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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第129話「拾い方」

「——拾いに——行きます」





——そう——言った——ものの。






——方法は——何も——なかった。








「——どうやってだ」







——ミネルが——尋ねた。







「——分かりません」








——誠は——正直に——言った。







「——だが——言うたであろう——!」






「——言いました」








「——考えて——から——言え——!!」






「——考えると——遅くなります」








——誠は——けろり、と——言った。







「——先に——言えば——皆さんが——考えて——くれます」








「…………」







「——ずるいぞ、それは」






「——商売です」









## 問い






——高座が——組まれた。







——久しぶりの、ことだった。








「——皆さーん——!!」







——セレスが——札を——掲げた。







「——本日の——問いです——!!」






「——"空に——散らばった——石を——集めるには——どうしますか"——!!」








——虚空が——ざわめいた。







「——来ました——!!」






「——読め——!!」








「——"どれくらい——ありますか"、って——!!」







「——三千——四百——十二です」








——誠が——答えると。






——虚空が——一瞬——止まった。







——そして。








「——うわあ——!! 流れが——速い——!!」






「——なんと——書いてある——!!」








「——"数えたの?"、"すご"、"どうやって"、って——!!」







「——弟子が——数えました」








——誠が——ルカを——指した。







「——半年——かけて」








「——"えらい"、"泣いた"、って——!!」






「——照れます——!!」









——だが——答えは——厳しかった。








「——"一個ずつ——取りに——行くしか——ない"、って——!!」







「——三千——四百——十二回、か——!!」







——ミネルが——うめいた。








「——それと——"寄せる——手が——あれば——早い"、って——!!」







「——寄せる?」






「——"引っ張るか——押すか"、だそうです——!!」








「——引くのは——神様が——できます」







——誠が——言った。







「——だが——一つずつであろう」








——ミネルが——指摘した。







「——三千——四百——十二回——引かせるのか」








「…………」







——誠は。






——黙り込んだ。









## 的






——三日、後。






——一色が——工房に——駆け込んできた。








「——分かったわ——!!」







「——何が——ですか」






「——一つずつ——引く——必要は——ないの——!!」








——彼女は——図を——描いた。







「——一箇所に——重い——ものを——置くのよ——!!」







「——重い——もの?」








「——そうすれば——周りの——破片が——勝手に——寄ってくるわ——!!」







——一色は——早口に——なった。







「——引く——力は——重さから——出るの——!!」






「——一つ——寄れば——さらに——重くなる——!!」






「——重くなれば——もっと——寄る——!!」








「——雪だるまですね」







——誠が——言った。







「——そう——!!」








「——では——最初の——重い——ものは——!」







——ミネルが——尋ねた。







「——それが——問題なの」








——一色が——渋い——顔を——した。







「——相当——重く——ないと——始まらない」






「——どれくらいだ」






「——山——一つ、分」








「——山——!?」







——ミネルが——絶叫した。







「——山を——空へ——上げるのか——!!」






「——そうなるわ」








「——無理だ——!!」









——工房が——沈んだ。







——だが。







「——あの」







——アカリが——おずおずと——手を——挙げた。







「——なんだ」






「——一つ——伺っても——よろしいですか」








「——申せ」






「——上げた——鉄は——どこへ——行きましたか」








「…………」







——工房が。






——ぴたり、と——止まった。








「——なんだと?」






「——二十九年——毎日——上げて——おります」








——アカリは——帳面を——めくった。







「——ですが——落ちてきた、という——記録が——ございません」








「…………」







——一色が。






——ゆっくりと——立ち上がった。







「——待って」






「——一色さん?」








「——上がったままだわ」







——彼女は——かすれた——声で——言った。







「——全部——軌道に——乗ってる」








「——どれくらいだ——!!」







——ミネルが——叫んだ。







「——アカリさん——!!」








「——計算して——おります」







——アカリは——静かに——言った。







——そして——紙を——差し出した。








「——二十九年、分」







「——読め——!!」








「——山——一つ、分の——四割です」








「…………」







——工房が。






——静まり返った。








「——四割……」







——一色が——ぽつり、と——言った。







「——足りぬではないか——!!」







——ミネルが——うめいたが。








「——違うわ」







——一色が——首を——振った。







「——四割も——あるのよ」








「…………」







「——それに——バラバラに——散ってるはず」







——彼女は——早口に——なった。







「——集めれば——芯に——なる」






「——足りない——分は——これから——上げればいい」








「——何年——かかる——!!」






「——待って。……計算するわ」









——半日、後。







「——十二年」







——一色が——言った。







「——十六年——ありますね」








——誠が——言った。







「——間に——合うわ」









——だが。






——誠は。






——じっと——アカリを——見ていた。








「——アカリさん」






「——はい」






「——なぜ——気づいたんですか」








「——数えて——おりましたので」







——アカリは——けろり、と——言った。







「——入りと——出を——書いて——合わせます」






「——出た——ものが——戻って——おらぬなら——どこかに——あります」








「…………」







「——それだけです」








「——それだけじゃ——ありません」







——誠は——深く——頭を——下げた。







「——二十九年——誰も——気づきませんでした」








「…………」







——アカリは。






——気まずそうに——うつむいた。







「——私、来て——まだ——六年ですので」






「——六年で——見つけました」








「…………」







「——アカリさん」






「——はい」






「——覚えてますか」








——誠は——微笑んだ。







「——降りてきた、時——なんて——言いましたか」








「…………」







——アカリは。






——しばらく——黙って。






——そして——ぼそり、と——言った。








「——"役に——立ちません"、と」








「——今日——世界を——救いました」








「…………」







——アカリは。






——顔を——覆った。









## 集める






——だが——問題は——残っていた。








「——散らばった——鉄を——どう——集める」







——ミネルが——尋ねた。







「——二十九年、分だぞ」






「——それこそ——一つずつでは——きりが——ない」








「…………」







——工房が——沈んだ。







——そして——三日。







——答えは——出なかった。









——四日目の——夜。







「——旦那」







——駄々丸が——隣に——座った。







「——駄々丸さん」






「——詰まって——おりやすね」








「——はい」







——誠は——ため息を——ついた。







「——散らばった——ものを——集める——手が——ないんです」








「——ほう」







——駄々丸は——煙管を——ふかした。







——そして——ぽつり、と——言った。








「——漁と——同じで——ござんすね」








「——え?」






「——散らばった——魚を——集めやす、時は」








——駄々丸は——扇子を——広げた。







「——網を——張るんで——ござんす」








「…………」







——誠は。






——固まった。








「——網」






「——へえ」






「——空に——張るんですか」








「——さあ」







——駄々丸は——首を——かしげた。







「——あっしは——漁の——話を——しただけで——ござんす」








「——一色さーん——!!」







——誠が——駆け出した。









## 網






「——網——!?」







——一色が——目を——見開いた。







「——できませんか」






「——待って。……考えるわ」








——彼女は——ペンを——取った。







——そして——半刻、後。








「——できる」







「——本当ですか——!?」








「——というより」







——一色は——妙な——顔を——した。







「——私たち——もう——作ってる」








「…………え?」







「——影の——布よ」








——彼女は——外を——指した。







「——薄くて——広くて——軽い」






「——目を——粗くすれば——網に——なるわ」








「——織り手は——!?」






「——八千人——いるわ」








「…………」







——工房が。






——ざわめいた。








「——二十九年——布を——織って——きたのが」







——ミネルが——かすれた——声で——言った。







「——ここで——効くのか」








「——そうなるわね」








「…………」







——誠は。






——ゆっくりと——外を——見た。







——空には——影の——帯が——ある。







——二十九年——毎日——上げ続けた——布。







——そして——二十九年——毎日——上げ続けた——鉄。








「——無駄じゃ——なかったんですね」







——彼は——ぽつり、と——言った。








「…………」







「——影を——作るために——やってました」







——誠は——静かに——言った。







「——星を——押し戻すために——やってました」






「——でも——それが——月を——集める——道具に——なるなんて」








「——思って——おらなんだな」






「——はい」








——誠は——微笑んだ。







「——じいちゃんが——言ってました」






「——なんとだ」








「——"捨てなきゃ——いつか——使う——日が——来る"、って」








「…………」







——ミネルは。






——ふん、と——鼻を——鳴らして。






——そして——ぼそり、と——言った。








「——お前の——祖父は——学者だな」






「——八百屋です」









## 計画






——一月、かけて。






——新しい——表が——できた。








*——第一年〜第三年*





*——網を——織る。二万枚*





*——同時に——鉄を——上げ続ける*







*——第四年*





*——網を——張り——散った——鉄を——集める*







*——第五年〜第十二年*





*——的を——作り——破片を——寄せる*







*——第十三年*





*——月、完成*








「——十三年、か」







——ミネルが——唸った。







「——残りは——十六年です」







——誠が——言った。







「——三年——余ります」








「——ぎりぎりだ」






「——ぎりぎりです」









——だが——一つ——問題が——残っていた。








「——引く——役が——要るわ」







——一色が——言った。







「——的が——できても——最初は——弱い」






「——誰かが——引いて——やらないと——寄らないの」








「…………」







——工房が。






——静まった。







——皆が。






——同じことを——考えていた。








「——神様、ですね」







——誠が——言った。







「——うむ」








「——頼むしか——ないな」







——ミネルが——低く——言った。







「——だが——田中」






「——はい」








「——あの——男は——消えぬのか」








「…………」







——誠は。






——しばらく——黙って。






——そして——言った。








「——分かりません」






「——聞かねば——なるまい」








「——聞きます」







——誠は——立ち上がった。







「——でも——その、前に——一つ——やりたいことが——あります」








「——なんだ」







——誠は。






——ルカの——帳面を——手に——取った。







——三千——四百——十二の——記録。








「——名前を——つけます」








「…………は?」







——工房が。






——きょとん、と——した。








「——破片に——か——!?」






「——はい」








「——なぜだ——!!」







「——十三年——追いかけるからです」








——誠は——静かに——言った。







「——番号だけだと——皆——飽きます」






「——でも——名前が——あれば——覚えます」








「…………」







「——それに」







——誠は——続けた。







「——全部——神様の——身体です」








「…………」







——工房が。






——しん、と——なった。








「——三千——四百——十二だぞ」







——ミネルが——うめいた。







「——誰が——つけるのだ」








「——皆さんです」







——誠が——微笑んだ。







「——里ごとに——分けます」






「——百五十三の——里で——分ければ——一つの——里に——二十二です」








「…………」







「——できますよね」








「——できる、が」







——ミネルは——渋い——顔を——した。







「——安易な——名が——並ぶぞ」








「——構いません」







——誠は——けろり、と——言った。







「——竜の——皆さんも——安易でした」






「——でも——嬉しそうでした」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「拾いに行きます、と言ったけど、方法が、何もなかった。ミネルさんに、"考えてから言え"、って怒られたけど、考えると遅くなります。先に言えば、皆さんが考えてくれます。ずるいぞ、って。商売です。……虚空の皆さんに聞いたら、"一個ずつ取りに行くしかない"、"寄せる手があれば早い"、って。三千四百十二回。……一色さんが三日後に、"一つずつ引く必要はない。一箇所に重いものを置けば、周りが勝手に寄ってくる"、って。雪だるまですね。……でも、最初の重いものが、山一つ分要る。無理だ、って皆、沈んだ。……そしたら、アカリさんが、"上げた鉄は、どこへ行きましたか"、って。……二十九年、毎日、上げてる。でも、落ちてきた記録が、ない。……上がったまま、だった。全部、軌道に乗ってた。……山一つ分の、四割。足りぬではないか、って言われたけど、一色さんが、"四割も、あるのよ。集めれば芯になる"、って。足りない分を上げるのに、十二年。十六年、あります。間に合う。……アカリさんに、なぜ気づいたのか聞いたら、"数えておりましたので。出たものが戻っておらぬなら、どこかにあります。それだけです"、って。……それだけじゃ、ありません。二十九年、誰も、気づきませんでした。……あの人、"私、来てまだ六年ですので"、って。六年で、見つけました。降りてきた時、"役に立ちません"、って言ってましたよね、って言ったら、顔を覆ってた。今日、世界を救いました。……でも、散らばった鉄を、どう集めるか。三日、詰まった。……四日目の夜、駄々丸さんが、"漁と同じでござんすね。散らばった魚を集める時は、網を張るんで"、って。……一色さんが、"というより、私たち、もう作ってる"、って。影の布。薄くて広くて軽い。目を粗くすれば、網になる。織り手は、八千人。……二十九年、布を織ってきたのが、ここで効く。……無駄じゃ、なかった。影のためにやってたのが、月を集める道具になる。じいちゃんの、"捨てなきゃ、いつか使う日が来る"、です。……表を作った。三年で網、四年目に鉄を集めて、五年目から十二年目まで破片を寄せて、十三年目に、月が完成。残り十六年だから、三年、余ります。……でも、引く役が要る。神様しか、いない。あの人、消えるのか。……聞きます。でも、その前に、一つ、やりたいことがあります。……名前を、つけます。三千四百十二の破片に。十三年、追いかけるから。番号だけだと、皆、飽きます。名前があれば、覚えます。……それに、全部、神様の身体です。……里ごとに分けます。百五十三の里で分ければ、一つの里に、二十二。安易な名が並ぶぞ、って言われたけど、構いません。竜の皆さんも、安易でした。でも、嬉しそうでした。じいちゃん、名前を、つけます」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。三千——四百——十二の——破片に——つけられる——名が。




——やがて——弔いの——壁の——隣に——並ぶ、ことを。


そして——「全部——神様の——身体です」、と——言った——その、一言が。




——遥かな——天で——聞いて——いた——男を。





——どれほど——うろたえさせたのかも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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