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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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閑話「秘密基地じゃ、ないんです」

人工衛星に——安定して——電気を——送れる——見通しが——立った。






——次の——課題は。






——地上の——基地、だった。








「——十六年——雨ざらしだ」







——青が——渋い——顔で——言った。







「——中の——道具は——生きて——おる」






「——だが——建物が——保たぬ」








「——直しましょう」







——誠が——言った。







「——司令官の——許しが——要る」









——宇宙防衛隊——本部。







——赤が——麦茶を——一口——飲んで。






——満足そうに——頷いた。








「——よし」







——一同が——身を——乗り出した。








「——基地を——直せ」






「——以上」








——そして——また——麦茶を——飲み始めた。








「…………」







「——あの——赤さん」







——誠が——おずおずと——言った。







「——どう——直すんですか」






「——よしなに——せよ」








「——それだけ——ですか——!?」






「——細かい、ことは——苦手だ」








「——いつも——こうなんです」







——緑が——頭を——抱えた。







「——具体の——指示が——一度も——出た、ことが——ありません」









——その、時。







——広間の——隅で。






——何かが——立ち上がった。








「——基地、だと?」







——首領、だった。







——その——目が——輝いていた。








「——基地と——聞いて——黙って——おられるか——!!」








「——首領——!!」







——黒ずくめが——一斉に——敬礼した。







「——ついに——我らの——出番——!!」






「——秘密基地の——技を——見せて——やりましょう——!!」








「——イーッ——!!」








「…………」







——宇宙防衛隊の——五人が。






——妙な——顔を——した。








「——嫌な——予感が——する」






「——気の——せいだ」









——翌日。






——工事が——始まった。








「——おうよ——!!」







——グランデルが——巨大な——柱を——担いで——現れた。







「——通信の——柱だ——!!」








「——グランデルさん——! 重く——ないんですか——!?」






「——芋の——袋に——比べたら——軽いわァ——!!」








——彼は——山のような——柱を——軽々と——持ち上げて。






——屋上に——据えた。








「——どうだ——!!」






「——待って——ください——!」








——通信を——担う——青が——板を——確かめた。







——そして。







「——安定した——!!」






「——本当か——!!」






「——十六年で——一番——きれいだ——!!」








「——おおおお——!!」







——拍手が——起きた。







「——グランデルさん——すごいです——!」






「——置いただけだがなァ——!!」









——だが。






——本番は——ここから、だった。








「——基地とは——な」







——首領が——設計図を——広げた。







「——浪漫だ」








「…………」







「——入り口は——独りでに——開く——重い——扉」







——首領は——次々と——指した。







「——隠し通路は——三本」






「——会議の——間には——長い——黒い——机」






「——司令の——席は——一段——高く」






「——灯りは——赤」






「——非常の——鐘は——必要以上に——鳴らす」








「——最高です——!!」






「——悪の——組織らしい——!!」






「——イーーーッ——!!」








「——あの」







——緑が——蒼白に——なった。







「——研究の——施設なんですが」






「——分かって——おる」








「——分かって——ませんよね——!?」









——だが——誰も——首領を——止められなかった。









——工事は——順調に——進んだ。







——四天王が——壁を——補強し。






——藤原が——重い——資材を——運び。






——武闘家が——一人で——床を——磨き。






——山田が——雨漏りを——防ぐ——結界を——張った。








「——皆さん——!!」







——誠が——大鍋を——運んできた。







「——飯です——!!」








「——おお——!!」






「——今日は——何だ——!!」








「——野菜たっぷりの——辛煮込みです」







——誠は——よそいながら——言った。







「——しっかり——食べて——安全——第一で——お願いします」








「——うまい——!!」






「——これは——首領の——やつと——違うな——!!」








「——野菜が——多いだけです」






「——だから——うまいのだ」








——首領が——ぼそり、と——言った。









——そして——完成の——日。







——紐が——切られた。







——扉が——ゆっくりと——開く。







——ズゴゴゴゴ……








「…………」







——中は。







——赤い——灯り。





——黒い——壁。





——巨大な——世界地図。





——回る——司令の——椅子。





——必要以上に——出る——煙。







——そして。







『——フハハハハ——!!』







——録音された——笑い声が——定期的に——流れていた。








「——これぞ——秘密基地——!!」






「——首領——! 最高です——!!」






「——イーーーッ——!!」








——首領は——満足そうに——腕を——組んだ。







「——完璧だ」








「…………」







——青が。






——震える——声で——言った。







「——これ——宇宙防衛隊の——基地——ですよね?」








「——うむ」







「——非常口より——"総統室"、の——札の、方が——大きいです」








「——見やすかろう」







「——会議の——椅子が——全部——玉座です」








——桃が——うめいた。







「——座り心地は——よいぞ」






「——そこじゃ——ないです——!!」









——赤は。






——麦茶を——飲みながら——基地を——見渡した。







——一口。







——ゴクッ。








「——よし」








「——これで——任務を——続行せよ」






「——以上」








「——司令官——!! そこじゃ——ないです——!!」







——緑が——絶叫した。









——だが——数日、後。







——世界中の——学者が——基地を——訪れた。








「——通信の——設えは——見事だ」






「——動線も——意外に——理に——適って——おる」






「——物置が——多くて——助かる」






「——非常の——電源も——完璧だ」








「——本当ですか——!?」







——一色まで——感心していた。







「——これ——十六年——先を——考えて——作ってあるわ」






「——設計は——ものすごく——上手い」








「——ただし」







——学者の——一人が——言った。







「——見た目以外は、な」








「——秘密基地作りに——妥協は——せぬ」







——首領が——胸を——張った。







「——見た目も——大事なんです——!!」







——青が——泣きそうな——顔で——言った。









——その、時。







「——あの」







——誠が——手を——挙げた。







「——なんだ、八百屋」






「——外は——宇宙防衛隊らしく」








——誠は——静かに——言った。







「——中は——それぞれの——よさを——残しませんか」








「…………」







——全員が。






——静かに——なった。








「——なるほど」







——首領が——頷いた。







「——秘密基地らしさは——司令の——間だけに——するか」








「——それなら——大歓迎です——!!」







——青が——飛び上がった。









——数日、後。







——外は——近代的な——基地。






——研究の——間は——明るく——使いやすく。






——通信の——設えは——最新。







——そして——地下には。







——赤い——灯り。





——長い——黒い——机。





——回る——玉座。





——煙の——仕掛け。







——札には——こう——書かれていた。








——「秘密基地——休憩室」








「…………」







「——基地には——少しだけ——夢が——あった、方が——よい」







——首領が——満足そうに——言った。








「……まあ——休憩室なら——よいか」







——青が——ため息を——ついた。









——だが——半月、後。







——妙な、ことが——起きた。








「——おい——! 誰も——上に——おらんぞ——!」






「——皆——下だ——!」








——研究者たちが。






——全員——地下の——休憩室に——詰めていた。








「——なぜ——ここに——!?」






「——落ち着くのだ」








——学者の——一人が——玉座で——書き物を——していた。







「——赤い——灯りが——目に——優しい」






「——それに——椅子が——回る」








「——回る——必要が——ありますか——!?」






「——考え事を——する、時に——回すと——捗る」








「…………」







「——それに——な」







——別の——学者が——言った。







「——時々——笑い声が——流れるであろう」






「——あれが——妙に——励みに——なる」








『——フハハハハ——!!』







「——ほら——来た」






「——なぜ——励みに——なるんですか——!?」









——首領は。






——それを——聞いて。






——静かに——腕を——組んだ。








「——言うたであろう」






「——基地には——夢が——要るのだ」








「——認めます」







——青が——うなだれた。







「——悔しいですが——認めます」









——ちなみに。






——後日。







「——司令官——! 地下の——休憩室が——満員です——!!」







——緑が——報告した。








——赤は。






——麦茶を——一口——飲んで。







「——よし」








「——増やせ」






「——以上」








「——そこは——具体的——なんですか——!!」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「人工衛星に電気を送れる目処が立ったので、次は、地上の基地を直すことに。十六年、雨ざらしだった。……赤さんに、許しをもらいに行ったら、麦茶を一口飲んで、"よし。基地を直せ。以上"、って。どう直すのか聞いたら、"よしなにせよ。細かいことは苦手だ"、って。緑さんが、"いつもこうなんです。具体の指示が、一度も出たことがありません"、って、頭を抱えてた。……そしたら、隅で、首領さんが立ち上がった。"基地、だと? 基地と聞いて、黙っておられるか"、って。目が、輝いてた。悪の組織の皆さんも、"ついに我らの出番"、って。宇宙防衛隊の皆さん、嫌な予感がする、って言ってた。……工事は、順調だった。グランデルさんが、通信の柱を、担いできて、屋上に据えた。"芋の袋に比べたら軽いわァ"、って。通信が、十六年で一番、きれいになった。……でも、首領さんの設計図が、すごかった。"基地とは、浪漫だ"、って。独りでに開く扉。隠し通路三本。長い黒い机。一段高い司令席。赤い灯り。必要以上に鳴る鐘。……緑さんが、"研究の施設なんですが"、って、青くなってたけど、誰も、止められなかった。……完成の日、扉が開いたら——赤い灯りと、黒い壁と、回る椅子と、必要以上の煙。しかも、定期的に、録音された笑い声が、流れる。首領さん、"完璧だ"、って。青さんが、"非常口より、総統室の札の方が大きいです"、"会議の椅子が全部、玉座です"、って、震えてた。……でも、数日後、世界中の学者さんが来て、"通信は見事"、"動線も理に適ってる"、"物置が多くて助かる"、って。一色さんまで、"十六年先を考えて作ってある。設計は、ものすごく上手い"、って。ただし、"見た目以外は"、って。……だから、提案した。"外は宇宙防衛隊らしく、中はそれぞれのよさを残しませんか"、って。首領さんが、"なるほど。秘密基地らしさは、司令の間だけにするか"、って。……数日後、地下に、"秘密基地休憩室"、が、できた。首領さんが、"基地には、少しだけ夢があった方がよい"、って。……でも、半月後、研究者の皆さんが、全員、地下に詰めてた。"落ち着くのだ"、"赤い灯りが目に優しい"、"椅子が回ると考え事が捗る"、"時々流れる笑い声が、妙に励みになる"、って。……青さんが、"悔しいですが、認めます"、って。じいちゃん、基地には、夢が要るそうです」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。「基地には——夢が——要る」、という——首領の——その、言葉が。




——十八年の——長い——仕事を——支える——ことに——なるのを。


そして——地下の——赤い——灯りの——下で。




——いくつもの——難題が——解かれる、ことに——なるのも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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