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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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閑話「悪の組織、冤罪帳」

八一八号の——冤罪は。





——一度や——二度では——なかった。







——後に——駄々丸が——高座で——語った——ところに、よれば。






——数えて——七度。







——曰く。







「——一つずつ——聞いていただきやしょう」









一、不死身の魔王殺人事件





——それは——題からして——おかしかった。







「——魔王が——殺されたぞ——!!」







——第九層の——通路。






——真紅の——巨躯が——倒れていた。







——その——脇に。






——黒ずくめが——一人——立っていた。








「——イ?」






「——現行犯だ——!!」






「——イイイイ——!?」








——縄を——打たれた——その、時。







——むくり。







「——うるさい」







——魔王が——起き上がった。







「——ま、魔王——!?」






「——生き返った——!?」








「——昼寝だ」







——魔王は——欠伸を——した。







「——ここが——一番——涼しいのだ」






「——それに——あやつは」







——彼は——八一八号を——指した。







「——枕を——貸して——くれたのだ」








「——イー」








「——そもそも——魔族は——不死身です——!!」







——誠が——叫んだ。







「——"魔王殺人事件"、って——題が——最初から——成り立ってません——!!」









二、魔法学院爆発事件





——どごおん。







——第三層の——学び舎が——吹き飛んだ。







——煙の——中に。






——黒ずくめが——立っていた。








「——犯人だ——!!」






「——イーッ——!?」








「——待って——ください——!」







——煤だらけの——生徒が——手を——挙げた。







「——僕です……。火の——魔法の——加減を——間違えて……」








「——また——お前か——!!」







——教師が——頭を——抱えた。






「——今月で——四度目だぞ——!!」








「——では——なぜ——この者は——ここに——!」







「——あの、方は」







——別の——生徒が——言った。







「——爆発の——前に——"逃げろ"、って——僕らを——外に——出してくれました」








「…………」






「——イー」








三、勇者失踪事件





——アルフレートが——消えた。







「——朝から——姿が——見えん——!」






「——最後に——話した——者は——誰だ——!」








「——イー」







「——お前か——!!」






「——イイイイ——!?」








——半日、後。







「——ただいま——戻った」







——のっそりと——アルフレートが——帰ってきた。







——なぜか——地味な——外套を——羽織り。






——手には——魚を——ぶら下げていた。








「——アルフレート様——!! どこへ——!!」






「——地底湖だ」







——彼は——けろり、と——言った。







「——今日は——休みたくてな。顔を——隠して——釣りに——行っておった」






「——いやあ——大物が——釣れたぞ」








「——一言——言ってください——!!」






「——言えば——止められるであろう」







「——イ」








四、魔王城爆発事件





——どごおん。







——今度は——魔族の——住処が——吹き飛んだ。







——黒ずくめだけが——外に——立っていた。








「——逃げたな——!!」






「——イーッ——!?」








——煙の——中から。






——真っ黒な——魔王が——出てきた。







「……我だ」






「——え?」








「——料理に——挑んで——おった」







——魔王は——うなだれた。







「——火加減を——誤った」








「——魔王さん——料理——してたんですか——!?」






「——お前の——握り飯が——うまいのでな」






「——真似て——みたのだ」








「——握り飯で——なぜ——爆発するんですか——!!」








五、国宝盗難事件





——帝国から——預かった——古い——碑が——消えた。







「——探せ——!!」







——そして——見つかった。







——八一八号の——背負い袋の——中から。








「——証拠だ——!!」






「——言い逃れは——できんぞ——!!」







「——イ……」








「——あ」







——保管所の——番人が——手を——打った。







「——私が——預けました」







「…………は?」







「——掃除の——邪魔だったので——"ちょっと——持ってて"、と」








「——言えよ——!!」






「——忘れて——おりました」








「——八一八号さんも——なんで——半日——持ってたんですか——!!」







「——イー」







——「返せ、と——言われて——ないから」、という——意味、だった。








「——律儀——すぎます——!!」








六、魔王暗殺未遂事件





——八一八号が。






——刃物を——持って——魔王の——部屋へ——向かっていた。







「——裏切りだ——!!」







——デスクロウの——幹部が——叫んだ。







「——止めろ——!!」






「——イイイイ——!?」








——組み伏せられた——八一八号の——後ろから。







——誠が——大鍋を——抱えて——現れた。







「——あの——何を——してるんですか」






「——こやつが——刃物を——!!」








「——僕が——頼んだんですけど」







「…………は?」







「——今日——魔王さんの——誕生日なんです」







——誠は——鍋の——蓋を——開けた。







——中には。






——不格好な——蒸し菓子が——一つ。








「——"切ってください"、って——お願いしたんです」







「…………」






「——イー」








——扉が——開いた。







「——何の——騒ぎだ」







——魔王が——顔を——出して。






——そして——鍋を——見た。








「…………」






「——誕生日——おめでとうございます」








——魔王は。






——長い、こと——黙って。






——そして——ぼそり、と——言った。







「——我の——生まれ日を——覚えて——おったのは」






「——千年で——お前が——初めてだ」








七、世界征服事件





——ある朝。






——首領が——高らかに——宣言した。







「——今日こそ——世界征服だ——!!」






「——イーッ——!!」








——黒ずくめの——一団が——地下に——散った。







「——また——事件か——!!」






「——身構えろ——!!」








——だが。







——第五層。







「——迷子の——お子さんは——こちらへ——!」






「——イーッ——!」








——第七層。







「——押さないで——ください——! 順番に——!」






「——イーッ——!」








——第三層。







「——落とし物——受付は——こちらです——!」






「——イーッ——!」









——夕刻。






——詰所に——戻った——首領は。






——報告書を——読んで——固まった。








「……幹部」






「——はっ」







「——本日の——戦果は」








「——迷子——十四名——保護」






「——配給の——列——整理——完了」






「——落とし物——三十二点——返却」








「…………」







——首領は。






——ゆっくりと——顔を——上げた。







「——なあ」






「——はっ」







「——うち——本当に——悪の——組織だったよな?」








「…………」







——幹部たちが。






——揃って——目を——そらした。







「——最近は——その」






「——社会——貢献しか——して——おりません」








「——世界征服は——どうした——!!」






「——順番待ちで——ございます」






「——まだ——待って——おったのか——!!」









——高座を——降りて。






——駄々丸は——扇子を——閉じた。







「——というのが——七度の——冤罪で——ござんす」







——広場が——どっと——沸いた。








「——ときに——皆様」







——駄々丸は——ふと——真顔に——なった。







「——七度——でござんすよ」






「——七度とも——あの、お人は——何も——して——おりやせん」







「——ただ——そこに——立って——おっただけで」








「…………」







「——なぜ——毎度——疑われたか」







——彼は——扇子で——自分の——顔を——指した。







「——なりで——ござんす」






「——それだけで——ござんす」








——広場が。






——しん、と——静まった。








「——ですがねェ」







——駄々丸は——にやり、と——した。







「——七度——疑われて——七度とも——怒らなんだ」






「——それどころか——次の——日も——広場に——立って——おりやす」







「——皆様。あれが——できやすかい」








「…………」







——広場の——隅で。






——八一八号が——きょとん、と——していた。







「——イ?」








——そして——誰かが。






——ぽつり、と——手を——叩いた。







——一人。





——また——一人。






——やがて——広場じゅうが。







「——イーッ——!!」






「——イーーーッ——!!」








「——イ——!? イーッ——!?」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「駄々丸さんが、高座で、八一八号さんの、冤罪を、七つ、まとめて、語った。……一、魔王殺人事件。魔王さん、昼寝してただけ。しかも、枕を貸してもらってた。そもそも、魔族は、不死身なので、題が、成り立ってない。二、魔法学院爆発事件。生徒さんの、実験失敗。今月で、四度目らしい。八一八号さんは、避難誘導してた。三、勇者失踪事件。アルフレート様が、変装して、地底湖に、釣りに行ってた。"言えば、止められるであろう"、って。四、魔王城爆発事件。魔王さんが、料理に挑戦して、火加減を、間違えた。うちの握り飯を、真似したらしい。握り飯で、なぜ、爆発するんですか。五、国宝盗難事件。保管所の番人さんが、"掃除の邪魔だから、ちょっと持ってて"、って、預けたのを、忘れてた。八一八号さん、返せと言われてないから、半日、背負ってた。律儀すぎる。六、魔王暗殺未遂事件。魔王さんの、誕生日で、僕が、"ケーキを切ってください"、って、頼んだだけ。魔王さん、"我の生まれ日を、覚えておったのは、千年で、お前が初めてだ"、って。七、世界征服事件。首領さんが、宣言したけど、実際の任務は、迷子センターと、列の整理と、落とし物受付。首領さん、"うち、本当に、悪の組織だったよな"、って。幹部の皆さん、"最近は、社会貢献しか、しておりません"、って。……最後に、駄々丸さんが、真顔で、"七度とも、あのお人は、何もしてない。ただ、そこに立ってただけ。なぜ、疑われたか。なりで、ござんす。それだけで、ござんす"、って。皆、静かに、なった。それから、"七度、疑われて、七度とも、怒らなんだ。それどころか、次の日も、広場に立っておりやす。皆様、あれが、できやすかい"、って。……広場じゅうが、"イーッ"、で、埋まった。八一八号さん、きょとん、としてた。じいちゃん、なりで、人を、判断しちゃ、だめですね」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。「なりで——ござんす。それだけで——ござんす」、という——駄々丸の——その——一言が。




——遥かに——先で。





——まるで——違う——ものに——向けて——言い直される、ことを。


そして——七度——疑われて——七度とも——怒らなかった——男が。




——この、地下で——ただ一人。





——誠と——同じ——ことを——して——いたことも。





——今は……まだ、誰も——並べて——考えて——いない。

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