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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第65話「繋いで、飛ばす」

反省会は。





——三日、三晩——続いた。







「——高さが——足らぬ」






賢者が——机を——叩いた。






「——これが——一番の——難所だ。人の——腕では——どうにも——ならん」






「——では——道具を——使えば——よい」






一色が——地図を——広げた。






「——星喰いの、時に——使った——レールガンが——ある」






「——あれなら——人の——腕より——遥かに——遠くまで——飛ばせる」







「——おお——! それだ——!」






「——だが——一門では——足らぬ」






一色は——首を——振った。






「——測ったけれど。一門で——届く——高さは——必要な——半分にも——ならない」






「——では——数を——並べれば?」






「——並べても——一つの——ものを——一度に——押せる——のは——一門だけよ」








——行き詰まり、かけた——その、時。







「……あの」






厨二病の——若者の——一人が。






——おずおずと——手を——挙げた。







「——なんだ」






「——順番に——押せば——いいんじゃ——ないですか?」







「——順番に?」






「——はい。一門目で——飛ばして。上に——着いた、ところで——二門目が——また——押す」






若者は——手振りで——示した。






「——そうやって——繋いで——いけば——どんどん——高く——なるんじゃ」








——賢者の——動きが。






——止まった。






「…………」






「——変ですか?」






「——いや」






賢者は——ゆっくりと——顔を——上げた。






「——お前——さっきまで——"虚無を——喰らう——者"、とか——名乗って——おった——男か」






「——は、はい」






「——なぜ——そんな、ことを——思いつく」







「——え? ……あ、あれ?」







——若者は。






——きょとん、と——した。







「——なんでだろう。……なんか——見たこと——ある——気が——して」






「——筒が——切り離されて——次の——筒が——燃える——やつ」






「——それって——"ロケット"、じゃ——ないですか?」






魔法使いが——帳面を——めくった。






「——虚空の——賢人が——言ってた——やつ——! "多段式"、って——書いてあります——!」







「——それだ——!!」






賢者が——立ち上がった。






「——我らには——"ロケット"、は——作れぬ。だが——レールガンは——ある——!」






「——ならば——レールガンを——繋いで——多段に——すれば——よい——!」








——だが。






一色が——冷静に——指摘した。







「——待って。二門目の——レールガンは——どこに——置くの」






「——空の——上よ。地面に——置いても——意味が——ない」






「——む」








——沈黙。






そして。







「——ならば——レールガンごと——飛ばせば——よい」







——光の勇者が——言った。







「——なんだと?」






「——一門目の——レールガンで——"二門目の——レールガン"、を——飛ばす」






彼は——身振りで——示した。






「——そこに——勇者を——一人——乗せて——おく」






「——空の——上で——その、男が——二門目を——撃つ」






「——さらに——三門目を——乗せて——おけば——もう一段——高く——飛ぶ」








——広間が。






——しん、と——静まった。







「……正気か」






賢者が——呆然と——言った。






「——人が——レールガンで——飛ぶのだぞ」






「——俺たちは——レベルが——高い」






光の勇者は——平然と——言った。






「——死にはせん」






「——たぶん、な」







「——たぶん——!?」






誠が——悲鳴を——上げた。






「——駄目です——! 危険——すぎます——!」






「——では——他に——手が——あるか」






「——それは……」








「——俺は——半年——岩を——投げ続けた」






光の勇者は——静かに——言った。






「——それでも——届かなんだ。腕では——駄目だと——分かった」






「——ならば——次は——身体ごと——飛ぶ。それだけの、ことだ」







「——俺も——乗る——!」






武闘家が——名乗り出た。






「——HAHAHA——! 我らも——飛ぼう——!」






アメリカン・ヒーローたちも——手を——挙げた。






「——空を——飛ぶのは——慣れて——おる——!」






「——太陽に——挑んで——黒焦げに——なる、のもね」






駄々丸が——茶々を——入れた。








「——待って——ください——!」






誠が——なおも——食い下がった。






「——せめて——人が——乗らずに——できませんか——!?」






「——仕掛けだけで——二門目を——撃つ、とか——!」







「——できるなら——それが——よい」






一色が——頷いた。






「——だが——空の——上で——狙いを——定めるのは——人でなければ——無理よ」






「——風も——ある。高さも——揺れる。仕掛けでは——追いつかない」






「…………」








「——田中」






光の勇者が——誠の——肩に——手を——置いた。






「——お前が——止めたい——気持ちは——分かる」






「——だが——俺には——これしか——ない」






「——お前が——麦茶を——配る、ように」






「——俺は——飛ぶのだ」








——誠は。






——長い、こと——黙って。






そして——ようやく——頷いた。







「……分かりました」






「——でも——条件が——あります」






「——なんだ」






「——何度も——練習して——ください」






誠は——真剣な——顔で——言った。






「——低いところから——少しずつ。一気に——本番は——駄目です」






「——それと——必ず——受け止める——者を——下に——置くこと」






「——グランデルさんとか——藤原さんとか」






「——うむ。約束する」








——次に——議題は。






——「指揮」に——移った。







「——万の——列に——手は——届かぬ」






魔術師が——うなだれた。






「——中継を——立てても——拍が——遅れる」






「——世界中に——散らばって——おれば——なおさらだ」








——その、時。






『……あの』






——皆瀬の——声が——響いた。







「——皆瀬さん?」






『——わたしたち……光を——曲げられる』







「——え?」






『——星喰いの——時……レンズに——なった。覚えてる?』








——賢者が。






——はっと——した。






「——そうか——! スライムは——透き通って——おる——!」






「——光を——集め——飛ばせるのだな——!」






『——うん……。遠くまで——届く』






『——山の——向こうでも……光なら——一瞬』







「——だが——光で——何を——伝える」






「——文は——書けまい」








「——それなら——!」






魔法使いが——帳面を——めくった。






「——虚空の——方々が——教えてくれた——やつが——あります——!」






「——"点と——線で——伝える"、方法です——!」






「——なんだと?」






「——短く——光らせるのと——長く——光らせるのを——組み合わせて——文字に——するんです——!」






「——覚えるのは——大変ですけど——一度——覚えれば——一瞬で——伝わります——!」








——広間が。






——ざわめいた。







「——それだ——! それなら——世界中に——同時に——拍を——送れる——!」






魔術師が——身を——乗り出した。






「——私が——光で——拍を——打つ——! 各地の——者は——その、光を——見る——!」






「——手より——遥かに——速い——!」







「——だが——近くは——どうする」






賢者が——尋ねた。






「——列の——中で——光を——見て——おっては——詠唱が——おろそかに——なる」








「——それは——我らが——やろう」







——魔王が——のっそりと——言った。







「——魔族には——念話が——ある」






「——遠くには——届かぬ。だが——近くの——者になら——声を——出さずとも——伝わる」






「——列の——中に——魔族を——散らせば——拍を——回せる」







「——それだ——!!」






賢者が——紙に——書き殴った。






「——遠くは——光で。近くは——念話で——!」






「——これで——万の——列が——一つに——なる——!」








——そして。






一色が——ぽつり、と——言った。







「——ねえ。気づいてる?」






「——何が——です」






「——今——出た——案。全部——"繋ぐ"、話よ」







——一同が。






——顔を——上げた。







「——レールガンを——繋いで——飛ばす」






「——光を——繋いで——拍を——送る」






「——念話を——繋いで——列を——揃える」






「——人と——魔族を——繋いで——万を——集める」







一色は——誠を——見た。






「——一つも——"強くなる"、話が——ないの」






「——全部——"繋ぐ"、話」







「…………」







——賢者が。






——ゆっくりと——誠を——見た。







「——星喰いの——時も——そうだったのか」






「——え?」






「——お前が——世界を——救った、時だ」






「——あの、時も——こうやって——繋いだのか」








——誠は。






——少し——考えて。






そして——頷いた。







「——はい。そうです」






「——僕は——戦えないので。それしか——できないんです」







「……ふん」






賢者は——ぼそり、と——言った。






「——それが——一番——難しいのだがな」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「三日、三晩、話し合った。高さの問題は、レールガンを、使うことに。でも、一門じゃ、届かない。そしたら、厨二病の子が、"順番に、押せばいい。一門目で、飛ばして、上で、二門目が、また押す"、って。ロケットの、"多段式"、っていうやつ、らしい。あの子、"なんか、見たことある気がする"、って。でも、二門目を、どこに置くか。そしたら、勇者さんが、"レールガンごと、飛ばせばいい。勇者を、一人、乗せて、空の上で、撃たせる"、って。……無茶だ。止めたけど、"お前が、麦茶を、配るように、俺は、飛ぶのだ"、って。何度も、練習することと、下に、受け止める人を、置くことを、条件に、認めた。指揮の問題は、皆瀬さんが、"わたしたち、光を、曲げられる"、って。星喰いの時、レンズに、なったやつ。魔法使いさんが、"短く光らせるのと、長く光らせるので、文字にする"、方法を、虚空の方々から、教わってた。それで、世界中に、同時に、拍を、送れる。近くは、魔王さんが、"魔族には、念話がある"、って。遠くは、光。近くは、念話。……最後に、一色さんが、"気づいてる? 今日、出た案、全部、繋ぐ話よ。一つも、強くなる話が、ない"、って。賢者さんが、"星喰いの時も、こうやって、繋いだのか"、って、聞くから、"僕は、戦えないので、それしか、できないんです"、って、答えた。そしたら、"それが、一番、難しいのだがな"、って。じいちゃん。少しずつ、道が、見えてきたよ」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。この、日——世界が——選んだ——四つの——手立てが。



——どれも——「強くなる」、ためのものでは——なく。



——すべて——「繋ぐ」、ためのもので、あったことを。


そして——その、事実こそが。



——遥か——後に——なって。



——「この、世界の——主人公は——誰か」、という——問いの。




——動かぬ——答えに——なることも。





——今は……まだ、誰も——気づかない。

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