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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第111話「十三年目の、光」

十三年目。





——弓は——止まらなかった。







——毎朝——百の——荒れ地で——弦が——引かれ。






——毎朝——鉄が——空へ——上がる。







——それが——日常に——なっていた。








「——テツさーん——! 今日も——お願いします——!」






「——うむ」








「——アサさん——! こっち——手が——足りません——!」






「——行く」









——毎月——貼り出される——数字も。






——皆の——楽しみに——なっていた。








「——今月は——どうだ——!」






「——差が——十四年だ——!」






「——先月より——伸びとる——!」








——「何も——しなければ——あと——五年」






——「皆さんが——やって——今——あと——十九年」







——差、十四年。







——それが——世界の——手柄、だった。








「——増えとるぞ——!」






「——十九年、って——最初より——長いじゃ——ないか——!」








「——そう——ですね」







——誠が——微笑んだ。







「——十三年——前は——二十二年でした」






「——今は——十九年です」






「——三年しか——減ってません」








「——十三年——やって——三年か——!」






「——十三年——やって——三年、です」








——誠は——きっぱりと——言った。







「——何も——しなければ——十七年——減ってました」








「——おお——!」






「——なるほどな——!」









——だが。






——その——年の——夏。







——それは——唐突に——起きた。








「——光って——おる——!!」







——広場で——悲鳴が——上がった。







「——誰だ——!!」






「——アルフレート様だ——!!」








「…………」







——誠は。






——荷車を——放り出して——駆けた。








「——アルフレート様——!!」







——広場の——中央で。






——アルフレートが——光っていた。







——芋の——袋を——担いだ——ままの——姿で。








「——おお、田中」







——彼は——けろり、と——した——顔で——振り返った。







「——どうやら——また、らしい」








「——また——!?」






「——二度目だ」








——そして——空に——文字が——浮かんだ。








——GAME CLEAR








「…………」







——広場が。






——凍りついた。








「——待って——ください——!!」







——誠が——駆け寄った。







「——なんで——今——なんですか——!!」






「——分からん」








——アルフレートは——首を——かしげた。







「——芋を——運んで——おっただけだ」






「——それの——どこが——役目の——終わりなのだ」








「…………」







「——まあ——よい」







——アルフレートは——芋の——袋を——下ろした。







「——田中。これを——頼む」






「——アルフレート様——!」








「——それと——な」







——彼は——ふと——真顔に——なった。







「——戻れなんだら——すまぬ」








「——そんなこと——言わないで——ください——!!」







「——一度目は——三時間で——戻れた」








——アルフレートは——静かに——言った。







「——だが——二度目も——そうとは——限らぬ」






「——グレンは——戻らなんだ」








「…………」







「——だから——一つだけ——言うて——おく」







——彼は——誠を——見た。







「——お前の——店で——働いた——十三年」








「——アルフレート様——!!」







「——悪くなかった」








——そして。







——彼は——石に——なった。









——三時間。







——広場から——誰も——動かなかった。








「——出るか」






「——一度目は——出た、そうだ」






「——なら——今度も——出る——!」








——だが。






——三時間が——過ぎても。






——空には——何も——浮かばなかった。








「…………」







「——五時間だ」






「——遅いな」








「——待ちましょう」







——誠が——石像の——前に——座り込んだ。







「——田中。今日は——もう——休め」






「——待ちます」









——一晩。







——誠は——動かなかった。







——エリナが——毛布を——掛けても。






——ルカが——麦茶を——持ってきても。







——ただ——石像を——見ていた。








「——師匠」






「——ん?」






「——十日——待つんですよね」








「——ああ」







——誠は——空を——見上げた。







「——グレンさんは——十日目に——出た」






「——"販売終了"、が」








「…………」







「——だから——十日は——待つ」









——二日目。






——何も——出なかった。







——三日目。






——何も——出なかった。







——五日目。







「——田中。飯を——食え」







——賢者が——皿を——置いた。







「——食べてます」






「——三日——食って——おらぬだろう」








「…………」







「——田中」







——賢者は——静かに——言った。







「——あやつが——戻った、時」






「——お前が——倒れて——おったら——なんと——言う」








「…………」







——誠は。






——ゆっくりと——皿を——手に——取った。









——七日目。







——石像に。






——最初の——ひびが——入った。








「…………」







——広場が。






——ざわめいた。








「——ひびだ——!」






「——早すぎる——! まだ——七日だぞ——!」








「——グレンさんは——十日目からでした」







——誠が——かすれた——声で——言った。







「——なぜ——七日目に——!」






「——分かりません」









——八日目。






——ひびが——増えた。







——九日目。






——腕の——一部が——欠けた。








「——田中殿——!!」







——広場の——者たちが——集まってきた。







「——このままでは——!!」






「——何か——できんのか——!!」








「…………」







——誠は。






——欠けた——腕を——見ていた。







——芋の——袋を——担いでいた——腕、だった。








「——皆さん」







——彼は——ゆっくりと——立ち上がった。







「——お願いが——あります」






「——なんだ——!」








「——アルフレート様の、こと」







——誠は——広場を——見回した。







「——話して——ください」








「…………え?」







「——何でも——いいです」







——誠は——言った。







「——助けられた、こと」






「——迷惑を——かけられた、こと」






「——馬鹿だな、と——思った、こと」








「——全部——話して——ください」








「——なぜだ——!」








——誠は。






——石像を——見上げた。








「——駄々丸さんが——言ってました」






「——"名を——忘れられるのは——二度目の——死だ"、って」








「…………」







「——だから——忘れない——ように——します」









——そして。






——広場で——話が——始まった。








「——わしは——瓦礫の——下から——引っ張り出して——もらった」







「——うちの——ばあさんを——背負って——第十層まで——降りてくれた」







「——うちの——壺、三つ——割られた——!」








「——それは——文句だろう——!」






「——だが——弁償に——来た——! 三年——かけて——!」








——広場が——笑った。








「——私は——な」







——光の勇者が——口を——開いた。







「——あやつに——一度——殴られた」






「——なぜだ——!」








「——"主人公は——俺だ"、と——言うた、時だ」







——光の勇者は——ぼそり、と——言った。







「——"ならば——荷を——運べ"、と」






「——"主人公は——一番——重い——荷を——持つ——ものだ"、と」








「…………」







「——腹が——立った」







——彼は——石像を——見上げた。







「——だが——今も——荷を——運んで——おる」









——話は——夜まで——続いた。







——十日目に——なっても。






——誰も——帰らなかった。








「——十日目です」







——ルカが——空を——見上げた。







「——何か——出ますか」






「——見えません」








「…………」







——広場が。






——静まり返った。








「——十日、過ぎたな」







——賢者が——低く——言った。







「——グレンの、時は——十日目に——"販売終了"、が——出た」






「——だが——今回は——出て——おらぬ」








「——それは——いいことですか」






「——分からぬ」









——十一日目。






——十二日目。






——十三日目。







——ひびは——増え続けた。







——だが——文字は——出なかった。








「——妙だ」







——賢者が——唸った。







「——"シーズン2"、も——出ぬ」






「——"販売終了"、も——出ぬ」







「——決まって——おらぬのか」








「…………」







——誠は。






——ふと——ある、ことを——思いついた。








「——賢者さん」






「——なんだ」






「——決まってないなら」








——誠は——ゆっくりと——言った。







「——まだ——間に——合いませんか」








「…………なに?」







「——誰が——決めてるのか——分かりませんけど」







——誠は——立ち上がった。







「——決める——前なら」






「——こっちから——言える、かも——しれません」








「…………」







——賢者が。






——ゆっくりと——顔を——上げた。







「——何を——する——気だ」








「——魔法使いさん——!!」







——誠が——呼んだ。







「——はい——!!」






「——配信、繋いで——ください——!!」








「——え?」






「——虚空の——皆さんに——お願いします——!!」








——誠は——石像を——指した。







「——この、人の——続きを——見たい、って——書いて——もらえませんか——!!」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「十三年目。弓は、止まらなかった。毎月、貼り出す数字も、皆の楽しみに、なってた。差が、十四年。"十九年、って、最初より長いじゃないか"、って。……でも、夏に、それは、起きた。アルフレート様が、光った。芋の袋を、担いだまま。GAME CLEAR。二度目。……"芋を運んでおっただけだ。それのどこが、役目の終わりなのだ"、って、首をかしげてた。……それから、"戻れなんだら、すまぬ。一度目は三時間で戻れた。だが、二度目もそうとは限らぬ。グレンは、戻らなんだ"、って。……最後に、"お前の店で働いた十三年、悪くなかった"、って。……三時間、待った。出なかった。五時間、一晩。……賢者さんが、"あやつが戻った時、お前が倒れておったら、なんと言う"、って。それで、飯を、食べた。……七日目に、ひびが、入った。グレンさんは、十日目からだったのに。九日目に、腕が、欠けた。芋を担いでた、腕。……だから、皆に、お願いした。アルフレート様のことを、話してください、って。助けられたことも、迷惑をかけられたことも、馬鹿だな、と思ったことも、全部。……駄々丸さんが、"名を忘れられるのは、二度目の死だ"、って言ってたから。……壺を三つ割られた話で、皆、笑ってた。勇者さんが、"一度殴られた。"主人公は俺だ"、と言うた時に、"ならば荷を運べ。主人公は、一番重い荷を持つものだ"、と。腹が立った。だが、今も荷を運んでおる"、って。……十日目。何も、出なかった。"シーズン2"、も、"販売終了"、も。賢者さんが、"決まっておらぬのか"、って。……そこで、思いついた。決まってないなら、まだ、間に合いませんか、って。誰が決めてるのか、分からないけど、決める前なら、こっちから、言えるかもしれない。……魔法使いさんに、配信を、繋いでもらった。虚空の皆さんに、"この人の続きを見たい、って書いてもらえませんか"、って、お願いする。じいちゃん。効くかな」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。「続きを——見たい、と——書いて——ください」、という——その、願いが。




——この、世界の——理そのものに——初めて——人の、側から——触れた——瞬間で——あったことを。


そして——それが——通じて——しまうことも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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