表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
367/466

第100話「影の、道」

竜を——七頭——連れて——帰る。





——それは——見物、だった。







「——おい——! 空を——見ろ——!」






「——竜が——三十頭——!?」






「——いや——待て——! 抱えられて——おる——のも——おるぞ——!」








——飛べぬ——七頭は。






——若い——竜たちに——数頭がかりで——運ばれてきた。







「——すまぬな……」







——運ばれる——老竜が——うつむいた。







「——気に——すんな、爺さん」






「——重うて——かなわんが」






「——余計な、ことを——言うな——!」









——荒野に——降り立つと。






——地下じゅうから——人が——出てきた。








「——うわああ——! 竜だ——!」






「——三十——! 三十——おるぞ——!」






「——イーッ——!!」








「——皆さーん——!!」







——魔法使いが——虚空に——叫んだ。







「——竜の——里から——戻りました——!!」






「——三十頭——お借りできました——!!」








「——コメント——どないや」






「——"多すぎ"、"画面が——竜"、"どういう——交渉した"、って——!!」









——だが。






——誠は——すぐに——動いた。








「——一色さん——! 第九層の——空いてる——広間、使えますか——!」






「——使えるけど——何に?」






「——七頭——住んで——いただきます——!」








「——竜が——地下に——!?」






「——涼しいですから」









——だが。






——老竜が——首を——振った。







「——構うな、八百屋」






「——我らは——ただの——荷物だ」






「——隅に——置いて——おけば——よい」








「——駄目です」







——誠が——即座に——言った。







「——なに?」






「——皆さんに——お願いしたいことが——あります」








「——飛べぬ——者に——何が——できる」






「——目が——いいですよね」








「…………む?」







「——竜は——夜も——飛ぶって——藤原さんが——言ってました」







——誠は——続けた。







「——目から——光を——出して——地面を——照らせる、って」






「——ということは——遠くも——よく——見えますよね」








「——それは——そうだが」






「——影を——見張って——いただけませんか」








「…………は?」









——誠は——地図を——広げた。







「——これから——世界中に——弓を——十——作ります」






「——一つで——一箇所——影を——落とします」







「——でも——影は——少しずつ——ずれます」






「——誰かが——ずっと——見張って——"ずれてきた"、と——知らせないと——いけません」








「——それを——我らに?」






「——はい」








——誠は——真剣な——顔で——言った。







「——皆さんは——飛べません」






「——でも——だから——ずっと——同じ——場所に——いられます」







「——見張りには——それが——一番——大事です」








「…………」







——老竜が。






——ゆっくりと——首を——擡げた。







「——八百屋」






「——はい」






「——それは——本気で——言うて——おるのか」








「——本気です」







——誠は——きっぱりと——言った。







「——飛べる——方は——弓を——引きます」






「——飛べない——方は——見張ります」






「——どっちも——なければ——影は——保てません」








「…………」







——老竜は。






——長い、こと——黙っていた。







——そして。







——ぼそり、と——言った。








「——三年ぶりだ」






「——何が——ですか」






「——役目を——与えられたのは」








「…………」







——誠は。






——何も——言わずに——頭を——下げた。









——こうして。






——弓の——建造が——始まった。








「——十——だぞ——!」







——賢者が——図面を——配った。







「——一年で——一つ——作った——ものを——十だ——!」






「——だが——今度は——図面が——ある——!」








「——それに——手も——増えたわ」







——一色が——名簿を——めくった。







「——鬼族。虫人族。魔族。悪の組織」






「——それに——怪獣の——皆さん」








「——グオ。任せろ」







——怪獣が——のっそりと——頷いた。








「——場所は——決まったのか」






「——一色さんが——十箇所——選んでくれました」








——誠は——地図を——指した。







「——人が——住んでる——ところの——上に——影が——来るように」






「——そして——弓は——人の——いない——荒れ地に——置きます」








「——遠いですね」







——魔法使いが——地図を——覗いた。







「——一番——遠いのは——海の——向こうです」






「——竜が——おる」









——半年。







——世界は——弓を——作り続けた。








「——三つ目——完成——!」






「——五つ目——骨組み——上がりました——!」






「——七つ目——資材が——足りません——!」








「——回せ——! 二つ目の——余りを——回せ——!」









——その——間も。






——荒野の——弓は——毎日——撃たれていた。







——一日——六枚。







——荒野には——常に——影が——あった。








「——涼しいねえ」







——影の——中で。






——年寄りたちが——縁台を——並べていた。







「——三年ぶりに——地上で——茶が——飲める」






「——長生きは——するもんだ」








「——皆さん——水は——飲んで——ください——!」







——誠が——麦茶を——配って——回る。







「——涼しくても——地上ですから——!」









——そして——見張り台。







——荒野の——高台に——設えられた——場所で。






——老竜が——空を——見つめていた。








「——おい、八百屋」






「——はい」






「——今日の——布——半つ——南へ——ずれて——おる」








「——分かりますか——!?」






「——見えるからな」








——老竜は——けろり、と——言った。







「——それと——三枚目の——布」






「——端が——少し——ほつれて——おる」








「——ほつれ——!?」







——一色が——飛んできた。







「——本当ですか——!?」






「——うむ。……あれは——じきに——裂けるぞ」









——三日、後。






——三枚目の——布が——裂けた。








「——当たった——!!」







——一色が——駆けてきた。







「——おじいさん——! なぜ——分かったんですか——!!」








「——見えるからだ」







——老竜は——面倒くさそうに——言った。







「——我らは——空を——飛ぶ。遠くの——獲物を——見分けねば——生きられん」






「——布の——ほつれくらい——見える」








「——それ——ものすごく——役に——立ちます——!!」







——一色は——興奮していた。







「——裂ける——前に——分かれば——次を——先に——上げられます——!」






「——影が——途切れません——!!」








「…………」







——老竜は。






——妙な——顔で——黙り込んで。






——そして——ぼそり、と——言った。








「——役に——立って——おるのか」






「——立ってます——!!」








「…………ふん」







——老竜は。






——顔を——背けたが。







——尻尾が。






——わずかに——動いていた。









「——竜は——皆——ああなんですね」







——誠が——ぽつり、と——言うと。






——藤原が——即座に——首を——伸ばした。








「——なんの、こっちゃ」






「——いえ。なんでも——ないです」









——そして——さらに——半年。







——十本目の——弓が——立った。








「——できた——!!」







——賢者が——絶叫した。







「——一年で——十——だ——!!」






「——前は——一つに——一年——かかったのに——!!」








「——図面が——あったからよ」







——一色が——疲れた——顔で——笑った。







「——それと——手が——増えたから」








「——では——いよいよか」






「——ええ」









——決行の——日。







——世界の——十箇所で。






——同時に——弓が——構えられた。








「——皆さーん——!!」







——竜の——背から。






——魔法使いの——声が——世界に——響いた。








「——本日——世界十箇所——同時——打ち上げ——!!」






「——うまく——いけば——世界中に——影が——落ちます——!!」








「——コメント——どないや」






「——"歴史的——瞬間"、"一年——見てた"、"頼む"、って——!!」









『——各地……繋がってる』







——皆瀬の——光が——世界を——走った。







『——第一——よし。第二——よし。第三——よし』






『——……第十——よし』








「——見張りは——!」







「——七頭——配置——完了だ」







——老竜が——高台から——答えた。







「——三箇所は——若い——者に——見させて——おる」






「——ほつれの——見分け方は——教えた」








「——ありがとう——ございます——!」









「——では——いくぞ——!!」







——賢者が——表を——掲げた。







「——刻限——朝——四刻——!」






「——各地——狙いを——合わせよ——!」








『——合わせた』








「——点火——!!!」








——ひゅうう。







——十の——荒れ地から。






——同時に——矢が——伸びた。








「——一段目——切り離し——!」






「——二段目——点火——!」






「——三段目——!」








『——十——全部……回ってる』







「——今です——!!」








——十の——留め具が——外れ。






——十の——薄布が——広がった。








「…………」







——世界中で。






——人々が——足元を——見ていた。








——そして。







——すう、と。







——大地が——翳った。








『——西の——里……"暗くなった"』






『——北の——里……"暗くなった"』






『——海の——都……"暗くなった"』







『——全部……暗くなった』








「…………」







——荒野が。






——しん、と——なった。







——そして。








「——うおおおおおお——!!!」







——爆発した。







「——世界中だ——!!」





「——世界中に——影が——落ちた——!!」





「——イーーーッ——!!」








「——皆さーん——!!」







——魔法使いが——泣きながら——叫んだ。







「——成功です——!! 世界中に——影が——できました——!!」






「——コメントが——見えません——!! 流れが——速すぎて——!!」









——だが。






——誠は。






——高台の——老竜を——見上げていた。








「——どうですか——!」






「——見えて——おる」








——老竜は——空を——睨んだまま——言った。







「——十——全部——きちんと——広がって——おる」






「——ほつれも——ない」








「——ありがとう——ございます——!」







「——礼など——要らぬ」








——老竜は——ぼそり、と——言った。







「——我は——ただ——見て——おるだけだ」








「——いえ」







——誠は——首を——振った。







「——今日——世界中で——影が——できました」






「——その——十——全部を」






「——一人で——見てるのは——おじいさんだけです」








「…………」







——老竜は。






——空を——見つめたまま。






——長い、こと——黙っていた。







——そして。







——ぽつり、と——言った。








「——三年——前」






「——はい」






「——飛べなく——なった——日、な」








——老竜の——声が。






——わずかに——震えた。







「——もう——空を——見んと——決めた」






「——見れば——辛いからな」








「…………」







「——三年——地面ばかり——見て——おった」







——老竜は。






——ゆっくりと——首を——擡げた。







「——だが——今は——毎日——空を——見て——おる」








「…………」







「——悪くない」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「竜を、三十頭、連れて帰った。飛べない七頭は、若い竜たちが、抱えて運んできた。地下じゅうから、人が出てきて、大騒ぎ。……七頭には、第九層に、住んでもらうことにした。老竜さんが、"我らは、ただの荷物だ。隅に置いておけばよい"、って言うから、駄目です、って。……お願いしたのは、影の見張り。竜は、夜も飛ぶから、目がいい。それに、飛べないから、ずっと、同じ場所にいられる。見張りには、それが一番、大事です。……老竜さん、"それは、本気で言うておるのか"、って。本気です。飛べる方は、弓を引く。飛べない方は、見張る。どっちも、なければ、影は保てません。……そしたら、"三年ぶりだ。役目を与えられたのは"、って。……それから、一年。弓を、十、作った。前は、一つに一年かかったのに。図面があったのと、手が増えたから。その間も、荒野には、毎日、影があった。年寄りたちが、縁台を出して、三年ぶりに、地上で茶を飲んでた。……老竜さんは、すごかった。"今日の布、半つ、南へずれてる"、"三枚目の布、端がほつれてる。じきに裂ける"、って。三日後、本当に、裂けた。一色さんが、飛び上がってた。裂ける前に分かれば、次を先に上げられる。影が途切れない。……"役に立っておるのか"、って聞かれたから、"立ってます"、って。尻尾、動いてました。竜は、皆、ああなんですね、って言ったら、藤原さんに、睨まれた。……そして、今日。世界十箇所で、同時に、打ち上げた。皆瀬さんが、各地を繋いで、十、同時。……全部、暗くなった。西も、北も、海の都も。世界中で、影が、落ちた。皆、爆発してた。……僕は、高台の老竜さんを、見上げてた。"十、全部、きちんと広がっておる"、って。礼を言ったら、"我は、ただ、見ておるだけだ"、って。……でも、十、全部を、一人で見てるのは、あの人だけです。そう言ったら、しばらく黙って、それから、"飛べなくなった日、もう空を見んと決めた。見れば辛いからな。三年、地面ばかり見ておった"、って。"だが、今は、毎日、空を見ておる"、って。"悪くない"、って。……じいちゃん。今日は、いい日でした」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。世界中に——影が——落ちた——この、日が。




——人々にとって——三年ぶりの——安堵で、あった、ことを。


そして——その——安堵が。




——一つの——大事な——ことを——皆に——忘れさせる、ことも。





——星は——今も——落ち続けている、という——ことを。





——今は……まだ、誰も——口に——して——いない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ