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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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424/447

閑話「死者蘇生、実演」

きっかけは——八一八号、だった。






——市場で。






——荷車が——倒れて——老人が——下敷きに——なった。








「——死んだぞ——!!」






「——医者を——!!」






「——もう——遅い——!!」








——だが。






——黒ずくめが——一人。






——人垣を——かき分けて——入ってきた。








「——イーッ」







——手を——かざす。







——光が——広がる。







——そして。







「……あ?」








——老人が——起き上がった。








「…………」







——市場が。






——静まり返った。








「——生き返った——!?」






「——死んで——おったぞ——!!」








「——イーッ」







——八一八号は——頭を——下げて。






——そして——去ろうと——した。








「——待て——!!」







——老人が——呼び止めた。







「——いくらだ——!!」








「——イー」







——八一八号は——首を——振った。







——そして——行ってしまった。








「——ただ——だと——!?」









## 賢者






——噂は——一日で——広がった。







——そして——ミネルが——工房に——駆け込んできた。








「——田中——!!」






「——どうしました」






「——死者が——蘇るそうだ——!!」








「——知ってましたよ」







「…………は?」








「——三十年——前から——ありました」







「——なぜ——言わぬ——!!」








「——聞かれなかったので」







「——お前も、か——!!」








——ミネルは——絶叫した。







「——会わせろ——!!」






「——落ち着いて——ください」








「——三十年——研究して——おったのだぞ——!!」







——彼は——目を——血走らせていた。







「——"死とは——何か"、を——だ——!!」






「——それが——目の——前に——あったのか——!!」








「…………」









## 企画






——そこへ——セレスが——現れた。








「——面白そうですね——!!」






「——セレスさん」






「——やりましょう——!!」








「——何をですか」






「——実演です——!!」








——彼女は——札を——掲げた。








*——【特別——生配信】*





*——「死者蘇生——実演」*








「——駄目です——!!」







——誠が——止めた。







「——なぜですか——!!」






「——死体を——使うんですよね——!!」








「——ご遺族の——許しは——いただきます——!!」






「——それでも——!!」








「——田中」







——ミネルが——低く——言った。







「——なんですか」






「——一つ——考えて——みよ」








——彼は——真剣な——顔を——していた。







「——四万——六千の——名を——彫ったな」








「——彫りました」






「——もし——蘇せたら——どうする」








「…………」







——誠は。






——動きを——止めた。








「——できるんですか」






「——分からぬ」








——ミネルは——首を——振った。







「——だから——調べるのだ」






「——どこまで——できるかを、だ」








「…………」







「——分かりました」







——誠は——頷いた。







「——ただし——条件が——あります」








「——なんだ」






「——お一人ずつ——名前を——読み上げて——ください」








「…………」







「——"検体"、じゃ——ないので」








「…………」







——ミネルは。






——深く——頷いた。








「——約束する」









## 当日






——広場に——高座が——組まれた。







——出演は——五名。







——八一八号。聖女ルナ。魔王。ミネル。セレス。








「——皆さーん——!!」







——セレスが——虚空に——向かった。







「——本日は——特別——回です——!!」






「——題して——"死者蘇生——実演"——!!」








「——コメント——来てます——!!」






「——読め——!!」








「——"何を——始めるんだ"——!!」






「——"待って"——!!」






「——"倫理"——!!」








「——荒れて——おるな」







——ミネルが——ぼやいた。









## 一、死とは何か






「——まず——死とは——何か、だ」







——ミネルが——切り出した。







「——我が——示そう」








——魔王が——立ち上がった。







「——何を——されるんですか」






「——死んで——みせる」








「——待って——ください——!!」







——誠が——止めたが。







「——四天王——!!」






「——はっ——!!」








「——刻め」







「——承知——!!」








「——待って——!! 待って——ください——!!」









——ここから——先は。






——描写を——控える。







——ただ——申し添えて——おくと。







——四天王は——非常に——手際が——よかった。








「——うわああああ——!!」







——広場の——半分が——顔を——覆った。







「——コメント——!!」






「——読まなくて——いいです——!!」








「——"うわ"——!!」






「——"見るのやめる"——!!」






「——"配信——止まれ"——!!」








「——読まなくて——いいです——!!」









——五分。







——そして。







——ずるり。







「…………」








——各部位が。






——動き始めた。







——そして——這い寄って。






——組み上がって。







——元の——魔王に——戻った。








「——このように、だ」







——彼は——けろり、と——言った。








「——大丈夫ですか——!!」






「——痛くは——ある」








「——やめて——ください——!!」








「——素晴らしい——!!」







——ミネルが——飛び上がった。







「——魔王殿——!! 死んで——おった、時の——意識は——!!」








「——ない」






「——では——"死んで"、おったのか——!!」








「——分からぬ」







——魔王は——首を——傾げた。







「——気づけば——戻って——おる」








「——記録せよ——!!」






「——記録して——おります——!!」








「——コメント——落ち着きました——!!」







——セレスが——報告した。







「——なんと——書いてある——!!」






「——"見なきゃよかった"、"でも見た"、"魔王すごい"、って——!!」









## 二、八一八号






「——次だ——!!」







——ミネルが——身を——乗り出した。







「——八一八号殿——!!」






「——イーッ」








——まず——魚が——用意された。







——市場で——売られていた——ものである。







——完全に——死んでいる。








「——イーッ——!!」







——光が——広がった。







——そして。







——ぴちぴち——!!








「——跳ねた——!!」






「——生き返った——!!」








「——コメント——!!」






「——"やらせ"、"手品"、"仕込み"、って——!!」








「——疑われて——おるぞ」







——魔王が——言った。







「——では——次だ——!!」








——次に——運ばれてきたのは。






——首と——胴が——離れた——犬、だった。








「——待って——ください——!!」







——誠が——叫んだ。







「——どうしたんですか——それ——!!」






「——荷車に——轢かれたのだ」








——ミネルが——静かに——言った。







「——飼い主が——泣いて——おった」






「——それで——連れてきたのだ」








「…………」







「——イーッ——!!」








——八一八号が——手を——かざした。







——光。







——そして。







——首と——胴が。






——引き合って——繋がった。








「…………」







「——わん」








——犬が——立ち上がった。







——そして——尻尾を——振って。







——八一八号の——足に。







——小便を——した。








「——イ——!?」








「——うわああ——!!」







——広場が——爆発した。








「——コメント——読めません——!!」







——セレスが——叫んだ。







「——一つだけ——読めました——!!」






「——なんだ——!!」








「——"犬——ひどい"、って——!!」








「——素晴らしい——!!」







——ミネルは——それどころでは——なかった。







「——完全に——繋がった——!!」






「——傷跡も——ない——!!」






「——記録せよ——!!」









## 三、聖女






「——では——本題ですわ」







——ルナが——立ち上がった。







——広場に——十の——寝台が——並べられていた。








「——待って——ください」







——誠が——前に——出た。







「——先に——お名前を」








「——うむ」







——ミネルが——帳面を——開いた。







——そして——一人ずつ——読み上げた。








「——ハーレム殿。八十四歳。三日——前」






「——ミナ殿。三十一歳。五日——前」






「——トール殿。六十二歳。十日——前」








——古い——骨も——あった。







「——名は——分からぬ」







——ミネルが——静かに——言った。







「——三十年——前の——墓から——ご遺族の——許しを——得て——お借りした」








「——ありがとう——ございます」







——誠が——頭を——下げた。








「——では——参りますわ」









——ルナが——両手を——かざした。







——広場が——白く——染まった。







——四百年、分の——力、だった。








「…………」







——光が——引くと。







「——動いた——!!」








——五分——前に——死んだ——者が——起き上がった。







——一時間——前も。






——一日——前も。







——そして。







「…………」







——五日——前の——女が。






——ゆっくりと——身を——起こした。








「…………ここは」








「——うおおおおお——!!」







——広場が——爆発した。








「——五日——!!」






「——五日——前でも——戻るのか——!!」








「——ミナ——!!」







——人垣から——男が——飛び出した。







「——あなた?」






「——ミナ——!!」








「…………」







——広場が。






——泣き声で——満ちた。









——だが。






——十日——前と——古い——骨は。






——動かなかった。








「…………」







「——駄目ですわ」







——ルナが——手を——下ろした。







「——限界は——五日、ですのね」








「——今——分かったんですか」







——誠が——尋ねると。






——ルナは——頷いた。








「——四百年——試して——おりませんでしたの」







「——なぜ——ですか」








「——怖かったんですわ」







——彼女は——ぽつり、と——言った。







「——駄目だ、と——分かるのが」








「…………」







「——ですが——今日——分かりましたわ」







——ルナは——顔を——上げた。







「——五日なら——間に——合いますの」








「…………」







——ミネルが。






——震えていた。








「——聖女殿——!!」






「——なあに」






「——地元の——者も——蘇りましたぞ——!!」








「…………」







——ルナが。






——固まった。







「——え?」






「——ミナ殿は——この、世界の——生まれだ——!!」








「…………」







「——四百年——できませんでしたのに」








「——五日——以内を——試して——おらぬのでは——ないか——!!」







——ミネルが——叫んだ。








「…………」







——ルナは。






——長い、こと——黙って。






——そして——顔を——覆った。








「——遺体は——皆——運ばれてくるのですわ」







——彼女は——かすれた——声で——言った。







「——何日も——歩いて」






「——着く、頃には——十日——過ぎて——おりますの」








「…………」







「——だから——四百年——一度も」








「…………」







——広場が。






——静まり返った。








「——ルナさん」







——誠が——静かに——言った。







「——竜が——三十七頭——います」








「…………え?」






「——一番——遠い——里まで——半日です」








「…………」







「——五日——あれば——往復——できます」








「…………」







——ルナは。






——顔を——上げた。







——目が——真っ赤、だった。








「——間に——合いますの?」






「——合います」








「…………」







「——コメント——!!」







——セレスが——泣きながら——叫んだ。







「——全部——止まりました——!!」






「——それから——一斉に——"はやく"、って——!!」









## 副産物






——実演の——後。






——妙な、ことが——分かった。








「——治って——おります」







——ルナが——蘇った——者を——診て——言った。







「——何が——ですか」






「——全部ですわ」








——彼女は——帳面を——めくった。







「——この、方は——血の——病でしたの」






「——この、方は——腹に——腫れが」






「——この、方は——心を——病んで——おられましたわ」








「——今は?」






「——全員——健康ですわ」








「…………」







「——なんだと——!?」







——ミネルが——飛び上がった。







「——蘇生は——身体を——元に——戻しますの」








——ルナが——静かに——言った。







「——ですから——病も——消えますのよ」








「——それは——大事な、ことです——!!」







——誠が——叫んだ。







「——え?」






「——治らない——病気の——方が——たくさん——います——!!」








「——ですが——一度——死なねば——なりませんわ」






「…………」








「——それは——駄目です」







——誠が——首を——振った。







「——なぜですの」






「——五日を——過ぎたら——戻れません」








「——それは——そうですけれど」






「——賭けさせられません」








「…………」







「——だが——本人が——望んだら——どうする」







——ミネルが——低く——言った。







「——治らぬ——病で——苦しんで——おる——者が、だ」








「…………」







——誠は。






——長い、こと——黙って。






——そして——言った。








「——決めるのは——僕じゃ——ないですね」








「…………」







「——ご本人と——ご家族です」







——誠は——静かに——言った。







「——僕は——反対だと——伝えます」






「——でも——止めません」








「…………」









## 値段






——ちなみに。






——お布施の——値段については。






——実演で——理由が——明かされた。








「——なぜ——下げたんですか」







——セレスが——尋ねると。






——ルナは——夫を——指した。








「——この、人が——ただで——やってしまいますの」







「——イ——!?」








「——市場でも——路地でも——どこでも」







——ルナは——ため息を——ついた。







「——値を——つけても——意味が——ありませんわ」








「——コメント——!!」






「——"それが——理由か"、"納得"、"八一八号——強い"、って——!!」








「——イーッ——!!」







——本人は——うろたえていた。









## 要望





——そして——最後に。






——妙な——議題が——出た。








「——皆さん——!! 要望が——来てます——!!」







——セレスが——札を——掲げた。







「——なんですか」






「——"回収の——蘇生を——再開して——ほしい"、って——!!」








「——駄目です——!!」







——誠が——即座に——言った。







「——ですが——契約書に——ございますわ」








——ルナが——束を——広げた。








*——第七条 回収は——完済——または——死亡まで——行う*





*——第八条 死亡の——場合は——蘇生の——うえ——第七条に——戻る*





*——第九条 完済の——場合は——完全回復を——施す*








「——最初から——書いて——おりますの」







——ルナは——澄まして——言った。







「——一度も——隠して——おりませんわ」








「——知ってます」







——誠は——認めた。







「——読んでますし——説明も——されてます」






「——でしょう?」








「——でも——僕が——止めました」







「——ええ」








——ルナは——ため息を——ついた。







「——あなたが——"死ねぬ——者が——おるかも——しれぬ"、と——おっしゃいましたので」







「——止めましたの」








「…………」







「——ですが——それで——困った——方が——おりますの」








「——誰ですか」






「——読み上げますわ」








——ルナは——手紙の——束を——開いた。








*——「わしは——腹に——腫れが——ある。医者に——匙を——投げられた」*





*——「借りて——回収されれば——治ると——聞いた」*





*——「頼む」*








「…………」







*——「息子が——三年——寝たきりです」*





*——「一度——死なせて——いただけませんか」*








「…………」







——広場が。






——静まり返った。








「——何通——ですか」







——誠が——尋ねると。






——ルナは——静かに——言った。








「——四百二十通」








「…………」







「——止めてから——三月ですわ」








「…………」







——誠は。






——長い、こと——黙っていた。








「——田中」







——ミネルが——低く——言った。







「——お前は——正しかった」






「——だが——正しさが——邪魔に——なる、ことも——ある」








「…………」







「——分かってます」







——誠は——うつむいた。









## 切り分け






——だが——彼は——顔を——上げた。








「——一つ——伺います」






「——どうぞ」








「——なぜ——借金なんですか」








「…………え?」







——ルナが——きょとん、と——した。







「——治療なら——直接——やればいいですよね」








「——ですが——蘇生は——契約に——基づくものですわ」







「——それは——回収の——契約です」








——誠は——静かに——言った。







「——治療の——契約を——作れば——いいだけです」








「…………」







——ルナが。






——固まった。







「——考えて——おりませんでしたわ」








「——皆さんも、です」







——誠は——手紙を——指した。







「——"借りて——回収されれば——治る"、って——書いてあります」






「——回り道です」








「…………」







「——それに」







——誠は——続けた。







「——回収の、時は——五人が——殴ります」






「——痛いです」






「——しかも——何度も——死にます」








「——ですが——それが——契約ですの」







「——治療なら——一度で——済みます」








「…………」







「——静かに——眠って——いただいて」







——誠は——静かに——言った。







「——そのまま——戻って——いただきます」








「…………」







——ルナは。






——長い、こと——黙って。






——そして——ぼそり、と——言った。








「——なぜ——四百年——思いつかなかったのかしら」








「——五日を——知らなかったからです」







——誠が——答えた。








「…………」







「——今日——分かりました」







——彼は——微笑んだ。







「——だから——今日から——できます」









## 決定






——結論は——こうなった。








*——一、回収の——契約は——そのまま*





*——(第七条〜第九条は——元から——ある——ものゆえ——変えぬ)*







*——二、ただし——回収は——原則——労働で——行う*





*——(借り手が——選べる)*







*——三、治療としての——蘇生を——新たに——始める*





*——(借金とは——別。費用は——なし)*







*——四、蘇生できぬ——者が——おるゆえ*





*——事前に——聖女が——見立てる*








「——四つ目は——なんですの」







——ルナが——尋ねた。







「——僕みたいな——人です」








——誠は——静かに——言った。







「——蘇生できない——型の——方が——いるかも——しれません」






「——先に——見て——ください」








「——見分けが——つきますかしら」






「——僕を——見た、時——分かりましたよね」








「……ええ」







——ルナは——頷いた。







「——"見た、ことが——ない——型"、だと——分かりましたわ」








「——なら——できます」









## 契約書






——ちなみに。






——回収の——契約書は——そのまま——残った。








「——消さないんですか」







——誠が——尋ねると。






——ルナは——首を——振った。








「——消しませんわ」






「——なぜですか」






「——書いて——ある、から——効くのですわ」








——彼女は——にっこりと——笑った。







「——皆様——第八条を——読んで——おられますの」






「——だから——きちんと——お返しに——なりますわ」








「——脅しじゃ——ないですか——!!」






「——明示ですわ」








「…………」







「——それに」







——ルナは——ぽつり、と——言った。







「——隠して——おりませんもの」






「——最初から——全部——書いて——おりますわ」








「…………」







——誠は。






——しばらく——考えて。






——そして——頷いた。








「——それは——正しいです」






「——でしょう?」








「——ただし——一つ——足して——ください」







「——何を——ですの」








「——第十条です」







——誠は——紙に——書いた。








*——第十条*





*——借り手は——回収の——方法を——選べる*





*——(労働——または——第七条)*








「——選ばせますの?」






「——選ばせます」








——誠は——きっぱりと——言った。







「——皆——労働を——選びますわよ」






「——それで——いいです」








「——では——意味が——ありませんわ」






「——あります」








——誠は——静かに——言った。







「——"選べた"、というのが——大事です」








「…………」







——ルナは。






——長い、こと——黙って。






——そして——筆を——取った。








「——書きますわ」









## 後日






——三月、後。







——治療としての——蘇生が——始まった。







——初日に——並んだのは——四百二十人。








「——多いですね——!!」







——誠が——驚いた。







「——三月——お待たせしましたもの」








——ルナが——澄まして——言った。







「——それと——見立ての、方は」








「——三人——おりましたわ」







——彼女は——静かに——言った。







「——三人?」






「——あなたと——同じ——型ですの」








「…………」







——誠の。






——動きが——止まった。








「——いるんですか」






「——おりましたわ」








——ルナは——頷いた。







「——お断りしましたの」






「——"あなたは——戻れません"、と」








「…………」







「——どんな——方ですか」








「…………」







——ルナは。






——しばらく——黙って。






——そして——言った。








「——お一人は——ハラムの——里の——方ですわ」







「——ハラム——!?」








「——ネイル、と——おっしゃいましたわ」








「…………」







——誠は。






——固まった。







「——魔術師の——方ですよね」






「——ええ」








「——他の——お二人は」






「——お一人は——サディム殿」








「——第一番の——里の——!!」






「——ええ」








「——もう——お一人は」








「…………」







——ルナは。






——誠を——じっと——見た。







——そして——静かに——言った。








「——ルカ殿ですわ」








「…………」







——誠は。






——長い、こと——動かなかった。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「(前略)……最後に、回収の蘇生を再開してほしい、という要望が出た。駄目です、って言ったら、ルナさんが、"契約書にございますわ"、って。第七条から第九条。最初から書いてあって、一度も隠してない。……知ってます。読んでますし、説明もされてます。でも、僕が止めました。"死ねぬ者がおるかもしれぬ"、と言ったので。……で、それで困った方が、四百二十人いた。手紙を読み上げられた。"腹に腫れがある。医者に匙を投げられた。借りて回収されれば治ると聞いた。頼む"。"息子が三年寝たきりです。一度死なせていただけませんか"。……三月で、四百二十通。……ミネルさんが、"お前は正しかった。だが、正しさが邪魔になることもある"、って。分かってます。……でも、一つ聞いた。なぜ借金なんですか、って。治療なら、直接やればいい。回収の契約でやる必要は、ない。治療の契約を作ればいいだけです、って。……ルナさん、"考えておりませんでしたわ"、って。皆さんも、です。"借りて回収されれば治る"、って、回り道です。……それに、回収だと五人が殴るし、何度も死ぬ。治療なら一度で済む。静かに眠っていただいて、そのまま戻っていただきます。……"なぜ四百年思いつかなかったのかしら"、って。五日を知らなかったからです。今日、分かりました。だから、今日からできます。……決まったのは四つ。回収の契約はそのまま。ただし回収は原則、労働で。治療としての蘇生を新たに始める、費用なし。そして、蘇生できない型がいるので、事前に聖女が見立てる。……契約書は消さないそうだ。"書いてあるから効くのですわ。皆様、第八条を読んでおられますの"、って。脅しじゃないですか、って言ったら、"明示ですわ。隠しておりませんもの"、って。……それは正しいです。ただし、第十条を足してもらった。"借り手は回収の方法を選べる"。皆、労働を選びますわよ、って言われたけど、それでいいです。"選べた"、というのが大事です。……三月後、治療が始まった。初日に四百二十人。……そして、見立てで、三人、断られた方がいた。僕と同じ型。……ネイルさん。サディムさん。……そして、ルカ。……じいちゃん。あの子も、一度きり、でした」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。「戻れぬ——型」、の——者が。




——なぜ——この、三人だったのかを。


そして——四人に——共通する——たった一つの——ことが。




——何で——あったのかも。





——今は……まだ、誰も——気づいて——いない。

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