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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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閑話「悪の組織、今日も冤罪」

第五層の——広場に。





——黒ずくめが——一人。






——突っ立っていた。








「——イーッ」







——暗黒教団デスクロウ。






——戦闘員——八一八号。







——本日の——任は。






——「広場に——立ち——配給に——並べぬ——者を——見つけ出す、こと」。








「——今日も——おるな」






「——立っとるだけだ」






「——だが——妙に——礼儀正しいんだよな、あれ」








——通りかかる——者に。






——八一八号は——律儀に——会釈を——返す。







「——イーッ」








——そこへ。







「——うぇぇぇぇん——!」







——泣き声が——した。








「——イ?」







——見れば。






——小さな——女の子が——一人。






——広場の——隅で——泣いていた。








「——イ……イー?」







——八一八号は——困った。







——命じられて——いるのは——「並べぬ——者を——見つける」、こと。






——泣いている——子の——扱いは——命じられて——いない。








「——おかあさんと——はぐれちゃった……」







——女の子は——しゃくり上げた。







「——配給の——列で——押されて……どこか——分かんない……」








「…………」







——八一八号は。






——しばらく——突っ立って。







——そして。






——ゆっくりと——しゃがんだ。








「——イー」







——背中を——向ける。







「……のっていいの?」






「——イーッ」








——女の子を——肩車して。






——八一八号は——歩き出した。







——配給所は——徒歩——五分。








「——優しい……」






「——悪の——組織なんだろ、あれ」






「——最近——分からんくなってきたな」









——その、瞬間。







——広場に。






——声が——降ってきた。








「——HAHAHA——!! 悪党——発見——!!」







——ドォーーン——!!







——キャプテン・フリーダムが——着地した。






——地面に——ひびが——入った。








「——子どもを——さらって——おるな——!!」







「——イ?」








——そして。






——それは——連鎖した。








「——悪は——斬る——!」






——光の勇者。







「——黒い——服——! 我らの——仲間では——ない——黒だ——!」






——山田。







「——説明は——後だ——!」






——武闘家。







「——ドロン——!」






——駄々丸。







「——待ってください——! なんで——駄々丸さんまで——!」






「——場の——勢いで——ござんす」








「——プリズムスター——!」






——魔法使い。







「——竜撃——!」






——天井の——穴から——藤原の——首。







「——対象を——制圧——!」






——宇宙防衛隊の——赤。







「——射撃——!」






——盾の——男。







「……ふん」






——英雄。








「——イーーーーーッ——!?」








——ボコッ。






——ドカッ。






——バキッ。




無抵抗の人間に殴る蹴るの集団リンチである。それも、ヒーロー・英雄と呼ばれる者たちからの。


イッーは丸くうずくまるだけで、必死に耐えるしかないのであった。






「——おじちゃん——ちがうよ——!?」







——誰も——聞いて——いなかった。









「——待って——ください——!!」







——荷車を——引いた——誠が。






——駆け込んできた。







「——何を——してるんですか——!!」








「——おお、田中——! 見よ——!」






——光の勇者が——胸を——張った。







「——悪党を——捕らえた——ぞ——!」








「——その、人——さっきまで——僕と——一緒に——配給を——配ってました——!!」








「…………」






「——え」








——そこへ。






——女の子の——母親が——駆けてきた。







「——ミミ——!! よかった——!!」







「——おかあさーん——!」








——広場が。






——静まり返った。








「——このおじちゃんが——たすけてくれたの——!」







「…………」







——十人が。






——ゆっくりと——地面の——黒ずくめを——見た。







「——イ……」








「——見てたぞ——!」







——広場の——者たちが——口々に——言い始めた。







「——最初から——助けとった——!」





「——ずっと——立っとっただけだ——!」





「——むしろ——毎日——うちの——ばあさんに——荷を——届けてくれとる——!」








「…………」







——キャプテン・フリーダムが。






——ゆっくりと——膝を——ついた。







「……FREEDOM」






「——謝ってください——!」









——翌日。






——地下じゅうに——話が——広まった。








「——聞いたか——! 黒い——お人が——迷子を——助けたんだと——!」






「——それを——英雄どもが——十人がかりで——袋叩きに——したそうだ——!」






「——ひどい——話だな——!」








——そして。






——配給所には——列が——できた。







「——八一八号さん——! これ——うちの——漬物——!」






「——干し芋——持ってきたよ——!」






「——おじちゃん——!」








「——イッ——!?」







——八一八号は。






——包帯だらけで——うろたえていた。








「——イーッ——!」






——子どもたちが——真似を——始めた。







「——イーッ——!」






「——イーッ——!」








「——地下じゅうで——流行って——おりやすね」







——駄々丸が——しみじみと——言った。







「——駄々丸さんは——蹴った——側です」






「——耳が——遠うござんして」









——一方。






——デスクロウの——詰所では。







「——なぜだ——!!」







——首領が——頭を——抱えていた。







「——なぜ——我が——組織で——一番——人気が——戦闘員——八一八号なのだ——!!」








「——首領。子どもらから——握手を——求められて——おります」






「——握手——!?」






「——それと——第七層から——迷子探しの——依頼が——三件」








「——悪の——組織だぞ——!!」







——首領は——机を——叩いた。







「——なぜ——依頼が——来る——!!」









——そこへ。






——誠が——顔を——出した。







「——首領。失礼します」






「——なんだ——!! 貴様の——せいだぞ——!!」






「——僕、何も——してませんけど」








「——それより——お伝えしたいことが——あって」







——誠は。






——束を——机に——置いた。







「——八一八号さん——四十軒——見つけてくれてます」








「……なんだと?」







「——"配給に——並べない——人"、です」







——誠は——束を——めくった。







「——足の——悪い——おばあちゃん。目の——見えない——おじいさん」






「——親の——いない——子ども」







「——全部——あの、方が——一人で——見つけました」








「…………」







「——僕、気づかなかったんです」







——誠は——静かに——言った。







「——ある日から——名簿が——勝手に——増えてて」






「——誰が——書いてるんだろう、と——思って——追いかけたら」






「——あの、方でした」








「——誰にも——言わずに、か」







「——はい」






「——聞いたら——"イーッ"、としか——言いませんでした」








「…………」







——首領は。






——長い、こと——束を——見つめていた。







——四十の——名。






——一つ、ずつ——別の——筆跡で。






——たどたどしく——書かれている。








「……あやつ」






「——はい」






「——字が——下手だな」








「——そこ——ですか」









——首領は。






——立ち上がって。






——そして——詰所の——外へ——出た。








——広場では。






——包帯だらけの——八一八号が。






——子どもに——肩車を——せがまれて——うろたえていた。







「——イ、イーッ」








「——者ども——!」







——首領が——マントを——翻した。







「——イーッ——!」






「——イーッ——!」







——黒ずくめが——一斉に——整列する。








「——あれを——見よ」







——首領は。






——八一八号を——指した。







「——四十軒だ」






「——誰にも——言わず——四十軒——見つけ出した」








「——イ……?」







——八一八号が。






——きょとん、と——した。








——首領は。






——ゆっくりと——言った。








「——あれが」






「——我が——組織の——最強だ」








「…………」







——広場が。






——しん、と——なった。







——そして。







「——イーッ——!!」






「——イーッ——!!」






「——イーーーッ——!!」







——地下じゅうに——響き渡った。








「——イ……イーッ——!」







——八一八号は。






——包帯の——奥で。






——照れくさそうに——敬礼した。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「大変な、騒ぎが、あった。第五層の広場で、悪の組織の、八一八号さんが、迷子を、肩車して、配給所まで、連れて行こうとしたら……フリーダムさんが、空から降ってきて、"悪党発見"、って。そこから、連鎖して、勇者さん、山田さん、武闘家さん、魔法使いさん、藤原さん、防衛隊、盾の人、英雄さん、それに、なぜか、駄々丸さんまで、十人がかりで、袋叩き。……女の子が、"おじちゃん、ちがうよ"、って言ってるのに、誰も、聞いてなかった。僕が、駆けつけて、"その人、さっきまで、僕と一緒に、配給を配ってました"、って言ったら、皆、固まった。お母さんも、来て、女の子が、"このおじちゃんが、助けてくれたの"、って。広場の人たちも、"最初から助けとった"、"毎日、うちのばあさんに、荷を届けてくれとる"、って。……翌日、話が、地下じゅうに広まって、八一八号さんの、ところに、列が、できてた。漬物とか、干し芋とか。子どもたちが、"イーッ"、を、真似して、流行ってる。駄々丸さん、"地下じゅうで、流行っておりやすね"、って、他人事みたいに、言ってたけど、蹴った側です。……首領さんは、"なぜ、我が組織で、一番人気が、八一八号なのだ"、って、頭を、抱えてた。だから、名簿を、見せた。あの人、誰にも言わずに、四十軒、"並べない人"、を、見つけてくれてた。名簿が、勝手に増えてるから、追いかけたら、あの人だった。聞いても、"イーッ"、としか、言わない。……首領さん、名簿を、じっと見て、"字が、下手だな"、って。そこですか。でも、外に出て、部下の皆さんを、整列させて、"あれを見よ。四十軒だ。誰にも言わず、四十軒、見つけ出した"、"あれが、我が組織の、最強だ"、って。……地下じゅうが、"イーッ"、で、埋まった。八一八号さん、包帯だらけで、照れくさそうに、敬礼してた。じいちゃん、あの人、格好よかったです」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。「あれが——我が——組織の——最強だ」、という——首領の——その——一言が。




——この、世界で——一番——早く。





——「強さ」、の——意味を——言い当てて——いたことを。


そして——同じ——ことを。




——いつか——世界そのものが——言う——日が——来ることも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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