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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第56話「視聴者が、詳しすぎる」

賢者が——採掘の——段取りに——頭を——抱えている、頃。





——また——とんがり帽子が——飛び込んできた。






「——誠さん——!! 大変です——!!」






「——ま、また——ですか——!?」






「——追加情報——です——!!」








工房に——一同が——集められた。






「——で。今度は——何だ」






賢者が——渋い——顔で——尋ねる。






「——はい——! あの——ウランの——話、なんですけど」






魔法使いは——申し訳なさそうに——言った。






「——あれ——間違ってた、みたいです」







「——なんだと——!?」






一同が——騒然と——なった。






「——間違って——いた、とは——どういう——ことだ——!」






「——ええと。私が——配信で——"ウラン——集めます——!"、って——報告したら」






魔法使いは——たじたじと——なりながら——続けた。






「——コメント欄が——大炎上——しまして」






「——だいえんじょう?」






「——"それ——違う"、"ウランじゃ——太陽は——できない"、"核分裂と——核融合は——別"、って——めちゃくちゃ——怒られて」






「…………」







「——それで——ちゃんと——聞き直しました——!」






魔法使いは——一枚の——紙を——広げた。






「——視聴者さんの——一人が——"クロードジーピーティー"、なる——ものに——聞いてくれた、そうで」






「——なんだ——それは」






「——分かりません——! でも——すごく——物知りな——存在だ、そうです——!」






「——また——正体不明の——ものが——増えたな……」








「——で。その——物知りは——なんと——言ったのだ」






「——読みますね——!」






魔法使いは——紙を——読み上げた。







「——"太陽を——作るには——水素ガスを——集める"」






「——水素ガス?」






「——はい。"それを——ものすごい——量——集めると——自分の——重さで——中心が——高温高圧に——なり——核融合が——始まって——恒星に——なる"、と」






「——ほう——! つまり——燃やすのでは——なく——潰すのか——!」






賢者が——身を——乗り出した。






「——道理だ——! 自らの——重さで——潰れる、なら——外から——力を——加え続ける——必要は——ない——!」






「——それが——"独りでに——燃え続ける"、仕組みか——!」







「——ただ——ですね」






魔法使いの——声が——小さく——なった。






「——"必要な——量"、が——書いてあって」






「——どれほどだ」






「——"木星の——約八十倍——以上"、だそうです」






「——もくせい?」






「——分かりません——! でも——"太陽の——およそ——八分の一"、くらい、とも——書いてあって」







——工房が。





——静まり返った。







「……太陽の——八分の一」






賢者が——呆然と——呟いた。






「——一色。この、星——全部を——集めたら——どのくらいだ」






「……計算——するまでも——ないわ」






一色の——顔は——蒼白、だった。






「——この、星を——丸ごと——放り込んでも……"かけら"、にも——ならない」







「…………」






「——それと」






魔法使いは——最後の——一行を——読んだ。






「——"人類が——集められる——規模では——ありません"、と」







——絶望が。






——工房を——覆った。







「……無理、か」






光の勇者が——膝を——ついた。






「——太陽など——作れんのか。最初から」






「——駄目だ。桁が——違いすぎる」






賢者が——机に——突っ伏した。






「——星を——丸ごと——使っても——足らぬ、など……どう——しろと——いうのだ」








——数ヶ月の——努力が。






——一枚の——紙で——崩れ落ちた。







「……あの」






魔法使いが——おそるおそる——言った。






「——ごめんなさい。私が——最初に——間違った——ことを——言ったから」






「——皆さんの——時間を——無駄に——」






「——違います」







——誠が。






きっぱりと——言った。






「——え?」






「——あなたが——間違いを——教えて——くれたから」






誠は——静かに——言った。






「——僕たちは——何千人も——ウランを——掘りに——行かずに——済みました」






「——もし——知らないままだったら……大勢の——人を——危ない——目に——遭わせて。それで——太陽も——できなかった」






「——あなたは——命を——救ったんです」







「…………」






魔法使いは——目を——潤ませて——うつむいた。







「——それに」






誠は——紙を——手に——取った。






「——分かったことも——あります」






「——なんだと?」






「——"太陽は——作れない"、って——分かりました」






誠は——皆を——見回した。






「——これって——大事なこと、じゃ——ないですか?」






「——できない、ことが——分かれば……別の——道を——探せます」







「…………」






賢者が——ゆっくりと——顔を——上げた。






「……お前は」






「——本当に——折れんな」






「——折れてる——暇が——ないんです」






誠は——笑った。






「——星は——待ってくれませんから」








「——では——一つ——整理させてくれ」






賢者が——紙を——引き寄せた。






「——我々が——欲しいのは——何だ」






「——太陽——ですよね?」






「——違う」






賢者は——首を——振った。






「——太陽が——欲しいのでは——ない」






「——我々が——欲しいのは——"引く力"、だ」







——一同が。





——顔を——上げた。






「——太陽は——ただ——"引く力を——持つ——もの"、の——一例に——すぎん」






「——ならば——問うべきは——こうだ」






賢者は——紙に——大きく——書いた。







——「強く——引く——もの、で。太陽で——ないものは——何か」







「——それを——探せば——よいのだ」






「——魔法使いさん」






誠が——振り向いた。






「——それ——"視聴者"、さんに——聞いて——もらえませんか」






「——はい——! 任せて——ください——!」






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「魔法使いさんが、また、来た。今度は、"ウランの話、間違ってた"、って。配信で、報告したら、コメント欄が、"大炎上"、したらしい。"ウランじゃ、太陽は、できない"、"核分裂と、核融合は、別"、って。それで、視聴者さんの、一人が、"クロードジーピーティー"、っていう、物知りに、聞いてくれたって。曰く、太陽を、作るには、水素ガスを、集めて、自分の重さで、潰す。でも、必要な量が、"木星の八十倍"、"太陽の八分の一"。……一色さんが、"この星を、丸ごと、放り込んでも、かけらにも、ならない"、って。"人類が、集められる規模では、ありません"、とも。……皆、絶望してた。数ヶ月の、努力が、紙一枚で、崩れた。魔法使いさん、"私が、間違ったこと、言ったから"、って、謝ってた。だから、言った。"あなたが、教えてくれたから、何千人も、ウランを掘りに、行かずに、済んだ。あなたは、命を、救った"、って。それに、"太陽は、作れない"、って、分かったのも、大事だ。できないことが、分かれば、別の道を、探せる。賢者さんが、"欲しいのは、太陽じゃ、ない。引く力だ"、って。"強く引くもので、太陽でないものは、何か"。……それを、聞いてもらうことに、した。じいちゃん、まだ、終わってないよ」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。賢者が——紙に——書いた——その、問い。



——「強く——引く——もので。太陽で——ないものは——何か」



——その——答えが。




——すでに——この、世界の——どこにも——なく。そして——同時に。



——あらゆる——ものの——ただ——その——先に——在ることも。


そして——その——答えを——聞いた——時。



——彼らが——揃って——ある——一人の——顔を——思い浮かべることに——なるのも——今は……まだ、誰も——知らない。

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