第10話「神様、ひさびさ」
その、夜。
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自称・主人公たちが——雑魚寝で——眠りこけた、後。
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誠は——一人。
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店先で——夜風に——当たっていた。
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「……ふう」
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賑やかなのも——いいけれど。
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たまには——静かな——時間も——欲しい。
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誠は——夜空を——見上げた。
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一つの、月が。
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ぽっかりと——浮かんでいる。
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『——よお。ひさしぶりやな、誠くん』
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「——わっ!?」
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突然。
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頭の——中に。
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聞き覚えの、ある——声が——響いた。
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のんびりとした——関西訛りの——声。
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「か、神様——!?」
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『せやせや。久しぶりの——ご登場、や』
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かつて——星喰いとの——戦いを——見守り。
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そして——旅立っていった——神様。
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その、声が。
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久しぶりに——誠の、頭に——響いていた。
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「お、お久しぶりです——! お元気——でしたか——!?」
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『まあ——ぼちぼち、やな。相変わらず——麻雀——打っとるわ』
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「麻雀……。相変わらず——ですね」
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『せや。……あ、今——ええとこやってん。国士無双——テンパイ、や』
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「聞いて——ないですよ、そんなの」
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誠は——思わず——笑った。
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久しぶりだ、というのに。
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この、神様は——相変わらず——マイペース、だった。
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「でも——よかった。神様、ちょっと——遠くに——行くって——言ってたから……もう——会えないかと——思ってました」
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『ああ、それな』
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神様の——声が。
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少しだけ——遠く——聞こえた。
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『ワイ、今——けっこう——遠くに——おるねん。せやから——前みたいに——しょっちゅうは——顔——出されへんのや』
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「そうなんですね……。忙しいんですか?」
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『まあ——な。いろいろ——あってな』
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——いろいろ。
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その、言葉に。
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なぜか——少しだけ——含みが——あるような。
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そんな——気が——した。
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「神様。あの……最近、この、世界——変なんです」
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誠は——思い切って——尋ねてみた。
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「すごく——暑くて。氷が——溶けて、島が——沈んで……。それに——空が——裂けて、変な——人たちが——落ちてきて……」
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「神様、何か——知ってますか?」
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すると——神様は。
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少しの、間——黙って。
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そして——のんびりと——言った。
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『さあなあ。ワイ、遠くに——おるからなあ。よう——分からんわ』
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「そう——ですか……」
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——分からない。
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そう——言いながら。
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なぜか——神様の——声は。
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どこか——のんびりと——しすぎている——ような。
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まるで——本当は——知っているのに。
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とぼけている——ような。
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「……神様?」
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『ん? なんや』
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「本当に——何も——知らないん——ですか?」
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『はっはっは。誠くん、疑り深い——なあ』
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神様は——軽やかに——笑って——はぐらかした。
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『まあ——気にすんな。なるように——なるわ。……あ、そや』
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「はい?」
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『誠くん。お前——また——レベル、上がっとるで』
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「え——! 本当ですか——!?」
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誠は——ぱっと——顔を——輝かせた。
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「やった——! どのくらい——上がりました?」
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『まあ——ええ感じや。ぐんぐん——伸びとるで』
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「そうなんですね——! 嬉しいなあ」
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誠には——自分の——レベルが——見えない。
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だから——時々、こうして。
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神様が——教えてくれる——「レベルが、上がった」、という、言葉が。
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素直に——嬉しかった。
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「僕、これでも——ちょっとは——成長——してるんですね」
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『せやせや。大したもんや』
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「へへ……。ありがとう——ございます、神様」
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無邪気に——喜ぶ——誠を。
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神様は——月の、向こうから。
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——どんな——顔で——見ていた、のだろう。
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『……ま、頑張りや。誠くん』
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神様の——声が。
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少しだけ——優しく——聞こえた。
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『お前は——お前の——ままで——ええからな』
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「? はい」
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『ほな——またな。麻雀の——続き、あるさかい』
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「あ——はい! また——来てくださいね——!」
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そうして——神様の——気配は。
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すう、と——遠ざかっていった。
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後に——残されたのは。
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静かな——夜と。
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一つの——月、だけ。
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「……相変わらず——マイペースな——神様だなあ」
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誠は——くすり、と——笑った。
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でも——久しぶりに——話せて。
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なんだか——心が——温かく——なった。
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そして——「レベルが——上がった」、という——言葉に。
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少しだけ——胸を——張って。
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誠は——店の、中へと——戻っていった。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「久しぶりに、神様が、来た! 相変わらず、麻雀の話ばっかり。"国士無双、テンパイ"、とか、知らないよ。神様、今、けっこう遠くに、いるみたいで、前ほど、しょっちゅうは、来られないって。世界の、異変のこと、聞いてみたけど、"遠くに、いるから、分からん"、って。……でも、なんか、とぼけてるみたいな、気も、した。気のせい、かな。それから、神様が、"また、レベル、上がってるで"、って! 嬉しい! 僕、ちょっとは、成長してるんだ。自分じゃ、見えないから、神様が、教えてくれると、嬉しいなあ。最後に、"お前は、お前の、ままで、ええ"、って。どういう意味、だろ。まあ、神様、いつも、意味深だからな。じいちゃん、神様、元気そうで、よかったよ」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。神様が——「レベルが、上がった」、と——言う、その、言葉の——本当の——意味を。
そして——「お前は、お前の、ままでいい」、という——何気ない——一言に——込められた……神様だけが——知っている——大きな——秘密のことも——今は……まだ、知らない。




