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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
沈む世界、再びの日常

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第19話「久しぶりの、顔」

地下づくりが——進む、中。




町に——一台の——立派な——馬車が——到着した。






「——誠! 久しぶりね!」





馬車から——降りてきたのは。





凛とした——佇まいの——女性——だった。






「——一色さん!」





誠は——顔を——ほころばせた。






一色。





前作の——戦いを——共に——した——仲間。





今は——遠い——帝国で。




技術と——知恵を——束ねる——立場に——ある。






「わざわざ——来て——くれたんですか」




「ええ。あなたの、町が——地下に——潜り始めた、と——聞いてね」





一色は——町を——見回して。





そして——表情を——引き締めた。






「……ひどい——暑さね。噂には——聞いていたけど。想像以上だわ」




「はい……。もう——地上では——暮らせなくて」






「私の、帝国でも——同じよ」





一色は——静かに——言った。





「各地で——氷が——溶け、海が——満ちている。作物は——枯れ——人々は——涼を——求めて——さまよっている」




「これは……ただ事——では——ないわ」






「一色さんも——そう——思いますか」




「ええ」





一色は——空を——見上げた。






「だから——技術者を——連れてきたの。あなたの、町の——地下づくりを——手伝わせて」




「帝国の——技術で——涼しく——快適な——地下の——住まいを——作りましょう。そして——それを——他の、町にも——広めるの」






「……ありがとう——ございます! 助かります!」





誠は——深々と——頭を——下げた。






一色の——連れてきた——技術者たちは。





さすが——帝国の——精鋭、だった。






地下に——風を——送る——仕掛け。




冷たい——地下水を——巡らせる——水路。





地上の——光を——効率よく——導く——鏡の——system。





みるみる——うちに。





地下は——涼しく——快適な——空間に——なっていった。






「すごい……! こんなに——変わるなんて!」





ルカが——目を——輝かせた。






「ふふ。帝国の——技術を——甘く——見ないことね」





一色は——得意げに——微笑んだ。






その、夜。





誠と——一色は。





久しぶりに——ゆっくりと——語り合った。






「——それにしても」





一色が——ふと——真剣な——顔に——なった。





「この、暑さ……原因は——一体、何なのかしら」






「分からないんです」





誠は——首を——振った。





「北から——来た、人が——言ってました。"世界、全体が——熱くなっている"、って。でも——なぜ、なのかは——誰にも——分からない、と」






「世界、全体が……」





一色は——考え込んだ。






「一つの——地域なら——気候の——変化で——説明も——つく。でも——世界、全体、が——同時に——熱く——なる、なんて」




「そんなことが——起こる——ためには……よほど——大きな——"何か"、が——なければ」






一色は——そこで——言葉を——切って。





ふと——窓の、外の——夜空を——見上げた。






「……ねえ、誠。おかしなことを——聞くけど」




「はい?」





「最近——太陽が……少し——大きく——見えない?」






——どきり。





誠の——心臓が——跳ねた。






「……一色さんも——そう——思いますか」





「え? あなたも?」





「はい……。前から——少し——気に——なってて。でも——気の、せいだと——思って……」






二人は——顔を——見合わせた。






「……いえ」





一色は——ふっと——首を——振った。





「気の、せい——でしょうね。太陽が——大きくなるなんて……そんなこと——あるはずが——ない」





「太陽は——ずっと——同じ、場所に——あるもの。昔から——ずっと」






「……そう——ですよね」





誠も——頷いた。






けれど。





二人の——心には。





同じ——小さな——不安が。





消えずに——残っていた。






「——まあ、今は」





一色が——気を——取り直した。





「原因は——ともかく——目の前の——人々を——守ることね。地下の——住まいを——整えて——暑さを——しのぐ」




「できることを——一つずつ、よ」






「はい。……それ、僕の——じいちゃんの——口癖でも——あるんです」





「あら。いい——おじいさまね」






二人は——顔を——見合わせて——笑った。






久しぶりの——旧友との——語らいは。





不安な——世の中でも。





誠の——心を——温かく——してくれた。






その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「一色さんが、来てくれた! 久しぶり。帝国の、技術者を、連れて、地下づくりを、手伝いに。さすが、帝国の、技術。地下が、みるみる、涼しく、快適に、なった。すごい。一色さんの、帝国でも、氷が、溶けて、海が、満ちて、大変だって。"世界、全体が、熱くなるなんて、よほど、大きな、何かが、なければ"、って。それから、一色さんも、"太陽が、大きく見えない?"、って! 僕だけじゃ、なかった。でも、二人とも、"気のせい、だよね"、って。太陽が、大きくなるなんて、あるはず、ない、もん。……でも、なんだか、胸が、ざわざわする。一色さんと、"できることを、一つずつ"、って、話した。じいちゃんの、口癖。久しぶりに、旧友と、話せて、嬉しかったな」



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。



まだこの時の誠は知らない。一色が——口に、した——「よほど——大きな——何か」、が。



そして——二人が——揃って——打ち消した——「太陽が——大きくなる」、という——たわごとが。



——恐ろしいほど——真実に——近かった、ことを。


そして——その、"大きな、何か"、の——正体を——知った、とき……二人が——どれほど——胸を——痛めることに——なるのかも——今は……まだ、知らない。

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