第29話「配信魔法使いと、道端漫才」
魔法使いの——女性が——魔法学院へ——旅立って。
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しばらく——経った——ある日。
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彼女が——ひょっこりと——店に——戻ってきた。
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「——こんにちは——! お久しぶりです——!」
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「あ——魔法使いさん——! 学院、どうですか?」
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「それが——すごく——充実してて——!」
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彼女は——ぱあっ、と——顔を——輝かせた。
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以前より——ずっと——生き生きと——している。
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魔法学院での——暮らしが。
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よほど——性に——合っているようだった。
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「——おお! お前——見違えたな——!」
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そこへ——魔術師(自称・主人公)が——やってきて。
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そして——彼女を——見て——ぎょっと、した。
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「——な、なんだと——!? お前——レベルが——やけに——高いぞ——!?」
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「え? そうですか?」
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「そうですか、ではない——! この、場に——いる——誰よりも——高いではないか——! なぜだ——!?」
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魔術師が——愕然と——した。
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同じ——時期に——転移して。
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同じ——レベル1、から——始まった、はず、なのに。
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彼女の——レベルは——ずば抜けて——高くなっていた。
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「なんで——そんなに——強く——なったんですか?」
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誠が——尋ねると。
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彼女は——照れくさそうに——笑った。
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「えっと……実は——私も——"配信"、してるんです」
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「——配信!?」
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また——それか、と。
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誠は——遠い——目を——した。
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「はい。虚空に——向かって、なんですけど……なぜか——私のは——ちゃんと——見てくれる——人がいて」
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「その——視聴者さんたちが——"この魔法——見せて"、"あの魔法——やって"、って——リクエストを——くれるんです」
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「へえ……」
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「だから——応えようと——して——毎日——いろんな——魔法を——練習してたら……いつのまにか——上達してて」
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「気づいたら——レベルが——ぐんぐん——上がってたんです」
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「——な、なんという——こと——!」
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魔術師が——頭を——抱えた。
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「俺は——視聴者——ゼロ、だったのに——!」
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(——見てもらえるかどうかで——差が——ついたのか)
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誠は——妙な——ところで——感心した。
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「——そうだ——! 皆さんにも——お見せ——しますね——! 私の——配信の——お決まりコンテンツ——!」
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彼女は——嬉しそうに——言った。
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「その——名も——"魔法使いの——大食い——食レポ"——!」
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「……大食い?」
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「はい——! 視聴者さんに——一番——人気の——コーナーなんです——!」
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彼女は——おもむろに。
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店先の——野菜や——保存食を——見回して。
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そして——魔法で——次々と——調理し始めた。
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「——では——いただきます——!」
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——もぐもぐ。ぱくぱく。
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とんがり帽子の——魔法使いが。
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見た目からは——想像も——つかない——勢いで。
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料理を——平らげていく。
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「——んーっ! この、漬物——最高です——! 塩加減が——絶妙で——ご飯が——止まりません——!」
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「——この——干し芋も——! 噛むほどに——甘みが——広がって——!」
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やたらと——美味しそうに——食べる。
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「——す、すごい——食べっぷり——!」
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ルカが——目を——丸くした。
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「えへへ。食べるの——大好きなんです——! 特に——誠さんの、お店の——ものは——どれも——美味しくて——!」
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「そんなに——喜んで——もらえると——作りがい——ありますよ」
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誠も——嬉しく——なった。
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——と。
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そこへ。
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煙管を——くわえた——駄々丸が——ふらり、と——やってきた。
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「——おや。魔法使いの——お嬢さん、じゃ——ないですかい」
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「——あっ! 駄々丸師匠——! お久しぶりです——!」
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彼女は——ぱっ、と——立ち上がった。
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「あれ。二人、知り合い——なんですか?」
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誠が——尋ねると。
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「へえ。この、お嬢さんとは——妙に——馬が——合いやしてね」
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駄々丸が——にやり、と——した。
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「——師匠——! あれ——やりましょう——! あれ——!」
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「——おっ。やりやすかい」
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二人は——なぜか——ぴたり、と——向かい合って。
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そして——突然。
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——道端で——漫才を——始めた。
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「——どうも——! 魔法使いです——!」
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「——三笑亭駄々丸で——ござい——!」
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「——師匠、聞いて——くださいよ。この前——魔法学院で——大失敗——しちゃって」
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「——ほう。どんな?」
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「——"炎の——魔法"、を——唱えた——つもりが——間違えて——"氷の——魔法"、が——出ちゃって」
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「——ほうほう」
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「——おかげで——先生の——お茶が——カチカチに——凍って——!」
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「——そりゃ——先生も——凍りついたろうなァ——!」
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「——なんでやねん——!」
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——ぱんっ。
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魔法使いが——駄々丸に——ツッコんだ。
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「…………」
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誠と——ルカは。
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ぽかんと——見ていた。
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「——えっと……何、これ」
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「——師匠と——私の——十八番なんです——! 道端で——突然——漫才——!」
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「へえ。この——お嬢さん、ノリが——よくてねェ。つい——やっちまうんでさァ」
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二人は——顔を——見合わせて——けらけらと——笑った。
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なんとも——妙な——師弟、だった。
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(——駄々丸さんと——魔法使いさん……なんか——妙に——気が——合うなあ)
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誠は——微笑ましく——見ていた。
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——だが。
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その、時。
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誠は——気づかなかった。
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漫才を——終えた——駄々丸が。
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ふと——魔法使いの——横顔を——見て。
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そして——少しだけ——寂しそうに——目を——細めた、ことに。
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(——この、お嬢さんも……昔は——もっと——別の——名前で。別の——顔で——笑ってたん、だろうなァ)
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(——覚えて——ねえ、ってなァ……ちょいと——切ねえもんだ)
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駄々丸は——それを——おくびにも——出さず。
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また——けらけらと——笑って——漫才の——続きを——始めた。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「魔法使いさんが、学院から、戻ってきた。すごく、充実してるみたい。びっくりしたのが、レベルが、この場の、誰よりも、高くなってた! 理由を、聞いたら、"配信"、してて、視聴者さんの、リクエストに、応えて、いろんな魔法を、練習してたら、上達した、って。見てもらえると、頑張れる、ってことかな。魔術師さん、視聴者ゼロだったから、悔しがってた。それから、魔法使いさんの、配信の、名物が、"大食い、食レポ"、だって。うちの、漬物とか、干し芋を、すごい、勢いで、食べて、美味しそうに、レポートしてくれた。作りがい、ある! しかも、駄々丸さんと、仲良しで、道端で、突然、漫才、始めた。"なんでやねん"、って。二人、妙に、気が、合うみたい。楽しい人だなあ。じいちゃん、賑やかで、いいよ」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。魔法使いと——駄々丸が——道端で——交わす——楽しい——漫才の、裏で。
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駄々丸だけが——気づいていた——小さな——切なさのことを。
そして——「昔は——別の——名前で——笑っていた」、その、事実を——魔法使い自身が——思い出す——日が。
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——やがて——訪れることも——今は……まだ、知らない。




