第9話「二人目、三人目」
光の勇者が——居着いて。
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数日が——過ぎた、頃。
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再び——空が——裂けた。
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「——また、だ——!」
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眩い——光の、柱が——立ち昇り。
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そして——その、中から。
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——どすん、どすん。
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二つの——人影が——落ちてきた。
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「うおおおおっ!?」
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一人は——盛大に——地面に——突っ込んだ。
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もう一人は——ふわり、と。
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魔法の、力か——優雅に——着地した。
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「ぐぬぬ……。相変わらず——荒っぽい——転移だ」
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地面に——突っ込んだ、方が——立ち上がった。
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厳めしい——顔つきの——大男。
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拳には——分厚い——籠手を——嵌めている。
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「フフ……。無様——ですねえ。だから——脳筋は——嫌なのです」
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優雅に——着地した、方が——嘲笑った。
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長い——ローブを——まとった——痩身の——男。
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手には——宝石の——ついた——杖。
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「なんだと——!? もう一度——言ってみろ——魔術師——!」
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「何度でも——言いますよ。無・様、と」
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——バチバチ。
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二人の、間に。
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早くも——火花が——散った。
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「……また——増えた」
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誠は——遠い——目を——した。
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そこへ。
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店の、軒先から——光の勇者が——のっそりと——現れた。
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「ふん。貴様ら——何者だ。ここは——俺の——世界だぞ」
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「あぁ?」
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大男が——ぎろり、と——睨んだ。
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「お前の——世界だと? 笑わせるな」
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「この、世界を——救うのは——この——武闘家、たる——俺だ——!」
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「フフ……。何を——言っているのやら」
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魔術師が——杖を——くるり、と——回した。
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「知の——力なくして——世界は——救えません。すなわち——主人公は——この——私」
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「「——は?」」
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光の勇者と——武闘家が。
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同時に——魔術師を——睨んだ。
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「主人公は——俺だ——!」
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「いいや——俺だ——!」
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「フフ——私です——!」
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三人が——一斉に——睨み合う。
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再び——バチバチと——火花が——散る。
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誠は——アルフレートと——顔を——見合わせた。
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「……アルフレート様」
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「うむ」
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「なんか——同じような、人が——三人に——なりましたね」
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「うむ……。しかも——全員——"主人公"、と——言っておる」
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主人公が——三人。
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そんな——物語が——あるのだろうか。
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誠は——首を——かしげた。
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「——おい、そこの——モブ」
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光の勇者が——誠を——呼んだ。
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「こいつらに——教えてやれ。この、世界の——主人公は——俺だと」
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「え? いや、僕に——言われても……」
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「モブ?」
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武闘家が——誠を——見た。
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「ふん。冴えない——男だ。まあ——いい。おい、モブ。飯は——どこで——食える」
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「フフ。モブ——ですか。ちょうど——いい。案内なさい。私は——疲れているのです」
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——三人とも。
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誠を——「モブ」、と——呼んで。
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そして——当たり前の、ように。
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世話を——焼かせようと——する。
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「……はあ」
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誠は——ため息を——ついた。
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けれど——結局。
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「分かりました。ご飯——用意しますから。とりあえず——喧嘩は——やめて、座ってください」
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と——言ってしまう——あたり。
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やはり——お人好し、なのだった。
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三人の——自称・主人公は。
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誠の——握り飯と——味噌汁を。
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文句を——言いながらも——きれいに——平らげた。
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「……ふん。まあ——食えなくは——ない」
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「悪くない——味だ」
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「フフ……。モブに——しては——上出来です」
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(——素直じゃ、ないなあ、みんな)
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誠は——苦笑した。
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そして——ふと。
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三人を——見比べて——思った。
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——この、人たち。
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偉そうで。
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自分勝手で。
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主人公だ、と——言い張って。
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でも——なぜか。
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握り飯を——頬張る——その、姿は。
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どこか——似ていた。
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——あの、光の勇者の——寂しげな——横顔と。
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(——みんな。同じ——なのかな)
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誠は——なんとなく——そう——思った。
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「——おい、モブ。おかわりだ」
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「私も——です。フフ」
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「俺も——だ」
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「はい、はい。ちょっと——待ってくださいね」
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賑やかな——夕食、だった。
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やかましくて。
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自分勝手で。
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でも——不思議と。
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嫌な——気は——しなかった。
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「また、空が、裂けて、二人、落ちてきた。武闘家さんと、魔術師さん。二人とも、"主人公は、俺だ(私だ)"、って。光の勇者さんと、合わせて、三人に、なった。主人公が、三人って、変なの。三人とも、僕を、"モブ"、って呼んで、世話を、焼かせようと、する。まったく。でも、握り飯、"悪くない"、って、おかわりまで、してった。……なんだか、三人とも、偉そうにしてるけど、握り飯を、食べてる姿が、光の勇者さんの、寂しそうな横顔に、似てる気が、した。みんな、同じ、なのかな。やかましいけど、嫌な気は、しなかったなあ。じいちゃん、うち、賑やかすぎ、だよ」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。この、空の、裂け目から——降ってくる——"主人公"、たちが。やがて——三人、四人——では——済まなくなることを。
そして——彼らが——揃いも、揃って——"主人公だ"、と——言い張る、その、姿の——奥に。誰にも——言えない——同じ、痛みが——隠れていたことも——今は……まだ、知らない。




