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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
沈む世界、再びの日常

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第51話「聞いて、回る」

翌朝から。




誠の——聞き取りが——始まった。






「——すみません。ちょっと——伺いたいことが——あるんですが」





まず——訪ねたのは。





地下の——広間で——たむろしている——厨二病の——若者たち、だった。






「——ふっ。我に——何用か、モブよ」






「——皆さんの——いた——世界では……太陽って——何で——燃えてるか——分かってましたか?」







——若者たちは。





顔を——見合わせて。





そして——一斉に——腕を——組んだ。






「——ふっ。愚問だな」






「——太陽とは——封印されし——古の——炎神の——瞳よ——!」






「——違う——! あれは——世界を——監視する——天の——魔眼だ——!」






「——いいや——! 我が——前世の——記憶に、よれば——!」







「……はい。ありがとう——ございました」






誠は——静かに——引き下がった。







次に——訪ねたのは。





アメリカン・ヒーローたち、だった。






「——HAHAHA——! 太陽か——!」





キャプテン・フリーダムが——胸を——張った。






「——あれは——熱い——! 以上だ——!」






「——それは——僕も——知ってます」






「——うむ——! そして——殴ると——焦げる——!」






「——それも——知ってます」







——収穫は——なかった。







その、後も。





誠は——地道に——聞いて——回った。






十人。




二十人。




三十人。






「——さあ。考えた、ことも——ない」





「——うちの、世界じゃ——神様が——燃やしてる、って——言われてたな」





「——太陽? そりゃ——あるのが——当たり前——だろう」







——誰も。





——知らなかった。







「……やっぱり——駄目か」






三日目の——夕方。





誠は——さすがに——肩を——落とした。







——と。






通りかかった——一人の——若者が。





——ふと——足を——止めた。







厨二病の——団体の——一人。






いつも——片目を——前髪で——隠している——少年、だった。






「——なあ。さっきから——聞いて——回ってるけど」






「——あ、はい」






「——太陽が——何で——燃えてるか——って——話?」






「——はい。何か——ご存知——ですか?」







すると——少年は。






——きょとん、と——した——顔で——言った。







「——え? あれ——燃えてないよ」







「…………は?」






誠は——固まった。






「——燃えて——ない?」






「——うん。火が——ついてる、わけじゃ——ないんだよ」






少年は——頭を——掻きながら。





思い出すように——言った。






「——えっと……なんだっけ。すごく——小さい——粒が——あって」





「——それが——ぎゅうぎゅうに——押し込まれて——くっつくと……ものすごい——熱が——出るんだ」






「——太陽は——それが——ずーっと——起きてる。だから——燃料を——足さなくても——何十億年も——熱いまま」







「…………」






誠は——ぽかんと——して——少年を——見た。






「——な、なんで——そんなこと——知ってるんですか——!?」






「——え? だって——学校で——習ったし」






「——学校——!?」






「——うん。理科の——授業で。……いや、たぶん。うろ覚え、だけど」







——誠の——頭の中で。






——何かが——ちくり、と——した。







(——学校)






(——理科の——授業)






(——なんだろう。僕も——どこかで……)







「——賢者さん——!!」






誠は——少年の——腕を——掴んで——走り出した。






「——うわっ——! な、なんだよ——!」






「——今の——話——! もう一回——賢者さんの——前で——してください——!」








——工房に——飛び込んで。






少年が——同じ——話を——繰り返すと。






賢者は。






——椅子から——転げ落ちた。







「——燃えて——おらん——だと——!?」






「——う、うん」






「——小さな——粒が——くっついて——熱を——出す——!?」






「——そんな——感じ」







賢者は——ぶるぶると——震えながら。





——紙を——引き寄せて——書き殴り始めた。






「——待て。待て、待て。ならば——燃料は——要らん」





「——押し込む——力さえ——あれば——熱は——独りでに——生まれ続ける」





「——薪も——油も——魔力も——要らん——!」






「——それ——作れるんですか——!?」






「——分からん——! だが——!」






賢者は——顔を——上げた。






その、目は——爛々と——輝いていた。






「——"作れぬ"、と——決まって——いたものが——"分からん"、に——変わった——!」






「——これは——大前進だ——!」







工房が——沸き立った。







「——君——名前は——!?」






一色が——少年に——詰め寄る。






「——え? えっと——"漆黒の——剣聖"、で——」






「——本名——!」






「——……あ、れ?」







——少年の——顔から。






——すっ、と——表情が——消えた。







「……本名。……なんだっけ」






「——え?」






「——おかしいな。……思い出せない」







少年は——自分の——頭を——押さえた。






「——学校の、ことは——覚えてる。理科の——授業も。給食の——味も」





「——なのに……自分の——名前が——出てこない」






「——それに——」






少年の——声が——震え始めた。






「——なんで——僕、ここに——いるんだっけ」







——工房が。





——静まり返った。







「——大丈夫——大丈夫です——!」






誠が——慌てて——少年の——背中を——さすった。






「——無理に——思い出さなくて——いいですから——!」






「——う、うん……」






少年は——青い——顔で——頷いて。





そして——ふらふらと——出ていった。







——その、後ろ姿を——見送りながら。






誠は——英雄の——言葉を——思い出していた。







——"お前の——世界の——話を——聞かせろ"、というのは。





——者に——よっては——酷な——問いだ。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「太陽のこと、皆に、聞いて回った。厨二病の子たちは、"封印されし炎神の瞳"、とか。フリーダムさんは、"熱い。以上だ"。三十人、聞いても、誰も、知らなかった。……でも、最後に、片目を隠した、少年が、教えてくれた。"あれ、燃えてないよ"、って! 火が、ついてる、わけじゃ、なくて、小さい粒が、くっつくと、すごい熱が、出るんだって。だから、燃料を、足さなくても、何十億年も、熱い。賢者さん、椅子から、転げ落ちて、"燃料が、要らん! これは、大前進だ!"、って。……でも、一色さんが、"君、本名は?"、って、聞いたら……あの子、"思い出せない"、って。"学校のことは、覚えてる。理科の授業も、給食の味も。なのに、名前が、出てこない。なんで、僕、ここに、いるんだっけ"、って。……真っ青な、顔してた。英雄さんが、言ってた通りだ。聞いちゃ、いけないことが、あるんだ。じいちゃん、あの子たち、一体、何を、抱えてるんだろう」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。少年が——語った——「学校で——習った」、という——その、一言が。



——太陽の——謎、だけでなく。



——もっと——ずっと——近しい——ものへの……小さな——小さな——手がかりで、あったことを。


そして——彼らが——揃って——「思い出せない」、と——言う——その、奥に。



——どんな——出来事が——伏せられているのかも——今は……まだ、誰も——知らない。

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