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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
沈む世界、再びの日常

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第22話「星条のヒーローたち」

その日の——空の——裂け方は。




いつもと——少し——違った。






——ドンッ! パァン! と。





やたらと——派手な——効果音、と、共に。





背後で——理由もなく——爆発が——起きながら。





三つの——人影が——降ってきた。






「——HAHAHA! 待たせたな、市民諸君——!」





一人目。





胸に——大きく——「星」の——マークを——あしらった。





真っ赤な——マントの——大男。






「——正義は——我が——拳に——宿る——!」





二人目。





胸に——「盾」の——紋章。





星条の——盾を——構えた——りりしい——男。






「——宇宙の——彼方から——参上——!」





三人目。





胸に——「彗星」の——マークを——光らせた。





きらびやかな——女性——ヒーロー。






三人は——着地の——衝撃で。





——ドゴォン! と。





派手に——クレーターを——作った。






「……また——派手なのが——来た」





誠は——遠い——目を——した。






「——おっと。ここは——どこだ? 見慣れぬ——星だな」





星のマークの——男が——あたりを——見回した。






「だが——関係——ない——! どんな、星、だろうと——悪が——ある、なら——我らが——征く——!」





「——そこの——OLD——MAN——!」





盾の、男が——誠を——指さした。






「この、星の——悪党は——どこだ——! 我らが——正義の——鉄槌を——下してやる——!」






「あの……悪党、と——言われても……」





誠は——困った。





「うちの——町には——特に——悪い人は——いないんですけど……」






「——NO——! そんなはずは——ない——!」





彗星の——女性が——首を——振った。





「どんな——星にも——必ず——悪は——ある——! それを——倒すのが——ヒーローの——務め——!」






「はあ……」





——と。





その時。





店の、隅から。





煙管を——くわえた——駄々丸が——のっそりと——立ち上がった。






「——へえ。こりゃまた——景気の——いい——お三方だ」





駄々丸は——扇子を——ぱちり、と——開いて。





三人の——前に——進み出た。






「あっしが——ご案内——しやしょう。この、世界の——"悪党"、探しをね」





「——おお! 話の——分かる——OLD——MANだ——!」






(——駄々丸さん、何か——始める、気だな)





誠は——生温かい——目で——見守った。






「さて——ヒーローの——旦那がた」





駄々丸は——高座よろしく——語り始めた。






「この、世界で——一番——恐ろしい——"悪"、を——お教え——しやしょう」





「そいつは——毎日——空に——のぼって……この、世界を——じわじわと——焼いて——おりやす」






「——なんだと——! 許せん——! そいつは——どこだ——!」





三人が——色めき立った。






駄々丸は——にやり、と——して。





——扇子で——空の——一点を——指した。






「あすこ——でさァ」






「……?」





三人が——空を——見上げる。






そこには。





——ぎらぎらと——照りつける。





太陽が——あった。






「……た、太陽?」





「そうでさァ。あいつが——この、世界を——焼く——大悪党。倒せますかい?」






三人の——ヒーローは。





しばし——太陽を——見上げて——固まった。






そして——星のマークの——男が。





——にやり、と——笑った。






「——HAHAHA! 太陽ごとき——! 我が——パンチで——粉砕——してくれる——!」





「あ、待って——それは——」






止める——間も——なく。





星のマークの——男は。





——ビュゴォォォン! と。





太陽に——向かって——飛び立った。






「……行っちゃった」





一同が——空を——見上げる。






小さな——点が——ぐんぐん——太陽に——近づいて——いき。





そして——次の、瞬間。





——ボンッ。





小さく——燃えた。






——ヒュゥゥゥ……ドサッ。






こんがりと——黒焦げに——なった——男が。





店先に——落ちてきた。






「……FREEDOM……」





黒焦げの、まま——男が——呟いた。






「だから——言おうと——したのに……」





誠は——慌てて——井戸水を——かけてやった。






「——な、なんという——こと——! 太陽が——あんなに——熱い——とは——!」





盾の、男が——愕然と——した。





「あれを——倒す、など……我らの——力では……」






「でしょうな」





駄々丸は——しみじみ、と——扇子を——たたんだ。





「正義ってのはねェ……拳の——届く——範囲で——やるもんでさァ」





「届かねえ——相手に——挑んだって……ああして——黒焦げに——なるだけ、で」






三人の——ヒーローは。





——しゅん、と——なった。






「……我らは——無力、なのか」





彗星の——女性が——うなだれた。





「あんな——悪を——前に……何も——できない、なんて」






「まあまあ、そう——落ち込まないで——ください」





誠が——黒焦げの——男に——薬を——塗りながら——言った。






「太陽を——倒せなくても……できることは——たくさん——ありますよ」





「今——この、町は——暑くて——みんな——困ってるんです。力持ちの——皆さんが——いてくれたら——すごく——助かります」





「地下を——掘ったり——荷物を——運んだり——水を——汲んだり……やること——山積みで」






「……我らに——雑用を——せよ、と?」





盾の、男が——眉を——ひそめた。






「雑用じゃ——ないですよ。困ってる——人を——助ける——立派な——"ヒーローの——仕事"、です」






誠の——言葉に。





三人は——顔を——見合わせた。






「……困っている——人を——助ける」





「それは……確かに——ヒーローの——務め、だ」






こうして。





星条の——ヒーローたちは。





太陽を——倒す、代わりに。





地下づくりの——力仕事を——手伝うことに——なった。






「——HAHAHA! この、岩は——任せろ——!」





黒焦げから——復活した——男が。





軽々と——巨岩を——持ち上げる。






「——おお! すごい——力だ——! 助かるよ——!」





町の——人々が——歓声を——上げた。






拳が——届かない——相手には——無力でも。





こうして——人の、役に——立てば。





彼らは——立派な——ヒーロー、だった。






その、光景を——見ながら。





駄々丸は——ぽつり、と——呟いた。






「——太陽を——殴りに、行く——ヒーローより」





「困った、人に——手を——貸す——八百屋の——ほうが……よっぽど——世界を——救ってる、かも——しれやせんなァ」






その、独り言は。





誰の——耳にも——届かず。





夏の——風に——溶けていった。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「今日は、派手な、アメリカン・ヒーローが、三人、降ってきた。胸に、星とか、盾とか、彗星とか。着地で、クレーター。"悪党は、どこだ"、って。駄々丸さんが、面白がって、"一番の、悪は、あそこ"、って、太陽を、指さしたら……星の、マークの、人が、"パンチで、粉砕"、って、飛んでって……黒焦げに、なって、落ちてきた。だから、止めようと、したのに。太陽は、倒せないよ。三人、しょんぼり。"我らは、無力なのか"、って。でも、"太陽は、倒せなくても、困ってる人を、助けるのは、ヒーローの、仕事"、って言ったら、地下づくり、手伝って、くれた。力持ちで、大助かり。駄々丸さん、なんか、ぶつぶつ、言ってたな。じいちゃん、届かない、相手に、挑むより、目の前の、困った人を、助ける方が、大事だよね」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。ヒーローたちが——挑んで——敗れた——あの、太陽こそが。



やがて——すべての——英雄を——ヒーローを——勇者を——打ちのめす……本物の——絶望に——変わることを。


そして——駄々丸が——呟いた——「八百屋のほうが、世界を、救ってる」、という——戯言が。



——いつか——世界の——真実に——変わることも——今は……まだ、誰も——気づかない。

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