表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
317/467

第61話「言わなかった、ということ」

翌朝。





誠が——月に——問いかける——支度を——していると。






「——待て——! 田中——!」






光の勇者が——駆け込んできた。






「——どうしました?」






「——思いついた——! 太陽を——作る——方法だ——!」








大広間に——一同が——集められた。






「——聞け——!」






光の勇者は——胸を——張って——言った。






「——虚空の——賢人は——こう——言った。"水素を——集めて——自らの——重さで——押し潰せ"、と」






「——だが——その、重さが——足らぬ。ならば——どうする」






「——重さの——代わりに——"魔法で——押し潰せば——よい"——!」







——広間が——ざわめいた。






「——おお——!」





「——なるほど——!」






「——俺が——あの——ウランの——石を——天まで——投げ上げる——!」






光の勇者は——腕を——振った。






「——そこへ——魔術師と——魔王が——魔族を——率いて——集団で——詠唱を——放つ——!」






「——万の——魔力で——押し潰せば——太陽と——同じ——ことが——起きる——はずだ——!」







「——フフ——! 悪くない——!」






魔術師が——杖を——構えた。






「——我が——一族の——集団詠唱を——見せる——時が——来ましたか——!」








「——待て。待て、待て」






賢者が——手を——挙げた。






「——それは——虚空の——賢人に——確かめたのか」






「——確かめた——!」







魔法使いが——胸を——張って——言った。






「——昨夜——配信で——聞きました——!」






「——なんと——答えた」






「——ええと——長々と——返ってきたんですけど——難しくて——半分——分かりませんでした——!」






「——読め——!」







「——"魔法という——概念は——現実の——物理には——存在しないため——評価——できません"」






「——"ただし——外部から——圧力を——加える——という——発想であれば——研究上——似た——考え方は——存在します"」







「——ほう——!」






光の勇者が——目を——輝かせた。






「——"存在する"、と——言ったぞ——!」






「——それと——ウランで——よいのか」






「——ええと……"別の——物質です"、とは——書いてありますけど……」






「——"絶対に——できない"、とは——書いてありません——!」







「——ならば——望みが——ある——!」






光の勇者が——机を——叩いた。






「——虚空の——賢人は——できぬことは——"できぬ"、と——はっきり——言う——男だ——!」






「——月へ——行くのも——恒星を——作るのも——"できぬ"、と——言い切った——!」






「——だが——これには——言わなかった——!」








——広間が——沸き立った。






「——おおお——!」





「——やってみようぞ——!」








——だが。






「……あの」






誠だけが。





——首を——かしげていた。







「——なんだ、田中」






「——"言わなかった"、って……それ——"できる"、って——ことですか?」







——広間が。





——一瞬——静まった。






「——何が——言いたい」






「——ええと。うまく——言えないんですけど」






誠は——考えながら——言った。






「——うちの——店で——たまに——あるんです」






「——お客さんに——"この——芋、煮物に——合う?"、って——聞かれて」






「——僕が——"合いますよ"、って——答えて」






「——でも——後で——"固くて——駄目だった"、って——言われる、ことが」







「——それが——何だ」






「——僕、嘘は——ついてないんです」






誠は——真剣な——顔で——言った。






「——ただ——お客さんが——"どんな——煮物"、を——作るのか——知らなかったんです」






「——聞かれた、ことに——答えただけで……相手の——事情を——知らなかった」







「…………」






「——虚空の——賢人も——同じじゃ——ないですか」






誠は——静かに——続けた。






「——あの、方は——魔法を——知りません。この、世界の、ことも——知りません」






「——だから——"評価——できません"、と——書いたんじゃ——ないですか」






「——"できない"、とも——"できる"、とも——言えないから」








——賢者が。






——はっと——顔を——上げた。






「……確かに。それは——"沈黙"、であって——"肯定"、では——ない」






「——だが——含みが——あるということだ——!」






光の勇者は——引かなかった。






「——それに——"似た——考え方は——存在する"、と——書いてあるのだぞ——!」






「——そう——ですけど……」








「——では——こう——しよう」






一色が——口を——挟んだ。






「——いきなり——大がかりに——やる——必要は——ないわ」






「——まず——小さく——試すのよ」







「——小さく?」






「——ええ。魔術師——数人で。ごく——小さな——ものを——押し潰して——みる」






「——それで——何か——起きるなら——望みが——ある。何も——起きぬなら——考え直す」






「——万を——動かす——前に——数人で——確かめる。技術とは——そういう——ものよ」







「——うむ——! それで——よい——!」








——三日、後。






地下の——奥。





——誰も——使わぬ——広い——空洞で。






——試しが——行われた。







「——では——始めます」






魔術師が——五人の——弟子を——従えて——杖を——構えた。






「——石は——ごく——小さな——欠片です。あの——鉱脈から——ほんの——一つまみ」






「——交代で——短く——掘りましたから——誰も——長くは——浴びて——おりません」







「——始めて——ください」








——六つの——声が——重なった。






——空気が——震え。





——石の——欠片の——周りに——渦が——生まれる。







「——押せ——! もっとだ——!」






「——ぐ……っ」







——数分。






——十分。







——そして。






魔術師たちが——次々と——膝を——ついた。







「——はあ……はあ……」






「——どうです——!」







——石は。






——何も——変わって——いなかった。







「…………」






「——熱すら——出ておらぬ」






賢者が——渋い——顔で——言った。






「——ほんの——わずかも——か」






「——測って——みたけれど——変化——なし、ね」






一色も——首を——振った。







「——駄目、か」






光の勇者が——うなだれた。








——だが。






「——いや——待て——!」






魔術師が——息を——切らしながら——顔を——上げた。






「——六人では——話に——ならぬ、のかも——しれません——!」






「——どういう——ことだ」






「——虚空の——賢人が——言った——重さを——思い出して——ください——!」






魔術師は——必死に——言った。






「——ゼロが——二十八個——並ぶ、ほどの——重さ——!」






「——それに——比べたら——六人の——魔力など……水滴——一つに——等しい——!」






「——桁が——違いすぎるのです——! これでは——何も——起きぬのが——当たり前——!」







「——では——どれほど——要る」






「——分かりません——! ですが——万——集めても——足りるかどうか——!」








——広間が。






——重い——空気に——沈んだ。







「……万」






誠は——ぽつり、と——呟いた。






「——この、世界の——魔術師と——魔族を——全部——集めても——万に——なりますか?」






「——なるまいな」






賢者が——首を——振った。






「——各国に——散らばって——おる。それに——魔族は——人と——手を——組みたがらぬ」







「——だが——魔王殿は——協力を——申し出て——おるぞ」






「——魔王——一人が——うん、と——言っても」






魔王が——低く——言った。






「——各地の——魔族が——従うとは——限らぬ」






「——我は——魔王だが……全ての——魔族が——我の——配下では——ないのだ」






「——山の——一族。地底の——一族。北の——氷の——一族」






「——それぞれに——長が——おり——それぞれの——考えが——ある」








——一同が。






——顔を——見合わせた。







「——つまり」






賢者が——ゆっくりと——言った。






「——試す——前に。まず——万の——者を——集めねば——ならん」






「——人も。魔族も。国も。種族も——越えて」






「——一つに——まとめねば——話にも——ならぬ、ということだ」







「…………」







——重い——沈黙の——後。







——賢者は。






ゆっくりと——誠を——見た。







「——田中」






「——はい」






「——お前の——出番だ」







「——え——!? 僕——!?」






「——誰が——行く。私か? 光の勇者か?」






賢者は——ふん、と——鼻を——鳴らした。






「——各地の——魔族の——長に——頭を——下げて——回るのだぞ」






「——"主人公は——俺だ"、と——喚く——男に——できると——思うか」






「——ぐっ」







「——お前は——魔族に——麦茶を——配って——おっただろう」






賢者は——静かに——言った。






「——倒された——者に——薬を——塗って——おっただろう」






「——この、世界で——人と——魔族の——両方に——顔が——利くのは——お前だけだ」








——誠は。






——しばらく——黙って。






そして——ゆっくりと——頷いた。







「……分かりました」






「——行きます」







その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「勇者さんが、"太陽を作る方法を、思いついた"、って。ウランを、天に、投げ上げて、万の魔族の、集団詠唱で、押し潰す。虚空の賢人は、"魔法は、評価できません"、って、答えただけで、"絶対にできない"、とは、言わなかったから、"望みがある"、って。……でも、僕、引っかかった。うちの店でも、あるんだ。"この芋、煮物に合う?"、って聞かれて、"合いますよ"、って答えて、後で、"固くて駄目だった"、って言われること。嘘は、ついてない。ただ、相手が、どんな煮物を作るか、知らなかった。虚空の賢人も、魔法を、知らないし、この世界も、知らない。だから、"評価できません"、って、書いたんじゃ、ないかな。"言わなかった"、は、"できる"、じゃ、ない。……そう言ったら、賢者さんが、"それは、沈黙であって、肯定では、ない"、って。でも、勇者さんは、引かなかった。それで、一色さんが、"いきなり、大がかりに、やる必要は、ない。まず、小さく、試す"、って。三日後、魔術師さん、六人で、小さな石を、押し潰してみた。……何も、起きなかった。熱すら、出なかった。でも、魔術師さんが、"六人では、話にならぬ。虚空の賢人が、言った、重さを、思い出せ。ゼロが、二十八個。六人の魔力など、水滴一つだ"、って。万、集めても、足りるか、分からないって。……そもそも、この世界の、魔術師と、魔族を、全部集めても、万に、なるのかな。魔王さんが、"全ての魔族が、我の配下では、ない。山の一族、地底の一族、北の氷の一族。それぞれに、長がいて、それぞれの考えがある"、って。賢者さんが、"試す前に、まず、万の者を、集めねば、ならん。人も、魔族も、国も、種族も、越えて"、って。……そして、"田中、お前の出番だ"、って。僕? "各地の魔族の長に、頭を下げて回るんだぞ。主人公は俺だ、と喚く男に、できると思うか"、って。勇者さん、黙ってた。"人と魔族の両方に、顔が利くのは、お前だけだ"、って。……じいちゃん。僕、旅に、出るよ」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。この——長い——長い——頭下げの——旅が。



——一年にも——二年にも——及ぶ、ことを。


そして——各地を——回り。人と——魔族を——繋いで——歩いた——その、日々こそが。



——後に——彼が——たった一人で——天の——相手と——渡り合う、時の……何よりの——支えに——なることも。




——今は……まだ、誰も——知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ