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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第78話「四刻の、闇」

配給の——地図が——半分ほど——埋まった——頃。





——畑の——試みに。






——最初の——結果が——出た。








「——師匠——! 数え——終わりました——!」






——ルカが。






——泥だらけの——帳面を——抱えて——駆けてきた。







「——どうだった」






「——それが——変なんです——!」








——三つの——畑。






——一つは——四刻。





——一つは——六刻。





——一つは——八刻。






——それぞれ——鏡を——閉めて——暗くしてきた。








「——八刻の——畑が——一番——実が——ついてる、と——思ったんです」






「——長く——暗くしてる——から」






「——違ったのか」








「——一番——実が——ついたのは——四刻の——畑でした——!」








「……四刻?」







——誠は。






——帳面を——覗き込んだ。







——確かに。







——四刻の——畑が——一番——多い。





——次が——六刻。





——八刻が——一番——少ない。








「——おかしくないですか——!?」






「——暗くする——時間が——短い、方が——実が——つくって——!」







「——うーん」







——誠は。






——腕を——組んで——考えた。







「——ルカ。八刻の——畑の——葉は——どうだった」






「——え? ええと……」







——ルカは。






——帳面を——めくった。







「——あ。少し——黄色く——なってました」






「——それだ」








——誠は——頷いた。







「——暗くしすぎて——今度は——光が——足りなく——なったんだ」






「——作物は——寝る——時間も——要るけど」






「——起きて——働く——時間も——要る」








「——なるほど——!」







「——でも——待って——ください」







——ルカが——首を——かしげた。







「——じゃあ——四刻より——短くしたら——もっと——実が——つくんですか?」








「——それは——分からない」







——誠は——正直に——言った。







「——だから——次は——二刻と——三刻と——四刻で——試そう」






「——また——ひと月——ですか」






「——そうだな」








——ルカが。






——うつむいた。







「……間に——合うんですか」






「——え?」






「——貯えは——あと——三月です」






「——ひと月——試して——それから——植えて——育てて」






「——実が——なる——頃には——もう——」








「——ルカ」







——誠は。






——ルカの——前に——しゃがんだ。







「——じいちゃんが——言ってたこと——もう一つ——教えてやる」







「——なんですか」







「——"種を——蒔かなきゃ——絶対に——実らん"」








「…………」







「——間に——合うかは——分からない」






「——でも——やらなかったら——絶対に——間に——合わない」






「——それだけは——確かなんだ」








——ルカは。






——ぐしぐし、と——目を——擦って。






——そして——顔を——上げた。







「——次の——畑、僕が——見ます——!」






「——頼む」









——だが——問題は——別に——あった。







「——鏡を——閉める——人手が——足りません」







——エリナが——言った。







「——地下じゅうの——畑を——同じ——刻限に——閉めて——同じ——刻限に——開ける」






「——それを——毎日——ですよ」







「——今は——手分けして——やってるけど——忘れる——人が——出てきてます」








「——それは——まずいな」







——誠は——唸った。







「——一つの——畑だけ——閉め忘れたら——そこだけ——実らない」








「——合図が——要るわね」







——通りかかった——一色が——口を——挟んだ。







「——合図?」






「——"今から——閉めろ"、"今から——開けろ"、を——地下じゅうに——同時に——伝えるのよ」








「——鐘、ですか」






「——それだと——深い——層まで——届かないわ」








——誠は。






——ふと——顔を——上げた。







「——あの。前に——やりましたよね」






「——何を?」






「——世界中に——同時に——合図を——送るの」








「…………あ」







——一色が。






——手を——打った。







「——皆瀬さんと——魔族——ね——!」









——こうして。






——奇妙な——仕組みが——できあがった。








『——四刻の——刻限……知らせる』






——スライムの——光が——地下の——通路を——走り。







——各層に——配された——魔族が。






——それを——念話で——周囲に——回す。







(——閉めよ)






(——閉めよ)








——地下じゅうの——鏡が。






——一斉に——閉じた。








——そして。







——地下が。






——暗くなった。








「…………」







——その、瞬間。







——地下じゅうから。






——ざわめきが——上がった。








「——おい——! 暗い——!」





「——何だ——! どうした——!」







——だが。






——そのうち。






——声色が——変わっていった。








「——待て。……暗い、ぞ」






「——ああ。暗い」






「——……夜、みたいだな」








——誰かが。






——ぽつり、と——言った。







「——夜だ」








——そして。






——地下が。






——静まり返った。








——誰も。






——動かなかった。







——ただ。






——暗闇の——中で。






——じっと——していた。








「……ああ」






——どこかで。






——年寄りの——声が——した。







「——久しぶりだ」








——誠は。






——暗がりの——中で——立ち尽くしていた。







(——そうか)







(——皆——夜が——欲しかったんだ)








——畑の——ために——始めた——ことが。






——人にも——効いていた。









——四刻、後。







(——開けよ)







——鏡が——一斉に——開き。






——地下に——光が——戻った。








「——ふう」






「——よく——寝た」






「——四刻——寝ただけ、なのに——妙に——すっきり——したな」








「——誠さーん——!」






——おかみさんが——駆けてきた。







「——あれ——毎日——やってくれるのかい——!?」






「——え? はい。畑の——ために——ですけど」






「——うちの——亭主が——な——!」







——おかみさんは。






——涙ぐんでいた。







「——ここ——十日ばかり——眠れんかったんだ」






「——さっき——初めて——ぐっすり——寝おった」








「…………」







——誠は。






——言葉が——出なかった。









——その、報せは。






——たちまち——地下じゅうに——広がった。








「——毎日——四刻——暗くなるんだと——!」





「——それは——ありがたい——!」





「——いつからだ——!」








「——待て、田中」






——賢者が——難しい——顔で——現れた。







「——皆——喜んで——おるが——よいのか」






「——え?」






「——お前の——試みは——まだ——途中であろう」






「——次は——二刻や——三刻を——試すのでは——なかったか」








「…………あ」







——誠が。






——固まった。







「——もし——二刻の、方が——実が——つく、と——なれば」






「——夜は——二刻に——縮まる」







「——皆——喜んだ——後で——短くされるのだぞ」








「…………」







——誠は。






——暗くなった——地下の——方を——見た。







——たった——四刻の——闇に。






——十日ぶりに——眠れた——という——男が——いた。








「——賢者さん」






「——なんだ」






「——二刻の——試し、やめます」








「——なんだと?」







「——四刻で——いきます」







——誠は——きっぱりと——言った。







「——待て——! それでは——実の——数が——!」






「——もっと——増えるかも——しれません」






「——でも——四刻でも——実は——つきます」








「——皆さん——今日——十日ぶりに——寝たんです」







——誠は。






——賢者を——真っ直ぐに——見た。







「——それを——取り上げる——決断は」






「——僕には——できません」








「…………」







——賢者は。






——長い、こと——黙って。






そして——ぼそり、と——言った。







「——学者としては——認めん」






「——はい」






「——だが——人としては——分かる」







その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「畑の結果が、出た。一番、実が、ついたのは、四刻の畑だった。八刻じゃ、なかった。八刻の畑は、葉が、黄色くなってた。暗くしすぎて、今度は、光が、足りなくなったんだ。作物は、寝る時間も、要るけど、起きて働く時間も、要る。……ルカが、"間に合うんですか"、って、聞いた。あと三月しか、ない。だから、じいちゃんの言葉を、教えた。"種を蒔かなきゃ、絶対に、実らん"。間に合うかは、分からない。でも、やらなかったら、絶対に、間に合わない。……鏡を、閉める人手が、足りなくて、忘れる人が、出てた。一色さんが、"合図が要る"、って。それで、皆瀬さんの光と、魔族の念話で、地下じゅうに、同時に、合図を送ることに、した。……そして、地下が、暗くなった、瞬間。皆、静まり返った。誰かが、"夜だ"、って、言った。年寄りの声が、"久しぶりだ"、って。……皆、夜が、欲しかったんだ。畑のために、始めたことが、人にも、効いてた。四刻後、明るくなったら、おかみさんが、駆けてきて、"うちの亭主が、十日ぶりに、ぐっすり寝た"、って、泣いてた。……賢者さんが、"次は、二刻や三刻を試すのでは、なかったか。二刻の方が実がつくなら、夜は、二刻に縮まる"、って。それで、やめました。四刻で、いきます、って言った。もっと増えるかも、しれない。でも、四刻でも、実はつく。皆、今日、十日ぶりに、寝たんです。それを、取り上げる決断は、僕には、できません。賢者さんが、"学者としては、認めん。だが、人としては、分かる"、って。じいちゃん。夜が、戻りました。地下だけ、ですけど」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。





まだこの時の誠は知らない。地下に——戻った——たった——四刻の——闇が。




——人々の——心を——どれほど——支える、ことに——なるのかを。


そして——この——「地下だけの——夜」、を。




——いつか——空にも——取り戻そうと——する——者たちが。





——遥かに——遠い——場所で。





——今も——紙と——にらみ合って——いることも。





——今は……まだ、誰も——知らない。

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