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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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閑話「第三回、全部ランダム」

三日目の——夕方。





——八体が——歩き去ろうと——した——その、時。







——人工太陽が。






——ぐるり、と——色を——変え始めた。








——青。紫。緑。橙。







「…………」







——荒野の——全員が——空を——見上げた。








「——嫌な——予感が——する」






「——僕もです」








*——【第三回】*





*——【全部——ランダム——シャッフル——イベント】*





*——【対象:職業・種族・年齢・性別・属性・役職】*





*——【および——ラスボス・主人公】*





*——【三日間——連続。八刻ごとに——再抽選】*








「——長い——!!」







——ミネルが——絶叫した——その、瞬間。







——ぴかっ。









## 第一回抽選






「——きゃあああ——!!」







——最初の——悲鳴は——ミネル、だった。







——七つほどの——女の子に——なっていた。








「——なぜ——身体が——小さい——!!」






「——年齢も——入ってましたから」








「——性別も、か——!!」






「——最悪だ——!!」









——だが。






——悲鳴を——上げている——場合では——なかった。








「——来るぞ——!!」







——見張りが——叫んだ。







「——魔物が——動き出した——!!」








「——なんだと——!?」







——ミネル(七歳)が——飛び上がった。







「——飯を——待って——おったのでは——ないのか——!!」








「——一色さん——!!」







——誠が——叫ぶと。






——ゴブリンが——ぴょんぴょん——跳ねていた。








「——ギ——!! ギギ——!!」







「——一色さん——!?」






『——"魔物も——シャッフルされてる"、って』








「——え?」






『——"あっちも——混乱してる"、って』









——確かに。






——荒野は——地獄、だった。








「——グオオオ——!?」







——ゴブリンだった——ものが。






——巨大な——竜に——なって——暴れていた。








「——飛べぬ——!! なぜ——飛べぬ——!!」







——竜だった——ものは。






——スライムに——なって——地面を——這っていた。








「——おい——!! あれは——味方か——!!」







——鬼族が——叫んだ。







「——分からぬ——!!」






「——さっきまで——鬼族だった——奴かも——しれぬ——!!」








「——では——どうする——!!」






「——分からぬ——!!」









## 混戦






——戦は——始まった。







——だが——史上——最悪の——混戦、だった。








「——覚悟——!!」







——レオンが——斬りかかった。







——だが——剣が——ない。







——手に——あったのは——鍋、だった。








「——なぜだ——!!」






「——職業が——料理人に——なってます——!!」








「——戦えぬ——!!」






「——鍋で——殴れます——!!」








「——それは——料理人では——ない——!!」









——一方。






——本物の——料理人は。







「——うおおおお——!!」







——ボンゴが——巨大な——斧を——振り回していた。







「——ボンゴさん——!?」






「——戦士に——なった——!!」








「——強いですね——!!」






「——包丁と——同じだ——!!」








「——違うと——思います——!!」









——そして——ヒカルは。







「——イーッ——!!」







——四十メートルの——身体で。






——戦闘員の——ポーズを——取っていた。








「——ヒカルさん——!! 光線は——!?」






「——イー」








『——"出ない"、って』







「——では——どうするんですか——!!」








「——イーッ——!!」







——彼は。






——四十メートルの——身体で——魔物に——組みついた。







——そして——投げた。








「——強い——!!」






「——結局——大きさが——強い——!!」









## 八刻後






——戦の——最中に。






——再抽選が——起きた。








「——待て——!!」







——レオンが——叫んだ。







「——今——組み合って——おるのだぞ——!!」








——ぴかっ。







「…………」







——組み合っていた——二人が。






——固まった。








「……あの」







「……はい」








「——今——私——オークですよね」






「——私も——オークです」








「——さっきまで——どちらでした?」






「——鬼族です」






「——私は——オークでした」








「…………」






「…………」








「——続けますか」






「——やめませんか」








「——やめましょう」









——こういう、ことが。






——荒野の——あちこちで——起きていた。








「——戦に——ならぬ——!!」







——ミネル(今度は——八十の——老婆)が——うめいた。







「——皆——手が——止まって——おる——!!」








「——なぜですか」






「——斬った——相手が——八刻後に——味方に——なるからだ——!!」








「…………」







——誠は。






——荒野を——見回した。







——確かに。







——誰も——本気で——殺しに——いっていなかった。









## 板






「——皆さーん——!!」







——セレス(鬼族の——大男)が——叫んだ。







「——役職が——出てます——!!」








*——【本日の——ラスボス】*





*——キャベゴン*








「——グオ——!?」







——野菜怪獣が——うろたえた。







「——キャベゴンさんが——ラスボス——!?」






「——グオオ——!!」








『——"どうすれば"、って』







「——たぶん——倒されます」






「——グオオオ——!?」








——そして——実際に。






——魔物の——群れが——キャベゴンに——殺到した。








「——グオオオオ——!!」







「——助けて——ください——!!」








「——待て——!! なぜ——魔物が——ラスボスを——襲うのだ——!!」







——ノワール(巨大な虎)が——叫んだ。







「——魔物の、方も——主人公が——出てるんじゃ——ないですか」








「——なんだと——!?」









*——【本日の——主人公】*





*——八一八号*








「——イ——!?」







——聖女の——姿の——八一八号が——飛び上がった。








「——八一八号さんが——主人公です——!!」






「——おおおお——!!」








「——では——ラスボスを——倒せ——!!」







——ミネル(老婆)が——叫んだ——が。







「——イー——!!」








——八一八号は。






——キャベゴンに——駆け寄って。






——そして——傷を——治し始めた。








「——治して——おる——!?」






「——ラスボスをか——!!」








「——イーッ——!!」







『——"聖女ですので"、って』








「——理由が——それか——!!」









——だが。






——妙な、ことが——起きた。







——キャベゴンを——襲っていた——魔物たちが。







——手を——止めた。








「…………」







「——止まったぞ——!?」






「——なぜだ——!!」








「——イーッ」







——八一八号が。






——魔物の——一体にも——手を——かざした。







——そして——傷を——治した。








「…………」







「——ギ?」








——治された——ゴブリンが。






——きょとん、と——した。







——そして——後ろの——群れを——振り返って。







「——ギギ——!!」








——群れが。






——引いた。








「…………」







「——収まった?」






「——収まりましたね」








「——なぜだ——!!」







——ミネルが——叫ぶと。






——誠は——ぽつり、と——言った。








「——主人公が——治したからです」








「…………」









## 二日目






——戦は——続いた。







——だが——次第に——妙な——ものに——なっていった。








「——おい——!! そこの——オーク——!!」







——鬼族が——叫んだ。







「——なんだ——!!」






「——お前——さっきまで——俺の——隣に——おった——奴か——!!」








「——そうだ——!!」






「——では——次の——抽選まで——休むか——!!」








「——そうする——!!」









——荒野の——あちこちで。






——戦いが——止まっていった。








「——戦に——ならぬ——!!」







——レオンが——嘆いた。







「——いい、ことでは——ないですか」






「——主人公補正が——効かぬ——!!」








「——今日の——主人公——ガオゴンさんですよ」






「——なんだと——!?」









*——【本日の——主人公】*





*——ガオゴン*








「——ガオ——!?」







——本人が——一番——驚いていた。







「——ガオゴンさん——戦えますか」






「——ガオ……」








『——"町を——踏まないように——歩くしか——できない"、って』








「…………」







「——それで——いいです」







——誠が——言った。







「——ガオ?」






「——皆さんを——踏まないように——歩いて——ください」








「——ガオ——!!」









——そして。






——六丈の——怪獣が。






——荒野を——ゆっくりと——歩き始めた。







——一歩ずつ。






——足元を——確かめて。







——人も——魔物も——踏まないように。








「…………」







——荒野が。






——静かに——なっていった。








「——なんだ——あれは」







——ミネルが——呆然と——した。







「——主人公です」








——誠が——静かに——言った。









## 三日目






——最後の——日。






——そして——最悪の——抽選が——来た。








*——【本日の——ラスボス】*





*——ルカ*







*——【本日の——主人公】*





*——ミネル*








「…………」







「——待て」







——ミネルが——固まった。







「——私が——ルカを——倒すのか——!!」






「——嫌です——!!」








——ルカが——叫んだ。







——だが——その、時。







——魔物の——群れが——動いた。








「——ルカに——集まって——おる——!!」







——鬼族が——叫んだ。







「——なぜだ——!!」






「——ラスボスだからです——!!」








「——ルカ——!! 逃げろ——!!」







——誠が——叫んだ。







——だが——ルカは——動かなかった。








「——師匠」






「——何を——して——おる——!!」






「——僕、逃げません」








——彼は——帳面を——抱えていた。







「——なぜだ——!!」






「——今日の——記録が——まだです」








「——そんな——場合か——!!」






「——場合です」








——ルカは——けろり、と——言った。







「——一日でも——空けたら——十六年が——切れます」








「…………」







——そして——彼は。






——魔物に——囲まれた——まま。






——空を——見上げて。






——記録を——始めた。








「——雲——なし」






「——風——弱い」






「——塵——なし」








「…………」







——魔物たちが。






——止まった。








「——止まった?」






「——なぜだ——!!」








——一体の——オーガが。






——ルカの——手元を——覗き込んでいた。








「——何を——見てるんですか」







——ルカが——尋ねると。






——オーガは——空を——指した。








「——ウ」






「——空、ですか」






「——ウウ」








『——"三十年——見てた"、って』








「…………」







——ルカが。






——固まった。







「——暑かったから、ですか」






「——ウ」








『——"いつ——影が——来るか——毎日——見てた"、って』








「…………」







——ルカは。






——帳面を——開いて。






——そして——差し出した。








「——一緒に——書きませんか」







「——ウ?」








「——僕、五十人——弟子が——要るんです」







——ルカは——微笑んだ。







「——足りてません」








「…………」







——オーガは。






——しばらく——それを——見て。






——そして——太い——指で——炭を——掴んだ。








「——ウウ——!!」








「…………」







——荒野が。






——静まり返った。








「——ミネルさん」







——誠が——呼んだ。







「——なんだ」






「——主人公、ですよね」








「——うむ」






「——何か——してください」








「…………」







——ミネルは。






——しばらく——考えて。






——そして——ルカの——隣に——座った。








「——ミネルさん?」






「——書き方を——教えてやる」








——彼は——ぶっきらぼうに——言った。







「——学者だからな」








「…………」







「——ウ——!!」









## 終了






*——【イベント——終了】*







——皆が——元に——戻った。







——魔物も。







——だが——荒野に。






——戦の——気配は——残って——いなかった。








「——結局——何だったのだ」







——ミネルが——ぼやいた。







「——三日——戦いました」








——アカリが——帳面を——めくった。







「——死者は」






「——ゼロです」








「…………」







「——十万と——三日——戦って——ゼロか——!?」






「——はい」








——アカリは——静かに——言った。







「——八刻ごとに——入れ替わりましたので」






「——皆——手加減して——おりました」








「…………」







——ノワールが。






——ふと——言った。







「——待て」






「——なんですか」








「——九回——抽選が——あった、な」






「——ありましたね」








「——ラスボスと——主人公が——毎回——変わった」







——彼は——誠を——見た。







「——だが——貴殿は——一度も——出て——おらぬ」








「…………」







「——職も——種族も——年も——性別も、だ」







——一色が——帳面を——閉じた。







「——九回とも」






「——魔物まで——混ざったのに」








「…………」







——誠は。






——自分の——手を——見た。








「——じいちゃんが——言ってました」






「——また——それか——!!」








「——"くじは——引かなきゃ——当たらん"、って」







——誠は——空を——見上げた。







「——僕、たぶん——箱に——入ってないんです」








「…………」









——その、夜。







『——十一号から——伝言』







——十二番が——揺れた。







「——なんですか」








『——"箱に——入ってない、と——言うたな"、って』








「——聞いてたんですね」






『——"当たり前や"、って』








「——神様——ですか」






『——ううん。……違う——誰か』








「——他には」








『…………』







『——"そら——そうや"』







『——"お前は——引く——側や"』








「…………」







「——もう一つ——聞いて——ください」








『——なに』






「——"三日で——死者が——ゼロでした"、って」








『…………』







——長い——沈黙が——あった。







——そして。







『——"知っとる"、って』








「——他には」








『——"そういう——世界は——初めてや"、って』








「…………」







——誠は。






——長い、こと——空を——見上げていた。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「魔物が帰ろうとした瞬間、第三回が始まった。職業、種族、年齢、性別、属性、役職。おまけに、ラスボスと主人公まで。三日連続、八刻ごとに再抽選。……しかも、その最中に、戦が始まった。魔物も、シャッフルされてた。ゴブリンが竜になって暴れて、竜がスライムになって這ってた。……レオンさんが料理人になって剣が鍋になり、ボンゴさんが戦士になって斧を振り回してた。"包丁と同じだ"、って。違うと思います。……八刻後の抽選が、組み合ってる最中に来た。二人とも、オークになってた。"さっきまでどちらでした?"、"鬼族です"、"私はオークでした"、"続けますか"、"やめませんか"、"やめましょう"、って。……こういうことが、あちこちで起きた。ミネルさんが、"戦にならぬ。斬った相手が八刻後に味方になるからだ"、って。……ラスボスがキャベゴンさんになって、魔物に襲われてた。主人公が八一八号さんで、駆け寄って——治し始めた。ラスボスを。"聖女ですので"、って。……それから、襲ってた魔物も治した。治されたゴブリンが、群れを振り返って、"ギギ"、って。群れが、引いた。……二日目、主人公がガオゴンさんになった。戦えますか、って聞いたら、"町を踏まないように歩くしかできない"、って。それでいいです、皆さんを踏まないように歩いてください、って言った。……六丈の怪獣が、一歩ずつ足元を確かめて、荒野を歩いた。人も魔物も踏まないように。荒野が、静かになった。……三日目、ルカがラスボス、ミネルさんが主人公。魔物がルカに殺到した。逃げろ、って叫んだのに、あの子、"逃げません。今日の記録がまだです。一日でも空けたら、十六年が切れます"、って。……そして、囲まれたまま、空を見上げて、記録を始めた。雲なし、風弱い、塵なし。……魔物が、止まった。オーガが一体、手元を覗き込んでた。何を見てるんですか、って聞いたら、空を指して、"三十年、見てた。いつ影が来るか、毎日見てた"、って。……ルカが、帳面を差し出して、"一緒に書きませんか。僕、五十人、弟子が要るんです。足りてません"、って。……オーガが、太い指で、炭を掴んだ。……ミネルさんに、主人公なんだから何かしてください、って言ったら、ルカの隣に座って、"書き方を教えてやる。学者だからな"、って。……終わって、アカリさんが数えた。三日、戦って、死者はゼロ。八刻ごとに入れ替わったので、皆、手加減してた、って。……ノワールさんが、"九回抽選があったのに、貴殿は一度も出ておらぬ"、って。職も種族も年も性別も。魔物まで混ざったのに。……僕、たぶん、箱に入ってないんです。……夜、十一号から伝言。"当たり前や"、"お前は引く側や"、って。……三日で死者がゼロでした、って伝えてもらったら、"知っとる"、"そういう世界は初めてや"、って。じいちゃん。初めて、だそうです」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。三日——十万と——戦って——死者が——ゼロで——あったことが。




——見て——いた——者に——とって——どれほど——異常な——結果で——あったのかを。


そして——「そういう——世界は——初めてや」、という——その、一言が。




——何と——何を——比べた——上での——言葉で——あったのかも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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