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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第103話「探し始める」

「——では——探すぞ」





——賢者が——工房に——皆を——集めた。







「——星を——止める——方法だ」






「——二十二年——ある」






「——だが——縮み続ける、と——思って——おけ」








「——まず——何から——始めるの」







——一色が——尋ねた。







「——虚空に——問う」








——賢者は——即答した。







「——だが——今度は——問い方を——変える」






「——どう——変えるの」








「——前は——"星を——動かすには"、と——聞いた」







——彼は——紙に——書いた。







「——そして——三つの——道を——教わった」






「——だが——三つとも——できなんだ」








「——覚えてます」







——誠が——頷いた。







「——星の——軌道を——変える。原因を——取り除く。星を——諦める」








「——うむ」







——賢者は——指を——折った。







「——一つ目は——桁が——足らぬ」






「——三つ目は——飛ぶ——術が——ない」







「——だが——二つ目だけは」








「——"できない"、と——言われて——ませんでしたね」







「——そうだ」








——賢者は——紙を——叩いた。







「——"人工的な——事故が——原因なら——その——推進を——止める"」






「——虚空の——賢人は——そう——言うた」








「——でも——原因が——分かりません」







——一色が——首を——振った。







「——だから——それを——探すのだ」









——高座が——組まれた。







「——皆さーん——! 本日の——問いです——!」







——魔法使いが——札を——掲げた。







「——"星の——軌道が——狂う——原因には——どんな——ものが——ありますか"——!」








——虚空が——流れ始めた。







「——来ました——!」






「——読め——!」








「——"大きな——ものが——ぶつかる"——!」






「——"近くを——大きな——ものが——通る"——!」






「——"星の——重さが——急に——変わる"——!」






「——"近くの——星が——なくなる"——!」








「——待て」







——賢者が——手を——挙げた。







「——今の——最後」






「——"近くの——星が——なくなる"、です——!」








「…………」







——工房が。






——妙な——空気に——なった。








「——どういう、意味だ。詳しく——聞け」






「——はい——!」








——しばらく——して。







「——ええと——!」







——魔法使いが——読み上げた。







「——"星は——互いに——引き合って——釣り合って——いる"——!」






「——"だから——近くの——星が——一つ——消えると——釣り合いが——崩れる"——!」







「——"月のような——ものでも——影響は——ある"、って——!」








「…………」







——誠が。






——ゆっくりと——顔を——上げた。








「——月」






「——どうした」








「——賢者さん。この、世界に——月は——いくつ——ありますか」








「——一つだ」







——賢者は——即答して。






——そして——ぴたり、と——止まった。








「…………待て」







「——三年——前まで——二つ——ありました」








——誠は——静かに——言った。







「——星喰いとの——戦いの——後に——一つに——なりました」








「…………」







——工房が。






——凍りついた。








「——待って」







——一色が——立ち上がった。







「——私、それ——知らないわ」






「——一色さん——帝国に——いたから——です」








——誠は——頷いた。







「——でも——見てた——人は——大勢——います」






「——あの、頃——月は——二つ——出てました」








「——本当か——!!」







——賢者が——広間に——飛び出した。







「——誰か——!! 三年——前の——月を——覚えて——おる——者は——!!」








「——二つ——出てたよ——!」






——通りかかった——おかみさんが——けろり、と——言った。







「——大きいのと——小さいのが——な」






「——小さい、方が——ある日——消えた」








「——なぜ——言わぬ——!!」






「——聞かれなかったからさ——!」








「——またか——!!!」









——だが。






——誠は——真剣な——顔で——言った。








「——賢者さん。僕たち——ずっと——おかしかったんです」







「——なに?」






「——月が——一つ——消えたのに」








——誠は——ゆっくりと——言った。







「——誰も——大事だと——思ってなかったんです」








「…………」







「——僕も——です」







——彼は——うつむいた。







「——"戦いが——終わったから——元に——戻ったんだな"、って」






「——それで——終わりに——してました」








「…………」







——賢者は。






——机に——手を——ついた。







「——一色。計算——できるか」






「——何を?」








「——月が——一つ——消えたら——星の——道は——どうなる」








「…………」







——一色は。






——蒼白に——なった。







「——やってみる」









——三日。







——工房の——灯りは——消えなかった。








——そして——四日目の——朝。







「……合う」







——一色が——ぽつり、と——言った。







「——なんだと?」








「——月が——一つ——消えた、と——して——計算すると」







——彼女の——手が——震えていた。







「——今の——落ち方と——ぴたり——合うわ」








「…………」







——工房が。






——静まり返った。








「——それが——原因、か」






「——たぶん」








——一色は——紙を——置いた。







「——二つの——月が——両側から——引いて——釣り合ってたの」






「——一つ——消えたから——釣り合いが——崩れた」






「——そして——太陽の、方に——寄り始めた」








「——では——月を——戻せば——!」







——賢者が——身を——乗り出した。







「——戻せば——止まるのか——!!」






「——止まる、はずよ」








「——できるのか——!?」






「…………」








——一色は。






——長い、こと——黙って。






——そして——首を——振った。








「——月を——作るのよ」






「——人工の——太陽より——遥かに——大きいわ」








「——桁は——どれほどだ」






「——考えたく——ない」








「…………」









——だが。






——誠は。






——じっと——紙を——見つめていた。








「——一色さん」






「——何?」






「——月って——なんで——大きい、必要が——あるんですか」








「…………は?」







「——要るのは——"引く——力"、ですよね」







——誠は——考えながら——言った。







「——月の——形じゃ——なくて」








「——それは——そうだけど」






「——引く——力が——同じなら——小さくても——いいんじゃ——ないですか」








「…………」







——一色が。






——ゆっくりと——顔を——上げた。







「——待って」






「——小さくて——重い——ものが——あればいいのか」








「——そうです」






「——そんな——ものが——あるの?」








「——分かりません」







——誠は——素直に——言った。







「——だから——聞いて——みませんか」









——高座が——また——組まれた。







「——皆さーん——! 続けて——問いです——!」







——魔法使いが——札を——掲げた。







「——"小さいのに——ものすごく——重い——ものは——ありますか"——!」








——虚空が。






——一瞬——静まった。







——そして。







——文字が——濁流のように——流れ始めた。








「——うわあ——!! すごい——勢いです——!!」






「——読め——!!」








「——ええと——! "中性子星"——!」






「——なんだ——それは——!」







「——"小さじ——一杯で——山ほどの——重さ"、だそうです——!」








「——なんだと——!?」







——賢者が——飛び上がった。







「——他にも——来てます——!」








——魔法使いが——次々と——読み上げた。







「——"白色矮星"——!」






「——"それより——さらに——重いのが——ある"、って——!」








「——それは——なんだ——!!」








——魔法使いは。






——虚空の——文字を——たどって。






——そして——読んだ。








「——"ブラックホール"」








「…………」







——工房が。






——凍りついた。








「——待て」







——賢者が——低く——言った。







「——それは——聞いた、ことが——ある」








「——はい——!」







——魔法使いが——帳面を——めくった。







「——三年——前です——!」






「——"光さえ——抜け出せないほど——強く——引く——もの"——!」








「…………」







——誠は。






——その——言葉を——聞いて。






——背筋が——ぞくり、と——した。








——三年——前。







——賢者が——紙に——書いた——問いが——あった。







——「強く——引く——もので。太陽で——ないものは——何か」







——その——答えが。







——三年——前に——一度——出ていた。








「——賢者さん」






「——覚えて——おる」








——賢者は——低く——言った。







「——あの、時は——"今の——技術では——できぬ"、と——切り捨てられた」






「——だから——我らは——忘れた」








「——今も——できないんでしょうか」







「——聞け——! 魔法使い——!」









——だが。






——返ってきた——答えは。






——三年——前と——同じ、だった。








「——"人には——作れません"、って——!」







「——やはり、か」








——賢者は——うなだれた。







「——待って——ください——!」







——魔法使いが——手を——挙げた。







「——続きが——あります——!」








「——なんだ——!」






「——"人には——作れませんが"——!」








——彼女は——虚空を——見つめた。







「——"そちらには——月を——作った——者が——いるのでは?"、って——!」








「…………」







——工房が。






——完全に——静まり返った。








「…………」






「…………」







——誰も——動かなかった。







——そして。







——全員の——目が。







——ゆっくりと。







——誠に——向いた。








「…………」







「——なぜ——僕を——見るんですか」








「——田中」







——賢者が——かすれた——声で——言った。







「——月を——作れる——者に——心当たりは——あるか」








「…………」







——誠は。






——長い、こと——黙って。






——そして——ぽつり、と——言った。








「——一人——います」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「星を止める方法を、探し始めた。賢者さんが、"問い方を変える"、って。前は、"星を動かすには"、って聞いた。今度は、"星の軌道が狂う原因には、どんなものがありますか"。……返ってきたのが、"大きなものがぶつかる"、"近くを大きなものが通る"、"星の重さが急に変わる"、そして——"近くの星がなくなる"。……月のようなものでも、影響がある、って。……月。この世界に、月は、一つ。でも、三年前まで、二つ、ありました。星喰いとの戦いの後に、一つに、なった。……一色さん、知らなかった。帝国に、いたから。でも、見てた人は、大勢いる。おかみさんが、"二つ、出てたよ。小さい方が、ある日、消えた"、って、けろり、と。賢者さんが、"なぜ言わぬ"、って。"聞かれなかったからさ"、って。……でも、僕、思った。月が一つ、消えたのに、誰も、大事だと、思ってなかった。僕も、です。"戦いが終わったから、元に戻ったんだな"、って、それで、終わりにしてた。……一色さんが、三日、計算して、"合う"、って。月が一つ消えたと、して計算すると、今の落ち方と、ぴたり、合う。二つの月が、両側から引いて、釣り合ってた。一つ消えたから、崩れた。……じゃあ、月を、戻せばいい。でも、人工の太陽より、遥かに、大きい。桁を、考えたくない、って。……だから、聞いてみた。"月って、なんで、大きい必要が、あるんですか"、って。要るのは、引く力で、形じゃ、ない。引く力が同じなら、小さくても、いいんじゃ、ないか。……一色さんが、"小さくて重いものが、あればいいのか"、って。それで、虚空の皆さんに、聞いた。"小さいのに、ものすごく重いものは、ありますか"、って。……返ってきたのが、"中性子星"、"白色矮星"、そして——"ブラックホール"。……三年前に、一度、出てた。"光さえ抜け出せないほど、強く引くもの"。あの時は、"今の技術ではできぬ"、って、切り捨てられて、僕たち、忘れてた。……今も、"人には作れません"、って。でも、続きが、あった。……"人には作れませんが、そちらには、月を作った者が、いるのでは?"、って。……皆、僕を、見た。賢者さんに、"月を作れる者に、心当たりはあるか"、って、聞かれた。……一人、います。じいちゃん。あの人に、会いに行きます」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。虚空の——賢人が——最後に——書いた——その——一行が。




——なぜ——今——出てきたのかを。


そして——三年——前には——書かれなかった——その、問いを。




——誰が——虚空に——投げたのかも。





——今は……まだ、誰も——気づいて——いない。

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