第61話「言わなかった、ということ」
翌朝。
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誠が——月に——問いかける——支度を——していると。
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「——待て——! 田中——!」
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光の勇者が——駆け込んできた。
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「——どうしました?」
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「——思いついた——! 太陽を——作る——方法だ——!」
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大広間に——一同が——集められた。
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「——聞け——!」
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光の勇者は——胸を——張って——言った。
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「——虚空の——賢人は——こう——言った。"水素を——集めて——自らの——重さで——押し潰せ"、と」
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「——だが——その、重さが——足らぬ。ならば——どうする」
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「——重さの——代わりに——"魔法で——押し潰せば——よい"——!」
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——広間が——ざわめいた。
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「——おお——!」
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「——なるほど——!」
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「——俺が——あの——ウランの——石を——天まで——投げ上げる——!」
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光の勇者は——腕を——振った。
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「——そこへ——魔術師と——魔王が——魔族を——率いて——集団で——詠唱を——放つ——!」
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「——万の——魔力で——押し潰せば——太陽と——同じ——ことが——起きる——はずだ——!」
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「——フフ——! 悪くない——!」
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魔術師が——杖を——構えた。
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「——我が——一族の——集団詠唱を——見せる——時が——来ましたか——!」
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「——待て。待て、待て」
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賢者が——手を——挙げた。
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「——それは——虚空の——賢人に——確かめたのか」
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「——確かめた——!」
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魔法使いが——胸を——張って——言った。
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「——昨夜——配信で——聞きました——!」
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「——なんと——答えた」
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「——ええと——長々と——返ってきたんですけど——難しくて——半分——分かりませんでした——!」
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「——読め——!」
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「——"魔法という——概念は——現実の——物理には——存在しないため——評価——できません"」
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「——"ただし——外部から——圧力を——加える——という——発想であれば——研究上——似た——考え方は——存在します"」
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「——ほう——!」
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光の勇者が——目を——輝かせた。
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「——"存在する"、と——言ったぞ——!」
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「——それと——ウランで——よいのか」
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「——ええと……"別の——物質です"、とは——書いてありますけど……」
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「——"絶対に——できない"、とは——書いてありません——!」
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「——ならば——望みが——ある——!」
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光の勇者が——机を——叩いた。
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「——虚空の——賢人は——できぬことは——"できぬ"、と——はっきり——言う——男だ——!」
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「——月へ——行くのも——恒星を——作るのも——"できぬ"、と——言い切った——!」
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「——だが——これには——言わなかった——!」
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——広間が——沸き立った。
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「——おおお——!」
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「——やってみようぞ——!」
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——だが。
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「……あの」
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誠だけが。
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——首を——かしげていた。
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「——なんだ、田中」
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「——"言わなかった"、って……それ——"できる"、って——ことですか?」
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——広間が。
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——一瞬——静まった。
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「——何が——言いたい」
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「——ええと。うまく——言えないんですけど」
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誠は——考えながら——言った。
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「——うちの——店で——たまに——あるんです」
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「——お客さんに——"この——芋、煮物に——合う?"、って——聞かれて」
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「——僕が——"合いますよ"、って——答えて」
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「——でも——後で——"固くて——駄目だった"、って——言われる、ことが」
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「——それが——何だ」
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「——僕、嘘は——ついてないんです」
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誠は——真剣な——顔で——言った。
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「——ただ——お客さんが——"どんな——煮物"、を——作るのか——知らなかったんです」
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「——聞かれた、ことに——答えただけで……相手の——事情を——知らなかった」
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「…………」
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「——虚空の——賢人も——同じじゃ——ないですか」
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誠は——静かに——続けた。
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「——あの、方は——魔法を——知りません。この、世界の、ことも——知りません」
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「——だから——"評価——できません"、と——書いたんじゃ——ないですか」
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「——"できない"、とも——"できる"、とも——言えないから」
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——賢者が。
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——はっと——顔を——上げた。
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「……確かに。それは——"沈黙"、であって——"肯定"、では——ない」
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「——だが——含みが——あるということだ——!」
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光の勇者は——引かなかった。
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「——それに——"似た——考え方は——存在する"、と——書いてあるのだぞ——!」
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「——そう——ですけど……」
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「——では——こう——しよう」
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一色が——口を——挟んだ。
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「——いきなり——大がかりに——やる——必要は——ないわ」
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「——まず——小さく——試すのよ」
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「——小さく?」
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「——ええ。魔術師——数人で。ごく——小さな——ものを——押し潰して——みる」
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「——それで——何か——起きるなら——望みが——ある。何も——起きぬなら——考え直す」
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「——万を——動かす——前に——数人で——確かめる。技術とは——そういう——ものよ」
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「——うむ——! それで——よい——!」
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——三日、後。
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地下の——奥。
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——誰も——使わぬ——広い——空洞で。
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——試しが——行われた。
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「——では——始めます」
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魔術師が——五人の——弟子を——従えて——杖を——構えた。
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「——石は——ごく——小さな——欠片です。あの——鉱脈から——ほんの——一つまみ」
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「——交代で——短く——掘りましたから——誰も——長くは——浴びて——おりません」
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「——始めて——ください」
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——六つの——声が——重なった。
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——空気が——震え。
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——石の——欠片の——周りに——渦が——生まれる。
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「——押せ——! もっとだ——!」
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「——ぐ……っ」
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——数分。
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——十分。
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——そして。
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魔術師たちが——次々と——膝を——ついた。
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「——はあ……はあ……」
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「——どうです——!」
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——石は。
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——何も——変わって——いなかった。
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「…………」
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「——熱すら——出ておらぬ」
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賢者が——渋い——顔で——言った。
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「——ほんの——わずかも——か」
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「——測って——みたけれど——変化——なし、ね」
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一色も——首を——振った。
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「——駄目、か」
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光の勇者が——うなだれた。
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——だが。
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「——いや——待て——!」
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魔術師が——息を——切らしながら——顔を——上げた。
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「——六人では——話に——ならぬ、のかも——しれません——!」
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「——どういう——ことだ」
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「——虚空の——賢人が——言った——重さを——思い出して——ください——!」
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魔術師は——必死に——言った。
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「——ゼロが——二十八個——並ぶ、ほどの——重さ——!」
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「——それに——比べたら——六人の——魔力など……水滴——一つに——等しい——!」
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「——桁が——違いすぎるのです——! これでは——何も——起きぬのが——当たり前——!」
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「——では——どれほど——要る」
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「——分かりません——! ですが——万——集めても——足りるかどうか——!」
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——広間が。
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——重い——空気に——沈んだ。
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「……万」
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誠は——ぽつり、と——呟いた。
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「——この、世界の——魔術師と——魔族を——全部——集めても——万に——なりますか?」
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「——なるまいな」
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賢者が——首を——振った。
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「——各国に——散らばって——おる。それに——魔族は——人と——手を——組みたがらぬ」
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「——だが——魔王殿は——協力を——申し出て——おるぞ」
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「——魔王——一人が——うん、と——言っても」
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魔王が——低く——言った。
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「——各地の——魔族が——従うとは——限らぬ」
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「——我は——魔王だが……全ての——魔族が——我の——配下では——ないのだ」
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「——山の——一族。地底の——一族。北の——氷の——一族」
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「——それぞれに——長が——おり——それぞれの——考えが——ある」
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——一同が。
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——顔を——見合わせた。
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「——つまり」
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賢者が——ゆっくりと——言った。
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「——試す——前に。まず——万の——者を——集めねば——ならん」
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「——人も。魔族も。国も。種族も——越えて」
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「——一つに——まとめねば——話にも——ならぬ、ということだ」
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「…………」
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——重い——沈黙の——後。
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——賢者は。
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ゆっくりと——誠を——見た。
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「——田中」
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「——はい」
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「——お前の——出番だ」
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「——え——!? 僕——!?」
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「——誰が——行く。私か? 光の勇者か?」
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賢者は——ふん、と——鼻を——鳴らした。
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「——各地の——魔族の——長に——頭を——下げて——回るのだぞ」
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「——"主人公は——俺だ"、と——喚く——男に——できると——思うか」
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「——ぐっ」
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「——お前は——魔族に——麦茶を——配って——おっただろう」
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賢者は——静かに——言った。
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「——倒された——者に——薬を——塗って——おっただろう」
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「——この、世界で——人と——魔族の——両方に——顔が——利くのは——お前だけだ」
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——誠は。
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——しばらく——黙って。
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そして——ゆっくりと——頷いた。
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「……分かりました」
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「——行きます」
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「勇者さんが、"太陽を作る方法を、思いついた"、って。ウランを、天に、投げ上げて、万の魔族の、集団詠唱で、押し潰す。虚空の賢人は、"魔法は、評価できません"、って、答えただけで、"絶対にできない"、とは、言わなかったから、"望みがある"、って。……でも、僕、引っかかった。うちの店でも、あるんだ。"この芋、煮物に合う?"、って聞かれて、"合いますよ"、って答えて、後で、"固くて駄目だった"、って言われること。嘘は、ついてない。ただ、相手が、どんな煮物を作るか、知らなかった。虚空の賢人も、魔法を、知らないし、この世界も、知らない。だから、"評価できません"、って、書いたんじゃ、ないかな。"言わなかった"、は、"できる"、じゃ、ない。……そう言ったら、賢者さんが、"それは、沈黙であって、肯定では、ない"、って。でも、勇者さんは、引かなかった。それで、一色さんが、"いきなり、大がかりに、やる必要は、ない。まず、小さく、試す"、って。三日後、魔術師さん、六人で、小さな石を、押し潰してみた。……何も、起きなかった。熱すら、出なかった。でも、魔術師さんが、"六人では、話にならぬ。虚空の賢人が、言った、重さを、思い出せ。ゼロが、二十八個。六人の魔力など、水滴一つだ"、って。万、集めても、足りるか、分からないって。……そもそも、この世界の、魔術師と、魔族を、全部集めても、万に、なるのかな。魔王さんが、"全ての魔族が、我の配下では、ない。山の一族、地底の一族、北の氷の一族。それぞれに、長がいて、それぞれの考えがある"、って。賢者さんが、"試す前に、まず、万の者を、集めねば、ならん。人も、魔族も、国も、種族も、越えて"、って。……そして、"田中、お前の出番だ"、って。僕? "各地の魔族の長に、頭を下げて回るんだぞ。主人公は俺だ、と喚く男に、できると思うか"、って。勇者さん、黙ってた。"人と魔族の両方に、顔が利くのは、お前だけだ"、って。……じいちゃん。僕、旅に、出るよ」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。この——長い——長い——頭下げの——旅が。
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——一年にも——二年にも——及ぶ、ことを。
そして——各地を——回り。人と——魔族を——繋いで——歩いた——その、日々こそが。
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——後に——彼が——たった一人で——天の——相手と——渡り合う、時の……何よりの——支えに——なることも。
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——今は……まだ、誰も——知らない。




