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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第66話「人工太陽・二号」

一年が——過ぎた。





集まった——者は——一万二千。






人。魔族。鬼族。竜族。虫人族。





——そして——悪の組織まで。







「——揃った、な」






賢者が——名簿を——閉じた。






「——一年——かかったが——ついに——万を——超えた」








——荒野には。






——見渡す——限りの——列が——並んでいた。







——その、間に。





——点々と——魔族が——配されている。






——念話で——拍を——回す——ための——布石、だった。








「——皆さーん——! 見えてますかー——!」






空を——旋回する——竜の——背から。






魔法使いの——声が——降ってくる。







「——本日——人工太陽——二号——試射——!」






「——一年の——支度が——実を——結ぶ——日です——!」







「——コメント——どないや」






「——"一年——待った"、"泣きそう"、"がんばれ"、って——! すごい——数です——!」







「——へえ、皆様」






高座の——駄々丸が——扇子を——広げた。






「——下を——ご覧——ください——ましょう」






「——人が——おりやす。魔族が——おりやす。鬼も——竜も——虫も——おりやす」






「——ついでに——世界征服を——企んどった——連中まで——並んで——おりやす」






「——イーッ——!」






「——返事は——結構で——ござんす」








——荒野の——中央。






——三門の——レールガンが——並んでいた。







一門目は——地に——据えられ。






二門目と——三門目は——鋼の——枠に——縛られて。






——その、上に——人が——乗る。







「——では——行くぞ」






光の勇者が——二門目の——座に——身体を——縛りつけた。







「——本当に——大丈夫ですか」






誠が——縄を——確かめながら——言った。






「——半年——練習した」






彼は——けろり、と——言った。






「——最初は——低い、ところから。少しずつ——高く」






「——おかげで——三度——骨を——折った、が——今は——慣れた」






「——三度も——折ってたんですか——!?」






「——言えば——止めたであろう」








「——HAHAHA——! 俺は——五度だ——!」






三門目に——縛られた——キャプテン・フリーダムが——笑った。






「——威張らないで——ください——!」








——指揮台には。






——魔術師が——立った。






その、傍らに——スライムの——塊が——据えられている。







『——準備……できてる』






皆瀬の——声が——響いた。






『——光……世界中に——届く』







「——各地の——返答は」






『——北の——里……よし。山の——里……よし。海の——都……よし』






『——全部……繋がってる』








「——魔王殿」






魔術師が——振り返った。






「——念話の——手筈は」






「——うむ」







——魔王が——重々しく——頷いた。






「——列の——中に——三百の——魔族を——配した」






「——我が——拍を——受け——三百に——回す。三百が——周りに——回す」






「——一万二千——余さず——届く」








「——魔王さん」






誠が——そっと——歩み寄った。






「——顔色が——悪いです」






「——問題——ない」






「——でも——今日、いつもより——暑いですよ」







——事実。






——その、日の——地上は。






——一年前より——明らかに——熱かった。







「——日除けを——張りました。水も——氷も——用意してあります」






誠は——早口で——言った。






「——きつくなったら——すぐ——言ってください。無理は——」






「——田中」






魔王が——遮った。






「——一年だ」






「——え?」






「——各地の——長を——一年——かけて——説いて——回った」







——彼は——荒野を——見渡した。






「——"人間と——並ぶ、など——魔族の——恥だ"、と——言われた」






「——それを——頭を——下げて——連れてきた」






「——今更——退けるか」







「…………」






「——それに——な」






魔王は——ふと——目を——細めた。






「——我らは——ずっと——"倒される——側"、だった」






「——四十七度——倒された」






「——今日——初めて——"救う——側"、に——立てるのだ」








——誠は。






——何も——言えなかった。







「……分かりました」






「——でも——僕、ずっと——見てますから」






「——好きに——せよ」








——そして。






——刻が——来た。







「——総員——配置——!!」







——一万二千が——一斉に——構えた。






——荒野が——静まり返る。







「——光——送れ——!」







——スライムの——塊が——輝いた。






——短く。長く。短く。







——その、光が。






——山を——越え。海を——渡り。






——世界中の——空を——一瞬で——走った。







『——北の——里……受けた』






『——山の——里……受けた』






『——全世界……同時』







「——おおお——!」






「——世界中が——一つに——なってます——!」






魔法使いが——絶叫した。






「——コメントが——止まりません——!」








「——一門目——発射——!!」







——ドンッ——!!






——轟音と、共に。






——二門目の——レールガンが——天へ——撃ち出された。







「——うおおおお——!!」






——光の勇者の——絶叫が——空に——尾を——引く。







「——飛んだ——! 人が——飛んでます——!!」








——そして——頂点。






「——今だ——!!」







——ドンッ——!!






——二門目が——火を——噴いた。






——三門目が——さらに——上へ。







「——HAHAHAAAA——!!」






——キャプテン・フリーダムが——歓声を——上げながら——天を——裂く。







「——最終段——!!」







——ドンッ——!!








——鉛の——箱が。






——去年とは——比べ物に——ならぬ——高みへ。






——吸い込まれるように——昇っていった。







「——届いた——!!」






賢者が——叫んだ。






「——高さは——足りて——おる——!!」







「——詠唱——始め——!!」







——魔術師の——手が——振り下ろされる。






——同時に——魔王が——目を——閉じた。







(——回せ)






——三百の——魔族に——拍が——飛ぶ。






——三百から——周囲へ。







「——一——! 二——! 三——!」







——一万二千の——声が。






——寸分の——狂いも——なく——重なった。







「——揃って——おる——!!」






「——去年とは——まるで——違う——!!」








——空が——鳴った。






——巨大な——渦が——生まれる。






——そして。







——白い——光が。






——ともった。







「——光った——!!」






「——消えません——! 続いて——ます——!!」






「——いける——! いけるぞ——!!」








——荒野が——歓声に——包まれた。







——誠も。






——思わず——拳を——握った。







(——いける)





(——一年——皆で——頑張った)








——だが。







——その、時。







——誠の——目が。






——指揮台の——傍らを——捉えた。








——魔王が。






——ぐらり、と——傾いでいた。







「——魔王さん——!!」







——次の——瞬間。






——巨躯が。






——地に——崩れ落ちた。







——どしん。







「——魔王殿——!?」








——そして。






——連鎖は——一瞬、だった。







——列の——中で。






——三百の——魔族が。






——次々と——膝を——ついた。







「——ぐっ……」




「——駄目だ……」




「——頭が——回らぬ……」








——念話が。






——切れた。








「——拍が——来ん——!!」






「——後ろが——分からん——!!」






「——今——何拍目だ——!?」








——一万二千の——声が。






——ばらばらに——崩れ始めた。







「——揃えろ——! 私の——手を——見よ——!!」






魔術師が——絶叫する。






「——見えません——!!」






「——遠すぎます——!!」








——渦が。






——歪んだ。







——白い——光が。






——ふらふらと——揺らぎ。







——そして。







——ふっ、と——消えた。








——荒野に。






——鉛の——箱が——落ちてくる——音だけが——響いた。







「…………」







——誰も。






——声を——出さなかった。








「……失敗、です」






竜の——背から。






魔法使いの——声が——落ちてきた。







「——皆さん。……失敗——しました」








——空から。






——縄で——吊られた——光の勇者たちが——降りてくる。







「——どうだった——! 高さは——足りたか——!」






「——足りてました」






誠が——静かに——答えた。






「——完璧——でした」






「——では——なぜ——!」








——誠は。






——倒れた——魔王を——見た。







「…………」








——魔王は。






——地に——伏したまま。






——荒い——息を——していた。







「……すまぬ」







——絞り出すような——声、だった。







「——我が——外れた、せいだ」






「——高さも——光も——数も——揃って——おったのに」






「——我が——一人——倒れた、だけで」







「——魔王さん——! 喋らないで——!」






誠は——水を——含ませた——布を——当てた。







「——退くべき——だったのだ」






魔王は——なおも——言った。






「——お前が——言った——通りだ」






「——誇りなど——持ち出さねば——よかった」






「——一年——かけた——皆の——支度を——我が——潰した」








——荒野に。






——重い——沈黙が——広がった。








——だが。







「——違いますよ」







——誠は。






——きっぱりと——言った。







「——魔王さんの——せいじゃ——ありません」






「——庇うな。事実だ」






「——事実じゃ——ないです」







——誠は——立ち上がって。






——皆を——見回した。







「——考えて——ください」






「——僕たちは——"地の底に——住む——人たち"、に」






「——"灼けた——地上に——一日——立って——いろ"、と——言ったんです」







「…………」






「——それは——魔王さんが——弱いんじゃ——ない」






「——僕たちの——段取りが——悪かったんです」








——賢者が。






——はっと——顔を——上げた。






「……そうか」






「——我らは——"魔族に——耐えさせる"、ことばかり——考えて——おった」






「——日除けを——張り。水を——配り。氷を——用意した」






「——だが——それは——"耐えさせて"、おるだけだ」







「——耐えさせない——手は——なかったのか」






一色が——呟いた。






「——たとえば——魔族だけ——地下に——置くとか」






「——念話は——地面を——越えても——届くのか?」








——倒れたままの——魔王が。






——ぽつり、と——言った。







「……届く」






「——え?」






「——念話は——目でも——耳でもない。壁も——地面も——関わりない」






「——ただ——距離だけが——効く」








——一同が。






——顔を——見合わせた。







「——ならば——真下の——地下に——潜って——おれば——よかったのか——!?」






「——たぶん——な」






「——なぜ——早く——言わぬ——!!」






「——聞かれなんだ」








「…………」







——賢者が。






——天を——仰いだ。







「——聞かなんだ——我らの——落ち度だ——!!」








——荒野に。






——ようやく——ざわめきが——戻った。







「——なんだ——それは」




「——では——次は——いけるのか」




「——それだけ——だったのか」








「——皆さーん——!」






誠が——声を——張り上げた。






「——麦茶——ありますよ——!」






「——今日は——去年の——三倍——用意しました——! 余ってます——!」







「——三倍か——!」






「——学習して——おるな——!」








——そして——夕暮れ。






——日除けの——下で。






——魔王が——身を——起こした。







「——田中」






「——はい」






「——一つ——聞く」







——魔王は——麦茶を——飲み干して。






そして——低く——言った。







「——なぜ——お前は——我を——責めぬ」






「——え?」






「——一年だぞ。世界中の——一年を——我が——潰した」






「——罵られて——当然だ」








——誠は。






——少し——考えて。






そして——言った。







「——魔王さん。倒れる——前に——念話を——回してましたよね」






「——それが——どうした」






「——あれ——ちゃんと——届いてたんです」







誠は——微笑んだ。






「——一万二千が——一度——揃ったんですよ」






「——世界で——初めてです」






「——それ——魔王さんが——やったことです」







「…………」







——魔王は。






——長い、こと——黙って。






そして——ぼそり、と——言った。







「……妙な——男だ」






「——よく——言われます」







その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「人工太陽、二号、試射。一年、かけて、一万二千、集まった。人も、魔族も、鬼も、竜も、虫人も、悪の組織まで。空から、光を、送ったら、世界中が、一瞬で、繋がった。勇者さんたちが、レールガンに、縛られて、飛んだ。三段。高さは、完璧に、届いた。半年の練習で、勇者さん、三度、骨を折ってたって。フリーダムさんは、五度。言えば、止めたのに。詠唱も、揃った。一万二千が、寸分の狂いもなく。光が、ともって、消えなかった。……いけると、思った。でも、魔王さんが、倒れた。暑さで。そしたら、列の中の、三百の魔族も、次々。念話が、切れて、拍が、回らなくなって、渦が、歪んで……光が、消えた。魔王さん、"我が、外れたせいだ。誇りなど、持ち出さねば、よかった"、って。……違う。僕たちが、地の底に住む人たちに、灼けた地上に一日立ってろ、って、言ったんだ。段取りが、悪かった。そしたら、一色さんが、"魔族だけ、地下に置けないか。念話は、地面を、越えるのか"、って。魔王さん、"届く。念話に、壁も地面も関係ない。距離だけだ"、って。……なぜ、早く言わないのか、って、賢者さんが、叫んでた。"聞かれなんだ"、って。聞かなかった、僕たちの、落ち度だ。麦茶は、去年の、三倍、用意した。余った。……夜、魔王さんに、"なぜ、我を、責めぬ"、って、聞かれた。だから、言った。"倒れる前の、念話、ちゃんと、届いてました。一万二千が、一度、揃ったんです。世界で、初めてです。それ、魔王さんが、やったことです"、って。じいちゃん。失敗したけど、進んでるよ」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。「聞かれなんだ」、という——魔王の——たった一言が。



——この、先——幾度も——彼らを——救うことに——なるのを。



——知らぬ——ことは——罪では——ない。



——だが——聞かぬ、ことは——罪である、と。


そして——次の——試射までに。



——また——長い——月日が——流れることも。




——今は……まだ、誰も——知らない。

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