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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
沈む世界、再びの日常

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第40話「勇者、逆ボンキュッボン」

魔王討伐の——騒動の——最中。




実は——アルフレートも——参加していた。






——が。






「——ぬん——! ……ぐはっ」





レベル——5の——彼が。





レベル——数兆の——化け物たちの——列に——並んだ、ところで。






——勝てる、はずが——なかった。






「——次の、方ー」





「——ま、待て——! もう一回——! もう一回——だけ——!」





「——アルフレート様、無理——ですって」






結局。





アルフレートは——一勝も——できず。






「——疲れた」





の、一言を——残して。





地下の——家に——引きこもった。







——それから——数ヶ月。






「——師匠。アルフレート様……最近——見ませんね」





ルカが——ふと——言った。






「そういえば——そうだな」






魔王討伐から——帰って、以来。





アルフレートは——八百屋の——手伝いにも——来ていない。






「疲れたから——しばらく——休ませて、くれ」、と——言われて。





誠も——「まあ——ゆっくり——してください」、と——免除して——いた、のだが。






「……ちょっと——様子——見てこようかな」







そして——誠は。





アルフレートの——住まいの——戸を——開けて。






——絶句した。







「——あ、田中か。よく——来たな」






そこには。






——巨大な——球体が——寝転がっていた。







「……ア、アルフレート——様?」






「——うむ。俺だ」






かつて——世界最強の——勇者と——呼ばれた——男は。






見事に——真ん丸に——なっていた。






肩幅は——変わらない。




足も——太くは——ない。





——だが。





腹だけが。





——恐ろしいほど——膨れ上がっていた。






「……なんですか——その——体型」





「——む? "逆ボンキュッボン"、だ」





「なんで——そこだけ——知ってるんですか——!」






「——身長——百八十。体重は……えー、と」





アルフレートは——気まずそうに——目を——そらした。






「——先日——二百を——超えた」





「——二百——!? 前は——百、って——言ってませんでした——!?」





「……倍に——なった」






「倍——!!」






誠は——頭を——抱えた。







部屋を——見回すと。





——散らかり放題、だった。






読みかけの——冊子が——山積み。





菓子の——包み紙が——散乱。





寝床の——脇には——飲みかけの——器。






「アルフレート様……ずっと——ここで——何を——してたんですか」






「——うむ。冒険は——せん」





アルフレートは——きっぱりと——言った。






「他の——勇者どもは——この、世界を——知らんから——ほいほい——出かけていくが」




「俺は——この、世界の——ことを——よく——知って——おる」





「——どこに——何が——あるか。全部——知って——おる。行っても——面白く——ないのだ」






「……あー」






確かに。





彼だけは——この、世界の——生まれ、だった。






「じゃあ——ずっと——家で?」





「——うむ。趣味に——生きて——おる」






アルフレートは——冊子の——山を——指した。






「これを——読み。あれを——集め。語り合う——仲間も——おる」




「——実に——充実——して——おる」






「あの——"配信"、は——やらないんですか。前は——好きだったでしょう」






すると。





アルフレートの——動きが——止まった。






「…………」





「アルフレート様?」






「……"バン"、された」






「——ばん?」






「——"運営"、に——止められたのだ——!」





アルフレートが——悲痛に——叫んだ。






「——ある日——突然——だ——! "規約——違反"、と——表示が——出て——! 配信が——できなく——なった——!」





「うんえい……。誰——ですか——それ」






「——知らん——! 顔も——見たことが——ない——!」






(——なんだろう。この、世界の——仕組み……たまに——妙な、ものが——出てくるな)





誠は——首を——かしげたが。





深くは——考えなかった。







「——というわけで——だ」





アルフレートは——寝転がったまま——言った。






「——冒険は——せん。配信も——できん。八百屋も——免除だ」




「——やる、ことが——ない」






「……それで——二百キロ、ですか」





「——うむ」







誠は——しばらく——腕を——組んで——考えて。





そして——静かに——言った。






「——アルフレート様。ちょっと——立って——みてください」





「——む? ……よし」






——よっこいしょ、と。





アルフレートが——立ち上がろうと——する。






「——ぬ。……ぬぬ」






——立てなかった。






「……あの、田中」





「はい」





「——手を——貸して——くれ」






「——アルフレート様——!!」







誠は——本気で——心配に——なった。






「——だめです。これは——だめです」





「——な、なんだ——急に」






「——アルフレート様。明日から——一緒に——歩きましょう」






「——歩く?」






「はい。地下の——通路を——ぐるっと——一周。それだけです」





「——それと——ご飯は——ちゃんと——三食——食べてください。抜いちゃ——だめです」





「——菓子ばっかり——食べて——ご飯を——抜くから——余計に——体に——悪いんです」






「——ぬぐ。耳が——痛い」






「あと——できたら——八百屋、また——手伝って——ください」





誠は——にっこりと——笑った。






「——野菜を——運んだり——並べたり——してると——自然と——体を——使いますから」




「——それに——僕も——人手が——足りなくて——助かります」






「……む」






アルフレートは——ぐっ、と——詰まった。






「——だが——俺は——疲れて——おる、のだが」





「——疲れてるんじゃ——なくて——動いてないから——だるいんですよ、それ」





「——うぐっ」






「無理——しなくて——いいですから。ちょっとずつ——で、いいんです」





誠は——優しく——言った。






「——じいちゃんが——言ってました。"地味なことを——丁寧に、飽きずに——続けろ"、って」




「——一日で——変わろうと——しなくて——いいんです。毎日——ちょっとずつ——歩く。それを——続ける」





「——それが——一番——確実です」







アルフレートは。





しばらく——黙って——天井を——見つめて。






そして——ぽつり、と——言った。






「……レベルを——上げる、より——難しそうだな」





「——はは。そうかも——しれませんね」






「——だが」






アルフレートは——腹を——ぽん、と——叩いて。





そして——にやり、と——笑った。






「——やって——みるか。地味に、な」






「——はい——!」







翌朝。






地下の——通路を。






——のっしのっし、と。





巨大な——勇者が——歩いていた。






「——ぜえ……はあ……。田中……あと——どのくらいだ」





「——まだ——四分の一、です」





「——嘘だろう——!?」






その、隣を。





誠が——のんびりと——並んで——歩いていた。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「アルフレート様の、様子を、見に、行ったら……真ん丸に、なってた。身長、百八十で、体重、二百超え。前は、百だったのに、倍! 腹だけ、恐ろしく、出てて、本人、"逆ボンキュッボン"、って。なんで、そこだけ、知ってるの。魔王討伐、参加してたけど、レベル5じゃ、一勝も、できなくて、"疲れた"、って、引きこもってた。他の勇者と違って、この世界を、知り尽くしてるから、冒険も、行かないって。ずっと、家で、趣味三昧。配信も、"運営"、に、バンされたって。運営って、誰? 立ち上がるのに、手を貸してって、言われて、さすがに、心配に、なった。だから、"毎日、地下を、一周、歩きましょう。ご飯は、三食、ちゃんと。菓子ばっかりで、ご飯抜くのが、一番、体に悪い。あと、八百屋、また、手伝って"、って、お願いした。じいちゃんの、"地味なことを、丁寧に、飽きずに"。一日で、変わろうと、しなくて、いい。アルフレート様、"レベル上げより、難しそうだ"、って。でも、"やってみるか、地味に"、って。翌朝、一緒に、歩いた。四分の一で、音を、上げてたけど。じいちゃん、続けたら、きっと、変わるよね」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。アルフレートを——縛った——"運営"、なる——見えざる——者の——正体を。



——そして——この、世界に——そんな——ものが——在ること、そのものの——意味を。


そして——今——彼が——勧めた——「毎日——ちょっとずつ——歩く」、という……あまりにも——地味な——その、教えこそが。



——やがて——世界を——救う、ことに——なる——力と。



——まったく——同じ——ものであることも——今は……まだ、誰も——気づかない。

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