第16話「握り飯は、平等に」
大量の——厨二病・主人公が——加わって。
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広場は——収拾の——つかない——騒ぎに——なっていた。
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「——真の、主人公は——我らだ——!」
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「——闇の、力を——見せて——やろう——!」
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「——ふっ……封印を——解く、時——!」
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二十人からの——若者が。
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てんでばらばらに——決めポーズを——取り。
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自分こそが——主人公だと——主張し合う。
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そこへ——五人の——先輩格が——加わって。
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もはや——広場は。
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「主人公」の——大安売り、だった。
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「——静まれ——! 静まらんか——!」
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アルフレートが——声を——張り上げるが。
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レベル——5の、声など。
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誰も——聞いちゃ——いない。
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「田中——! どうする——! このままでは——町が——めちゃくちゃに——!」
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「うーん……」
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誠は——腕を——組んで——考えた。
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力ずくで——止める、ことは——できない。
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誠は——戦えない、し。
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そもそも——二十人以上を——力で——抑えるなど——無理な——話だ。
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なら——どうするか。
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誠は——考えて。
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そして——ぽん、と——手を——打った。
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「——ルカ! エリナ! 大鍋——出すよ——! 有り金——全部——使って——いい——!」
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「え!? 師匠、何を——!?」
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「炊き出しだ——! ありったけの——米を——炊いて——! 握り飯——作るぞ——!」
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誠は——店中の——米を——かき集めて。
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大鍋で——一気に——炊き上げた。
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そして——湯気の、立つ——握り飯を。
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山のように——積み上げて。
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広場の——真ん中に。
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——どん、と——置いた。
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「——はい——! 握り飯——できましたよ——! みんな——お腹——空いてるでしょう——!?」
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——ぴたり。
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騒いでいた——若者たちが。
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一斉に——動きを——止めた。
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「……握り、飯?」
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「……いい——匂い」
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そう。
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彼らも——また。
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この、世界に——落ちてきた——ばかりで。
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——腹を——空かせて——いたのだ。
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「——ど、どうぞ——! 遠慮——しないで——! たくさん——ありますから——!」
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誠が——笑顔で——呼びかけると。
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厨二病の——若者たちは。
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一瞬——顔を——見合わせて。
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そして——おずおずと。
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一人、また一人と——握り飯に——手を——伸ばした。
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「……う、うまい」
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「……あったかい……」
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「……なんか……久しぶりだ……こういうの……」
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さっきまで——「闇の、力」だの——「覚醒者」だのと——叫んでいた——若者たちが。
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今は——ただ——黙々と。
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温かい——握り飯を——頬張っている。
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その、姿は。
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まるで——ただの。
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腹を——空かせた——子どもの、ように——見えた。
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「……ふう。落ち着いた——みたいだね」
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誠は——ほっと——胸を——なでおろした。
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「——見事——だな、田中」
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アルフレートが——感心して——言った。
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「二十人からの——覚醒者を……握り飯——一つで——黙らせるとは」
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「覚醒者、って——いっても……お腹が——空いてたら——敵わないですよ」
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誠は——笑った。
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「どんなに——偉くても。どんなに——強くても」
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「お腹が——空いたら——ご飯を——食べる。それは——みんな——同じ、ですから」
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——みんな、同じ。
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その、言葉に。
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握り飯を——食べていた——五人の、主人公が。
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ふと——手を——止めた。
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「……ふん。モブの、くせに」
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光の勇者が——ぼそり、と——呟いた。
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「……妙な、ことを——言う」
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だが——その、口も。
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握り飯を——頬張るのを——やめなかった。
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賑やかだった——広場に。
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つかの間の——静けさが——訪れる。
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みんなが——ただ——黙って。
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温かい——握り飯を——食べている。
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その、光景を——見ながら。
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誠は——なんだか——嬉しく——なった。
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(——主人公とか——モブとか。そういうの——関係なく)
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(——みんなで——ご飯を——食べるのは……いいものだな)
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「厨二病の、若者たち、二十人以上で、大騒ぎ。町が、めちゃくちゃに、なりそうで、困った。でも、力じゃ、止められない。だから、握り飯を、山ほど、作って、広場に、置いた。そしたら、みんな、ぴたっと、静かに、なって、握り飯に、群がった。"あったかい"、"久しぶり"、って。……あの子たち、覚醒者、とか、言ってるけど、結局、お腹、空かせた、子どもみたいだった。どんなに、偉くても、強くても、お腹が、空いたら、ご飯を、食べる。みんな、同じ。そう言ったら、光の勇者さんが、"妙なことを、言う"、って。でも、握り飯、食べる手は、止めなかった。じいちゃんが、言ってた、"飯を、分け合えば、たいていのことは、丸く収まる"、って、本当だね。みんなで、ご飯、いいなあ」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。この——「みんな、同じ」、という——何気ない——言葉が。
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やがて——"主人公"、を——巡る——争いの……本当の——答えに——繋がっていくことを。
そして——今——誠が——握り飯を——配って——皆を——一つに——した、この——ささやかな、力こそが……いつか——世界を——救う——鍵に——なることも——今は……まだ、知らない。




