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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
沈む世界、再びの日常

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第48話「できること探し」

真実を——公表して。




数日が——過ぎた。






賢者が——恐れていたような。





——秩序の——崩壊は——起きなかった。






もちろん。





泣く——者も。




塞ぎ込む——者も。





——いた。






けれど。






「——誠さん——! 井戸の——修理、終わったよ——!」





「——今日の——畑当番——行ってくるね——!」





「——子どもらの——飯、多めに——炊いといたよ——!」






——皆。





——今日を——生きていた。







「……不思議、だな」





賢者が——呟いた。






「——絶望的な——事実を——知りながら……なぜ——皆——普通に——暮らして——いられる」






「——たぶん」





誠が——答えた。






「——他に——やることが——ないから、じゃ——ないですかね」






「……なんだと?」






「——だって——嘆いても——星は——止まりません」





誠は——芋を——磨きながら——言った。






「——なら——今日の——飯を——作った、方が——いい。今日の——畑を——耕した、方が——いい」





「——それが——皆——分かってるんだと——思います」






「…………」






賢者は——しばらく——黙って。





そして——ふっと——笑った。






「——私は——人を——見くびって——いたようだ」







そして。






——変化は。





——思わぬ、ところから——始まった。







「——おい、田中」






ある朝。





光の勇者が——店に——やってきた。






「——おはようございます。どうしました?」






「……その」






彼は——気まずそうに——目を——そらして。





そして——ぼそり、と——言った。






「——何か——手伝えることは——ないか」







誠は——目を——見開いた。






「——え?」






「——だ、だから——! 手伝えることだ——!」






光の勇者は——顔を——赤くして——まくし立てた。






「——俺は——魔王を——四十七体——倒した——! だが——それは——何の——役にも——立たなかった——!」





「——星を——止める、ことも——できん——! レベルが——何兆——あろうと——無駄だ——!」






「——だが——!」






彼は——拳を——握った。






「——荷物を——運ぶ、ことは——できる——! 岩を——どける、ことも——できる——!」





「——何も——できんより——マシだ——!」







誠は。





——ぱあっ、と——笑顔に——なった。






「——助かります——! めちゃくちゃ——助かります——!」






「——ふ、ふん。当然だ」






「——じゃあ——今日は——地下の——第三層に——資材を——運んで——もらえますか——! 力仕事——なので——勇者さんが——いると——本当に——助かるんです——!」






「——任せろ——!」







——それを——皮切りに。






「——ふん。俺も——暇だ」





武闘家が——加わり。






「——フフ。私の——魔法も——多少は——役に——立ちましょう」





魔術師が——加わり。






「……手を——貸そう」





英雄が——静かに——加わった。






「——我らも——闇の、力を——貸してやろう——!」





厨二病の——若者たちも。






「——HAHAHA——! 力仕事なら——任せろ——!」





アメリカン・ヒーローたちも。







地下は——一気に——賑やかに——なった。






「——おい、そっちの——梁を——持ち上げろ——!」




「——分かった——! せーの——!」





「——魔術師さん——! 明かりを——お願いします——!」




「——フフ。お安い——ご用です」







「……なんだか」





ルカが——ぽかんと——言った。






「——皆さん——別人——みたいですね」






「——ああ」





誠は——微笑んだ。






「——いや。たぶん——あれが——本当の——姿——なんじゃ——ないかな」







——そして。






対策の——模索も——始まった。






賢者と——一色を——中心に。





「星の——落下を——止める——方法」が——議論された。






「——星を——押し戻す。物理的に」





「——どれほどの——力が——要ると——思う」





「——計算——不能だ。桁が——足りん」






「——では——星の——重さを——軽くする——のは」





「——星の——重さを——どう——減らす。海でも——捨てるか」






「——太陽の——引く力を——弱める、のは」





「——太陽に——干渉——しろ、と? 近づいた——瞬間に——蒸発するぞ」







——議論は。





——ことごとく——行き詰まった。






「……やはり——無理か」






賢者が——頭を——抱えた。






「——星を——動かす、など……人に——できる——ことでは——ない」







——だが。






その、時。






議論を——聞いていた——誠が。





——ふと——首を——かしげた。







「……あの」






「なんだ、田中」






「——星って——なんで——太陽の——方に——行くんですか?」






「——引かれて——おるからだ。太陽の——引く力に」






「——じゃあ」






誠は——きょとん、と——した——顔で——言った。






「——反対側から——引っ張れば——いいんじゃ——ないですか?」







——賢者の——動きが。






——止まった。







「…………なんだと?」






「——え? 変な、こと——言いました?」






「——待て。待て、田中」






賢者が——ゆっくりと——立ち上がった。






「——もう一度——言え」






「——ええと……太陽が——こっちに——引っ張ってるなら」





「——反対側にも——引っ張るものが——あれば……釣り合いませんか?」







「…………」






賢者と——一色が。





——顔を——見合わせた。







「——一色。可能、だと——思うか」






「——理屈としては——正しい。問題は——"何を——置くか"、よ」






「——太陽ほどの——引く力を——持つ——ものなど……」






一色は——そこまで——言って。





——はっと——した。






「……いえ。待って」






「——作れば——いいんじゃ——ない?」







その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「真実を、公表しても、皆、普通に、暮らしてる。賢者さんが、"なぜだ"、って。"嘆いても、星は、止まらない。なら、今日の飯を、作った方が、いい。それが、皆、分かってるんだと、思う"、って、言った。賢者さん、"人を、見くびっていた"、って。それから、光の勇者さんが、"何か、手伝えることは、ないか"、って、来た! びっくり。"魔王を、四十七体、倒しても、何の役にも、立たなかった。でも、荷物を、運ぶことは、できる"、って。それから、皆、次々、手伝いに、来てくれた。ルカが、"別人みたい"、って。……いや、あれが、本当の姿なんじゃ、ないかな。対策の、話し合いも、始まった。でも、行き詰まってた。だから、僕、思ったこと、言ってみた。"太陽が、こっちに、引っ張ってるなら、反対側にも、引っ張るものが、あれば、釣り合いませんか?"、って。……そしたら、賢者さんと、一色さんが、固まって……一色さんが、"作れば、いいんじゃない?"、って。じいちゃん、なんか、話が、動き出したかも」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。彼が——何気なく——口に、した——「反対側から——引っ張れば——いい」、という——素朴な——思いつきが。



——この、世界を——救う——長い——長い——挑戦の……最初の——一歩に——なることを。


そして——その——挑戦が。



——一度——大きく——失敗する——ことも——今は……まだ、誰も——知らない。

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