第15話「厨二病、大挙来たる」
五人の——自称・主人公が——出揃って。
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やれやれ、と——思っていた——矢先。
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その日は——朝から——空が——落ち着かなかった。
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ピシ。ピシピシ。
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空の——あちこちに。
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細かい——ひびが——入り始めた。
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「な、なんだ——今日は——数が——多いぞ——!?」
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アルフレートが——空を——見上げて——叫んだ。
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そして——次の、瞬間。
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——バリバリバリッ!!!
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空が——一斉に——裂けて。
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——どどどどどっ!!!
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大量の——人影が。
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まとめて——降ってきた。
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「うわあああ——!?」
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十人。二十人。
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いや——もっと。
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次々と——若者たちが——広場に——降り立つ。
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そして——彼らは。
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降り立つなり。
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——一斉に。
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「——ふっ。ついに——目覚めの、時が——来たか」
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「——我が、右腕に——宿りし——闇の、力が——疼く……!」
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「——この、世界を——救うのは——選ばれし——我ら——!」
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——決めポーズを——始めた。
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「…………」
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誠は——言葉を——失った。
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若者たちは——皆。
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片目を——前髪で——隠したり。
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腕に——包帯を——巻いたり。
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黒い——マントを——なびかせたり。
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していた。
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そして——口々に。
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「——我が、名は——漆黒の——剣聖」
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「——闇を——統べる、者、と——呼べ」
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「——封印されし——我が、力……解放の、時——!」
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「……えっと」
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誠は——おそるおそる——アルフレートに——尋ねた。
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「アルフレート様。あの、人たち……何——ですか?」
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すると——アルフレートは。
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なぜか——顔を——真っ赤に——して。
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——ぷいっ、と——目を——そらした。
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「……し、知らん」
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「え? でも——なんか——見覚えの——ある——反応……」
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「知らんと——言ったら——知らん——!」
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アルフレートが——妙に——うろたえている。
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(——あれ。アルフレート様……)
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誠は——ふと——思い出した。
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そういえば——アルフレートも——昔。
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「我が——中に——眠る——闇が——どうの」、と。
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似たようなことを——言っていた——ような。
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「……アルフレート様。もしかして——あの、人たちの——気持ち、分かるんじゃ——ないですか?」
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「——っ! わ、分からん——! 断じて——分からんぞ——!」
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真っ赤に——なって——否定する——アルフレート。
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その、様子は——どう見ても。
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「——分かる」、と——言っていた。
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「——おい! 貴様ら——何者だ——!」
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そこへ——光の勇者が——割って入った。
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「この、世界の——主人公は——俺だ——! 勝手に——主役面——するな——!」
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すると——厨二病の——若者たちは。
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一斉に——光の勇者を——見て。
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そして——ふっ、と——不敵に——笑った。
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「——フッ。我らを——ただの——勇者と——思うな」
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「——我らは——"覚醒者"。この、世界の——理を——超えし——存在——!」
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「——真の、主人公とは——我らのことだ——!」
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「「「「「——なんだと——!?」」」」」
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こうして。
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五人の——自称・主人公に、加えて。
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——大量の——厨二病・自称・主人公が。
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一気に——加わった。
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「「「「主人公は——俺(我ら)だ——!!!」」」」
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広場は——大混乱に——陥った。
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「……もう——収拾——つかないよ」
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誠は——頭を——抱えた。
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その時。
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厨二病の——若者の——一人が。
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ふと——誠の、方を——見て。
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——ぴたり、と——動きを——止めた。
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「……ん?」
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その、若者は。
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じっと——誠を——見つめて。
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「……なあ、お前」
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急に——決めポーズを——やめて。
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素の——口調で——言った。
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「お前……どっかで——会った——こと、ない?」
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「——え?」
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誠の——胸が。
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また——きゅっ、と——なった。
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——この、感じ。
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賢者の、時と——同じだ。
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「……僕も——なんだか——そんな、気が——します。どこかで——お会いした、ような……」
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「だよなあ……。あれ……でも……どこで、だっけ……」
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若者は——首を——ひねって。
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うんうん、と——考え込んだ。
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だが。
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「——おい! 何を——腑抜けて——いる——!」
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仲間に——肩を——叩かれて。
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はっ、と——我に——返った。
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「——っと。いけね。……ふっ! そう、闇の、宴は——これからだ——!」
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若者は——また——決めポーズに——戻ってしまった。
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「……行っちゃった」
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誠は——ぽかんと——見送った。
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——と。
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店の、隅の——駄々丸が。
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またしても——すっ、と——目を——細めていた。
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(——ほう。あの、坊主も——か)
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(——こりゃあ——ますます——面白く——なってきた)
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駄々丸は——にんまり、と——笑って。
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煙管を——ふかした。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「大変だ。今日は、空が、いっぱい、裂けて、厨二病の、若者が、団体で、落ちてきた! 二十人以上! 全員、片目、隠したり、包帯、巻いたり、マント、なびかせたり。"我が、右腕の、闇が、疼く"、とか、"覚醒者"、とか。……アルフレート様、なぜか、真っ赤に、なって、"知らん、分からん"、って。絶対、気持ち、分かってるよね、あれ。それから、厨二病の、一人が、僕を見て、"どっかで、会ったこと、ない?"、って! また、あの、きゅっと、なる感じ。賢者さんの時と、同じ。でも、その子も、思い出せないみたい。……なんだろう、この、感じ。最近、多いなあ。駄々丸さん、また、にやにや、してた。何、企んでるんだろう。じいちゃん、うちの店、もう、収拾、つかないよ」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。この——厨二病の——若者たちの、中に。そして——賢者の、中に。
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——懐かしい、誰かが。姿を——変え、記憶を——失って……紛れ込んでいたことを。
そして——その、"再会"、が——やがて——誠の——胸を——熱くする……大切な——出来事に——変わることも——今は……まだ、知らない。




