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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第127話「順番が、回る」

第一番の里に——影が——落ちて——から。





——世界の——動き方が——変わった。







「——次は——第二番の——里です——!!」







——サディムが——先頭に——立っていた。







「——四十二人——全員——行くのか——!?」







——ミネルが——驚いた。







「——二十人だ」








——サディムは——けろり、と——言った。







「——残りは——里を——守る」






「——それと——第六十番の——衆も——来る」








「——影を——返した、ばかりであろう——!」






「——だから——来るのだ」









——第二番の里の——建造は。






——四月で——終わった。








「——早い——!!」







——一色が——目を——見張った。







「——前は——半年——かかったのに——!!」






「——手が——増えたからです」








——誠が——微笑んだ。







「——五十人だったのが——今は——七十人です」









——そして——第二番の里が——終わると。






——そこからも——人が——出た。








「——次は——第三番か——!!」






「——行くぞ——!!」








——三番目は——三月。






——四番目は——二月半。






——五番目は——二月。








「——速く——なって——おるぞ——!!」







——ミネルが——帳面を——叩いた。







「——一つ——終わるごとに——手が——増えるからです」







——アカリが——静かに——言った。








「——今——何人だ」






「——二百四十七人」








「——二百——!?」









——三年、後。






——二十六本目の——弓が——立った。








「——できた——!!」







——荒野が——沸いた。







「——七年——かかると——思うて——おった——!!」







——ミネルが——絶叫した。







「——三年だ——!!」








「——皆さんが——やったんです」







——誠が——静かに——言った。









——だが。






——一色が——妙な——顔を——していた。








「——誠」






「——はい」






「——数字を——見て」








——彼女は——紙を——差し出した。








*——三年——前:あと——十八年*





*——現在:あと——十六年*








「——二年しか——減ってませんね」







——誠が——言うと。






——一色は——首を——振った。








「——そうじゃ——ないの」






「——え?」






「——三年——経ったのよ」








「…………」







——誠が。






——目を——見開いた。







「——三年——経って——二年しか——減ってない?」






「——そう」








——一色は——静かに——言った。







「——一年——押し戻したの」








「…………」







——工房が。






——静まった。








「——なぜだ——!!」







——ミネルが——叫んだ。







「——弓が——二十六——増えたからです」







——アカリが——帳面を——めくった。







「——鉄の——打ち上げが——二割——増えて——おります」








「——里を——助けた、ことが」







——一色が——ぽつり、と——言った。







「——星を——救うのに——効いてる」








「…………」







——誠は。






——しばらく——黙って。






——そして——言った。








「——別のもの、だと——思ってました」








「——え?」






「——里を——回るのと——星を——救うのは」








——誠は——静かに——言った。







「——別々の——仕事だと——思ってました」






「——一色さんに——怒られた、時も」






「——"それでも——やります"、って——言いました」








「…………」







「——でも——同じでした」








「…………」







——一色は。






——顔を——背けた。








「——私が——間違ってたわ」






「——いえ」








「——"時間を——使うな"、って——言ったもの」







——一色は——ぼそり、と——言った。







「——あれ——逆だった」








「——一色さん」






「——何?」






「——あの、時——止めて——くれて——よかったです」








「…………え?」







「——"一人で——回らないで"、って——言って——くれました」







——誠は——微笑んだ。







「——あれが——なかったら——僕、一人で——回ってました」






「——そしたら——三年では——終わってません」








「…………」







——一色は。






——何も——言わずに——顔を——背けた。









## 衛星






——一方——衛星の、方も——進んでいた。








「——九基目——上がりました——!!」







——青が——報告した。







「——予定より——早いですね」






「——うむ」








——青は——妙な——顔を——した。







「——魔術師が——増えたのだ」






「——増えた?」








「——里から——来て——おる」







——青は——荒野を——指した。







——そこには。






——五百人ほどが——並んで——訓練していた。








「——五百——!?」







——誠が——目を——見開いた。







「——三百では——なかったんですか」






「——増えた」








「——なぜ——ですか」






「——聞いて——みよ」









——誠が——近づくと。






——見知った——顔が——いた。








「——ネイルさん——!?」







——ハラムの——若者、だった。







「——おう」






「——なぜ——ここに——!?」








「——火が——出せるようになった」







——ネイルは——けろり、と——言った。







「——え?」






「——魔法だ」








「——使えたんですか——!?」






「——知らなんだ」








——ネイルは——自分の——手を——見た。







「——飯を——食うようになって——出るように——なった」








「…………」







——誠は。






——動きを——止めた。








「——一色さーん——!!」







——彼は——叫んだ。









——半刻、後。







「——本当だわ」







——一色が——帳面を——閉じた。







「——里から——来た——二百人」






「——ほとんどが——三年——前は——魔法を——使えなかった」








「——なぜ——ですか——!!」







「——飢えて——いたからよ」








——一色は——静かに——言った。







「——魔力は——身体から——出るの」






「——身体が——弱れば——出なくなる」








「…………」







「——つまり——な」







——ミネルが——低く——言った。







「——我らは——二十年」






「——使える——者を——飢えさせて——おったのだ」








「…………」







——工房が。






——重く——沈んだ。








「——十二万——六千」







——誠が——ぽつり、と——言った。







「——なんだ、それは」






「——亡くなった——数です」








——誠は——静かに——言った。







「——あの、中に——魔法を——使える——人が——何人——いたんでしょう」








「…………」







——誰も。






——答えられなかった。








「——田中」







——ミネルが——低く——言った。







「——それを——考えるな」






「——考えます」








——誠は——きっぱりと——言った。







「——潰れるぞ」






「——潰れません」








——彼は——顔を——上げた。







「——考えないと——また——同じことを——します」








「…………」









## 決め直し






——その日。






——誠は——新しい——決まりを——貼り出した。








*——【飯の——配り方】*






*——一、一番——困って——いる——里から*





*——二、量は——皆——同じ*





*——三、余っても——溜めない。次の——里へ*








「——待て」







——ミネルが——訝しんだ。







「——二つ目が——妙だ」






「——何がですか」








「——働いて——おる——者に——多く——やらぬのか」







「——やりません」








——誠は——きっぱりと——言った。







「——なぜだ」






「——働けない——人が——一番——飢えるからです」








「…………」







「——それに」







——誠は——続けた。







「——飢えてる——人が——働けないだけ、かも——しれません」








「…………」







——ミネルは。






——ぐっ、と——言葉に——詰まった。








「——ネイルさんが——そうでした」







——誠は——静かに——言った。







「——三年——前は——寝てました」






「——今は——魔法を——使ってます」








「…………」







「——だから——先に——配ります」









## 三年






——そして——さらに——三年。







——世界は——変わった。








「——弓——百五十三本——!!」







——アカリが——読み上げた。







「——衛星——十二基——完成——!!」






「——魔術師——千二百人——!!」






「——織り手——八千人——!!」








「——増えすぎだ——!!」







——ミネルが——叫んだ。







「——皆さん——動けるように——なったんです」








——誠が——微笑んだ。









——そして。






——一色が——紙を——机に——置いた。








「——数字が——出たわ」







「——いくつだ」








「——十六年」








「…………」







——工房が。






——静まった。








「——三年——前と——同じでは——ないか」







——ミネルが——訝しんだ。







「——そう」








——一色は——静かに——言った。







「——三年——経って——一日も——減ってない」








「…………」







「——止めたのか——!!」







——ミネルが——立ち上がった。







「——落下を——止めたのか——!!」








「——止めてないわ」







——一色は——首を——振った。







「——追いついただけ」








「——追いついた?」






「——落ちる——速さと——押し戻す——力が——釣り合ったの」








——彼女は——紙を——掲げた。







「——今——星は——止まってる」








「…………」







——工房が。






——完全に——静まり返った。








——そして。







「——うおおおおお——!!」







——爆発した。








「——止まった——!!」






「——二十六年——かかった——!!」






「——イーッ——!!」









——だが。






——一色が——手を——挙げた。








「——待って」






「——なんだ——!」






「——止まってるだけよ」








——彼女は——静かに——言った。







「——一日——休んだら——また——落ち始める」








「…………」







「——つまり」







——ミネルが——うめいた。







「——永久に——続けねば——ならぬのか」






「——そう」








「…………」







——歓声が。






——すう、と——引いた。








「——月が——要るわ」







——一色が——ぽつり、と——言った。







「——二つ目の——月が——戻らないと」






「——私たちは——永久に——弓を——引き続ける、ことに——なる」








「…………」







——誠は。






——空を——見上げた。







——月が——一つ。







——二つ目は——ない。








「——ミネルさん」






「——なんだ」






「——十六年——止められました」








「——うむ」






「——ということは——十六年——時間が——できました」








「…………」







「——月を——探しましょう」








——誠が——言った。







「——探す?」






「——はい」








——誠は——十二基の——衛星の、方を——見た。







「——目が——十二に——なりました」






「——全天が——見えるように——なりました」








「——それが——どうした」








「——僕、ずっと——引っかかってたんです」







——誠は——静かに——言った。







「——何が、だ」








「——月って——どこへ——行ったんでしょう」








「…………」







——工房が。






——ぴたり、と——静まった。








「——消えたのだろう」







——ミネルが——言った。







「——本当に——ですか」








——誠は——尋ねた。







「——神様は——"使い切った"、と——言いました」






「——でも——"消えた"、とは——言ってません」








「…………」







——一色が。






——ゆっくりと——顔を——上げた。







「——待って」






「——一色さん」








「——それ——調べられるわ」







——彼女は——立ち上がった。







「——十二基——あれば——空の——隅々まで——見える」








「——見ましょう」







——誠が——言った。







「——十六年——ありますから」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「第一番の里に影が落ちてから、動き方が変わった。サディムさんが、二十人連れて、第二番の里へ。第六十番の衆も来た。……第二番は四月で終わった。前は半年かかったのに。手が、五十人から七十人に増えたから。……三番は三月、四番は二月半、五番は二月。一つ終わるごとに、手が増える。三年で、二十六本、立った。七年かかると思ってたのに。……でも、一色さんが、"数字を見て"、って。三年経って、二年しか減ってなかった。つまり、一年、押し戻してた。……里を助けたことが、星を救うのに、効いてた。……僕、別のものだと思ってました。一色さんに怒られた時も、"それでもやります"、って言った。でも、同じでした。……一色さんが、"私が間違ってたわ"、って。でも、あの時、止めてくれてよかったです。"一人で回らないで"、って言ってくれた。あれがなかったら、僕、一人で回ってました。三年では、終わってません。……衛星も、九基目まで上がった。魔術師が三百人から五百人に増えてた。里から来てるって。……ハラムのネイルさんがいた。"火が出せるようになった。飯を食うようになって、出るようになった"、って。……一色さんが調べたら、里から来た二百人、ほとんどが、三年前は魔法を使えなかった。魔力は身体から出るから、身体が弱れば、出なくなる。……ミネルさんが、"我らは二十年、使える者を飢えさせておったのだ"、って。……十二万六千。あの中に、何人いたんでしょう。考えるな、って言われたけど、考えます。考えないと、また同じことをします。……それで、飯の配り方を、決め直した。一番困っている里から。量は皆同じ。余っても溜めない。……働いてる者に多くやらぬのか、って聞かれたけど、やりません。働けない人が、一番、飢えるから。それに、飢えてるから働けないだけ、かもしれない。ネイルさんが、そうでした。……さらに三年。弓が百五十三本。衛星十二基。魔術師千二百人。織り手八千人。……そして、数字が、十六年。三年前と、同じ。三年経って、一日も減ってない。……追いついたんです。落ちる速さと、押し戻す力が、釣り合った。今、星は、止まってる。……皆、爆発した。でも、一色さんが、"止まってるだけ。一日休んだら、また落ち始める"、って。永久に、続けることになる。……月が要る、って。二つ目の月が戻らないと。……でも、僕、ずっと引っかかってました。月って、どこへ行ったんでしょう。神様は、"使い切った"、と言いました。でも、"消えた"、とは、言ってません。……一色さんが、"それ、調べられるわ。十二基あれば、空の隅々まで見える"、って。……見ましょう。十六年、ありますから。じいちゃん、探します」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。「"消えた"、とは——言ってません」、という——その——一言が。




——二十六年——誰も——気づかなかった——ことを——突いて——いたことを。


そして——十二の——目が——空の——裏側に——見つける——ものが。




——数えきれぬ——ほどの——「残された——もの」で——あることも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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