第85話「手綱を、握る者」
「手綱式——推進器」の——名が——決まって。
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——次に——ぶつかったのは。
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——ごく——単純な——問題、だった。
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「——誰が——握るのだ」
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——賢者が——腕を——組んだ。
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「——え?」
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「——手綱を——だ」
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——彼は——図面を——指した。
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「——火の——術者が——燃え方を——抑え」
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「——風の——術者が——圧を——均し」
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「——氷の——術者が——壁を——冷やす」
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「——三人——要る」
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「——それは——集めれば——いいんじゃ——ないですか」
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「——どこで——握るのだ」
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「…………あ」
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——誠が。
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——固まった。
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——矢は——飛ぶ。
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——遥かな——高みへ。
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——そこで——手綱を——握るには。
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「——術者も——一緒に——飛ぶ、ということですか」
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「——そうなる」
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「——駄目です——!」
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——誠が——即座に——言った。
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「——四本目、爆発したんですよ——!」
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「——人が——乗ってたら——死にます——!」
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「——分かって——おる」
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——賢者は——渋い——顔で——頷いた。
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「——だが——他に——手が——ない」
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「——遠くから——魔法を——届かせる、ことは——できぬのだ」
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「——魔術師さん。本当に——できないんですか」
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——尋ねられた——魔術師は。
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——首を——振った。
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「——魔法は——目に——見えて——おらねば——効かぬ」
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「——遥か——高みの——矢の——中など——見えるはずが——ない」
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「…………」
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——工房が——沈んだ。
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「——俺が——乗ろう」
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——光の勇者が——立ち上がった。
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「——駄目です——!」
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「——だが——他に——おらぬであろう——!」
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「——勇者さん——火の——魔法——使えますか」
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「…………」
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「——使えん」
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「——じゃあ——駄目じゃ——ないですか」
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「——ぐっ」
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——議論は——三日——続いた。
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——そして。
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——四日目の——朝。
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「——あの」
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——魔法使いが。
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——おずおずと——手を——挙げた。
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「——私、火も——風も——氷も——使えます」
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「…………」
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——工房が。
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——静まり返った。
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「——なんだと?」
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「——学院で——習いました」
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——魔法使いは——照れくさそうに——言った。
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「——視聴者さんの——要望が——いろいろ——来るので」
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「——"火を——見せて"、"氷を——見せて"、"風を——見せて"、って」
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「——応えてるうちに——一通り——覚えました」
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「——一人で——三役——できるのか——!?」
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——賢者が——飛び上がった。
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「——たぶん——!」
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「——駄目です——!!」
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——誠が。
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——大声で——遮った。
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「——爆発するかも——しれないんですよ——!」
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「——誠さん」
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——魔法使いは。
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——静かに——言った。
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「——私、ずっと——後ろに——いました」
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「——え?」
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「——魔王討伐にも——行きませんでした」
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「——採掘にも——行きませんでした」
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「——人工太陽の、時も——空の——上で——実況——してただけです」
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「——それ——一番——大事な——役です——!」
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「——分かってます」
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——彼女は——微笑んだ。
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「——だから——ずっと——それで——いいと——思ってました」
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「——でも」
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——魔法使いは。
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——自分の——手を——見つめた。
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「——今——この、場で——三つ——使えるのは——私だけ、なんです」
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「——なら——私が——行かないと——誰も——行けません」
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「…………」
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「——それに」
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——彼女は。
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——ふと——笑った。
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「——空の——上から——実況したら——絶対——盛り上がります」
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「——そこ——!?」
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——だが。
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——誠は——引かなかった。
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「——分かりました。行くのは——止めません」
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「——でも——条件が——あります」
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「——なんですか」
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「——まず——人を——乗せずに——十回——飛ばします」
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——誠は——指を——折った。
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「——十回——全部——爆発しなかったら——次に——進みます」
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「——一回でも——爆発したら——やり直しです」
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「——十回——!? そんなに——!?」
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「——十回です」
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「——それと——藤原さんに——真下に——ついて——もらいます」
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「——落ちたら——受け止めて——もらうためです」
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「——それと——縄です」
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「——縄?」
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「——長い——縄で——地面と——繋いでおきます」
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——誠は——真剣な——顔で——言った。
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「——おかしくなったら——引き戻せるように」
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「——縄が——重すぎて——飛ばなく——なるぞ」
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賢者が——指摘した。
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「——なら——遠くまで——飛ばなくて——いいです」
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——誠は——きっぱりと——言った。
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「——まず——縄の——届く——高さで——何度も——やります」
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「——そこで——うまく——いくように——なってから——縄を——伸ばします」
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「——それでは——いつまで——かかるか——分からんぞ」
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「——分かってます」
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——誠は——賢者を——見た。
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「——でも——僕は——もう——決めたんです」
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「——何を——だ」
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「——誰も——死なせません」
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「…………」
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——賢者は。
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——長い、こと——黙って。
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そして——ぼそり、と——言った。
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「——学者としては——遅すぎると——言いたい」
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「——はい」
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「——だが——お前の——言う、通りに——する」
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——こうして。




