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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第112話「続きを、見たい」

「——本当に——やるんですか」





——魔法使いが——不安そうに——尋ねた。







「——やります」






「——でも——通じるかどうか」








「——分かりません」







——誠は——素直に——言った。







「——でも——他に——手が——ありません」








「——待て、田中」







——賢者が——止めた。







「——虚空の——者たちに——できることでは——あるまい」






「——あれは——知恵を——貸してくれるだけだ」








「——賢者さん。一つ——聞いていいですか」






「——なんだ」







「——GAME CLEAR、って——何ですか」








「——む?」






「——"シーズン2"、って——何ですか」








——誠は——石像を——見上げた。







「——"販売終了"、って——何ですか」








「…………」







——賢者は。






——答えられなかった。








「——僕、ずっと——考えてました」







——誠は——静かに——言った。







「——あれ——"売れるか——どうか"、の——話ですよね」








「…………」







「——なら——商いです」







——誠は——顔を——上げた。







「——僕、商いなら——分かります」








「——なんだと?」






「——"売れる"、って——決めるのは——売る、方じゃ——ありません」








——誠は——真っ直ぐに——言った。







「——買う、方です」








「…………」







——広場が。






——ざわめいた。








「——待て」







——賢者が——立ち上がった。







「——では——虚空の——者たちが」






「——"買う——側"、だと——言うのか」








「——分かりません」







——誠は——首を——振った。







「——でも——あの、人たち——ずっと——見てます」






「——十三年——見てます」








「——だったら——一番——"買う——側"、に——近いです」








「…………」







——賢者は。






——ゆっくりと——腰を——下ろした。







「——やれ」









——配信が——繋がった。







「——皆さーん——!」







——魔法使いが——虚空に——向かった。







「——今日は——お願いが——あります——!」








——虚空が——流れ始めた。







「——コメント——来てます——!」






「——"知ってる"、"見てた"、"アルフレート"、って——!」








「——ご存知——なんですね」







——誠が——前に——出た。








「——僕、田中——誠と——申します」






「——八百屋を——やってます」








「——"知ってる"、"知ってる"、って——!」








「——そうですか」







——誠は——少し——照れくさそうに——笑って。






——そして——真顔に——なった。








「——お願いが——あります」







——彼は——石像を——指した。







「——この、人——十三日——石の——ままです」






「——ひびが——入り始めてます」








「…………」







——虚空の——流れが。






——少し——遅くなった。








「——前に——石に——なった——若い——人が——いました」







——誠は——続けた。







「——グレンさん、って——言います」






「——十日目に——"販売終了"、が——出て」






「——今も——崩れ続けてます」








「…………」







「——でも——今回は——まだ——何も——出てません」







——誠は——顔を——上げた。







「——決まってないんだと——思います」








「——だから」







——彼は——深く——頭を——下げた。







「——皆さんに——お願いします」








「——"この、人の——続きが——見たい"、と」






「——書いて——いただけませんか」








「…………」







——虚空が。






——完全に——止まった。








「——止まりました」







——魔法使いが——かすれた——声で——言った。







「——一つも——流れてません」








「——駄目、か」







——賢者が——うなだれた。








「——待って——ください」







——誠は——引かなかった。







「——皆さん。いきなり——変なことを——言って——すみません」








——彼は——虚空に——向かって——言った。







「——通じないかも——しれません」






「——迷惑かも——しれません」








「——でも」







——誠は——石像を——見上げた。







「——この、人——十三年——芋を——運んでたんです」








「…………」







「——勇者だったのに」






「——世界を——救った——人なのに」






「——十三年——毎日——芋を——運んでたんです」








「——一度も——文句を——言いませんでした」








「…………」







——誠の——声が。






——震え始めた。








「——最後に——僕に——言ったんです」






「——"お前の——店で——働いた——十三年"」






「——"悪くなかった"、って」








「…………」







「——僕、まだ——礼を——言ってません」







——誠は——うつむいた。







「——十三年——一度も」






「——"ありがとう"、って——言ってません」








「…………」







——広場が。






——しん、と——なった。








「——だから——お願いします」







——誠は——深く——頭を——下げた。







「——一度だけで——いいので」






「——礼を——言わせて——ください」








「…………」







——長い——沈黙が——あった。







——そして。







「——あ」







——魔法使いが——声を——上げた。







「——一つ——来ました」








「——なんと——書いてある——!」








——魔法使いは。






——虚空を——読んだ。








「——"続きが——見たい"」








「…………」







——そして。







——虚空が。







——決壊した。








「——うわあ——!!」







——魔法使いが——のけぞった。







「——すごい——量です——!!」






「——読め——!!」








「——"続きが——見たい"——!」






「——"続きが——見たい"——!」






「——"続きが——見たい"——!」








「——全部——同じです——!!」







——魔法使いが——泣きながら——叫んだ。







「——数え切れません——!!」








「…………」







——誠は。






——虚空を——見上げていた。







——見えない——文字の——濁流を。








「——ありがとう——ございます」







——彼は——深く——頭を——下げた。









——そして。







——広場が——明るくなった。








「——!!」






「——空に——!!」








——皆が——顔を——上げた。







——そこには。







——文字が——浮かんでいた。








——シーズン3 販売決定








「…………」







「——出た——!!」






「——出たぞ——!!」






「——イーッ——!!」








——そして。







——石像の——ひびが。






——ゆっくりと——塞がっていった。







——欠けた——腕が——戻り。






——色が——戻り。







——そして。







「——ふう」







——アルフレートが——目を——開けた。








「——アルフレート様——!!」







——誠が——飛びついた。







「——おお、田中」








——アルフレートは。






——きょとん、と——した——顔で——あたりを——見回した。







「——なぜ——皆——泣いて——おる」






「——十三日——ですよ——!!」








「——十三日——!?」







——アルフレートが——目を——見開いた。







「——一度目は——三時間だったぞ——!」






「——今回は——十三日です——!!」








「——それは——すまなんだ」







——彼は——頭を——掻いた。







「——ときに——田中」






「——はい」






「——芋は——どうした」








「——そこ——ですか——!!」









——だが。






——アルフレートは——立ち上がって。






——そして——動きを——止めた。








「…………む」






「——どうしました?」








「——軽い」







——彼は——自分の——腕を——見た。







「——身体が——軽い」








「…………」







——広場が。






——静まった。








「——アルフレート様。芋の——袋を——持って——みて——ください」







——誠が——差し出した。






——アルフレートが——持ち上げようとして。







——よろけた。








「——重い——!?」







「…………」







「——馬鹿な——! これは——毎日——五十——担いで——おったぞ——!」








「——アルフレート様」







——誠は——静かに——言った。







「——レベル、いくつですか」








「…………」







——アルフレートは。






——しばらく——虚空を——見つめて。






——そして——ぼそり、と——言った。








「——一だ」








「…………」







「——また、か——!!」







——賢者が——叫んだ。







「——十三年——芋を——運んで——上げた——分が——!!」






「——全部——消えたのか——!!」








「——そうなる、な」







——アルフレートは——けろり、と——言った。







「——悔しくないんですか——!!」







——誠が——叫んだ。








「——悔しい」







——アルフレートは——即答した。







「——だが——な」








——彼は——広場を——見回した。







——泣いている——者たちを。






——そして——誠を。








「——戻れた」







——彼は——静かに——言った。







「——それで——十分だ」








「…………」







「——それに——田中」






「——はい」






「——一から——上げ直せば——よい」








——アルフレートは——芋の——袋に——手を——かけた。







「——一度——やった、ことだ」






「——二度目は——早い」








「…………」







——誠は。






——涙を——拭って。






——そして——言った。








「——アルフレート様」






「——なんだ」






「——ありがとう——ございました」








「…………」







——アルフレートは。






——きょとん、と——した。







「——何がだ」






「——十三年——分です」








「…………」







——アルフレートは。






——しばらく——黙って。






——そして——ふん、と——鼻を——鳴らした。








「——遅い」






「——すみません」








「——だが——受け取る」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「配信で、虚空の皆さんに、お願いすることにした。賢者さんが、"虚空の者たちにできることではあるまい"、って。でも、聞いた。"GAME CLEAR、って何ですか。シーズン2、って何ですか。販売終了、って何ですか"、って。……あれ、"売れるかどうか"、の話です。なら、商いです。そして、売れる、って決めるのは、売る方じゃ、なくて、買う方です。……虚空の皆さんは、十三年、見てる。一番、買う側に、近い。……配信を繋いで、頭を下げた。"この人の続きが見たい、と、書いてもらえませんか"、って。……止まった。一つも、流れなかった。……でも、続けた。この人、十三年、芋を運んでたんです。勇者だったのに、世界を救った人なのに、毎日、芋を。一度も、文句を言わずに。最後に、"お前の店で働いた十三年、悪くなかった"、って。……僕、まだ、礼を言ってません。十三年、一度も、ありがとう、って言ってません。だから、一度だけでいいので、礼を言わせてください、って。……長い沈黙の後、一つ、来た。"続きが見たい"。……そして、決壊した。全部、同じ文字。数え切れない。魔法使いさん、泣きながら、読んでた。……空に、"シーズン3 販売決定"、って、出た。ひびが、塞がって、腕が戻って、色が戻って——アルフレート様が、目を、開けた。……"なぜ皆、泣いておる"、"十三日ですよ"、"それはすまなんだ。ときに、田中、芋はどうした"、って。そこですか。……でも、立ち上がったら、"軽い"、って。芋の袋を、持てなかった。レベルが、一に、戻ってた。十三年、上げた分が、全部。……賢者さんが、叫んでた。僕も、"悔しくないんですか"、って。"悔しい。だが、戻れた。それで十分だ"、って。……"一から上げ直せばよい。一度やったことだ。二度目は早い"、って。……だから、言った。ありがとうございました、って。"何がだ"、"十三年分です"、って。そしたら、"遅い。だが、受け取る"、って。……じいちゃん。間に合いました」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。虚空の——者たちの——言葉が。




——なぜ——この、世界の——理を——動かせたのかを。


そして——「買う——側が——決める」、という——彼の——読みが。




——恐ろしいほど——正確で——あったことも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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