第17話「地の底へ」
握り飯の——おかげで。
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厨二病の——若者たちも——少しは——落ち着いた。
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——かに——見えたが。
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やはり——若者が——大勢——増えれば。
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町は——たちまち——手狭に——なった。
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「——飯が——足りん——!」
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「——寝る、場所も——ないぞ——!」
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「——暑い——! この、世界は——暑すぎる——!」
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そう。
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何より——問題、だったのは。
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——暑さ、だった。
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その年は。
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とうとう——秋も——冬も——来なかった。
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一年中——夏の、ような——暑さが——続き。
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地上は——日中——立って、いられないほど——熱く——なった。
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「もう——限界だよ……」
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町の——人々が。
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ぐったりと——うなだれる。
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「畑の——作物も——枯れちまう」
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「井戸の——水も——どんどん——減ってる」
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「このままじゃ——暮らして——いけないよ……」
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誠は——考えた。
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暑さは——増す——ばかり。
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地上での——暮らしは。
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もう——限界に——近づいていた。
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「……そうだ」
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誠は——ふと——思いついた。
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「地下——なら——どうだろう」
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「地下?」
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ルカが——首を——かしげた。
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「うん。ほら——井戸を——掘った、時——気づいたんだけど」
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「地下は——ひんやり——涼しいだろう? 地上が——こんなに——暑くても——地面の、下は——涼しいままなんだ」
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「あ——! 確かに——!」
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「うん。だから——いっそ——地下に——暮らしの——場所を——作れないかな、と——思って」
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誠の——提案に。
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町の——人々は——顔を——見合わせた。
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「地下に——住む……?」
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「そんなこと——できるのかい?」
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「やってみないと——分かりません。でも——このまま——地上で——茹だってるよりは——いいと——思うんです」
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誠は——皆を——見回して——言った。
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「幸い——うちの、町の——地下には——古い——洞窟や——坑道が——たくさん——あります」
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「そこを——広げて——整えれば——涼しく——暮らせる——場所に——なるはずです」
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「なるほど……。確かに——それなら」
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「涼しく——過ごせる、かも——しれないね」
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こうして。
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誠の——音頭で。
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町を——挙げての——大工事が——始まった。
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地下の——洞窟を——掘り広げ。
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風の、通り道を——作り。
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地上から——光を——鏡で——導く。
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「——おい! そこの——覚醒者の——諸君——!」
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誠は——暇そうに——していた——厨二病の——若者たちを——呼んだ。
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「力持ちの——皆さんに——お願いが——あるんです。この、岩——運ぶの——手伝って——もらえませんか?」
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「——ふっ。我らに——ただの——力仕事を——せよ、と?」
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「はい。皆さんの——"闇の、力"、が——必要なんです」
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すると——若者たちは。
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ぱあっ、と——顔を——輝かせた。
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「——ほう! 我が、力を——見込んでの——依頼か——!」
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「——いいだろう——! 我が——右腕の——闇よ——岩を——砕け——!」
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若者たちは——張り切って。
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岩を——運び。
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坑道を——掘り進めた。
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(——単純で——助かるなあ)
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誠は——微笑ましく——思った。
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「——おい、モブ」
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光の勇者が——腕を——組んで——やってきた。
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「主人公たる——俺に——このような——雑用を——やらせる、気か?」
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「あ——勇者さんは——いいですよ。魔王探し、ありますもんね」
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「……む」
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光の勇者は——一瞬——言葉に——詰まって。
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そして——ぷいっ、と——顔を——背けた。
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「……ふん。仕方が——ない。困っている——民を——助けるのも——主人公の——務め、だからな」
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「手伝って——やる。感謝——しろ」
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そう——言って。
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なんだかんだ、と——岩を——運び始めた。
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(——素直じゃ、ないなあ)
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誠は——くすり、と——笑った。
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こうして。
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主人公たちも——町の、人々も——一緒に、なって。
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地下の——暮らしの、場所を——作り上げていった。
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——地の、底へ。
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暑さを——逃れて。
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人々は——少しずつ。
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地下へと——潜っていく。
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その、光景を——見ながら。
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誠は——ふと——胸に——引っかかりを——覚えた。
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(——暑さを——逃れて——地下に——潜る、なんて)
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(——ちょっと——前までは——考えられなかったな)
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一体——この——暑さは。
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——どこまで——ひどく——なるのだろう。
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その、答えを。
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まだ——誠は——知らない。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「暑さが、限界。とうとう、秋も、冬も、来なかった。一年中、夏みたい。畑も、枯れて、井戸も、減って、みんな、参ってる。だから、地下に、暮らしの、場所を、作ることにした。地下は、涼しいから。古い、洞窟や、坑道を、広げて。厨二病の、若者たちに、"闇の力で、岩を運んで"、って頼んだら、大喜びで、働いてくれた。単純で、助かる。光の勇者さんも、"雑用は"、とか、言いながら、結局、手伝ってくれた。素直じゃ、ないなあ。みんなで、地下を、作ってる。……でも、暑さを、逃れて、地下に、潜るなんて、少し前まで、考えられなかった。この暑さ、どこまで、ひどく、なるんだろう。ちょっと、怖いな」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。人々が——暑さを——逃れて——地の、底へ——潜っていく、この——出来事が。
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やがて——この、世界の——姿を——大きく——変えていく……破滅の——序章で——あったことを。
そして——地上で——「主人公」を——争う、者たちと。地下で——人々の——暮らしを——支える——自分とが。いつか——くっきりと——分かれていくことも——今は……まだ、知らない。




