表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
339/474

第79話「闇は、涼しいのか」

地下に——夜が——戻って。





——人々の——顔が——少し——和らいだ——頃。






——誠は——ふと——妙なことを——思いついた。








「——あの、賢者さん」






「——なんだ」






「——変なことを——聞いても——いいですか」







「——お前の——"変なこと"、は——大抵——変では——ないから——言え」








「——闇の——魔法って——影を——作るんですよね」







「——む?」






「——影って——涼しいじゃ——ないですか」








——賢者の——手が。






——止まった。







「…………」






「——待て」








「——今——地下の——温度が——上がってて——困ってますよね」






——誠は——続けた。







「——一色さんの——冷やす——仕掛けも——追いつかない、って」






「——なら——闇の——魔法で——影を——作ったら——少しは——涼しく——ならないかな、と」








「…………」







——賢者は。






——ゆっくりと——立ち上がった。







「——ネクロマンサーを——呼べ」









——半刻、後。






——山田が——工房に——現れた。







「——なんだよ。忙しいんだけど」






「——お前——何を——して——おった」






「——鈴木と——中学の——話」






「——忙しくは——ない、な」








「——山田さん。闇の——魔法って——影を——出せますか」







——誠が——尋ねると。






——山田は——きょとん、と——した。







「——出せるけど。……なんで?」






「——涼しく——なりませんか」








「…………」







——山田は。






——しばらく——黙って。






そして——ぼそり、と——言った。







「——考えたこと——なかった」







「——闇の——魔法って——普通——敵を——包んで——目を——潰すとか」






「——そういう——使い方しか——しないから」








「——やって——みてくれ」







——賢者が——言った。







「——ここで?」






「——うむ。一色。温度を——測れ」









——山田が。






——手を——かざした。







「——ふっ……。我が——右腕に——宿りし——闇よ」






「——口上は——よい——!」






「——形から——入らないと——出ないんだよ——!」








——次の——瞬間。







——工房の——一角が。






——すう、と——翳った。







——光が——遮られた——わけでは——ない。







——そこだけが。






——濃い——影に——沈んでいる。








「——一色。どうだ」






「——待って。……あら」







——一色が。






——目を——見開いた。







「——下がってるわ」






「——どれほどだ」






「——それなりに、よ。木陰に——入ったくらい」








「——おお——!」






「——本当だ——! 涼しい——!」







——誠が。






——影の——中に——入って——歓声を——上げた。








「——え。俺の——魔法——そんな——ことに——使えるの?」







——山田が。






——ぽかんと——していた。







「——ずっと——"世界を——滅ぼす——闇"、とか——言ってたのに」






「——涼しいだけ、かよ」








「——十分——すごいです——!」







——誠は——真剣に——言った。







「——山田さん。仲間の——皆さんも——同じ——魔法——使えますか」






「——闇の——系統は——七人くらい——いるけど」






「——呼んで——ください——!」









——こうして。






——「涼み処」、が——作られる、ことに——なった。








「——第五層の——広場に——影を——張ります——!」







——誠が——触れを——出した。







「——暑さで——参ってる——方は——どうぞ——お越し——ください——!」






「——特に——お年寄りと——小さな——お子さん——優先で——!」









——初日は。






——うまく——いった。








「——ああ……生き返る……」






「——涼しいねえ」






「——闇の——魔法も——役に——立つもんだ」








「——ふっ……礼には——及ばぬ」






——山田が——満更でも——ない——顔で——ふんぞり返っていた。









——だが。






——三日目から。






——雲行きが——怪しく——なった。








「——師匠——! 大変です——!」






——ルカが——駆け込んできた。







「——涼み処が——大変な——ことに——!」









——第五層に——駆けつけた——誠は。






——絶句した。








「——ぬん——! ぬん——!」






「——ふはは——! 涼しいと——身体が——動くわ——!」






「——HAHAHA——! 腕立て——五百回——!」








——涼み処が。






——鍛錬場に——なっていた。








——武闘家。





——アメリカン・ヒーロー四人。





——鬼族の——若い衆。





——アルフレート。







——そして——なぜか——宇宙防衛隊。








「——皆さん——何を——してるんですか——!」







「——おお、田中——!」






——アルフレートが——汗だくで——振り返った。







「——ここは——よいぞ——! 涼しいから——存分に——動ける——!」






「——地上は——暑くて——鍛錬に——ならんからな——!」








「——いや——ここ——お年寄りと——子どもの——ための——!」







——誠が——言いかけて。






——そして——気づいた。








——広場の——隅に。






——年寄りたちが——身を——寄せ合って——座っていた。







——皆。






——汗を——かいていた。








「——おばあちゃん——! 大丈夫——ですか——!」






「——いや……なんだかねえ」







——老女は——手で——顔を——扇いだ。







「——影は——涼しいんだけどねえ」






「——あの——若い衆が——暑いんだよ」








「…………」







——誠は。






——ゆっくりと——広場の——中央を——見た。







——筋肉の——塊が——二十人ばかり。






——汗を——飛ばしながら——雄叫びを——上げている。








「——一色さん——! 温度——測ってもらえますか——!」







——呼ばれた——一色は。






——測って——そして——渋い——顔を——した。








「——影を——張る——前より——高いわ」






「——高い——!?」







「——人が——集まれば——熱が——出るのよ」






——一色は——ため息を——ついた。







「——ましてや——あれだけ——動けばね」






「——影で——下げた——分を——全部——打ち消して——お釣りが——来てるわ」








「——本末転倒じゃ——ないですか——!」








「——おい——! 貴様ら——出て行け——!」






——賢者が——怒鳴った。







「——なぜだ——!」






武闘家が——不服そうに——振り返った。







「——我らは——鍛えて——おるのだぞ——! 世界の——ために——!」






「——お前たちが——いると——涼み処が——暑いのだ——!」






「——馬鹿な——! 影は——涼しかろう——!」






「——お前たちが——熱いのだ——!!」








「——ぐぬぬ」







——武闘家が。






——自分の——腕を——見た。







——湯気が——立っていた。








「……確かに——熱いな」






「——自覚が——なかったのか——!」









「——待って——ください」







——誠が——割って——入った。







「——追い出すのは——やめましょう」






「——なぜだ——!」








「——皆さん——地上で——鍛錬——できないんですよね」







——誠が——尋ねると。






——アルフレートが——頷いた。







「——うむ。あの——暑さでは——身体が——壊れる」






「——だが——鍛えねば——次の——大仕事に——備えられん」








「——じゃあ——分けましょう」







——誠は——手を——打った。







「——涼み処を——二つ——作ります」






「——一つは——お年寄りと——子どもの——ための——静かな——場所」






「——もう一つは——鍛錬する——方々の——ための——場所」








「——それでは——闇の——術者が——足りん」






賢者が——言った。






「——七人しか——おらんのだぞ」








「——あの」







——山田が。






——おずおずと——手を——挙げた。







「——鍛錬してる——奴らの、方は」






「——影、要らないんじゃ——ない?」








「——え?」






「——だって——どうせ——熱くなるんだろ」







——山田は——けろり、と——言った。







「——なら——涼しくしても——無駄じゃん」








「…………」






「——確かに」






「——道理だな」








「——待て——! それでは——我らは——どこで——鍛える——!」







——武闘家が——叫んだ。







「——空いてる——坑道が——あります」






——誠が——言った。







「——影は——張れませんけど——涼み処より——広いです」






「——それに——皆さんが——熱を——出しても——誰にも——迷惑が——かかりません」








「——ぬ。……まあ——それなら」







「——それと——一つ——お願いが——あります」







——誠は——にっこりと——笑った。







「——鍛錬の——ついでに——荷物を——運んで——もらえませんか」






「——なんだと?」








「——配給の——荷、四百十二軒——分——あるんです」






「——重いので——ちょうど——鍛錬に——なるかと」








「…………」







——アルフレートが。






——ぷっ、と——吹き出した。







「——うまいことを——言うわ、こいつは」






「——やめてください——! 僕、本気ですから——!」








「——よかろう——!」







——武闘家が——腕を——鳴らした。







「——重い、ほど——鍛えられる——! 全部——持ってこい——!」






「——HAHAHA——! 我らも——運ぼう——!」









——こうして。






——涼み処は——静けさを——取り戻し。






——配給は——見違えて——早く——なった。








「——ああ——静かに——なった」






——老女が——ほっと——息を——ついた。







「——さっきまでは——なんだったんだろうねえ」






「——若い——方々は——元気ですから」








——誠は——苦笑した。







「——でも——おかげで——荷物が——早く——届くように——なりました」






「——そうかい。ありがたいねえ」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「変なことを、思いついた。闇の魔法って、影を作るんだから、涼しいんじゃ、ないか、って。賢者さんに、言ったら、山田さんを、呼べ、って。山田さん、"考えたこと、なかった。闇の魔法は、敵の目を潰すとか、そういう使い方しか、しない"、って。やってみたら、本当に、涼しくなった。木陰に入ったくらい。山田さん、"ずっと、世界を滅ぼす闇、とか言ってたのに、涼しいだけかよ"、って、ぽかんと、してた。十分、すごいです。……それで、第五層に、涼み処を、作った。お年寄りと、子ども優先で。初日は、よかった。でも、三日目に、行ったら——鍛錬場に、なってた。武闘家さん、ヒーローさんたち、鬼族の若い衆、アルフレート様、なぜか、宇宙防衛隊まで。"涼しいから、存分に動ける"、って。……おばあちゃんが、"影は、涼しいんだけどねえ、あの若い衆が、暑いんだよ"、って。一色さんに、測ってもらったら、影を張る前より、温度が、高かった。人が集まると、熱が出るし、あれだけ動けば、なおさら。武闘家さん、自分の腕を見たら、湯気が、立ってた。自覚、なかったらしい。……追い出すのは、やめて、分けることにした。でも、闇の術者が、七人しか、いない。そしたら、山田さんが、"鍛錬してる奴らの方は、影、要らないんじゃない? どうせ、熱くなるんだから、涼しくしても、無駄じゃん"、って。……道理だ。空いてる坑道を、使ってもらうことにして、ついでに、配給の荷運びを、お願いした。"重いので、ちょうど、鍛錬に"、って。アルフレート様に、笑われた。本気なのに。……涼み処は、静かになって、配給は、早くなりました。じいちゃん、一石二鳥です」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。「闇は——影だから——涼しい」、という——この——他愛ない——思いつきが。




——長らく——「滅ぼす——ため」、にしか——使われて——こなかった——力に。





——初めて——別の——名を——与えたことを。


そして——その——名が。




——遥かに——遠い——日に。





——もっと——ずっと——大きな——ものを——覆うことに——なるのも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ