第11話「魔王を、探しに」
「——決めたぞ」
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ある朝。
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握り飯を——頬張りながら。
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光の勇者が——高らかに——宣言した。
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「今日こそ——魔王を——探しに——行く」
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「ほう」
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武闘家が——ぎろり、と——顔を——上げた。
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「ならば——俺も——行く。魔王を——倒すのは——この、俺だ」
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「フフ……。では——私も——参りましょう。どうせ——あなたたちだけでは——魔王の——居場所すら——分かりますまい」
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魔術師も——優雅に——立ち上がった。
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三人の——自称・主人公が。
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我先に、と——意気込む。
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「あの……」
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誠は——おずおずと——口を——挟んだ。
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「魔王って——本当に——いるんですか? 僕、この、世界に——長いこと——住んでますけど……聞いた、こと——ないんですが」
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「何を——言う、モブ」
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光の勇者が——胸を——張った。
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「魔王とは——目に——見えぬ——ところに——潜むものだ。お前のような——モブには——気づけぬ——だけ」
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「そう——なんですかね……」
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誠は——半信半疑、だったが。
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三人の——勢いは——止まらなかった。
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「では——行くぞ! 魔王の——気配を——追って——!」
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「おう——!」
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「フフ——参りましょう」
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三人は——意気揚々と——町を——出発した。
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——そして。
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日が——暮れる、頃。
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三人は——ぼろぼろに——なって——帰ってきた。
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「……ぐぬぬ」
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「……解せぬ」
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「フフ……。フフフ……」
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「ど、どうしたんですか——!?」
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誠は——慌てて——駆け寄った。
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三人とも——泥だらけで。
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服は——あちこち——破れて。
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なぜか——全身——草まみれ、だった。
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「魔王を——探して——森に——入ったのだ」
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光の勇者が——悔しげに——語った。
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「そこで——魔王の——手下と、思しき——凶悪な——魔物と——遭遇した」
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「凶悪な——魔物?」
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「うむ。巨大で——恐ろしい——猪の——魔物、だった」
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「……猪?」
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誠は——ぴん、と——きた。
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「それって——もしかして……ただの——イノシシ、じゃ——ないですか?」
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「——っ!」
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三人が——同時に——固まった。
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「ま、魔物だ——! ただの——イノシシが——あんなに——強いはずが——ない——!」
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「そ、そうだ——! 俺の——拳を——受けても——倒れなかった——!」
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「あの……皆さん、今——レベル——いくつ、でしたっけ」
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「……1、だ」
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光の勇者が——ぼそり、と——言った。
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そう。
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彼らも——また。
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この、世界に——転移してきた——ばかりで。
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——レベルが——1、だったのだ。
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「そりゃ——イノシシにも——勝てませんよ……」
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誠は——呆れて——ため息を——ついた。
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「な、なんだと——! 俺は——元の——世界では——最強の——勇者——だったんだぞ——!」
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「俺も——だ——! レベル——99——だった——!」
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「フフ……。私など——大魔法で——山を——吹き飛ばして——おりました」
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「でも——今は——レベル1、なんですよね?」
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「「「…………」」」
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三人が——揃って——黙り込んだ。
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(——あれ。この、感じ)
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誠は——ふと——アルフレートを——見た。
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アルフレートも——星喰いとの——戦いの、後。
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——レベルが——1に——戻っていた。
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(——この、世界に——来ると……レベルが——1に——なる、のかな?)
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誠は——首を——かしげた。
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「アルフレート様も——最初——そうでしたもんね。レベル1」
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「うむ……。まあ、な」
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アルフレートは——なぜか——歯切れ悪く——頷いた。
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「ん? アルフレート様、どうか——しました?」
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「いや……」
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アルフレートは——自分の——手を——見つめた。
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「——考えて、みれば……なぜ——俺は——レベルが——1に——戻ったのだろう、な」
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「戦いの、後……気づいたら——こうなっていた。だが……なぜ——そうなったのかは——分からん」
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そう——言われて。
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誠も——初めて——不思議に——思った。
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アルフレートは——なぜ——レベルが——1に——戻ったのか。
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そして——転移してきた、者たちも——なぜ——レベル1、なのか。
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(——なんでだろう)
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考えても——答えは——出なかった。
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「……まあ、いいや」
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誠は——考えるのを——やめた。
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「とりあえず——皆さん、傷の——手当てを——しましょう。ご飯も——ありますから」
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「……ふん。世話を——かける」
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「……すまん、な」
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「フフ……。感謝——しますよ、モブ」
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魔王探しは——大失敗。
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だが——三人は。
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懲りずに——「明日こそ——魔王を」、と——意気込んでいた。
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(——たくましいなあ)
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誠は——三人の——傷に——薬草を——塗りながら。
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くすり、と——笑った。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「主人公さん、三人、魔王を、探しに、行った。でも、夕方、ぼろぼろで、帰ってきた。"凶悪な、猪の魔物に、やられた"、って。……それ、ただの、イノシシだよね? 三人とも、この世界に、来たばかりで、レベル1、だった。"元の世界では、最強だった"、って言い張るけど、今は、レベル1じゃ、イノシシにも、勝てないよ。そういえば、アルフレート様も、戦いの後、レベル1に、戻ってた。転移してきた人も、レベル1。この世界に、来ると、レベルが、1になるのかな? アルフレート様も、"なぜ、自分が、レベル1に、戻ったか、分からない"、って。言われてみれば、不思議。まあ、考えても、分からないから、いいや。三人の、傷の手当て、してあげた。明日も、魔王探しに、行くって。たくましいなあ」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。転移者たちが——なぜ——レベル1、なのか。アルフレートが——なぜ——力を——失ったのか。その、答えが——やがて——この、世界の——大きな——秘密に——繋がっていくことを。
そして——「レベルが——1に——なる」、という——その、現象が——起きても……ただ一人——誠だけは——そもそも——その、"外"、にいたことも——今は……まだ、誰も——気づかない。




