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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第131話「探す、十六年」

「——探します」





——そう——言った——ものの。






——何を——探すのかが——分からなかった。








「——整理しよう」







——ミネルが——紙を——貼った。







「——神が——月に——戻らずに——済む——道だな」








「——はい」






「——では——なぜ——戻らねば——ならぬのだ」








「…………」







——誠は。






——動きを——止めた。








「——聞いてません」








「——なんだと?」






「——理由を——聞いてませんでした」








——誠は——自分の——額を——押さえた。







「——僕、"やめましょう"、って——言っただけです」








「——馬鹿者——!!」







——ミネルが——叫んだ。







「——まず——それを——聞け——!!」






「——聞いてきます——!!」









## 問い






——だが。






——三日——呼びかけても。






——返事は——なかった。








『——繋がらない』







——皆瀬が——揺れた。







「——切られてますか」






『——ううん』








——皆瀬は——首を——振った。







『——向こうが——出ないだけ』








「——いるんですね」






『——いる』








「…………」







——誠は。






——麦茶を——置いた。








「——神様」






「…………」






「——怒ってますか」








「…………」







「——それとも——気まずいですか」








『——あ』







——皆瀬が——揺れた。







『——動いた』








「——なんて?」






『——"うるさい"、って』








「——気まずいんですね」






『——"うるさい"』









——そして——ようやく。






——声が——戻った。








『——"何が——聞きたいんや"』








「——理由です」







——誠は——真剣に——言った。







「——なぜ——月に——戻らないと——いけないんですか」








『…………』








『——"引く——力が——足らんからや"』








「——足りない?」






『——"今の——ワイの——力では——三千も——寄せられへん"』








——神は——静かに——言った。







『——"半分——しか——ないからな"』








「…………」







『——"けど——半分と——一つに——なったらな"』







『——"元の——力に——戻る"』








「——それで——一気に——集められる、と」






『——"せや"』








「…………」







——誠は。






——じっと——考え込んだ。








「——神様」






『——"なんや"』






「——順番が——逆じゃ——ないですか」








『…………』








「——"集めるために——月に——戻る"、って——言いましたよね」







——誠は——続けた。







「——でも——月に——戻るには——集めないと——いけません」








『…………』








「——どっちが——先ですか」








『——"半分——集まった——ところで——一回——戻るんや"』








——神は——ぼそり、と——言った。







『——"そしたら——残りは——一気に——寄る"』








「…………」







「——半分は——僕たちが——集めるんですね」








『——"せや"』







『——"そこまでは——お前らでも——できる"』








「——分かりました」







——誠が——立ち上がった。







『——"どこ——行くんや"』








「——全部——集めます」








『…………は?』








「——半分じゃ——なくて——全部です」







——誠は——きっぱりと——言った。







「——そしたら——神様——引かなくて——いいですよね」








『…………』







『——"無理や"』








「——なぜですか」






『——"後半は——遠すぎる"』








——神は——静かに——言った。







『——"網も——届かん"』






『——"あそこは——ワイの——力でないと——無理や"』








「…………」







「——どれくらい——遠いんですか」








『——"月の——道の——裏側や"』







『——"星から——一番——遠い——ところ"』








「…………」







——誠は。






——空を——見上げた。







——見えない——場所。








「——ヒカルさんは——どこまで——行けますか」








『…………』







『——"誰や"』








「——新しく——来た——方です」







——誠は——言った。







「——四十メートルの——巨人です」






「——宇宙まで——飛べるそうです」








『…………』








『——"知らん"』








「——え?」






『——"ワイが——呼んでへん"』








「…………」







——誠の。






——動きが——止まった。








「——転移者を——呼ぶのは——神様ですよね」







『——"せや"』








「——でも——呼んでない?」






『——"呼んでへん"』








「——じゃあ——誰が——ですか」








『…………』







『——"分からん"』








「…………」







——広場が。






——静まり返った。








『——"ここ——最近な"』







——神は——低く——言った。







『——"ワイが——呼んでへん——のが——降りてくる"』








「——いつからですか」






『——"十年ほど——前や"』








「…………」







「——ガイアスさんも——ですか」








『——"知らん"』







『——"ジンも——ボンゴも——アカリも——知らん"』








「…………」







——誠は。






——ゆっくりと——尋ねた。








「——神様。それ——心配じゃ——ないんですか」








『…………』







『——"心配や"』








「——でも——黙ってましたね」






『——"言うても——どないも——ならんやろ"』








「——なりました」







——誠は——きっぱりと——言った。







「——アカリさんが——鉄を——見つけました」






「——ヒカルさんが——網を——広げます」






「——カゲさんが——飯を——運んでます」








『…………』







「——全部——神様が——呼んでない——方々です」








『…………』







——長い——沈黙が——あった。







——そして。







『——"誠くん"』








「——はい」






『——"一つ——言うとくわ"』








「——なんですか」








『——"気ィつけや"』








「…………」







『——"誰が——呼んどるか——分からんっちゅう、ことはな"』







——神は——静かに——言った。







『——"何のために——呼んどるかも——分からん、っちゅう、ことや"』








「…………」









## 工房






——誠は——工房に——戻った。







「——分かったか」







——ミネルが——尋ねた。







「——分かりました」








——誠は——紙に——書いた。








*——一、前半(星に——近い、方)は——網で——集められる*





*——二、後半(月の——道の——裏側)は——神の——力が——要る*





*——三、神の——力を——戻すには——月に——戻るしか——ない*








「——詰んで——おるな」







——ミネルが——うめいた。







「——一つ——抜け道が——あります」







——誠が——言った。








「——なんだ」






「——二番目です」








——彼は——紙を——指した。







「——"神の——力が——要る"、って——言いました」






「——でも——本当は——"遠すぎて——届かない"、なんです」








「…………」







「——届けば——いいんです」








「——だが——網は——届かぬのだろう」






「——網は——届きません」








——誠は——頷いた。







「——でも——ヒカルさんは——どうですか」








「…………」







——一色が。






——顔を——上げた。







「——聞いて——みましょう」









## ヒカル






「——ヒカルさん」







——誠が——見上げた。







「——月の——道の——裏側まで——行けますか」








「——シュワ」







『——"どれくらい——遠い"』








「——星から——一番——遠い——ところだそうです」







「——シュワ……」








——ヒカルは。






——しばらく——考えた。







——そして。







「——シュワッ」







『——"行ける"』








「——本当ですか——!!」







——工房が——沸いた——が。








「——シュワ」







『——"けど——帰れん"』








「…………」







——工房が。






——凍りついた。








「——どういう——意味ですか」







——誠が——静かに——尋ねた。







「——シュワ」






『——"力が——尽きる"』








「——行きは——保つが——帰りは——駄目、ということか」







——カゲが——低く——言った。







「——シュワッ」








「…………」







「——では——駄目です」







——誠が——即座に——言った。








「——シュワ——!!」







『——"わたしは——構わない"』








「——構います」







——誠は——首を——振った。







「——シュワッ——!!」






『——"地球を——守るのが——役目だ"』








「——ヒカルさん」







——誠は——真っ直ぐに——見上げた。







「——ここ——地球じゃ——ないです」








「…………」







「——シュワ……」








『——"そうだった"』








「——それに」







——誠は——続けた。







「——ヒカルさん——まだ——三月しか——いません」






「——飯も——一緒に——食べてません」








「——シュワ?」







『——"わたしは——食べない"』








「——じゃあ——見ててください」







——誠は——けろり、と——言った。







「——僕たちが——食べるのを」








「…………」







「——シュワ……」








——ヒカルは。






——しばらく——黙って。






——そして——ぽつり、と——鳴いた。








『——"変な——男だ"』








「——よく——言われます」









## 別の道






「——では——どうする」







——ミネルが——尋ねた。







「——行けるが——帰れぬ、では——使えぬぞ」








「——帰れるように——します」







——誠が——言った。







「——どうやってだ」






「——力が——尽きるんですよね」








——誠は——ヒカルを——見上げた。







「——なら——途中で——足せば——いいです」








「…………」







——一色が。






——ゆっくりと——立ち上がった。







「——待って」






「——一色さん?」








「——魔力よね」







——彼女は——早口に——なった。







「——ヒカルさんが——使ってるのは——魔力」






「——なら——魔術師が——送れないかしら」








「——距離が——ある——!!」







——ミネルが——反論した。







「——繋げばいいわ」








「…………」







——工房が。






——ざわめいた。








「——三十年——やってきたわ」







——一色は——静かに——言った。







「——魔術師を——並べて——順に——繋ぐ」






「——それで——衛星を——十二基——上げた」








「——だが——空へは——繋げぬぞ——!」






「——衛星が——あるわ」








「…………」







「——十二基」







——一色は——外を——指した。







「——空に——十二個——中継ぎが——あるの」








「——魔力を——中継ぎできますか——!!」







——誠が——青を——見た。







「——できるかも——しれぬ」








——青は——妙な——顔を——した。







「——電気は——送れる」






「——魔力は——試して——おらぬ」








「——試しましょう」









## 二年






——試験は——難航した。







——魔力は——衛星を——通らなかった。








「——駄目だ——!!」







——青が——首を——振った。







「——素通りする——!!」








「——受け皿が——要るわね」







——一色が——唸った。







「——魔力を——受けて——渡す——ものが」








「——それは——人しか——おらぬ」







——ミネルが——言った。







「——空に——人は——置けぬぞ」








「…………」







——工房が——沈んだ。







——その、時。







『——わたし』








「…………」







——一同が——足元を——見た。







「——皆瀬さん?」








『——分けられる』







——皆瀬が——ぷるん、と——揺れた。







『——十二個に』








「…………」







「——待って——ください」







——誠が——静かに——言った。







「——それ——痛くないんですか」








『——痛くない』







『——けど』








「——けど?」






『——寂しい』








「…………」







——工房が。






——静まった。








『——十二個に——分かれると』







——皆瀬は——ぽつり、と——言った。







『——十二個とも——わたし』






『——でも——喋れる——相手が——いない』








「…………」







「——やめましょう」







——誠が——即座に——言った。








『——待って』







——皆瀬が——止めた。







『——条件が——ある』








「——なんですか」






『——毎日——喋って』








「…………」







『——十二個——全部に』







——皆瀬は——静かに——言った。







『——そしたら——寂しくない』








「…………」







——誠は。






——しばらく——黙って。






——そして——言った。








「——毎日は——僕が——やります」






『——うん』






「——でも——僕、いつか——死にます」








『…………』







「——だから——決まりに——します」








——誠は——紙を——取った。







「——"毎日——皆瀬さんに——話しかける、こと"」






「——十二人——当番を——決めます」








『…………』







『——それ——仕事に——なるの?』








「——なります」







——誠は——きっぱりと——言った。







「——手当も——出します」








『…………』







『——変なの』








——皆瀬は。






——ぷるん、と——揺れた。







『——でも——嬉しい』






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「ミネルさんに、"なぜ神は月に戻らねばならぬのだ"、って聞かれて、気づいた。理由を、聞いてませんでした。僕、やめましょう、って言っただけでした。馬鹿者、って怒られた。……三日、呼びかけても、返事がなかった。皆瀬さんが、"向こうが出ないだけ"、って。怒ってますか、それとも気まずいですか、って聞いたら、"うるさい"、って返ってきた。気まずいんですね。……理由は、力が足りないから、だった。半分しかないから、三千も寄せられない。でも、半分と一つになれば、元の力に戻る。……順番が逆じゃないですか、って言ったら、"半分集まったところで一回戻るんや。そしたら残りは一気に寄る"、って。……なら、全部集めます、って言った。でも、"後半は遠すぎる。網も届かん"、って。月の道の裏側。星から一番遠いところ。……そこで、ヒカルさんはどこまで行けますか、って聞いたら——神様が、"知らん。ワイが呼んでへん"、って。……転移者を呼ぶのは神様のはずなのに。"ここ最近、ワイが呼んでへんのが降りてくる。十年ほど前からや"、って。ガイアスさんも、ジンさんも、ボンゴさんも、アカリさんも、知らない、って。……心配じゃないんですか、って聞いたら、"心配や。けど、言うてもどないもならんやろ"、って。なりました。アカリさんが鉄を見つけて、ヒカルさんが網を広げて、カゲさんが飯を運んでます。全部、神様が呼んでない方々です。……"気ィつけや。誰が呼んどるか分からんっちゅうことは、何のために呼んどるかも分からん、っちゅうことや"、って。……工房で、ヒカルさんに聞いた。月の道の裏側まで行けますか、って。"行ける。けど、帰れん。力が尽きる"、って。……駄目です、って言った。"わたしは構わない。地球を守るのが役目だ"、って言われたけど、ここ、地球じゃないです、って。"そうだった"、って。……それに、まだ三月しかいません。飯も一緒に食べてません。"わたしは食べない"、って言うから、じゃあ見ててください、僕たちが食べるのを、って。……"変な男だ"、って。よく言われます。……帰れるようにします、って言った。力が尽きるなら、途中で足せばいい。……一色さんが、"魔術師が送れないかしら。衛星が十二基あるわ"、って。でも、魔力は衛星を素通りした。受け皿が要る。人しか、いない。空に人は置けない。……そしたら、皆瀬さんが、"わたし。分けられる。十二個に"、って。……痛くないですか、って聞いたら、"痛くない。けど、寂しい。十二個とも、わたし。でも、喋れる相手がいない"、って。……やめましょう、って言ったら、"待って。条件がある。毎日、喋って。十二個全部に。そしたら、寂しくない"、って。……毎日は僕がやります、って言った。でも、僕、いつか死にます。だから、決まりにします。十二人、当番を決めて、手当も出します。……"それ、仕事になるの?"、"変なの。でも、嬉しい"、って。じいちゃん、皆瀬さんが、十二人になります」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。神が——呼んで——いない——者たちが。




——なぜ——この、十年——降り続けて——いるのかを。


そして——十二に——分かれた——皆瀬が。




——空の——上から——何を——聞くことに——なるのかも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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