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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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閑話「宇宙防衛隊、登録に来る」

> これは——ごく——初め。

> 影も——弓も——まだ——何も——なかった——頃の——話である。






第五層の——受付。







——地下に——潜って——間もない——頃、だった。







「——次の——方——どうぞー——!」







——エリナが——呼んだ。








——その、時。







——どーん——!!







——通路の——奥から——煙が——上がった。








「——なんだ——!?」






「——崩落か——!?」








——煙の——中から。






——五人が——現れた。







——赤。青。緑。黄。桃。







——全員——全身——ぴったりした——衣。






——全員——決め——姿勢。








「——銀河を——守る——!!」






「——宇宙を——守る——!!」






「——平和を——守る——!!」






「——正義を——守る——!!」






「——皆の——笑顔を——守る——!!」








——五人——揃って。







「——宇宙防衛隊——!! スターガーディアンズ——!!」









——しん。








「…………」







——誰も——拍手しなかった。







——それどころか。







「——ああ、また——降ってきたのか」






「——今月——三組目だな」






「——列に——並んで——もらえ」








「…………」







——赤が。






——衝撃を——受けていた。







「——知られて——おらぬ——!!」






「——当然です」








——エリナが——けろり、と——言った。







「——初めて——お会いしましたので」









## 受付






「——我らは——宇宙防衛隊だ——!!」







「——宇宙?」






「——宇宙である——!!」








「——空の——向こう——ですか」






「——もっと——向こうだ——!!」








——エリナは——帳面に——書いた。







*——少し——変わった——方々*








「——書かれて——おるぞ」







——青が——覗き込んで——言った。







「——構わぬ——!!」









「——本日は——どのような——ご用件で」







「——働き手の——登録に——来た——!!」








「——転職——ですか」






「——副業だ——!!」








「——副業——なんですか」






「——宇宙が——近頃——平和で——暇なのだ——!!」








「——お暇——なんですね」






「——言い方——!!」









——用紙が——配られた。








*——名:レッド*





*——職:宇宙防衛隊*





*——特技:巨大な——機体の——操縦*





*——趣味:鍛錬*







*——名:ブルー*





*——特技:超科学*





*——趣味:読書*







*——名:グリーン*





*——特技:狙撃*





*——趣味:草花の——世話*







*——名:イエロー*





*——特技:爆発物の——処理*





*——趣味:料理*







*——名:ピンク*





*——特技:治療の——光線*





*——趣味:恋の——物語を——読むこと*








「——お住まいは」







——エリナが——尋ねると。






——赤が——胸を——張った。








「——銀河——第三星雲——第七宇宙基地——!!」







「——ここから——徒歩——何分ですか」








「——三億——光年だ——!!」







「——通えませんね」








「——うむ——!!」






「——胸を——張る——ところですか」









## 試験






「——では——腕試しを——行う」







——賢者が——出てきた。







——まだ——名も——なかった——頃、である。








「——望む、ところ——!!」







「——まず——魔力の——測定だ」








「——魔力?」







——五人が——顔を——見合わせた。







「——ない」








「——なんだと?」






「——科学である——!!」








「——かがく?」







——賢者が——訝しんだ。







「——反物質の——力です」







——青が——説明した。








「——はん……なんだと?」






「——反物質です」








「——分からぬ——!」







——賢者は——匙を——投げた。







「——よい——! 水晶に——触れよ——!」









——レッドが——触れた。







——ばちっ——!!







——どかーん——!!







——水晶が——溶けた。








「…………」






「——また——壊れた」








——エリナが——ため息を——ついた。







「——"また"?」






「——今月——四つ目です」









——次に——力の——測定。







「——この——槌で——叩け」







——レッドが——軽く——叩いた。







——こん。







——鐘が——通路の——奥へ——飛んでいった。








「——ナイスショット——!!」







——イエローが——歓声を——上げた。







「——競技では——ない——!!」









——続いて——速さの——測定。







「——始め——!!」







——ブルーが——踵の——装置を——起動した。







——びゅーーーん——!!








「——飛ぶな——!!」






「——失格——!!」








「——なぜだ——!!」






「——走るのだ——!!」









——射撃の——試験。







「——任せろ」







——グリーンが——前に——出た。







「——これを——使え」








——弓を——渡された。







「…………」






「——弓?」






「——うむ」








「——銃は」






「——ない」








「…………」







——十分、後。







「——難しい……」








——星を——守ってきた——男が。






——弓に——苦戦していた。









——料理の——試験。







「——任せろ——!!」







——イエローが——腕を——まくった。








——四半刻、後。







——完成した。







——色は——紫。






——しかも——光っている。








「——なんですか——これ」






「——宇宙——辛煮込みだ——!!」








「——食べても——大丈夫ですか」






「——三日——眠れぬ——!!」








「——大丈夫じゃ——ないです——!!」









——最後に——治癒の——試験。







「——魔法は——ありません」







——ピンクが——言った。







「——では——どうする」






「——治療の——光線です——!!」








——ぴかー——!!







——骨を——折っていた——鬼族が。







「——治った——!!」








「——おお——!!」







——さらに。







「——風邪も——治った——!!」






「——歯の——痛みも——!!」






「——肩の——凝りも——!!」






「——目まで——よく——見えるように——なった——!!」








「——便利——!!」







——エリナが——目を——輝かせた。









## 判定






「——結果を——申し渡す」







——賢者が——紙を——掲げた。








*——戦闘の——力……甲*





*——常識……己*








「——よって——五人とも——己である」








「——えーーーー——!!」







「——なぜだ——!! 我らは——宇宙では——英雄だぞ——!!」








「——ここでは——新入りだ」







——賢者は——けろり、と——言った。







「——理不尽——!!」






「——決まりだ」









——だが。






——札を——受け取った——レッドは。






——妙に——嬉しそう、だった。








「——初めて——もらった」






「——何を——ですか」








「——身分を——示す——ものだ」







——レッドは——札を——撫でた。







「——宇宙防衛隊には——なかった」






「——皆——顔で——通って——おったからな」








「…………」







「——私の——絵、写りが——悪い」







——グリーンが——文句を——言った。







「——俺だけ——目を——つぶって——おる——!!」







——イエローが——叫んだ。







「——私は——よく——描けて——おります」







——ピンクが——満足そうに——言った。









## 最初の——仕事






*——「迷子の——猫を——探して——ください」*







「——よし——!!」







——レッドが——拳を——握った。







「——巨大な——機体——出動——!!」








「——猫探しに——!?」







「——衛星から——走査——!!」






——ブルー。







「——熱源——探知——!!」






——グリーン。







「——飛行機——発進——!!」






——イエロー。







「——猫ちゃーん——おいでー——!!」






——ピンク。








——三十を——数える——ほど、後。







「——発見——!!」








——猫は。






——三軒——隣の——屋根の——上に——いた。








「…………」






「——脚立で——届きますけど」








——エリナが——静かに——言った。







「…………」






「…………」








——五人が——顔を——見合わせた。







「——宇宙技術を——使いすぎたな」






「——うむ」









——報酬は——銀貨——五枚、だった。







「…………」







——レッドが。






——しみじみと——言った。








「——宇宙を——救っても——勲章だけ、だった」








「——初めての——給金ですね」







——ブルーが——銀貨を——眺めた。







「——今日は——肉を——食おう——!!」






——イエロー。







「——この、世界の——菓子も——食べたいです——!!」






——ピンク。









## そして






——五人が——去った——後。







「——妙な——連中だったな」







——賢者が——ぼやいた。







「——常識が——己だ」






「——面白い——方々でしたよ」








——エリナが——笑った。









——だが——その、夜。






——荷を——運び終えた——誠が——帳面を——覗いて。






——ふと——手を——止めた。








「——エリナ」






「——なに?」






「——この、方々」








——誠は——用紙を——指した。







「——特技に——"衛星"、って——書いてある」








「——ええ」






「——それ——なんだろう」








「——さあ」







——エリナは——首を——かしげた。







「——猫を——探すのに——使ってたわ」








「…………」







——誠は。






——しばらく——用紙を——見つめて。






——そして——閉じた。








「——まあ——いいか」








「——気に——なるの?」






「——いや」








——誠は——首を——振った。







「——今は——荷運びの——手が——足りないから」






「——そっちを——お願いしよう」








「——そうね」









——こうして。






——宇宙を——守ってきた——五人は。







——地下で——荷を——運ぶ——ことに——なった。







——それが——十三年——続く、ことに——なるとは。







——この、時は——誰も——思って——いなかった。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「変わった方々が、降りてきた。宇宙防衛隊、スターガーディアンズ。五人組で、赤、青、緑、黄、桃。決めポーズをしてたけど、誰も拍手しなかった。皆、慣れてるので。……赤さんが、"知られておらぬ"、って、衝撃を受けてた。エリナが、"初めてお会いしましたので"、って。……住所を聞いたら、"銀河第三星雲、第七宇宙基地"、って。徒歩何分か聞いたら、"三億光年"、って。通えませんね。……試験は、散々だったらしい。水晶が溶けて、鐘が飛んでいって、速さの試験では飛んで失格。緑さんは、弓が難しくて、十分かかってた。黄さんの料理は、紫に光ってて、"三日眠れぬ"、って。……でも、桃さんの光線は、すごかった。骨折が治って、風邪も、歯痛も、肩こりも、目まで、よくなった。あれは、助かる。……判定は、戦闘が甲で、常識が己。五人とも、己になった。"宇宙では英雄だぞ"、って抗議してたけど、ここでは新入りです。……でも、札をもらった赤さんが、妙に嬉しそうだった。"初めてもらった。宇宙防衛隊にはなかった。皆、顔で通っておったからな"、って。……最初の仕事は、迷子の猫。巨大な機体を出そうとして、衛星で走査して、熱源を探知して、飛行機を飛ばして——三十数えるほどで、見つかった。三軒隣の屋根の上だった。エリナが、"脚立で届きますけど"、って。……報酬は銀貨五枚。赤さんが、"宇宙を救っても、勲章だけだった"、って、しみじみ言ってた。初めての給金だそうです。……夜、用紙を見てたら、特技のところに、"衛星"、って書いてあった。何だろう、と思ったけど、今は荷運びの手が足りないので、そっちをお願いすることにした。……じいちゃん、また、賑やかになりました」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。用紙の——特技の——欄に——書かれた——「衛星」、の——二文字が。




——十三年——読まれる、ことなく——放置される、ことを。


そして——十三年——後に——彼が——それを——読み直した——時。




——五人が——どれほど——嬉しそうな——顔を——するのかも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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