表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
390/449

第119話「目が、増える」

第四年。





——二基目が——上がった。







「——成功——!!」







——青が——板を——掲げた。







「——軌道に——乗った——!!」








「——うおおお——!!」







——荒野が——沸いた。







——だが——一年——前ほどでは——なかった。








「——静かだな」







——賢者が——呟いた。







「——二度目ですから」







——誠が——微笑んだ。







「——皆さん——できると——知ってるんです」








「——それは——よい、ことか」






「——いいことです」








——誠は——きっぱりと——言った。







「——一度目は——祭りです」






「——二度目からが——仕事です」









——そして。






——二基目が——上がると。







——世界の——見え方が——変わった。








「——見て——ください——!!」







——青が——地下の——赤い——灯りの——下で——板を——並べた。







「——なぜ——ここで——やって——おる——!」






「——落ち着くのだ」








『——フハハハハ——!!』







「——それも——慣れたか——!!」









——だが。






——板に——映った——ものを——見て。






——賢者は——絶句した。








「——これは」






「——世界の——半分だ」








——青は——静かに——言った。







「——一基では——三分の一しか——見えなんだ」






「——二基で——半分だ」








「…………」







——工房が。






——静まり返った。







——板には。







——大地が——映っていた。







——山。川。海。






——そして——影の——帯。








「——影が——見える——!!」







——一色が——飛びついた。







「——百箇所——全部——一目で——!!」








「——それだけでは——ない」







——青は——別の——板を——指した。







「——熱も——見える」








「——熱——!?」






「——どこが——暑いか——色で——分かる」









——そして。






——板が——切り替わった。







——赤。






——濃い——赤。






——一面の——赤。








「…………」







「——これは——なんですか」







——誠が——尋ねた。







「——赤いほど——熱い」








「——ほとんど——赤ですけど」






「——うむ」








——青は——重い——声で——言った。







「——影の——下だけが——青い」








「…………」







——誰も。






——声を——出さなかった。









——板の——上で。







——世界は——真っ赤に——燃えていた。







——その——中に。






——百の——青い——斑点が——ぽつり、ぽつり、と——散っている。







——それが——彼らの——二十年、だった。








「……少ないな」







——賢者が——ぽつり、と——言った。







「——二十年——かけて——これか」








「——賢者さん」






「——なんだ」






「——二十年——前は——一つも——ありませんでした」








「…………」







——賢者は。






——ふん、と——鼻を——鳴らして。






——そして——顔を——背けた。








「——お前は——本当に——折れんな」






「——八百屋ですから」









——だが。






——問題は——翌日から——始まった。








「——田中殿——!!」







——広場に——人が——押し寄せた。







「——あの——絵を——見せて——ください——!!」






「——うちの——里は——どうなって——おりますか——!!」








「——え?」






「——空から——見えるんでしょう——!!」









——噂は——一日で——世界に——広がっていた。







「——見せて——差し上げましょう」







——誠が——言うと。






——青が——止めた。








「——待て」






「——なぜ——ですか」






「——赤い」








「…………」







「——影の——ない——里は——真っ赤だ」







——青は——静かに——言った。







「——それを——見せて——どうする」








「…………」







——誠は。






——しばらく——黙って。






——そして——言った。








「——見せます」






「——待て——!」






「——隠したら——余計に——恐ろしいです」








——誠は——きっぱりと——言った。







「——それに——皆さん——知ってます」






「——自分の——里が——暑いのは——住んでる——人が——一番——知ってます」








「…………」









——広場に——大きな——板が——据えられた。







——そして——世界の——絵が——映し出された。








「…………」







——広場が。






——静まり返った。








「——赤い」






「——真っ赤だ」






「——うちの——里、ここか」








「——真っ赤じゃ——ないか——!!」









——ざわめきが——広がった。







——そして——それは——すぐに——別の——ものに——変わった。








「——なぜ——うちには——影が——ないんだ——!!」







——一人の——男が——叫んだ。







「——ここは——青いぞ——!!」






「——なぜ——ここばかり——!!」








「——待て——! 順に——増やして——おるのだ——!」







——賢者が——叫んだが。







「——二十年——待った——!!」






「——うちの——里は——半分——死んだ——!!」








「…………」







——広場が。






——重く——荒れた。








「——だから——言うたのだ——!!」







——青が——誠に——詰め寄った。







「——見せねば——よかった——!!」








「…………」







——誠は。






——荒れる——広場を——見ていた。







——そして——静かに——壇に——上がった。








「——皆さん——!!」







——声を——張り上げると。






——ざわめきが——少し——静まった。








「——謝ります」







——彼は——深く——頭を——下げた。







「——順番を——つけたのは——僕たちです」








「…………」







「——二十年——前」







——誠は——顔を——上げた。







「——弓は——十しか——ありませんでした」






「——だから——人が——多い——ところから——順に——置きました」








「——それは——分かる——!!」






「——だが——二十年だ——!!」








「——はい」







——誠は——頷いた。







「——二十年——待たせました」






「——それは——僕たちの——落ち度です」








「…………」







「——でも——一つだけ——聞いて——ください」







——誠は——板を——指した。







「——今——初めて——世界の——半分が——見えました」






「——どこが——赤いかも——分かりました」








「——だから——どうした——!!」








「——順番を——つけ直せます」








「…………」







——広場が。






——ぴたり、と——静まった。








「——今まで——僕たちは——見えてませんでした」







——誠は——静かに——言った。







「——だから——"人が——多い——ところから"、しか——決められませんでした」







「——でも——今は——違います」








「——一番——赤い——ところから——影を——置けます」








「…………」







——先ほど——叫んだ——男が。






——ゆっくりと——顔を——上げた。







「——うちの——里は——どのくらい——赤い」








「——青さん」







——誠が——呼ぶと。






——青は——渋々——板を——操作した。








「……上から——七番目だ」







「——七番目——!?」








「——世界で——七番目に——赤い」







——青は——低く——言った。







「——よく——生きて——おられたな」








「…………」







——男は。






——その場に——座り込んだ。







「——分かって——おったのか」






「——今——分かった」








「——では——なぜ——助けに——来なんだ——!!」






「——だから——今——分かったのだ——!!」








「…………」







——誠が。






——壇を——降りて。






——男の——前に——しゃがんだ。








「——すみませんでした」







——誠は——深く——頭を——下げた。







「——僕たち——聞きに——行きませんでした」








「…………」







「——二十年——毎日——地下を——回ってました」







——誠は——静かに——言った。







「——四百十二軒——一軒ずつ——回ってました」






「——でも——それは——ここの——四百十二軒です」








「——あなたの——里には——一度も——行きませんでした」








「…………」







——男は。






——顔を——覆った。








「——今から——行きます」







——誠が——言った。







「——え?」






「——七番目の——里から——順に——回ります」








「——待て、田中——!!」







——賢者が——止めた。







「——上から——何番まで——回る——つもりだ——!」






「——全部です」








「——世界中だぞ——!!」






「——二十年——ありますから」








「——十八年だ——!!」






「——十八年——ありますから」









——そして——誠は。






——男の——手を——取った。








「——一つ——聞いても——いいですか」






「——なんだ」






「——お名前は」








「…………」







——男は。






——しばらく——黙って。






——そして——かすれた——声で——答えた。








「——ゴードンだ」






「——ゴードンさん」








——誠は——名を——繰り返した。







「——里の——名前も——教えて——ください」






「——ハラム」








「——ルカ——!!」







——誠が——呼んだ。







「——書いてます——!!」








——ルカが——すでに——帳面を——開いていた。







「——ハラムの——里。ゴードンさん」






「——世界で——七番目に——赤い」








「——一番から——順に——書け」






「——はい——!」









——その、夜。







「——旦那」







——駄々丸が——並んだ。







「——今日は——荒れやしたね」






「——はい」








「——見せねェ、方が——よかったんじゃ——ござんせんか」








「…………」







——誠は。






——空を——見上げた。







——影の——下。






——星が——見える。








「——駄々丸さん」






「——へえ」






「——僕、今日——初めて——気づいたんです」








「——何にで?」







——誠は。






——ぽつり、と——言った。








「——僕、地下の——ことしか——考えてませんでした」








「…………」







「——四百十二軒——回って」






「——名簿を——作って」






「——毎日——麦茶を——配って」







「——それで——皆を——救ってる——つもりでした」








「——救うて——おりやしたよ」







「——ここだけです」








——誠は——首を——振った。







「——ハラムの——里に——四百十二軒——分の——人が——いても」






「——僕、一度も——名前を——聞きに——行きませんでした」








「…………」







「——二十年です」








「…………」







——駄々丸は。






——煙管を——ふかして。






——そして——静かに——言った。








「——旦那。一つ——申し上げても——ようござんすか」






「——はい」








「——見えなんだ——ものは——見えなんだので——ござんす」







——駄々丸は——空を——見上げた。







「——旦那は——目が——二つしか——ござんせん」






「——今日——四つに——なりなすった」








「…………」







「——四つに——なった——途端に——回りに——行くと——言いなすった」







——駄々丸は——扇子を——閉じた。







「——それで——十分で——ござんしょう」








「…………」







——誠は。






——長い、こと——黙って。






——そして——言った。








「——十二に——なったら——どうなりますかね」








「——さあ」







——駄々丸は——にやり、と——した。







「——旦那が——もっと——忙しく——なるんじゃ——ござんせんか」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「二基目が、上がった。一年前ほどには、沸かなかった。賢者さんが、"静かだな"、って。二度目ですから。皆、できると知ってるんです。一度目は祭り、二度目からが、仕事です。……でも、二基で、世界の半分が見えるようになった。影の帯も、百箇所、一目で見える。それに、熱も見える。赤いほど、暑い。……板を切り替えたら、真っ赤だった。影の下だけが、青い。百の青い斑点が、ぽつりぽつり。それが、僕たちの二十年でした。賢者さんが、"少ないな"、って。でも、二十年前は、一つもありませんでした。……翌日、広場に人が押し寄せた。"うちの里はどうなっておりますか"、って。青さんが、"赤い。見せてどうする"、って、止めたけど、隠したら、余計に恐ろしい。それに、自分の里が暑いのは、住んでる人が、一番、知ってます。……広場に、板を据えて、映した。皆、静まって、それから、荒れた。"なぜ、うちには影がないんだ"、"二十年待った"、"うちの里は半分死んだ"、って。……謝った。順番をつけたのは、僕たちです。弓が十しかなかったから、人が多いところから置いた。二十年、待たせました。僕たちの落ち度です。……でも、一つだけ、聞いてもらった。今、初めて、どこが赤いか、分かった。だから、順番を、つけ直せます。今までは、見えてなかったから、人が多いところから、しか、決められなかった。……叫んでた人の里は、世界で七番目に赤かった。青さんが、"よく生きておられたな"、って。その人、座り込んで、"では、なぜ助けに来なんだ"、って。"だから、今、分かったのだ"、って。……僕、しゃがんで、謝った。僕たち、聞きに行きませんでした、って。二十年、毎日、地下を回って、四百十二軒、一軒ずつ回ってた。でも、それは、ここの四百十二軒です。あなたの里には、一度も行きませんでした。……名前を、聞いた。ゴードンさん。里の名は、ハラム。ルカが、書いてた。一番から順に、書け、って言った。……夜、駄々丸さんに、"見せねェ方がよかったんじゃ"、って言われた。……僕、今日、初めて気づいたんです。地下のことしか、考えてませんでした。二十年です。……駄々丸さんが、"見えなんだものは、見えなんだので、ござんす。旦那は目が二つしかござんせん。今日、四つになりなすった。四つになった途端に、回りに行くと言いなすった。それで十分でござんしょう"、って。……じいちゃん。僕、明日から、遠くへ行きます」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。この、日——初めて——名を——聞いた——ハラムの——里が。




——後に——なって——どれほど——大きな——役目を——果たすことに——なるのかを。


そして——「目が——四つに——なった」、という——駄々丸の——言い方が。




——ただの——比喩では——なかったことも。





——今は……まだ、言った——本人すら——知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ