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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第113話「怪獣たちの、仕事」

アルフレートが——戻って——半月。





——広場に——妙な——一団が——現れた。







「——田中殿——!!」







——宇宙防衛隊の——五人、だった。







——赤。青。黄。緑。桃。








「——皆さん。どうしました」






「——我らも——働きたい——!!」








——赤が——胸を——張った。







「——十三年——何も——して——おらぬ——!!」






「——荷は——運んで——もらってますよ」








「——それだけだ——!!」







——赤は——悔しそうに——言った。







「——我らは——宇宙防衛隊だぞ——!!」






「——宇宙の——ことなら——任せろ——!!」








「——詳しいんですか」






「——詳しくない——!!」








「——え?」






「——我らは——皆——体育会系だ——!!」








——赤は——きっぱりと——言った。







「——星の、ことなど——何も——知らぬ——!!」






「——では——なぜ——!!」








「——だが——道具は——ある——!!」








「…………は?」









——連れて——行かれたのは。






——荒れ地の——外れ、だった。







——そこには。







——見たことの——ない——鉄の——塊が——並んでいた。








「——なんですか——これ」






「——人工衛星だ」








——青が——けろり、と——言った。







「——じんこう——えいせい?」






「——空に——上げて——地上を——見る——道具だ」








「——なぜ——そんな——ものが——ここに——!?」






「——持ってきた」








「——持ってきた——!?」






「——道具は——職人の——命だからな」








——赤が——真剣な——顔で——言った。







「——転移する——時に——基地ごと——引っ張ってきた」








「——基地ごと——!?」






「——うむ。宇宙ステーションも——ある」








「…………」







——誠は。






——ゆっくりと——尋ねた。







「——十三年——黙ってたんですか」






「——聞かれ——なんだ」








「——賢者さーん——!!」







——誠が——叫んだ。







「——なんだ——!」






「——大変な——ものが——出てきました——!!」









——駆けつけた——賢者と——一色は。






——鉄の——塊を——見て——絶叫した。








「——なんだ——これは——!!」






「——待って——! これ——中に——鏡が——入ってるわ——!」








——一色が——覗き込んだ。







「——遠くを——見る——ための——ものよ——!」






「——使えるのか——!!」








「——動くぞ」







——緑が——手元の——板を——操作した。







「——ただし——上げねば——使えぬ」






「——上げる——手立ては——ある——!!」








——賢者が——荒れ地を——指した。







「——弓が——百——ある——!!」









——ひと月、後。







——三つの——人工衛星が——空に——上がった。







「——映った——!!」







——青が——板を——掲げた。







「——見よ——! 世界が——見える——!!」








「——すごい——!!」







——一色が——飛びついた。







「——これ——影の——位置が——一目で——分かるわ——!!」






「——竜に——聞かずとも——!!」








「——それと——嵐も——見える」







——青が——付け加えた。







「——三日——前に——分かる」








「——三日——前——!?」







——誠が——目を——見開いた。







「——それ——ものすごく——助かります——!!」






「——嵐の——日は——打ち上げを——止められます——!!」








「——役に——立つか——!!」







——赤が——身を——乗り出した。







「——立ちます——!!」






「——うおおおお——!!」








——五人が——抱き合って——喜んでいた。








「——希望は——ゼロじゃ——ない——!!」






「——十三年——待った——!!」








「——早く——言って——ください——!!」









——だが。






——動き出したのは——彼らだけでは——なかった。








「——グオオオ——!!」







——翌週。






——畑に——巨大な——影が——降りてきた。








「——キャベゴンさん——!?」






「——グオ。畑を——耕しに——来た」








——緑色の——巨体が。






——のっそりと——鍬を——構えた。







——ただし——鍬は——家より——大きい。








「——ちょっと——待って——ください——!!」







——ルカが——飛んできた。







「——それ——畑ごと——潰れます——!!」






「——グオ……」








——だが——三日、後。







——キャベゴンは——加減を——覚えた。







「——グオ——! ここを——掘れば——よいか——!」






「——上手です——!!」








「——それと——子どもたちに——教えたい——!!」






「——何を——ですか」






「——野菜の——作り方だ——!!」








——キャベゴンは——真剣に——言った。







「——野菜を——好きに——なって——ほしい——!!」








「——それは——大歓迎です——!!」









——そして。






——次々と——現れた。








「——ラベルは——はがしてね——!!」







——リサイガーが——廃材の——山を——分けていた。







「——リサイガーさん。細かいですね」






「——分別は——大事だ——!!」








——彼は——鉄と——銅と——木を——きちんと——分けていた。







「——これ——弓の——部品に——使えるぞ——!!」






「——本当ですか——!?」








「——捨てれば——ごみ——! 集めれば——希望——!!」









——森では。







「——今日は——一万本——植えた——!!」







——モリノーンが——胸を——張った。







「——一万——!?」






「——手が——多いからな——!!」








——肩には——小鳥が——十数羽——止まっていた。







「——モリノーンさん。人気ですね」






「——照れる——!!」









——海では。







「——ごみを——拾って——おる——!!」







——ブルーマリンが——浜辺で——働いていた。







「——魚たちが——喜んで——おる——!!」






「——魚と——話せるんですか」








「——話せる——! "ありがとう"、と——言うて——おる——!!」






「——それは——いいですね」









——そして。






——妙な——ものも——いた。








「——暑い——!! 暑いぞ——!!」







——サンシャインが——日陰で——うずくまっていた。







「——サンシャインさん。太陽の——怪獣ですよね」






「——そうだ——!!」








「——なんで——暑さに——弱いんですか」






「——知らぬ——!!」








——だが——彼は——立ち上がった。







「——ゆえに——"日陰を——増やそう——運動"、を——始める——!!」






「——すでに——やってますけど」






「——もっと——増やす——!!」









——そして——風の——怪獣。







「——今日は——風が——気持ちいいぞ——!!」







——フウタロスが——巨体で——風車を——回していた。







「——フウタロスさん——電気が——増えました——!!」







——一色が——駆けてきた。








「——本当か——!!」






「——これなら——エアコンが——作れるかも——!!」








「——エアコン——!?」







——誠が——驚いた。







「——十六年——前に——諦めた——やつですか——!?」






「——図面は——取ってあるわ」








——一色は——笑った。







「——"先に——置いておくだけ"、って——言ったでしょう」








「…………」







——誠は。






——胸が——熱く——なった。









——その、夜。






——高台で。







「——田中くん」







——藤原が——首を——下ろした。







「——藤原さん」






「——一つ——言うとくわ」








「——なんですか」







——藤原は。






——少し——ためらって。






——そして——言った。








「——あの——怪獣ら、な」






「——はい」






「——中に——人が——入っとる」








「…………え?」







——誠が。






——固まった。







「——今——なんて?」






「——着ぐるみや」








——藤原は——けろり、と——言った。







「——うちは——本物の——竜やから——分かる」






「——あいつら——匂いが——違う」








「——じゃあ——中身は——!?」






「——人間や」








——藤原は——ため息を——ついた。







「——たぶん——向こうの——世界で——重い——中二病に——かかった——連中や」






「——怪獣の——格好を——して——おったんやろ」








「…………」







「——ほんで——こっちに——来たら」







——藤原は——ふと——笑った。







「——なぜか——本当に——力が——出るように——なった」








「——山田さんと——同じですね」






「——せや」








「——皆——中二病が——本物に——なった——口や」








「…………」







——誠は。






——しばらく——黙って。






——そして——言った。








「——藤原さん」






「——なんや」






「——それ——他の——人に——言いましたか」








「——言うてへん」







——藤原は——首を——振った。







「——うちだけが——知っとる」






「——なんで——僕に——言ったんですか」








「…………」







——藤原は。






——少し——気まずそうに——顔を——背けた。







「——あんたが——知らんまま——礼を——言うとるのが」






「——なんや——気の毒で」








「…………」







——誠は。






——しばらく——考えて。






——そして——首を——振った。








「——気の毒じゃ——ないです」






「——なんでや」








「——モリノーンさん——今日——一万本——植えました」







——誠は——静かに——言った。







「——リサイガーさんは——廃材を——分けてます」






「——ブルーマリンさんは——浜の——ごみを——拾ってます」








「——それ——中身が——誰でも——同じですよね」








「…………」







——藤原が。






——ぽかん、と——した。







「——それに」







——誠は——ふと——笑った。







「——中二病が——本物に——なったんですよね」






「——せや」








「——なら——すごいじゃ——ないですか」







——誠は——空を——見上げた。







「——"森を——守りたい"、って——思ってた——人が」






「——本当に——森を——守れるように——なったんです」








「…………」







「——僕、それ——いい話だと——思います」








「…………」







——藤原は。






——長い、こと——黙って。






——そして——ぼそり、と——言った。








「——あんた——ほんまに——変やわ」






「——よく——言われます」








「——ほんで——一つ——聞くけどな」






「——はい」






「——このこと——黙っとくんか」








「——黙っときます」







——誠は——即答した。







「——なんでや」






「——本人たちが——言ってないからです」








——誠は——静かに——言った。







「——言いたく——なったら——言うと——思います」






「——それまでは——怪獣で——いいです」








「…………」







——藤原は。






——低く——笑った。







「——あんた——悪の組織の——連中と——同じ、こと——言うとるで」








「——え?」






「——"正体は——最後まで——秘密"、っちゅうやつや」








「…………」







「——藤原さん。それ——なんで——知ってるんですか」






「——上から——丸見えやからな」








「——見ないで——ください——!!」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「宇宙防衛隊の皆さんが、"我らも働きたい"、って。十三年、荷しか運んでない、って。宇宙のことは、詳しいんですか、って聞いたら、"詳しくない! 我らは皆、体育会系だ!"、って。……でも、"道具はある"、って。荒れ地に、人工衛星が、並んでた。転移する時に、基地ごと、引っ張ってきたらしい。"道具は職人の命だからな"、って。……十三年、黙ってたんですか、って聞いたら、"聞かれなんだ"、って。……弓で、三つ、上げた。世界が、見える。影の位置が、一目で分かる。それに、嵐が、三日前に分かる。打ち上げを、止められます。……五人、抱き合って、喜んでた。"希望はゼロじゃない!"、"十三年、待った!"、って。早く、言ってください。……それから、怪獣の皆さんも、動き出した。キャベゴンさんは、畑を耕して、子どもに野菜作りを教えてる。最初、鍬が家より大きくて、畑ごと潰れそうだったけど、三日で、加減を覚えた。リサイガーさんは、廃材を分別。"ラベルははがしてね"、って、細かい。でも、弓の部品に使える。"捨てればごみ、集めれば希望"、って。モリノーンさんは、一日一万本、植えてる。小鳥に、囲まれてた。ブルーマリンさんは、浜のごみ拾い。魚が"ありがとう"、って言ってるらしい。サンシャインさんは、太陽の怪獣なのに、暑さに弱くて、日陰でうずくまってた。……フウタロスさんが、風車を回して、電気が増えた。一色さんが、"これなら、エアコンが作れるかも"、って。十六年前に、諦めたやつ。図面、取ってあった。"先に置いておくだけ"、って、言ってた通りだった。……夜、藤原さんが、"あの怪獣ら、中に人が入っとる"、って。着ぐるみ。本物の竜だから、匂いで分かるらしい。中身は、向こうの世界で、重い中二病だった人たちで、こっちに来たら、本当に力が出るようになった、って。山田さんと、同じ。……"あんたが、知らんまま、礼を言うとるのが、気の毒で"、って。でも、気の毒じゃ、ないです。モリノーンさんは、今日、一万本、植えました。中身が誰でも、同じです。……それに、"森を守りたい"、と思ってた人が、本当に、森を守れるようになったんです。いい話だと、思います。……黙っときます、って言ったら、"なんでや"、って。本人たちが、言ってないからです。言いたくなったら、言うと思います。それまでは、怪獣で、いいです。……藤原さんが、"悪の組織の連中と、同じこと言うとるで"、って。じいちゃん。世界中が、動き出しました」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。中二病が——本物に——なった、という——藤原の——言葉が。




——この、世界の——仕組みの——核心を——掠めて——いたことを。


そして——「なりたかった——ものに——なれる」、という——その、理が。




——誰の——ために——用意された——ものだったのかも。





——今は……まだ、誰も——問うて——いない。

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