です」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。「野菜は——毎日——育ちます」、という——弟子の——その、一言が。




——この、物語の——一番——奥に——ある——ものを。





——まっすぐに——言い当てて——いたことを。


そして——それを——聞いた——虚空の——者たちが。




——なぜ——一斉に——「それだ」、と——書いたのかも。





——今は……まだ、誰も——説明——できない。

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