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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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閑話「ヒーロー、集まりすぎ」

第六層で。





——崩落が——起きた。







「——助けてくれ——!! 中に——人が——!!」







——通路の——一部が——落ちて。






——数人が——奥に——閉じ込められた。








「——誰か——!!」







——そして。







——地下じゅうから。






——ヒーローが——集まってきた。









「——HAHAHA——!! 待たせたな——!!」







——最初に——着いたのは——星条の——ヒーロー。







「——早い——! 助かる——!」







——だが——彼は。






——瓦礫を——背に——して——立ち止まった。








「——待って——くれ——!」






「——え?」






「——今——絵になる——!」








——彼は——腕を——組んで——顎を——上げた。







「——魔法使いは——おらんか——! 記録水晶を——!」






「——先に——助けて——ください——!!」









「——救助に——参りました——!」







——次に——来たのは——宇宙防衛隊の——緑。







「——おお——! 早く——!」






「——では——まず——こちらに——ご記入を」








——彼は——書類を——差し出した。







「——は?」






「——"救助——要請——申請書"、です」






「——氏名。層。事故の——種別。発生——時刻」








「——中に——人が——おるんだぞ——!!」






「——手順は——大事です」









「——お待たせ——しました——!」







——赤が——駆けつけた。







「——おお——! 赤——! 瓦礫を——どけてくれ——!」






「——承知——! ……その、前に」








——彼は——瓦礫を——見上げた。







「——力任せに——砕くと——粉塵が——出ます」






「——地下の——空気を——汚すのは——いかがな——ものかと」








「——今——それを——言うか——!!」









「——安全第一——!」







——桃が——現れた。






——両手に——兜を——抱えている。







「——皆さん——被って——ください——!」






「——おお——! それは——ありがたい——!」








——だが——桃は。






——瓦礫の——向こうにも——兜を——投げ込み始めた。







「——中の——方も——被って——ください——!」






「——被る——余裕が——あるなら——出て——おるわ——!!」









「——さて——皆様」







——駄々丸が——高座を——組み始めた。







「——何を——しとるんですか——!!」






「——場が——重うござんす」







——彼は——扇子を——広げた。







「——こういう、時こそ——一席」






「——時が——ないんです——!!」






「——四半刻で——済みやす」






「——長い——!!」









「——待たせたな——!」







——光の勇者が——到着した。







「——勇者さん——! ようやく——まともな——人が——!」







——彼は——瓦礫に——手を——かけて。






——一つ——持ち上げた。








「——よし——! これで——四千八十三人目だ——!」








「——まだ——誰も——助けて——ませんが——!?」






「——見込みだ——!」






「——数えるな——!!」









「——遅くなった——!」







——武闘家が——飛んできた。







「——武闘家さん——! 力仕事を——!」






「——任せろ——! ……ときに——お前」








——彼は——通報した——男を——見た。







「——顔色が——悪いぞ。昨夜——寝たか」






「——え?」






「——夜更かしは——体に——悪い」






「——それと——野菜を——食って——おるか」








「——今は——いいですから——!!」









「——猫の——手も——借りたい——!!」







——誰かが——叫んだ——その、時。







「——承知——した」







——山田が——静かに——頷いて——去っていった。








「——え? どこへ——!?」









「——おおおお——!!」







——グランデルが——駆けつけた。







「——グランデルさん——! 瓦礫を——!」






「——おうよ——! ……ん?」








——彼は——瓦礫の——向こうから——聞こえる——声に——耳を——澄ませた。







「——おっかあ——! おっかあに——会いてえ——!」







「…………」







——ぐしゃり。







「——うおおおお——!! 泣ける——!!」







「——泣いてる——場合じゃ——ないです——!!」






「——ワシ——駄目なんだァ——! 親の——話は——駄目なんだァ——!!」









「——お待たせ——しました——!」







——魔法使いが——到着した。







「——魔法使いさん——! 火の——魔法で——!」






「——はい——! ……あ、ちょっと——待って——ください」








——彼女は——手に——持った——椀を——見た。







「——これ——伸びちゃうので」






「——置いてきて——ください——!!」






「——もったいないです——!」









「——助けは——来んのか——!!」







——瓦礫の——向こうから——悲鳴が——上がる。







「——竜だ——! 竜を——呼べ——!」








——伝令が——走り。






——そして——戻ってきた。








「——藤原さん——なんて——!?」






「——"あと——三時間で——着く"、と——!」








「——三時間——!? 第六層は——すぐ——そこですよ——!?」






「——"第八層に——おった"、そうです——!」








「——なぜ——下に——!!」









「——退け——!」







——魔族の——四天王が——現れた。







「——おお——! 助かる——!」







——彼らは——見事な——手際で——瓦礫を——崩し始めた。








「——さすがだ——!」






「——これで——助かる——!」








——だが。






——崩した——そばから。






——四天王は——破片を——一つずつ——拾い集め始めた。








「——何を——して——おるんですか——!!」






「——散らかしたまま——帰れるか」






「——後で——いいです——!!」






「——ならぬ。仕事は——最後まで——きちんと——やる」








「——毎回——それで——残業して——おるでは——ないか——!!」









「——皆——よくやった——!」







——黄が——現れて——札を——掲げた。







「——"本日——頑張ったで賞"——!」






「——まだ——終わって——ません——!!」









「——ときに」







——青が——のんびりと——言った。







「——この、崩落だが」






「——なんです——!?」






「——原因は——奥の——柱の——腐りだ」








「——なぜ——分かるんですか——!?」






「——見た」








「——先に——言って——ください——!!」







——賢者が——絶叫した。







「——お前——いつも——そうだ——!!」






「——この前も——駄々丸の——噺の——落ちを——先に——言ったであろう——!!」








「——結末は——早く——知った、方が——よい」






「——よくない——!!」









「——おお——! 揃って——おるな——!」







——アルフレートが——到着した。







「——アルフレート様——! 力を——貸して——ください——!」






「——うむ。……ときに——田中」








——彼は——真剣な——顔で——言った。







「——この、瓦礫は——重さで——言えば——どれほどだ」






「——え?」






「——芋の——袋——何個——分か」








「——今——聞きます——!?」






「——大事だ。見当が——つかねば——力の——加減が——できん」








「……まあ——それは——確かに」






「——うむ。では——三十——袋と——見た」








——そして——彼は。






——的確に——瓦礫を——押さえた。







「——崩れる——ぞ——! そこを——支えろ——!」








「——なんだ——! アルフレート様——ちゃんと——してる——!」






「——当然だ」









——そこへ。






——山田が——戻ってきた。







「——猫を——連れてきた」







「——え?」








——彼の——後ろに。






——猫が——百匹ほど——連なっていた。








「——なんで——!?」






「——"猫の——手も——借りたい"、と——言ったであろう」






「——ものの——たとえです——!!」








「——む」







——山田は——首を——かしげた。







「——では——この、猫は」






「——魔王さんの、ところに——返してきて——ください——!!」









——そして。







——騒ぎの——最中。







——一人。






——瓦礫の——脇に——回り込んでいた——男が——いた。








「——皆さーん——!」







——誠、だった。







「——中の——方と——話が——できました——!」








「——なんだと——!?」







——一同が——振り返った。







「——横に——細い——隙間が——ありました」







——誠は——淡々と——言った。







「——中は——三人。全員——無事です」






「——水と——干し芋を——差し入れました」








「——いつの間に——!?」






「——皆さんが——揉めてる——間に」








「…………」







「——それと——奥の——柱が——腐ってるので」






——誠は——続けた。







「——上から——崩すと——二度目が——来ます」






「——横から——広げてください」








「——それは——私が——先ほど——言った」






——青が——頷いた。






「——貴様は——結末しか——言わん——!!」









——四半刻、後。






——三人は——無事に——助け出された。








「——ありがとう——ございます——!」






「——助かった——!」








「——HAHAHA——!! 我らの——手柄だ——!!」






「——四千八十六人目だ——!」






「——今日は——頑張ったで賞——!」








「——申請書は——後日で——結構です」






「——書かせるな——!!」









——そして——三時間、後。







「——着いたでー」







——藤原の——首が——降りてきた。







「——終わりました——!!」






「——なんでやねん——!」









——夜。






——いや——四刻の——闇の——刻限。







「——旦那」







——駄々丸が——並んだ。







「——今日は——大変で——ござんしたね」






「——はい」








「——十五人も——集まって」






「——結局——旦那が——一人で——見つけなすった」








「——いえ」







——誠は——首を——振った。







「——最後は——皆さんが——瓦礫を——どけました」






「——僕、一人じゃ——一つも——動かせません」








「——ですがねェ」







——駄々丸は——煙管を——ふかした。







「——旦那が——おらにゃ——今頃——まだ——申請書を——書いて——おりやすよ」








「……そうかも——しれません」







——誠は——苦笑した。







「——でも——皆さん——悪気は——ないんです」






「——それぞれ——一番——大事だと——思うことを——やってるだけで」








「——写真が——大事な——お人も——おりやすか」






「——あの、人は——皆に——見てほしいんですよ」







——誠は——静かに——言った。







「——世界を——失ったから」






「——誰かに——見て——もらわないと——自分が——いる——気が——しないんだと——思います」








「…………」







——駄々丸は。






——煙管を——止めた。








「——数を——数える——お人も」






「——救えなかった——数の、方を——覚えてるからだと——思います」








「…………」







「——だから——僕、止めないんです」







——誠は——笑った。







「——ただ——その、間に——僕が——隙間を——探すだけです」









——駄々丸は。






——長い、こと——黙って。






——そして——ぽつり、と——言った。








「——旦那」






「——はい」






「——あっしゃあ——長話が——過ぎやすかね」








「——今日は——ちょっと——長かったです」






「——はっきり——言いなさる」








「——でも」







——誠は——付け加えた。







「——瓦礫の——向こうの——人たち」






「——駄々丸さんの——声が——聞こえて——安心した、って——言ってました」








「…………」







——駄々丸は。






——扇子で——顔を——隠した。







「——旦那」






「——はい」






「——そういう、ことを——言うから」






「——皆——旦那から——離れられねェんで——ござんすよ」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「第六層で、崩落。三人、閉じ込められた。……そしたら、ヒーローが、十五人、集まった。星条の人は、瓦礫を背に、決めポーズ。"今、絵になる"、って。緑さんは、"救助要請申請書"、を、差し出してきた。赤さんは、"力任せに砕くと、粉塵が出る"、って、環境の心配。桃さんは、瓦礫の向こうに、兜を、投げ込んでた。被る余裕があるなら、出てきてます。駄々丸さんは、高座を、組み始めた。勇者さんは、瓦礫を一つ持ち上げて、"四千八十三人目"、って。まだ誰も、助けてません。武闘家さんは、通報した人に、"夜更かしは、体に悪い。野菜、食ってるか"、って。誰かが、"猫の手も借りたい"、って言ったら、山田さんが、本当に、猫を百匹、連れてきた。グランデルさんは、中の人が、"おっかあに会いてえ"、って言っただけで、号泣。魔法使いさんは、"これ、伸びちゃうので"、って、椀を持ったまま。藤原さんは、"あと三時間で着く"、って。第八層に、いたらしい。なぜ、下に。魔族の四天王は、瓦礫を崩した、そばから、破片を拾い集めてた。黄さんは、"頑張ったで賞"。青さんは、"原因は、奥の柱の腐りだ"、って、いきなり、結末を言った。先に言ってください。アルフレート様は、"この瓦礫は、芋の袋、何個分か"、って、聞いてきた。今ですか、って思ったけど、"見当がつかねば、加減ができん"、って。……確かに。それで、ちゃんと、支えてくれた。……僕は、皆さんが揉めてる間に、横に回って、細い隙間を、見つけた。中の三人、無事だった。水と干し芋を、差し入れて、"奥の柱が腐ってるから、横から広げてください"、って、伝えた。青さんが、"それは、私が先ほど言った"、って。……四半刻で、助け出せた。皆、"我らの手柄だ"、って。……夜、駄々丸さんに、"十五人も集まって、結局、旦那が一人で見つけた"、って、言われた。でも、瓦礫を、どけたのは、皆さんです。僕、一つも、動かせません。……皆さん、悪気は、ないんです。それぞれ、一番大事だと思うことを、やってるだけ。写真の人は、世界を失ったから、誰かに見てもらわないと、自分がいる気が、しないんだと思う。数を数える人は、救えなかった数の方を、覚えてるんだと思う。だから、止めません。その間に、僕が、隙間を探すだけです。……駄々丸さんに、"長話が過ぎますか"、って、聞かれたから、"今日は、ちょっと長かったです"、って言った。でも、瓦礫の向こうの人たち、"駄々丸さんの声が聞こえて、安心した"、って、言ってました。じいちゃん、皆、いい人です。ちょっと、変ですけど」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。十五の——英雄が——一人も——見つけられなかった——その、隙間を。




——なぜ——彼だけが——見つけたのかを。


そして——「その、間に——僕が——隙間を——探すだけです」、という——その——言い方が。




——この、世界で——彼が——ずっと——やってきた——ことの。





——そのもの——だったことも。





——今は……まだ、誰も——並べて——考えて——いない。

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