第84話「五つの、推進器」
火薬の——筒を——矢に——括りつけて。
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——十日ほど——試した。
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——荒野の——果てで。
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——人を——遠ざけて。
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——一本ずつ。
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「——三本目——! 点火——!」
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——ひゅう、と。
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——矢が——空へ——伸びた。
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「——飛んだ——!」
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「——回って——おる——! 真っ直ぐだ——!」
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——羽根を——斜めに——した——効き目は。
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——確かに——あった。
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——だが。
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「——落ちたな」
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——賢者が——渋い——顔で——空を——見上げた。
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「——一色。どれほどだ」
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「——普通に——射るより——少し——遠く、ね」
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——一色は——帳面を——閉じた。
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「——でも——"少し"、よ」
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「——あれを——押しやるには——桁が——足りない」
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「——火薬を——増やせば——どうだ」
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「——四本目で——やったわ」
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——一色は。
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——遠くの——黒い——跡を——指した。
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「——あれよ」
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「——爆発——したのか」
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「——虚空の——方々が——"実際——爆発します"、って——書いてた——通りに、ね」
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「——ぬう」
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——賢者は。
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——しばらく——唸って。
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そして——言った。
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「——聞き直すぞ」
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「——え?」
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「——"花火と——同じ"、とだけ——聞いて——満足して——おった」
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「——だが——他にも——やり方が——あるのでは——ないか」
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——こうして——高座が——組まれた。
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「——皆さーん——! 本日の——問いです——!」
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——魔法使いが——札を——掲げた。
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「——"推進器には——どんな——種類が——ありますか"——!」
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——虚空が——ざわめいた。
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「——来ました——! ええと——五つ——あるそうです——!」
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「——五つも——か——!」
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「——一つ目——! "液体式"——!」
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——魔法使いが——読み上げた。
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「——"燃える——液と——燃やす——ための——液を——混ぜて——燃やす"——!」
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「——"止めたり——また——点けたり——できる"、そうです——!」
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「——止められるのか——!」
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——賢者が——身を——乗り出した。
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「——それは——ありがたい——!」
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「——"ただし——仕組みが——ひどく——複雑"、と——!」
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「——二つ目——! "固体式"——!」
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「——"燃える——ものと——燃やす——ものが——固まりに——なっている"——!」
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「——"簡単で——置いておける。だが——点けたら——もう——止まらない"——!」
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「——それが——我らの——やって——おるものか」
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「——たぶん——そうです——!」
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「——三つ目——! "混ぜ物式"——!」
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「——"固体と——液体を——組み合わせた——中間"、だそうです——!」
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「——四つ目——!」
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——魔法使いが。
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——妙な——顔で——読んだ。
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「——"電気で——粒を——加速して——噴き出す"——!」
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「——なんだと?」
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「——"押す——力は——ものすごく——弱い"——!」
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「——なんだ。使えぬではないか」
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——賢者が——手を——振った。
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「——待って——ください——! 続きが——あります——!」
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「——"だが——燃料の——持ちが——桁違いに——よい"——!」
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「——"何年も——押し続けられるので——長い——旅に——向いている"——!」
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——その、瞬間。
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——工房の——空気が。
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——止まった。
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「…………」
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「——おい」
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——賢者が。
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——かすれた——声で——言った。
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「——今——なんと——言った」
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「——"弱いが——何年も——押し続けられる"、です——!」
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——賢者は。
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——ゆっくりと——机の——上の——紙を——引き寄せた。
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——そこには——ひと月——前に——自分で——書いた——一行が——ある。
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——「人の——力は——尽きる」
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「…………これだ」
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——彼は——立ち上がった。
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「——これだ——!! 我らが——ずっと——探して——おったものだ——!!」
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「——賢者さん——! 落ち着いて——!」
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「——考えて——みろ——!」
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——賢者は——荒野の——方を——指した。
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「——あれを——一撃で——押しやろうと——するから——桁が——足らんのだ——!」
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「——だが——弱くとも——何年も——押し続けられるなら——!」
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「——いつかは——遠ざかる——!!」
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「——賢者」
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——一色が。
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——静かに——遮った。
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「——それ——"電気で"、って——言ったわよ」
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「…………」
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——賢者が。
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——固まった。
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「——エアコンの——時と——同じよ」
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——一色は——淡々と——言った。
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「——仕組みは——分かる。でも——電気が——ない」
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「——地下じゅうの——水車を——集めても——足りないの」
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「…………」
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——工房が。
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——重く——沈んだ。
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「——五つ目も——読みますか」
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——魔法使いが——おずおずと——言った。
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「——読め」
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「——ええと……"原子炉の——熱で——噴き出させる"——!」
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「——"まだ——研究の——段階"、だそうです——!」
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「——向こうでも——できて——おらぬのか」
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「——はい——!」
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「——では——論外だ」
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「——では——聞くぞ」
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——賢者は。
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——覚悟を——決めた——顔で——言った。
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「——"作り方を——教えて——くれ"、と——問え」
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「——はい——!」
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——だが。
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——返ってきた——答えは。
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——短かった。
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「……あの」
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——魔法使いが。
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——困った——顔を——した。
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「——"作り方は——お教え——できません"、って——!」
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「——なんだと——!?」
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「——"あれは——ひどい——高温と——高圧を——扱う——危うい——仕掛けです"——!」
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「——"手順を——安全に——お伝えする、ことが——できません"——!」
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「——今更——何を——言うか——!」
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——賢者が——立ち上がった。
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「——太陽の——作り方は——教えたであろう——!」
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「——星の——動かし方も——!」
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「——待って——ください」
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——誠が——止めた。
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「——あれ——全部——"どうなっているか"、の——話でした」
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「——"どう——作るか"、は——一度も——聞いてません」
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「…………」
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——賢者は。
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——ゆっくりと——腰を——下ろした。
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「……確かに、な」
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「——それに」
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——誠は——続けた。
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「——四本目、爆発しましたよね」
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「——僕たちが——教わった——通りに——やってても——爆発したんです」
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「——もっと——難しい——ものの——作り方を——聞いて——書いた——通りに——やって」
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「——誰かが——死んだら」
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「…………」
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「——教えた——方も——寝覚めが——悪いと——思います」
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——工房が。
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——静まった。
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「……あの」
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——魔法使いが——虚空を——見た。
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「——コメントが——来てます」
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「——なんと」
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「——"そういうこと"、って——」
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「…………」
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——賢者は。
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——長い、こと——黙って。
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そして——ぼそり、と——言った。
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「——すまなんだ、と——伝えてくれ」
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——だが。
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——虚空は——それで——終わらなかった。
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「——あ——! たくさん——来ました——!」
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「——今度は——なんだ」
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「——"作り方は——無理だけど——考え方なら"——!」
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「——"そっちには——魔法が——あるんだから——組み合わせたら?"——!」
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「…………なんだと?」
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——魔法使いが。
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——必死に——書き取り始めた。
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「——"燃やす——のは——火の——魔法で——安定させろ"——!」
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「——"圧が——偏るなら——風の——魔法で——均せ"——!」
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「——"壁が——焼けるなら——氷の——魔法で——冷やせ"——!」
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——工房が。
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——ざわめいた。
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「——待て——! それは——!」
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——魔術師が——身を——乗り出した。
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「——燃える——ものを——火で——安定させる、だと——!?」
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「——そんな——使い方は——考えた、ことも——ない——!」
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「——だが——できるのか」
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「——……できる、かも——しれん」
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——魔術師は。
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——自分の——杖を——見つめた。
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「——火の——魔法は——燃え方を——操る——ものだ」
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「——燃やすだけでは——ない。……弱めることも——できる」
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「——それだ——!!」
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——賢者が——叫んだ。
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「——爆発するのは——燃え方が——暴れるからだ——!」
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「——ならば——火の——術者が——手綱を——握れば——!」
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「——まだ——あります——!」
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——魔法使いが——叫んだ。
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「——"重い——ものを——持ち上げるのが——大変なら——重力の——魔法で——軽くしろ"——!」
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「——"噴き出す——道が——狭いなら——空間の——魔法で——広げろ"——!」
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「——待て待て——!」
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——一色が——手を——挙げた。
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「——魔法で——全部——できるなら——最初から——魔法だけで——いいでしょう」
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「——なぜ——わざわざ——組み合わせるの」
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「——あ。それも——書いてあります——!」
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「——"魔力は——尽きるから"、って——!」
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「…………」
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——一色が。
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——目を——見開いた。
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「——"押す——力そのものは——火薬に——任せろ"——!」
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「——"魔法は——それを——整えるのに——だけ——使え"——!」
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「——"そうすれば——少ない——魔力で——長く——保つ"——!」
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——工房が。
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——しん、と——静まった。
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「……なるほど」
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——一色が。
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——ゆっくりと——立ち上がった。
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「——魔法を——"力"、として——使うから——尽きるのね」
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「——"手綱"、として——使えば——いい」
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「——馬を——走らせるのは——馬の——脚だ」
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——賢者が——低く——言った。
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「——手綱は——ただ——向きを——決める、だけだ」
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「——だから——人が——握って——おられる」
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「——それです——!」
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——誠が——手を——打った。
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「——今まで——僕たち——魔法で——全部——やろうと——してました」
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「——太陽を——押し潰すのも——蓋を——浮かべるのも」
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「——だから——尽きたんです」
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「——うむ」
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「——でも——馬に——走らせて——手綱だけ——握るなら」
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「——ずっと——保ちますよね」
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「——ただし」
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——一色が。
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——冷や水を——浴びせた。
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「——いいことばかりでは——ないわ」
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——彼女は——指を——折った。
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「——一つ。手綱を——握る——術者が——ずっと——要る」
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「——二つ。術者が——倒れたら——その——瞬間に——暴れる」
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「——三つ。魔法陣が——傷めば——効かなく——なる」
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「——四つ。作った——ことのない——ものだから——何が——起きるか——分からない」
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「——それでも——やる——価値は——ある」
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——賢者が——言った。
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「——だが——一色。お前の——言う、通りだ」
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「——術者が——倒れたら——暴れる——ものを」
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「——人の——おる、ところで——試しては——ならん」
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——そして——散会の——間際。
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「——あの」
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——魔法使いが——手を——挙げた。
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「——最後に——変な——コメントが——来てて」
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「——なんだ」
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「——"それ——もう——魔導ロケットじゃん"、って——」
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「——まどう?」
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「——"名前を——つけろ"、って——言われてます——!」
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「——名など——どうでも——よい——!」
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——賢者が——手を——振った。
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「——よくないです——!」
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——魔法使いが——反論した。
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「——名前が——ないと——皆に——説明——できません——!」
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「——"火薬と——魔法を——組み合わせた——やつ"、じゃ——長すぎます——!」
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「——ふむ。……では——何と——する」
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——一同が。
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——揃って——誠を——見た。
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「——なぜ——僕を——見るんですか」
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「——お前が——つけろ」
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「——え——!?」
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——誠は。
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——しばらく——考えて。
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そして——言った。
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「——"手綱"、で——いいんじゃ——ないですか」
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「…………」
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「——それは——推進器の——名では——ないぞ」
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「——でも——一番——大事なのは——そこ、ですよね」
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——誠は——にっこりと——笑った。
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「——押すのは——火薬です。僕たちが——するのは——手綱を——握ることだけです」
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「——忘れないように——そう——呼びましょう」
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「…………」
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——賢者は。
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——ふん、と——鼻を——鳴らして。
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——そして——紙に——書いた。
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——「手綱式——推進器」
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「——コメント——なんて?」
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「——"地味"、"らしい"、"好き"、って——!」
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「火薬の筒を、矢につけて、十日、試した。三本目は、飛んだ。羽根を斜めにしたから、回って、真っ直ぐ、行った。でも、"普通に射るより、少し遠く"、だけ。四本目で、火薬を増やしたら、爆発した。……賢者さんが、"聞き直すぞ"、って。推進器に、他の種類は、ないのか、って。そしたら、五つ、あった。液体式——止めたり、また点けたり、できるけど、複雑。固体式——簡単だけど、点けたら止まらない。僕たちの、やつ。混ぜ物式——中間。それから、四つ目。"電気で、粒を加速する。押す力は、ものすごく弱い"。賢者さん、"使えぬ"、って、手を振ったけど、続きが、あった。"だが、燃料の持ちが、桁違いで、何年も、押し続けられる"。……賢者さん、固まって、ひと月前に、自分で書いた紙を、引き寄せた。"人の力は、尽きる"、って書いてあるやつ。"これだ"、って、叫んだ。でも、一色さんが、"電気よ"、って。エアコンと、同じ。仕組みは分かるのに、電気がない。五つ目は、向こうでも、まだ、できてないらしい。……それで、"作り方を教えてくれ"、って、聞いたら、"お教えできません"、って。"ひどい高温と高圧を扱う、危うい仕掛けで、手順を、安全に伝えられません"、って。賢者さん、"今更、何を"、って、怒ったけど、僕、思った。今まで聞いてきたのは、全部、"どうなっているか"、の話で、"どう作るか"、は、一度も、聞いてなかった。それに、四本目、教わった通りにやっても、爆発した。もっと難しいものを、書いた通りに、やって、誰かが死んだら、教えた方も、寝覚めが悪い。……そう言ったら、コメントが、"そういうこと"、って。賢者さん、"すまなんだ、と伝えてくれ"、って。……でも、そこで、終わらなかった。"作り方は無理だけど、考え方なら"、"そっちには、魔法があるんだから、組み合わせたら?"、って。燃えるのを、火の魔法で安定させる。圧が偏るなら、風で均す。壁が焼けるなら、氷で冷やす。魔術師さん、"そんな使い方は、考えたこともない。でも、できるかもしれん"、って。一色さんが、"魔法で全部できるなら、最初から魔法だけで、いいでしょう"、って言ったら、"魔力は尽きるから"、"押す力は、火薬に任せて、魔法は、整えるのにだけ使え"、って。……賢者さんが、"馬を走らせるのは、馬の脚だ。手綱は、向きを決めるだけだ"、って。それです。今まで、僕たち、魔法で、全部やろうと、してました。だから、尽きたんです。……名前を、つけろ、って言われたから、"手綱"、にしました。押すのは、火薬。僕たちがするのは、手綱を握ることだけ。忘れないように。じいちゃん、道が、見えてきた気がします」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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——たとえ——空に——見えなくても。
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まだこの時の誠は知らない。「魔法を——力として——使うから——尽きる」、という——この——気づきが。
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——弓の——矢を——飛ばす、ためだけの——ものでは——なかったことを。
そして——虚空の——賢人が——ただ一つ——「作り方は——教えられぬ」、と——断った——その、線引きが。
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——遥かに——遠い——場所に——いる——別の——誰かの。
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——長い——沈黙と——同じ——理由から——引かれて——いたことも。
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——今は……まだ、誰も——気づいて——いない。




