表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
沈む世界、再びの日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
286/447

第30話「地上が、灼ける」

季節は——巡っていた。




いや。




正しくは——巡らなかった。





秋も——冬も——来ないまま。





ただ——暑さ、だけが。





日ごとに——増していった。






そして——ついに——その日が——来た。






「——師匠——! 大変です——!」





ルカが——血相を——変えて——駆け込んできた。






「地上に——出た——おじさんが——倒れました——!」





「——なんだって——!?」






誠は——すぐさま——地上へ——駆け上がった。






——その、瞬間。





肌が——ちりちりと——灼けた。






「——っ! なんだ——この——熱さは——!」





息を——吸うと——喉が——焼ける。





日差しは——もはや——光では、なく。





——刃の——ようだった。






「——おじさん——! しっかり——してください——!」





倒れた——男を——誠は——必死に——引きずって。





地下への——入り口まで——運んだ。






「——水を——! 早く——!」





冷たい——水を——飲ませ。




濡れた——布で——体を——冷やす。






やがて——男は——うっすらと——目を——開けた。






「……すまねえ……。ちょっと——畑を——見に——行っただけ、なんだ……」





「無茶——ですよ——! 昼間の——地上は——もう——人が——いられる——場所じゃ——ありません——!」






誠は——珍しく——声を——荒らげた。






「……そうか。もう——そこまで、か」





男は——力なく——笑った。





「わしの——畑も……もう——おしまい、か」






誠は——何も——言えなかった。






その日を——境に。





町の——決まりが——一つ——増えた。






——日中の——外出、禁止。






「昼間は——絶対に——地上に——出ないで——ください——!」





誠は——地下の——広場で——皆に——呼びかけた。






「用が——ある、なら——日が——落ちてから——! 必ず——水を——持って——! 一人では——行かないで——!」






人々は——静かに——頷いた。






——こうして。





人々の——暮らしは。





完全に——地の底へと——移った。






畑は——夜に——耕す。





水は——地下水路から——引く。





光は——鏡で——導く。






地上は——もはや。





——人の、住む——場所では——なくなった。







だが。





そんな——灼熱の——地上に。





——まだ——居座り続ける——者たちが——いた。






「——ぐっ……あ、暑い……!」





「——だ、だが——退けん——! ここで——退いては——主人公の——名折れ——!」






自称・主人公たち、である。






彼らは——灼けつく——地上で。





汗だくに——なりながら。





——まだ——「主人公は——俺だ」、と——言い争っていた。






「——皆さん——! 何——やってるんですか——! 早く——地下へ——!」





誠が——呼びに——上がると。






「——モブは——引っ込んで——おれ——!」





光の勇者が——ぜえぜえと——息を——切らしながら——叫んだ。






「——これは——主人公の——座を——賭けた——戦い——! 途中で——降りる、など——できるか——!」





「そんなこと——言ってる——場合じゃ——!」






「——うるさい——! 俺は——主人公——なのだ——!」





「主人公は——皆を——救う——存在だ——! だから——俺は——ここで——退けん——!」






誠は——言葉に——詰まった。






——おかしな——話、だった。





「皆を——救う」、と——言いながら。





その、皆は——とっくに——地下に——避難している。






彼らは——誰も——いない——灼熱の——地上で。





——「誰が——皆を——救う——主人公か」、を——争っている。






(——なんだか……)





誠は——ふと——思った。






(——寂しい、な)






「……分かりました」





誠は——ため息を——ついて。





そして——手に——持っていた——桶を——地面に——置いた。






「じゃあ——せめて——これ——飲んでください」






桶には。





冷たい——麦茶が——なみなみと——注がれていた。






「——っ」





五人が——一斉に——桶を——見た。






「倒れられたら——僕が——困りますから。運ぶの——重いんですよ、皆さん」





誠は——それだけ——言って。





さっさと——地下へ——降りていった。






——残された——五人は。





しばらく——桶を——見つめて。






そして——結局。





——ごくごくと——飲み干した。






「…………うまい」





武闘家が——ぽつり、と——言った。






「……ふん」





光の勇者は——何も——言わず。





ただ——空になった——桶を——じっと——見つめていた。






灼熱の——地上に。





「主人公」を——争う——者たち。






涼しい——地の底に。





人々の——暮らしを——支える——モブ。






その、二つは。





この日——はっきりと——分かれた。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「ついに、昼間の、地上に、出られなく、なった。おじさんが、倒れて、運んだ。日差しが、もう、光じゃ、なくて、刃みたい。喉が、焼ける。町の、決まりで、日中の外出、禁止に、した。畑は、夜に、耕す。人の、暮らしが、全部、地下に、移った。……なのに、主人公さんたちは、まだ、灼けつく、地上で、"主人公は、俺だ"、って、争ってる。"主人公は、皆を、救う存在だから、退けない"、って。でも、その、皆は、とっくに、地下に、いるんだよ。誰も、いない、地上で、誰が、皆を、救うか、争ってる。なんだか、寂しく、なった。麦茶だけ、置いて、降りてきた。……全部、飲んだみたい。じいちゃん、僕は、地下で、できることを、やるよ」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。この日——地上と——地下に——分かれた——二つの——姿こそが。



——やがて——この、世界が——出す——"答え"、そのもので——あったことを。


そして——誰も——いない——灼熱の——地上で——叫び続ける——者たちが。



いつか——地の底の——静けさに——たどり着く、その、日まで。



——まだ——長い——道のりが——あることも——今は……まだ、誰も——知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ