表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
沈む世界、再びの日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
277/447

第21話「妖精族は、モンスターにあらず」

その日は。




朝から——妙に——騒がしかった。






「——待てェ——! 逃がすかァ——!」




「——魔物め——! 成敗して——くれる——!」






厨二病の——若者たちが。





わあわあと——何かを——追いかけて——走っていた。






「——な、なんだ?」





誠が——店先で——首を——かしげていると。






——どすん、どすん、どすん!





地響きを——立てて。





巨大な——影が——駆け込んできた。






「——たた、田中の——旦那ァ——! 助けてくれェ——!」





「——っ! グランデルさん!?」






三メートルを——超える——巨躯。





岩の、ような——筋肉。





角の、生えた——厳つい——顔。






——だが。





その、顔は。





半べそを——かいていた。






「グランデルさん! どうしたんですか、その——格好で——汗だくで——!」





「聞いてくれ——旦那! さっきから——あの、若いのに——追い回されてるんだァ——!」






グランデル。





前作の——仲間。





かつては——妖精王、だったが。




今は——鬼族——オーガの——長として——皆を——束ねている。






見た目こそ——厳ついが。





その——中身は。





涙もろくて——お人好しの——優しい——大男、だった。






「——いたぞ——! 魔物は——ここだ——!」





厨二病の——若者たちが。





店先に——なだれ込んできた。






「——ふっ! 観念しろ——魔物め——!」




「——その、禍々しい——姿——! 討伐——対象——認定——!」






「ま、待ってください——!」





誠が——慌てて——両手を——広げて——間に——入った。






「この人は——魔物じゃ——ありません——! 僕の——大切な——友達です——!」






「——何を——言う——! どう見ても——魔物では——ないか——!」





若者たちは——聞く耳を——持たない。






「あんな——大きくて——角の——生えた——恐ろしい——姿——! 魔王の——手下に——違いない——!」





「——ひどいィ——! ワシ——そんな——悪いこと——してないィ——!」





グランデルが——三メートルの——巨体を——縮こませて——めそめそと——泣いた。






(——見た目で——判断——しすぎだよ……)





誠は——ため息を——ついて。





そして——きっぱりと——言った。






「いいですか。この人は——れっきとした——妖精族——オーガの——長、です」




「疑うなら——身分証を——お見せします——ちゃんとした——身元の——ある方——です——!」






「み、身分証……?」





若者たちが——きょとん、と——した。





「魔物に——身分証、など——あるのか?」





「魔物じゃ——ないですってば——! グランデルさん、あれ——見せて——あげてください」






「お、おう」





グランデルは——ごそごそと——懐から。





立派な——証書を——取り出した。


似ても似つかない若き日の体長20cm程度だった妖精時代の顔写真いりである。






「これが——ワシの——身分証だァ。オーガ族の——長、グランデル。ちゃんと——各国と——同盟を——結んだ——正式な——一族——だァ」






若者たちは。





その、証書を——おそるおそる——覗き込んだ。






「……ほ、本当だ」




「オーガ族……長……。正式な……一族……」




「……魔物じゃ、なかった……」






若者たちは——きまり悪そうに——顔を——見合わせた。






「そ、その……すまなかった。魔物と——早合点して……」





「いいんだ——いいんだァ」





グランデルは——たちまち——機嫌を——直して——豪快に——笑った。





「ワシの——見た目が——怖いのは——よく——言われる、からなァ! はっはっは!」






——なんとか。





誤解は——解けた。






「——だが」





そこへ。





騒ぎを——聞きつけた——光の勇者が——やってきた。






「オーガ族の——長、だと? ならば——ちょうど——いい」





光の勇者は——グランデルを——見上げて——言った。





「その——力——見込んで——頼みが——ある。俺の——魔王討伐に——力を——貸せ」





「主人公たる——俺の——仲間に——加えて——やろう。光栄に——思うがいい」






すると——グランデルは。





きょとん、と——した——後。





——きっぱりと——首を——振った。






「いや。断るゥ」





「——な、なんだと?」






光の勇者が——目を——見開いた。





「主人公たる——俺の——誘いを——断ると——いうのか?」






「おうよ」





グランデルは——腕を——組んで——言った。





「ワシが——力を——貸すのは——旦那——田中の——旦那だけだァ」






「その——モブに——だと?」





「モブ——じゃ——ないィ」





グランデルは——むっと——した。






「旦那は——ワシらを——見た目で——判断——しなかった——恩人だァ」




「星喰いの、時も——旦那が——いたから——ワシらは——救われたァ」





「主人公が——どうとか——知らんが……ワシは——旦那に——ついていくィ。それだけだァ」






光の勇者は。





ぐっ、と——言葉に——詰まった。






「……なぜ、だ」





光の勇者は——誠を——睨んだ。





「なぜ——お前のような——モブに——あんな——巨漢が——従う。魔王を——倒すわけでも——ないのに」




「主人公は——俺だ。強さも——俺の、方が——上のはずだ。なのに——なぜ——だ」






誠は——困って——頭を——掻いた。






「うーん……。強さとか——主人公とか——そういうの——じゃ——ないと——思いますよ」





「グランデルさんとは——ただ——一緒に——大変な——ことを——乗り越えた——仲、っていうか」




「困った、時に——お互い——助け合った。それだけ——です」






「……それだけ、だと」





光の勇者は。





しばらく——誠を——見つめて。





そして——何も——言わずに——立ち去った。






その、背中が。





どこか——寂しげに——見えたのは。





気の、せい——だろうか。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「大変だった。グランデルさんが、厨二病の、若者たちに、"魔物だ"、って、追いかけられて、うちに、逃げ込んできた。三メートルの、大男が、半べそ、かいて。見た目で、判断、しすぎだよ。身分証、見せて、やっと、誤解が、解けた。"オーガ族の、長"、って。若者たち、平謝り。グランデルさん、"見た目が、怖いのは、よく言われる"、って、豪快に、笑ってた。優しい人なのに。それで、光の勇者さんが、グランデルさんを、仲間に、誘ったけど、"断る。ワシは、旦那に、ついていく"、って。勇者さん、"なぜ、モブに、従う"、って、僕を、睨んだ。困った時に、助け合った、仲、それだけ、って言ったら、黙って、行っちゃった。なんか、背中が、寂しそうだった。じいちゃん、見た目で、判断しちゃ、だめだよね」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。光の勇者が——「なぜ、モブに、従う」、と——問うた、その、問いこそが。



やがて——この、世界の——すべての——者が——ぶつかる……最大の——謎で、あったことを。


そして——その、答えを——誠は——もう——口に、していた、ことも。



——「困った、時に——助け合った。それだけ」。



その、あまりにも——ささやかな——答えの——中に——すべてが——あったことも——今は……まだ、誰も——気づかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ