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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第123話「聞いてない、こと」

アルフレートが——戻って——三日。





——誠は——工房に——皆を——集めた。







「——聞きたいことが——あります」







——彼の——顔つきが——いつもと——違った。







「——どうした、田中」







——ミネルが——訝しんだ。








「——教会の、ことです」








「…………」







——工房が。






——妙な——空気に——なった。








「——皆さん——知ってましたよね」







——誠は——静かに——言った。







「——死んでも——戻れる、って」








「…………」







——ミネルが。






——気まずそうに——目を——そらした。







「——知って——おった」






「——なぜ——言わなかったんですか」








「…………」







「——"聞かれなんだ"、ですか」








「——違う」







——ミネルは——首を——振った。







「——では——なんですか」






「——当たり前だと——思って——おったのだ」








「…………」







「——我らに——とっては——だ」







——ミネルは——低く——言った。







「——転移者は——皆——知って——おる」






「——降りてきた——時から——分かるのだ」








「——分かる?」






「——うむ」








——レオンが——口を——挟んだ。







「——最初から——頭に——ある」






「——"死んでも——教会で——戻れる"、と」








「——誰かに——教わったんですか」






「——いや」








——レオンは——首を——かしげた。







「——最初から——知って——おった」








「…………」







——誠は。






——背筋が——冷たく——なるのを——感じた。








「——おかしくないですか——それ」







「——む?」






「——誰にも——教わってないのに——知ってるんですよね」








「…………」







——工房が。






——静まった。








「——言われて——みれば」







——ミネルが——ぼそり、と——言った。







「——妙だな」









「——それと——もう一つ——聞きます」







——誠は——続けた。







「——地元の——人は——知ってますか」








「——なに?」






「——エリナ——!!」








——誠が——呼ぶと。






——妻が——顔を——出した。








「——どうしたの」






「——教会で——死んだ——人が——戻せるの——知ってた?」








「——え?」







——エリナが——きょとん、と——した。







「——そんなこと——できるの?」








「…………」







——工房が。






——凍りついた。








「——ルカ——!!」






「——はい——!」






「——知ってたか——!」








「——初めて——聞きました」








「——グランデルさんは——!」






「——知らんゥ——!」








「——虫人族の——長さんは——!」






「——存じませんでした」








「…………」







——誠は。






——ゆっくりと——ミネルを——見た。








「——転移者だけです」








「…………」







「——この、世界の——人は——誰も——知りません」








「——待て」







——ミネルの——顔色が——変わった。







「——では——地元の——者は」






「——死んだら——そのまま、です」








「…………」







——工房が。






——重く——沈んだ。








「——四百二十七」







——誠が——ぽつり、と——言った。







「——なんだ、それは」








「——弔いの——壁に——彫った——名前の——数です」







——誠は——静かに——言った。







「——今は——もっと——増えてます」






「——ハラムだけで——九百です」








「…………」







「——あの、人たち」







——誠の——声が——震えた。







「——戻せたんですか」








「…………」







——誰も。






——答えられなかった。









——確かめるために。






——誠は——また——教会へ——行った。








「——あら。今日は——早いのね」







——ルナが——茶を——飲んでいた。







「——ルナさん。伺いたいことが——あります」








「——お布施は——先払いですわよ」






「——質問です」








「——それも——お布施ですわ」






「——ルナさん」








——誠の——声が——低かった。







「——お願いします」








「…………」







——ルナは。






——茶碗を——置いた。







「——どうぞ」








「——地元の——人も——戻せますか」








「…………」







——ルナの——動きが。






——止まった。








「——なぜ——そのようなことを」






「——答えて——ください」








「…………」







——長い——沈黙が——あった。







——そして。







「——戻せませんわ」








「…………」







「——なぜ——ですか」






「——分かりませんの」








——ルナは——首を——振った。







「——四百年——試して——おります」






「——一人も——戻せて——おりません」








「…………」







「——転移者は——戻せますの」







——ルナは——静かに——言った。







「——何度でも」






「——ですが——この、世界で——生まれた——者は」







「——一度も」








「…………」







——誠は。






——その場に——立ち尽くした。








「——四百年」






「——ええ」








「——ずっと——試してたんですか」






「——最初の——百年は、ですわ」








——ルナは——目を——伏せた。







「——途中で——やめました」






「——なぜ——ですか」








「——期待させるからですわ」








「…………」







「——"戻せるかも——しれません"、と——言えば」







——ルナは——ぽつり、と——言った。







「——皆——遺体を——抱えて——来ますの」






「——何日も——歩いて」







「——そして——戻らないと——分かって——泣くのですわ」








「…………」







「——二度——死なせることに——なりますの」








「…………」







——誠は。






——何も——言えなかった。








「——ですから——黙って——おりますの」







——ルナは——茶碗を——取り上げた。







「——"聖女は——傷を——治す——者"、で——通して——おります」






「——蘇生は——転移者にしか——申しません」








「…………」







「——お帰りください」









——だが。






——誠は——動かなかった。








「——ルナさん」






「——まだ——何か」






「——なぜ——値段を——上げてるんですか」








「…………」







——ルナの——手が。






——止まった。







「——相場ですわ」






「——違いますよね」








「——なぜ——そう——思いますの」






「——僕、商売人ですから」








——誠は——静かに——言った。







「——値段って——理由が——なきゃ——上げられません」






「——でも——ルナさんの——値段は——理由が——ばらばらです」








「——気分ですの」






「——それも——違います」








——誠は——首を——振った。







「——ヒールの——値段は——毎日——上下してます」






「——でも——蘇生だけは——上がる——一方です」








「…………」







「——上げ続けたら——誰も——頼めなく——なりますよね」








「…………」







——ルナは。






——答えなかった。








「——ルナさん」






「——お帰りください」






「——蘇生、辛いんですか」








「…………」







——ルナの——肩が。






——わずかに——揺れた。








「——お帰りください——!!」







——初めて——声を——荒らげた。








「——すみません」







——誠は——深く——頭を——下げた。







「——出すぎました」








「…………」







「——でも——また——来ます」








「——来なくて——結構ですわ——!!」






「——来ます」









——工房に——戻ると。






——皆が——待っていた。








「——どうだった」







——ミネルが——尋ねた。







「——地元の——人は——戻せません」








——誠は——静かに——言った。







「——四百年——一人も」








「…………」







——工房が。






——重く——沈んだ。








「——では——な、田中」







——ミネルが——ぽつり、と——言った。







「——お前は——どうなのだ」








「…………え?」







「——お前は——転移者では——ない」







——ミネルは——低く——言った。







「——だが——この、世界で——生まれた——者でも——ない」








「…………」







——工房が。






——凍りついた。








「——待って」







——一色が——立ち上がった。







「——誠は——どっちなの」






「——分からぬ」








「——確かめなさいよ——!!」









——だが。






——誠は。






——妙に——静かだった。








「——確かめました」








「…………え?」







——一同が——振り返った。







「——いつだ——!」






「——さっきです」








——誠は——けろり、と——言った。







「——帰り際に——聞きました」






「——なんと——言われた——!!」








「…………」







——誠は。






——少し——黙って。






——そして——言った。








「——"分かりません"、って」








「——分からぬ——!?」






「——はい」








——誠は——静かに——言った。







「——"あなたは——見た、ことが——ない——型ですわ"、って」






「——"四百年で——初めて"、だ、そうです」








「…………」







——工房が。






——完全に——静まり返った。








「——田中」







——ミネルが——かすれた——声で——言った。







「——それは——まずいぞ」






「——そうですか?」








「——分からぬ、ということは——!!」






「——試せない、ってことです」








——誠は——けろり、と——言った。







「——死んでみないと——分かりません」








「——それを——軽く——言うな——!!」







——ミネルが——机を——叩いた。








「——軽くは——言ってません」







——誠は——静かに——言った。







「——でも——僕、元から——一度きりの——つもりでした」








「…………」







「——二十年——ずっと——そうでした」







——誠は——微笑んだ。







「——今更——変わりません」








「…………」







——アルフレートが。






——ずっと——黙っていた。







——そして——ようやく——口を——開いた。








「——田中」






「——はい」






「——一つ——約束しろ」








「——なんですか」






「——私より——先に——死ぬな」








「…………」







——誠は。






——目を——見開いて。






——そして——笑った。








「——それ——僕が——言った——やつです」






「——うむ」






「——アルフレート様——破りましたよね」








「——戻った」






「——ずるいです」








「——約束しろ」







——アルフレートは——引かなかった。







「…………」







——誠は。






——しばらく——黙って。






——そして——言った。








「——努めます」








「——それは——約束では——ない——!!」






「——アルフレート様に——教わりました」








「——ぐっ」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「教会のことを、皆に聞いた。死んでも戻れる、って、知ってましたよね、って。……ミネルさんが、"知っておった"、って。なぜ言わなかったのか、聞いたら、"聞かれなんだ"、じゃ、なくて、"当たり前だと思っておった"、って。……転移者は、皆、降りてきた時から、知ってるらしい。誰にも教わってないのに。……おかしくないですか、って言ったら、皆、黙った。……それで、エリナに聞いた。"そんなことできるの?"、って。ルカも、グランデルさんも、虫人族の長さんも、初めて聞いた、って。……転移者だけです。この世界の人は、誰も、知りません。……四百二十七。弔いの壁の名前の数。今はもっと増えてる。ハラムだけで、九百。……あの人たち、戻せたんですか、って聞いたら、誰も、答えられなかった。……教会に、確かめに行った。ルナさんが、"戻せませんわ"、って。四百年、試して、一人も、戻せていない。転移者は何度でも戻せるのに、この世界で生まれた者は、一度も。……最初の百年は、ずっと試してたけど、途中でやめた、って。なぜか聞いたら、"期待させるからですわ。戻せるかもしれない、と言えば、皆、遺体を抱えて、何日も歩いて来ますの。そして、戻らないと分かって、泣くのですわ。二度、死なせることになりますの"、って。……だから、黙ってる。"聖女は傷を治す者"、で通してる。蘇生は、転移者にしか、言わない。……それから、一つ、聞いてみた。なぜ蘇生の値段だけ、上がる一方なんですか、って。ヒールは毎日、上下してるのに、蘇生だけ、上がり続けてる。上げ続けたら、誰も頼めなくなりますよね、って。……"お帰りください"、って、初めて、声を荒らげられた。すみません。出すぎました。でも、また、行きます。……工房に戻ったら、ミネルさんが、"お前はどうなのだ。転移者ではない。だが、この世界で生まれた者でもない"、って。……確かめてました。帰り際に、聞いた。"分かりません。あなたは、見たことがない型ですわ。四百年で初めて"、って。……試せない、ってことです。死んでみないと、分かりません。ミネルさんに、"軽く言うな"、って怒られたけど、軽くは言ってません。僕、元から、一度きりのつもりでした。二十年、ずっと。今更、変わりません。……そしたら、アルフレート様が、"私より先に死ぬな"、って。それ、僕が言ったやつです。破りましたよね、って言ったら、"戻った"、って。ずるいです。……"努めます"、って答えたら、"それは約束ではない"、って。アルフレート様に、教わりました。じいちゃん、僕、変な型らしいです」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。「四百年で——初めての——型」、という——聖女の——言葉が。




——何を——意味して——いたのかを。


そして——彼女が——なぜ——蘇生の——値だけを——上げ続けて——いたのかも。





——その、答えを。





——彼女は——四百年——誰にも——言って——いない。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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