第47話「伝える」
真実を——伝える、日が——来た。
⸻
⸻
⸻
地下の——大広間に。
⸻
⸻
⸻
町の——人々が——集められた。
⸻
⸻
⸻
⸻
避難民も。
⸻
⸻
自称・主人公たちも。
⸻
⸻
厨二病の——若者たちも。
⸻
⸻
アメリカン・ヒーローたちも。
⸻
⸻
⸻
——そして——駄々丸も。
⸻
⸻
⸻
⸻
皆が——不思議そうな——顔で——集まっていた。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——なんだい、誠さん。改まって」
⸻
⸻
「——何か——あったのかい?」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
誠は——壇上に——立った。
⸻
⸻
⸻
⸻
——手が——震えていた。
⸻
⸻
⸻
⸻
(——落ち着け)
⸻
⸻
⸻
(——ちゃんと——伝えるんだ)
⸻
⸻
⸻
⸻
「——皆さん。今日は——大事な——話が——あります」
⸻
⸻
⸻
⸻
ざわめきが——静まる。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——この、暑さの——原因が——分かりました」
⸻
⸻
⸻
⸻
——ざわり。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——ほ、本当かい——!?」
⸻
⸻
「——じゃあ——止められるのか——!?」
⸻
⸻
⸻
⸻
期待の——こもった——声。
⸻
⸻
⸻
⸻
誠は——ぐっ、と——拳を——握った。
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
「——原因は——太陽です」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——太陽?」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——正確には」
⸻
⸻
⸻
誠は——一息に——言った。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——この、星が——太陽に——近づいています」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
——しん。
⸻
⸻
⸻
⸻
大広間が——静まり返った。
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
「……え?」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——星の——道が——狂って——少しずつ——太陽に——引き寄せられています」
⸻
⸻
⸻
「——だから——年々——暑く——なります。氷が——溶けます。海が——満ちます」
⸻
⸻
⸻
「——そして——このまま、だと……」
⸻
⸻
⸻
⸻
誠の——声が——詰まった。
⸻
⸻
⸻
⸻
けれど——彼は——最後まで——言った。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——いずれ——この、星は——太陽に——飲まれます」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
——沈黙。
⸻
⸻
⸻
⸻
そして。
⸻
⸻
⸻
⸻
——悲鳴が——上がった。
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
「——そんな——!」
⸻
⸻
「——嘘だ——! 嘘だと——言ってくれ——!」
⸻
⸻
「——じゃあ——わしらは——死ぬのか——!?」
⸻
⸻
「——子どもたちは——! この子たちは——どうなるんだ——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
大広間が——絶望に——包まれた。
⸻
⸻
⸻
⸻
泣き崩れる——者。
⸻
⸻
呆然と——立ち尽くす——者。
⸻
⸻
怒りを——ぶつける——者。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——なんで——今更——言うんだ——!」
⸻
⸻
「——知らなきゃ——よかった——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
誠は——その——すべてを。
⸻
⸻
⸻
——逃げずに——受け止めた。
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
(——そうだよな)
⸻
⸻
⸻
(——当たり前だ)
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
——だが。
⸻
⸻
⸻
⸻
しばらく——して。
⸻
⸻
⸻
⸻
——誠は——大きく——息を——吸った。
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
「——皆さん——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
その、声は。
⸻
⸻
⸻
——大広間の——隅々まで——届いた。
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
「——僕は——皆さんに——嘘を——つきたく——なかった——!」
⸻
⸻
⸻
「——何も——知らないまま——ある日——突然——終わる、なんて——嫌だったんです——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——だから——言いました——! ひどい——ことを——言ったと——思います——!」
⸻
⸻
⸻
「——恨んで——くれて——構いません——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——でも——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
誠は——皆を——見回した。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——僕は——諦めて——ません——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
——ざわ。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——な、何を——言って——!」
⸻
⸻
「——星が——落ちるんだぞ——! どうしろって——言うんだ——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——分かりません——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
誠は——正直に——言った。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——どうすれば——いいのか——僕には——全然——分かりません——!」
⸻
⸻
⸻
「——僕は——弱いし——馬鹿だし——ただの——八百屋です——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——でも——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
彼は——拳を——握った。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——思い出して——ください——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——氷が——溶けた、時——! 皆——"もう——だめだ"、って——言いました——!」
⸻
⸻
⸻
「——でも——地下を——掘りました——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——島が——沈んだ、時——! "受け入れる——場所が——ない"、って——言いました——!」
⸻
⸻
⸻
「——でも——皆で——広げて——受け入れました——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——水が——足りない、時も——! 光が——届かない、時も——!」
⸻
⸻
⸻
「——そのたびに——誰かが——知恵を——出して——誰かが——力を——貸して——!」
⸻
⸻
⸻
「——ここまで——来たじゃ——ないですか——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
——大広間が。
⸻
⸻
⸻
——静まり返っていた。
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
「——一人じゃ——何も——できません——!」
⸻
⸻
⸻
誠は——叫んだ。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——僕なんて——本当に——何も——できない——!」
⸻
⸻
⸻
「——でも——皆で——やれば——ここまで——来られたんです——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——今度の——相手は——大きすぎます——! 途方も——ないです——!」
⸻
⸻
⸻
「——でも——だからって——最初から——諦める——理由には——なりません——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
誠は——深く——頭を——下げた。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——お願いします——!」
⸻
⸻
⸻
「——一緒に——考えて——ください——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——一人の——頭では——無理でも——! 皆の——頭が——集まれば——!」
⸻
⸻
⸻
「——何か——見つかるかも——しれない——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
——長い——沈黙。
⸻
⸻
⸻
⸻
そして。
⸻
⸻
⸻
⸻
「…………誠さん」
⸻
⸻
⸻
⸻
——避難民の——おかみさんが。
⸻
⸻
⸻
——涙を——拭いながら——言った。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——あんた——最初に——うちらを——受け入れて——くれたねえ」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——港町が——沈んで——何もかも——失って。もう——だめだと——思った、時に」
⸻
⸻
⸻
「——あんたが——"生きてれば——なんとか——なる"、って——握り飯を——くれた」
⸻
⸻
⸻
⸻
おかみさんは——顔を——上げた。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——あの、時——あんたを——信じて——よかったよ」
⸻
⸻
⸻
「——だから——今度も——信じる」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
「——わしも、だ」
⸻
⸻
⸻
老人が——立ち上がった。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——地下を——掘れ、と——言われた、時も——正気か、と——思った」
⸻
⸻
「——だが——今——わしらは——ここで——生きとる」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——誠さんが——言うなら——やるさ」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
一人。
⸻
⸻
また——一人。
⸻
⸻
⸻
⸻
人々が——立ち上がっていく。
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
「——おいらも——手伝うよ——!」
⸻
⸻
「——できることなら——なんでも——!」
⸻
⸻
「——最後まで——足掻いてやろうじゃ——ないか——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
誠は——顔を——上げて。
⸻
⸻
⸻
⸻
——涙を——こらえた。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——ありがとう——ございます——!」
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
——その、光景を。
⸻
⸻
⸻
⸻
大広間の——隅で。
⸻
⸻
⸻
⸻
五人の——自称・主人公が。
⸻
⸻
⸻
——言葉も——なく——見つめていた。
⸻
⸻
⸻
⸻
⸻
「…………」
⸻
⸻
⸻
⸻
「——なあ」
⸻
⸻
⸻
⸻
武闘家が——ぽつり、と——言った。
⸻
⸻
⸻
⸻
「——俺たちが——"主人公は——俺だ"、と——叫んでいた、時」
⸻
⸻
⸻
「——あいつは——ずっと——こういう、ことを——していたのか」
⸻
⸻
⸻
⸻
「…………」
⸻
⸻
⸻
⸻
誰も——答えられなかった。
⸻
⸻
⸻
⸻
その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「今日、皆に、真実を、伝えた。"星が、太陽に、近づいてる。このままだと、飲まれる"、って。……皆、悲鳴を、上げた。泣き崩れる人。呆然とする人。"なんで、今更、言うんだ"、"知らなきゃ、よかった"、って、怒る人。全部、受け止めた。当たり前だ。でも、言った。"僕は、諦めてない。どうすれば、いいか、分からない。僕は、弱いし、馬鹿だし、ただの八百屋。でも、思い出してください。氷が溶けた時も、島が沈んだ時も、水が足りない時も、皆で、乗り越えてきた。一人じゃ、何もできない。でも、皆で、やれば、ここまで、来られた。だから、一緒に、考えてください"、って。頭を、下げた。……そしたら、おかみさんが、"あの時、あんたを、信じて、よかった。だから、今度も、信じる"、って。おじいさんも、"誠さんが、言うなら、やるさ"、って。皆、立ち上がって、くれた。……泣きそうだった。じいちゃん、僕、いい人たちに、囲まれてるよ」
⸻
心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
⸻
まだこの時の誠は知らない。この、日——絶望の——底で——立ち上がった——人々の——姿こそが。
⸻
——やがて——星を——動かす……途方もない——力の……いちばん——最初の——一歩で——あったことを。
そして——大広間の——隅で。
⸻
——言葉を——失っていた——五人の——"主人公"、たちの——胸に。
⸻
——この、日——何かが——決定的に——刻まれた、ことも——今は……まだ、誰も——知らない。




