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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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421/447

閑話「回収率、百パーセント」

聖女ルナの——資金運用所は。





——第七層で——大変な——評判、だった。








*——【聖女——資金——運用所】*





*——十日で——一割*





*——審査——甘め*





*——即日——融資*





*——回収率——百パーセント*








「——最後が——不穏です」







——誠が——札を——見上げた。







「——実績ですわ」








——ルナが——にっこりと——笑った。







「——一件も——焦げ付いて——おりませんの」






「——四百年——ですか」








「——始めたのは——三年——前ですわ」







「——それでも——すごいです」









## 評判






——利用者の——評判は——良かった。








「——聖女様は——優しい」






「——三日で——貸して——くれた」






「——事情も——聞かれん」








「——皆さん——褒めてますね」







——誠が——感心した。







「——当然ですわ」








「——返済も——順調——ですか」






「——皆様——きちんと——お返しに——なりますの」








——ルナは——澄まして——言った。







「——特に——二度目の——方が」








「——二度目?」






「——ええ」








「——一度——借りた——方が——また——借りるんですね」






「——そうですわ」








「——信頼されてますね」






「——ええ」








——ルナは——微笑んだ。







「——二度目の——方は——期日を——一日も——遅れませんの」








「——律儀ですね」






「——律儀ですわ」









## 提携先






——奥に——札が——貼ってあった。








*——【回収——業務——委託先】*





*——「専門——五名」*








「——外注——してるんですか」






「——ええ」








「——どんな——方々ですか」






「——全身——黒い——衣ですわ」








——ルナは——けろり、と——言った。







「——顔も——隠して——おられますの」






「——怪しいです——!!」








「——真面目な——方々ですわ」







——ルナは——首を——振った。







「——遅刻を——なさいませんの」






「——報告書も——きちんと——出されますわ」








「——それは——立派ですね」






「——でしょう?」









## 報告書






——ちなみに——報告書は——妙に——丁寧、だった。








*——【本日の——回収——報告】*






*——対象:一名*





*——所要:半刻*





*——結果:完済*





*——備考:先方に——謝罪あり。当方も——謝罪*








「——お互いに——謝ってますね」







——誠が——読み上げた。







「——礼儀正しい——方々ですの」








「——次の——頁は」








*——対象:一名*





*——所要:三日*





*——結果:完済*





*——備考:途中——四回——蘇生*








「…………」







「——ルナさん」






「——なあに」






「——蘇生、って——書いてあります」








「——ええ」






「——四回、です」








「——大変でしたわ」







——ルナは——ため息を——ついた。







「——三日で——四回ですもの」








「——そこ——ですか——!!」









## 現場






——誠は——確かめに——行った。







——路地の——奥。







「——お邪魔します」








「——どうぞ——!!」







——黒ずくめが——五人。






——きちんと——並んで——礼を——した。








「——礼儀正しいですね」






「——当然だ——!!」








——だが——その——足元では。







「——うぐ……」







——男が——一人——倒れていた。








「——何を——されてるんですか——!!」






「——回収だ——!!」








「——回収に——見えません——!!」






「——契約書に——書いて——ある——!!」








——一人が——紙を——広げた。








*——第七条*





*——回収は——完済——または——死亡まで——行う*







*——第八条*





*——死亡の——場合は——蘇生の——うえ——第七条に——戻る*








「——無限じゃ——ないですか——!!」







「——第九条を——見よ——!!」








*——第九条*





*——完済の——場合は——完全回復を——施す*





*——傷は——一切——残らぬ*








「——優しいであろう——!!」







——黒ずくめが——胸を——張った。







「——優しくは——ないです——!!」








「——傷が——残らぬのだぞ——!!」






「——記憶は——残ります——!!」








「…………」







——五人が。






——顔を——見合わせた。








「——そこが——肝だ——!!」






「——肝——!?」








「——記憶が——残るゆえ——二度目は——きちんと——返す——!!」







——一人が——真面目な——顔で——言った。







「——ゆえに——回収率が——百なのだ——!!」








「——それ——恐怖じゃ——ないですか——!!」






「——信頼だ——!!」








「——違います——!!」









## 借り手






——だが。






——倒れていた——男が——起き上がった。








「——いや——待って——くれ」







「——大丈夫ですか——!!」








「——わしが——悪いのだ」







——男は——ぼそり、と——言った。







「——三月——踏み倒した」








「——ですが——これは——!!」






「——それに——な」








——男は——五人を——見た。







「——この、方々」






「——毎回——飯を——食わせて——くださる」








「…………は?」







「——腹が——減っては——痛みに——耐えられぬ、と」








「——意味が——分かりません——!!」








「——当然の——配慮だ——!!」







——黄色の——気配の——する——一人が——鍋を——出した。








「——なぜ——鍋を——持ってるんですか——!!」






「——回収は——長引くゆえ——!!」








「——だから——鍋を——!!」









——ちなみに。






——その——鍋は——紫に——光っていた。








「——それ——食べられるんですか」






「——三日——眠れぬ——!!」








「——拷問です——!!」






「——うまいがな——!!」








「——うまいです」







——男が——頷いた。







「——認めないで——ください——!!」









## 追加






——さらに。






——桃色の——気配の——する——一人が——前に——出た。








「——お身体を——拝見します」






「——あ、どうも」








——彼女は——男の——脈を——取った。







「——血の——巡りが——悪うございます」






「——そうですか」








「——野菜を——召し上がって——おられますか」






「——あまり」








「——いけません」







——彼女は——真剣な——顔を——した。







「——次回までに——改善を」






「——はい」








「——次回が——ある——前提ですか——!!」









## 抗議






「——ルナさん——!!」







——誠が——教会に——駆け込んだ。







「——あら」






「——あれは——駄目です——!!」








「——皆様——満足して——おられますわ」







「——満足——してません——!!」








「——では——これを」







——ルナが——束を——差し出した。







「——なんですか」






「——お客様の——声ですわ」








*——「二度と——借りぬと——誓った。おかげで——貯金が——できた」*





*——「回収の——方々が——親切だった。飯まで——くださった」*





*——「健康の——助言まで——いただいた。血の——巡りが——よくなった」*





*——「星五つ」*








「——評価が——高い——!!」






「——でしょう?」








「——でも——おかしいです——!!」






「——どこがですの」








「——四回——死んでますよね——!!」






「——戻して——おります」








「——それを——死ぬ、って——言うんです——!!」






「——では——何と——申しますの」








「——死ぬ、です——!!」









## 妥協






——半刻の——押し問答の——末。







「——分かりましたわ」







——ルナが——折れた。







「——やめて——くださいますか——!!」






「——一度に——します」








「——回数の——問題じゃ——ないです——!!」








「——では——どうしろと——!!」







「——働いて——もらいましょう」








——誠が——言った。







「——弓の——現場が——人手不足です」






「——日当を——ルナさんに——回します」








「——遅うございますわ」






「——遅いです」








——誠は——認めた。







「——でも——死にません」








「…………」







——ルナは。






——ため息を——ついた。







「——仕方——ありませんわね」









## 五人






——だが——問題が——残った。








「——我らの——仕事が——なくなる——!!」







——五人が——うろたえた。







「——他に——お仕事は」






「——ない——!!」








「——なぜ——ですか」






「——我らは——五人——揃って——おらねば——ならぬ——!!」








「——なぜ——ですか——!!」






「——決まりだ——!!」








「…………」







——誠は。






——しばらく——考えて。






——そして——言った。








「——では——里回りを——お願いできませんか」







「——里回り——!?」








「——五人——揃って——行って——ください」







「——何を——する——!!」








「——名前を——聞いて——きて——ください」








「…………」







——五人が。






——顔を——見合わせた。








「——それだけか——!!」






「——それだけです」








「——殴らぬのか——!!」






「——絶対に——殴らないで——ください」








「——ぬう」







——一人が——うめいた。







「——だが——飯は——出して——よいか」








「——出して——ください」






「——健康の——助言は」






「——それも——どうぞ」








「——ならば——やる——!!」









## 後日






——里の——広場で。







「——お名前を——伺いたい——!!」







——黒ずくめが——五人——並んでいた。







「——ひいっ——!!」








「——なぜ——怖がる——!!」






「——見た目です——!!」








——だが——三月、後。







「——黒いの——来たぞ——!!」






「——今日は——飯を——持ってきたか——!!」








「——持ってきた——!!」






「——わーい——!!」








「——馴染んでますね」







——誠が——感心した。







「——飯が——効くのだ——!!」








「——紫のは——出さないで——くださいね」






「——出して——おらぬ——!!」








「——本当ですか」






「——薄めて——おる——!!」








「——薄めても——駄目です——!!」









## そして






——半年で。






——五人は——四千の——名を——集めてきた。








「——多いですね——!!」







——誠が——驚いた。







「——五人——おるからな——!!」








「——ありがとう——ございます」






「——礼は——要らぬ——!!」








「——それと——一つ——伺っても——いいですか」







「——なんだ——!!」






「——皆さん——どちら様ですか」








「…………」







——五人が。






——固まった。








「——名乗る——ほどの——者では——ない——!!」






「——それ——カゲさんの——台詞です」








「——ぬう——!!」







「——教えて——くれませんか」








「——駄目だ——!!」







——赤い——気配の——する——一人が——きっぱりと——言った。







「——なぜですか」






「——恥だからだ——!!」








「…………」







「——分かりました」







——誠は——素直に——引いた。







「——聞きません」






「——うむ——!!」








「——でも——一つだけ」







——誠は——微笑んだ。







「——なんだ——!!」






「——恥じゃ——ないと——思います」








「…………」







「——四千——集めましたよね」








「…………」







「——立派な——お仕事です」








「…………」







——五人は。






——長い、こと——黙って。






——そして——揃って——顔を——背けた。








「——帰る——!!」






「——照れてますね」






「——照れて——おらぬ——!!」









——ちなみに。






——教会には——今も——札が——貼ってある。








*——【聖女——資金——運用所】*





*——十日で——一割*





*——回収は——労働で*





*——回収率——百パーセント*








「——まだ——百パーセント——ですか」







——誠が——尋ねると。






——ルナは——にっこりと——笑った。








「——皆様——働いて——おられますもの」






「——逃げないんですか」








「——一人も」







——ルナは——ぽつり、と——言った。







「——なぜでしょうね」








「——名前を——聞いてますから」







——誠が——けろり、と——言った。








「…………」







「——あなた」







——ルナは——妙な——顔を——した。







「——やっぱり——怖い——方ですわ」






「——八百屋ですから」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「ルナさんの資金運用所が、評判だった。審査が甘くて、即日融資で、事情も聞かれない。皆さん、褒めてました。……"回収率百パーセント"、って書いてあるので、順調ですね、って言ったら、"特に二度目の方が。期日を一日も遅れませんの"、って。律儀ですね、って答えた。……回収は外注してるらしい。全身黒い衣で顔を隠した五人組。怪しいです、って言ったら、"真面目な方々ですわ。遅刻をなさいませんの。報告書もきちんと出されますわ"、って。……その報告書に、"途中四回蘇生"、って書いてあった。ルナさんが、"大変でしたわ。三日で四回ですもの"、って。そこですか。……現場を見に行ったら、契約書の第七条に、"完済または死亡まで"、第八条に、"死亡の場合は蘇生のうえ第七条に戻る"、第九条に、"完済の場合は完全回復"、って。……傷は残らない。でも、記憶は残る。だから二度目はきちんと返す。それで回収率が百。恐怖じゃないですか、って言ったら、"信頼だ"、って。違います。……でも、借り手の人が、"わしが悪いのだ。三月踏み倒した。それに、この方々、毎回飯を食わせてくださる"、って。腹が減っては痛みに耐えられぬ、と。意味が分かりません。……しかも鍋が紫に光ってた。三日眠れぬ、って。拷問です。でも、"うまいです"、って、借り手の人が認めてた。……桃色の一人が、脈を取って、"血の巡りが悪うございます。野菜を召し上がって"、って助言までしてた。次回がある前提ですか。……抗議したら、"お客様の声"、を見せられた。星五つ。評価が高い。おかしいです。四回死んでますよね。……押し問答の末、働いてもらう形に変えてもらった。弓の現場が人手不足なので。……五人の仕事がなくなるので、里回りをお願いした。五人揃って、名前を聞いてきてください、って。"殴らぬのか"、"絶対に殴らないでください"、"だが飯は出してよいか"、"出してください"、"健康の助言は"、"それもどうぞ"、"ならばやる"、って。……三月で、里に馴染んでた。"黒いの来たぞ"、"今日は飯を持ってきたか"、って。紫のは出さないでくださいね、って言ったら、"薄めておる"、って。駄目です。……半年で四千の名を集めてきた。どちら様ですか、って聞いたら、"名乗るほどの者ではない"、"恥だからだ"、って。……分かりました、聞きません。でも、恥じゃないと思います。四千、集めましたよね。立派なお仕事です、って言ったら、揃って顔を背けて、"帰る"、って。照れてました。……ルナさんが、"皆様、働いておられますもの。一人も逃げませんの。なぜでしょうね"、って。名前を聞いてますから、って答えた。……"あなた、やっぱり怖い方ですわ"、って。八百屋ですから。じいちゃん、今日も、平和でした」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。「恥だから——名乗れぬ」、と——言った——五人が。




——なぜ——里回りだけは——一度も——休まなかったのかを。


そして——彼らが——黒い——衣の——下に——着ている——ものを。




——一度も——脱がなかった——理由も。





——今は……まだ、着て——いる——本人たちしか——知らない。

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