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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第115話「光を、拾う」

電気は——足りない——ままだった。






「——水車も——風車も——限界だ」







——一色が——帳面を——閉じた。







「——増やす、方法は——ないんですか」






「——川と——風は——これ以上——増えないわ」









——その、時。






——工房の——扉が——蹴り開けられた。








「——あるぞ——!!」







——宇宙防衛隊の——赤、だった。







「——赤さん——!?」






「——見よ——!!」








——彼は——一枚の——薄い——板を——掲げた。







——透き通っていて。






——ぐにゃり、と——曲がる。








「——なんですか——それ」






「——光から——電気を——作る——板だ——!!」








「…………は?」







——工房が。






——固まった。








「——光から——電気、だと?」






「——うむ——!!」








「——待って——!! 見せて——ください——!!」







——一色が——飛びついた。









——実際に——日に——当てると。






——確かに——わずかな——電気が——流れた。








「——出てる——!!」






「——本当に——出てるわ——!!」








「——赤さん。これ——なんで——今まで——!!」







——誠が——叫ぶと。






——赤は——うつむいた。








「——試作品なのだ」






「——え?」






「——完成して——おらぬ」








——赤は——悔しそうに——言った。







「——向こうの——世界でも——研究の——途中だった」






「——我らには——直せぬ」








「——なぜ——ですか」






「——我らは——皆——体育会系だ——!!」








「——またそれ——ですか——!!」









——だが。






——一色は——目を——輝かせていた。








「——面白いわ、これ」






「——直せますか」






「——分からない」








——一色は——板を——曲げてみた。







「——でも——薄くて——軽くて——曲がるの」






「——これなら——どこにでも——貼れるわ」








「——どこにでも——!?」






「——屋根。壁。窓」








——一色は——早口に——なった。







「——一枚の——力は——弱くても」






「——世界中に——貼れば——足し算に——なる」








「——影の——布と——同じですね」






「——そう——!!」









——こうして。






——世界中が——また——一つの——ことに——取り掛かった。









「——実は、な」







——首領が——秘密基地の——扉を——開けた。







「——昔——"日の光で——動く——秘密基地"、を——研究して——おった」








「——なんで——ですか——!?」






「——電気代が——高かったのだ」








「——理由が——それ——ですか——!!」








——だが——奥から——運び出されたのは。






——精巧な——製造の——装置、だった。








「——これは——すごいわ——!!」







——一色が——飛びついた。







「——薄い——膜を——均一に——作れる——!!」








「——世界の——ために——使え」







——首領は——ぶっきらぼうに——言った。







「——イーッ——!!」









——魔王も——現れた。







「——魔法で——日を——強く、は——できぬ」







——彼は——静かに——言った。







「——ゆえに——今——ある——光を——大事に——使え」








「——魔王さんは——何を——されるんですか」







——尋ねると。






——魔王は——試作品に——手を——かざした。








——ふわり、と。







——薄い——結界が——包んだ。







「——壊れぬように——してやる」






「——ありがとう——ございます——!」








「——研究は——失敗を——恐れては——ならぬ」







——魔王は——ぼそり、と——言った。







「——壊れる——心配が——あると——大胆に——試せぬからな」








「…………」







——誠は。






——胸が——熱く——なった。









——そして——四天王が——動いた。







「——耐熱の——試しは——任せよ——!!」







——炎の——将軍が——広間を——灼熱に——した。







「——溶けたら——駄目だ——!!」








「——寒い——地でも——使えるか——試すぞ——!!」







——氷の——将軍が——極寒を——作った。







「——割れたら——駄目だ——!!」








「——強い——風で——飛ばぬか——!!」







——風の——将軍が——暴風を——起こした。







「——剥がれたら——駄目だ——!!」








「——屋根にも——畑にも——つけられるように——工夫せねば」







——大地の——将軍が——取り付け方を——考えた。








「——皆さん——本気ですね」






「——第十一条だ」








——大地の——将軍が——言った。







「——"安全の——教えを——年——二回"、な」






「——それ——関係——ありますか——!?」









——光の勇者は——学び舎を——回った。







「——よいか——皆」







——彼は——子どもたちに——言った。







「——電気は——作るのも——大事だ」






「——だが——無駄に——せぬのも——同じくらい——大事だ」








「——はーい——!!」








「——勇者さん。似合いますね」







——誠が——言うと。






——光の勇者は——顔を——赤らめた。








「——言うな」









——山田は——工房に——暗幕を——張った。







「——山田さん。何を——してるんですか」






「——夜も——研究する、だろう」








——山田は——けろり、と——言った。







「——灯りが——眩しいと——目が——参る」






「——だから——柔らかい——闇を——張った」








「——ありがとう——ございます——!」






「——ふっ」








——山田は——妙に——得意げに——言った。







「——光を——研究するには——闇も——要るのだ」








「——それ——格好いいですね」






「——だろう」









——藤原は——運搬を——引き受けた。







「——軽いなあ、これ」







——彼女は——試作品を——爪先で——摘まんだ。







「——千枚——持っても——芋の——袋——一つ、分や」








「——じゃあ——山の——上にも——島にも——!」






「——一日で——回れるわ」









——武闘家は——屋根に——上った。







「——力仕事は——任せろ——!!」






「——気を——つけて——ください——!」








——彼は——次々と——板を——貼っていった。







——ただし。







「——おい——! そこの——屋根の——主——!」






「——はい?」






「——顔色が——悪いぞ——! 野菜を——食って——おるか——!」








「——武闘家さん——!! 仕事に——集中して——ください——!!」









——怪獣たちも——動いた。







「——グオ——! 畑の——覆いにも——使えるか——試す——!!」







——キャベゴンが——農家を——回った。







「——光は——通るのか——!?」






「——薄いから——半分——通る——!!」








「——それは——ちょうど——いいです——!」







——ルカが——駆けてきた。







「——夏は——日が——強すぎて——葉が——焼けるんです——!」






「——半分——遮って——くれるなら——助かります——!」









「——古い——部品を——分ける——!!」







——リサイガーが——廃材を——選り分けた。







「——使える——ものは——大事に——使う——!!」








「——森の——木は——切らぬ——!!」







——モリノーンが——言った。







「——枝の——上に——貼る——! 自然と——仲良く——するのが——一番——!!」








「——潮風でも——保つか——試す——!!」







——ブルーマリンが——浜に——並べた。








「——今日は——たくさん——できたぞ——!!」







——サンシャインが——発電の——量を——測った。







——ちなみに——日陰から。








「——太陽も——風も——仲間だ——!!」







——フウタロスが——風車と——組み合わせた。







「——風の——ない——日は——日が——照る——!!」






「——日の——ない——日は——風が——吹く——!!」








「——それ——大事です——!!」







——一色が——飛び上がった。







「——両方——あれば——途切れないわ——!!」









——そして——誠は。






——畑を——見回っていた。








「——師匠。何を——見てるんですか」







——ルカが——尋ねた。







「——いや、な」








——誠は——空を——見上げた。







「——野菜も——日の——光で——育つだろう」






「——はい」






「——発電も——日の——光で——するんだよな」








「——そう——ですね」







「——同じなんだな、と——思って」








——誠は——微笑んだ。







「——どっちも——ただの——恵みを——受け取ってるだけだ」








「…………」







「——それに」







——誠は——ふと——言った。







「——僕たち——十六年——日を——恨んでたよな」








「——はい」






「——でも——今——助けられてる」








「…………」







——ルカは。






——帳面を——開いて。






——そして——その——言葉を——書き留めた。









——一年、後。







——薄い——板は——完成した。







——そして——世界中に——貼られていった。








——学び舎の——窓。





——薬師の——屋根。





——通りの——庇。





——畑の——覆い。





——そして——弓の——櫓。








「——電気が——足りたわ——!!」







——一色が——帳面を——掲げた。







「——それどころか——余ってる——!!」








「——余った——分は——どうする」






「——弓に——回すわ」








——一色は——目を——輝かせた。







「——打ち上げが——早く——なる」






「——どれくらい——ですか」








「——計算——してみるわ」









——三日、後。







「——一年——縮んだ」







——一色が——静かに——言った。








「…………」







「——十九年が——十八年に——なったわ」








「——おおおお——!!」







——工房が——沸いた。








「——初めてだ——!!」







——賢者が——立ち上がった。







「——数字が——減ったのは——初めてだ——!!」






「——ずっと——増えるのを——抑えてきただけだったのに——!!」








「…………」







——誠は。






——ゆっくりと——空を——見上げた。







——太陽が——照っている。







——星を——焼こうと——している——その、光が。







——今——星を——救う——電気に——なっていた。








「——皆さん」







——誠は——籠を——抱えて——広場に——出た。







「——野菜、どうぞ」








「——おお——! ありがたい——!」







「——日の——恵みで——育ちました」







——誠は——にっこりと——笑った。







「——今日の——電気と——同じです」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「電気が、足りなかった。水車も風車も、限界。……そこへ、赤さんが、薄い板を、持ってきた。光から、電気を作る板。試作品で、向こうの世界でも、研究の途中だったらしい。"我らには直せぬ。皆、体育会系だ"、って。またそれですか。……でも、一色さんが、"面白いわ、これ"、って。薄くて、軽くて、曲がるから、どこにでも貼れる。一枚の力は弱くても、世界中に貼れば、足し算になる。影の布と、同じ。……首領さんが、"昔、日の光で動く秘密基地を研究しておった"、って。理由は、"電気代が高かったのだ"、って。……でも、奥から、精巧な装置が出てきた。一色さん、飛びついてた。"世界のために使え"、って。……魔王さんは、試作品に、結界を張ってくれた。"研究は、失敗を恐れてはならぬ。壊れる心配があると、大胆に試せぬ"、って。……四天王の皆さんが、熱、寒さ、風、取り付け方を、それぞれ試した。勇者さんは、学び舎を回って、"電気は作るのも大事だが、無駄にせぬのも同じくらい大事だ"、って。似合いますね、って言ったら、"言うな"、って。……山田さんが、工房に暗幕を張ってくれた。"光を研究するには、闇も要る"、って。格好いいですね、って言ったら、"だろう"、って。……藤原さんが、"千枚持っても、芋の袋一つ分や"、って。山も島も、一日で回れる。武闘家さんは、屋根に上って、貼りながら、家の主に"野菜を食っておるか"、って聞いてた。集中してください。……キャベゴンさんが、畑の覆いに使えるか、試してくれた。半分、光を通す。ルカが、"夏は日が強すぎて葉が焼けるから、ちょうどいい"、って。フウタロスさんが、"風のない日は日が照る。日のない日は風が吹く"、って。一色さんが、"両方あれば、途切れない"、って、飛び上がってた。……僕は、畑を見回ってた。野菜も、日の光で育つ。発電も、日の光でする。同じなんだな、と思って。どっちも、ただの恵みを、受け取ってるだけ。……それと、僕たち、十六年、日を恨んでた。でも、今、助けられてる。ルカが、それを、書き留めてた。……一年で、板が完成して、世界中に貼られた。電気が、余った。余った分を、弓に回したら——一年、縮んだ。十九年が、十八年に。……賢者さんが、"数字が減ったのは、初めてだ"、って、立ち上がってた。ずっと、増えるのを、抑えてきただけだったから。……じいちゃん。太陽が、味方に、なりました」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。星を——焼こうと——して——いた——その——光が。




——星を——救う——力に——変わった——この、日を。


そして——「恨んでいた——ものに——助けられる」、という——この——出来事が。




——もう一度——ずっと——大きな——形で——起きることも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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