第31話「魔王討伐隊、結成」
地上が——灼熱に——閉ざされて。
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人々の——暮らしが——地の底に——移って——数日。
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自称・主人公たちも——ついに——観念して。
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昼間は——地下で——過ごすように——なった。
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「——ぐぬぬ。屈辱だ……」
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光の勇者が——地下の——片隅で——歯噛み——した。
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「主人公たる——俺が……地の底に——引きこもる、など」
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「命あっての——ものだね、ですよ」
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誠は——冷たい——麦茶を——差し出しながら——言った。
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「——だが——このままでは——いかん——!」
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光の勇者が——立ち上がった。
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「——考えて、みろ——! この、異常な——暑さ——! 溶ける——氷——! 沈む——島——!」
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「これは——明らかに——"何者か"、の——仕業だ——!」
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「……何者か?」
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誠は——きょとん、と——した。
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「決まっている——! ——魔王だ——!」
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光の勇者は——確信を——持って——言い切った。
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「この、世界の——どこかに——魔王が——いる——! そいつが——世界を——焼いているのだ——!」
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「ならば——魔王を——倒せば——すべては——元に——戻る——!」
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「——おお! 一理——ある——!」
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武闘家が——手を——打った。
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「フフ……。確かに——これほどの——異常。人ならざる——者の——仕業と——考える——方が——自然、ですねえ」
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魔術師も——頷いた。
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「……論理的には——ありうる」
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賢者が——顎に——手を——当てた。
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「異常な——現象には——異常な——原因が——ある。それが——魔王で——あっても——不思議は——ない」
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「……ふむ」
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英雄も——静かに——同意した。
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——五人の——意見が。
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初めて——一致した——瞬間、だった。
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「——ならば——決まりだ——!」
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光の勇者が——高らかに——宣言した。
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「——魔王討伐隊を——結成する——! 世界を——焼く——魔王を——討ち——この、世界を——救う——!」
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「そして——魔王を——倒した——者こそが——真の——主人公——だ——!」
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「「「「——おおっ——!」」」」
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厨二病の——若者たちも——沸き立った。
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「——我らも——加わるぞ——!」
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「——闇の、力を——解き放つ——時が——来た——!」
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「——HAHAHA——! 悪の——親玉が——いるなら——話は——早い——!」
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アメリカン・ヒーローたちも——立ち上がった。
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地下は——たちまち。
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魔王討伐の——熱気に——包まれた。
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「……あの」
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その、熱気の——中で。
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誠だけが——おずおずと——手を——挙げた。
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「本当に——魔王が——原因、なんですか?」
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——しん。
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一同が——誠を——見た。
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「——何を——言う、モブ」
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「いえ……。だって——僕、この、世界に——ずっと——住んでますけど……魔王なんて——聞いたこと——ないんです」
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「星喰いの、時も——敵は——魔王じゃ——なくて……別の——ものでしたし」
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「ならば——今回——現れたのだ——!」
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光の勇者は——譲らなかった。
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「いいか、モブ。世界が——危機に——瀕する——時。そこには——必ず——"倒すべき——敵"、が——いる」
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「それが——物語の——道理だ——!」
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「……物語の——道理」
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誠は——首を——かしげた。
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(——でも——この、暑さは……)
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(——誰かが——やってる、というより……)
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(——もっと——こう……"仕組み"、みたいな……)
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うまく——言葉に——できない。
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けれど——誠には。
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どうしても。
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「悪い——魔王が——世界を——焼いている」、という——絵が。
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——しっくり——こなかった。
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「——では——出発だ——!」
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「——おお——!」
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魔王討伐隊は。
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意気揚々と——旅立ちの——準備を——始めた。
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「——待ってください」
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誠は——彼らを——呼び止めて。
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そして——大きな——包みを——手渡した。
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「これ——持っていってください。保存食と——薬草と——水です」
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「昼間は——絶対に——歩かないで。夜に——移動して——昼は——日陰で——休んでください」
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「あと——これ、地図です。水場の——場所に——印を——つけておきました」
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「…………」
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光の勇者は。
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その、包みを——じっと——見つめた。
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「……なぜだ」
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「え?」
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「お前は——魔王の——存在を——信じて——いないのだろう。ならば——なぜ——支度を——してくれる」
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誠は——きょとん、と——して。
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そして——当たり前の、ように——答えた。
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「だって——皆さん、行くんでしょう?」
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「なら——無事に——帰ってきて——ほしいですから」
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光の勇者は。
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しばらく——黙って。
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そして——ぶっきらぼうに——包みを——受け取った。
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「……ふん。世話に——なる」
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「気を——つけて」
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こうして。
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魔王討伐隊は——旅立っていった。
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「——師匠。魔王、いるんですかね」
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ルカが——尋ねた。
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「さあ……。分からないな」
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誠は——彼らの——背中を——見送りながら——呟いた。
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「でも——もし——本当に——魔王が——いて」
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「それを——倒せば——この、暑さが——収まるなら……」
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「——それが——一番——いいよな」
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そう——願う——気持ちは。
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嘘では——なかった。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「主人公さんたちが、"魔王討伐隊"、を、結成した。"この、異常な、暑さは、魔王の、仕業に、違いない。魔王を、倒せば、元に、戻る"、って。五人の、意見が、初めて、一致してた。厨二病の、子たちも、ヒーローたちも、大乗り気。……でも、僕は、なんだか、しっくり、こない。この、世界に、魔王なんて、聞いたこと、ないし。それに、この、暑さは、誰かが、やってる、というより……もっと、"仕組み"、みたいな、感じが、する。うまく、言えないけど。でも、勇者さんは、"世界が、危機の時は、必ず、倒すべき、敵がいる。それが、物語の、道理"、って。……そういう、ものかな。とりあえず、保存食と、水と、地図を、持たせた。"信じてないのに、なぜ"、って、聞かれたけど、行くなら、無事に、帰ってきて、ほしいもん。……本当に、魔王を、倒して、暑さが、収まったら、いいのにな」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。「世界が——危機の、時には——必ず——倒すべき——敵が——いる」、という——その、"物語の——道理"、が。
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——この、世界では——通用——しないことを。
そして——誠が——うまく——言葉に——できなかった——「"仕組み"、みたいな——感じ」、こそが。
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——恐ろしいほど——正しかったことも——今は……まだ、誰も——気づかない。




