第6話「空が、光った」
それは——ある日の——昼下がりの——ことだった。
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誠が——店先で——野菜を——並べていると。
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突然——あたりが——真っ白に——なった。
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「——うわっ!?」
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強烈な——光。
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まるで——太陽が——もう一つ——生まれたかのような。
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誠は——思わず——目を——覆った。
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「な、なんだ——今の——光は……!」
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おそるおそる——目を——開けると。
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空の——一角が。
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——裂けていた。
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ぱっくりと。
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まるで——布を——引き裂いたように。
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その、裂け目から——眩い——光の、柱が。
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天へと——立ち昇っている。
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「——この、光は」
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誠の——背筋が——凍りついた。
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見覚えが——あった。
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——星喰い。
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かつて——この、世界を——焼き尽くそうとした——あの、脅威。
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その、襲来の——時にも。
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空は——こんな、風に——裂けた。
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「まさか……! また——星喰いが——!?」
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「師匠——!!」
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ルカが——店の——奥から——飛び出してきた。
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「空——! 空が——光ってます——!!」
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「ルカ——! 下がってろ——!」
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誠は——ルカを——背に——庇った。
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「——田中——!!」
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裏庭から——アルフレートが——駆けてきた。
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木の、棒を——握りしめて。
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「アルフレート様——! あれを——!」
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「見えている——! あの、光——星喰いの——時と——同じだ——!」
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アルフレートの——顔にも。
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緊張が——走っていた。
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町の——人々も。
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異変に——気づいて——外に——飛び出してくる。
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「な、なんだ——あの、光は——!」
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「空が——裂けてるぞ——!」
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「まさか——また——あの——化け物か——!?」
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人々の——顔に。
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かつての——恐怖が——蘇る。
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星喰いとの——戦いは。
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まだ——人々の——記憶に——生々しく——残っていた。
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「落ち着いて——ください——!」
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誠は——声を——張り上げた。
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「みんな——建物の、中へ——! 慌てず——ゆっくり——!」
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こういう、時。
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誠は——不思議と——落ち着いていた。
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戦う——力は——ない。
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けれど——人々を——導き。
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パニックを——鎮める、ことは——できる。
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それが——誠の——役目、だった。
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光の、柱は。
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しばらく——天に——立ち昇っていたが。
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やがて——少しずつ。
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その、輝きを——弱めていった。
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「……収まって——きた?」
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誠は——空を——見上げた。
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裂け目が——ゆっくりと——閉じていく。
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光も——徐々に——薄れていく。
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そして——最後に。
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その、光の——中から。
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——何か、が。
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ぽーん、と。
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放り出される、ように——落ちてきた。
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「……え?」
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誠は——目を——凝らした。
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小さな——何か、が。
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くるくると——回転しながら。
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空から——落ちてくる。
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それは——星喰いの——金属体、ではなかった。
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もっと——小さくて。
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もっと——見覚えの、ある——形——だった。
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——人の、形。
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「——人!? 人が——落ちてくる——!?」
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誠は——目を——見開いた。
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「田中——! 受け止めるぞ——!」
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「え——!? ちょ——アルフレート様——!?」
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だが——その、人影は。
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二人が——駆け寄る——より、早く。
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——どすん!
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町の——広場に。
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派手に——落下した。
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砂埃が——舞い上がる。
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「だ、大丈夫——ですか——!?」
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誠が——慌てて——駆け寄る。
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砂埃の——中から。
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むくり、と。
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人影が——起き上がった。
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若い——男、だった。
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見慣れない——旅装束。
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腰には——立派な——剣。
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そして——その、目は。
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爛々と——輝いて——いた。
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男は——ゆっくりと——立ち上がり。
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あたりを——見回して。
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そして——高らかに——宣言した。
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「——ついに——来たか! 俺を——待つ——世界に——!」
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「……はい?」
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誠は——ぽかんと——した。
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男は——剣を——高々と——掲げて。
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芝居がかった——仕草で——言い放った。
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「案ずるな——民よ! この、世界に——迫る——危機——その、すべては——!」
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「この——俺が——救ってやろう——!」
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——しん。
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広場が——静まり返る。
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誠は——アルフレートと——顔を——見合わせた。
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「……えっと」
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誠は——おそるおそる——尋ねた。
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「あなたは——一体……?」
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男は——ふっと——不敵に——笑って。
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そして——名乗った。
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「——俺の、名は——光の、勇者。この、世界の——"主人公"、だ——!」
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主人公。
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その、言葉に。
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誠は——ますます——ぽかんと——した。
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(——主人公……?)
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(——この、人……何を——言ってるんだ?)
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その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「大変な、ことが、起きた。空が、裂けて、光の柱が、立った。星喰いの、時と、同じ光で……"また、あの化け物が"、って、皆、パニックに、なりかけた。でも、光は、収まって……そこから、落ちてきたのは、化け物じゃ、なくて——人、だった。若い、男の人。剣を、持ってて、目が、爛々と、してて……いきなり、"俺が、この世界を、救う。俺は、この世界の、主人公だ"、って。……主人公? 何、言ってるんだろう、この人。星喰いじゃ、なくて、ほっとしたけど……なんか、変な人が、来ちゃったな。じいちゃん、これって、一体、何の、始まりなんだろう」
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心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。
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まだこの時の誠は知らない。この、空の、裂け目から——これから——次々と……"主人公"、を——名乗る、者たちが——降ってくることを。
そして——彼らが——口を——揃えて——名乗る、その——"主人公"、という、座を、巡って……やがて——世界を——巻き込む……ハチャメチャな——騒動が——始まることを。
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——だが。
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その、誰も。
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本当の——"主人公"、が——すでに——この、広場に——立っていた、ことには——気づかない。
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ずっと——後まで——誰も——気づかない。
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一番——近くに、いた——その、人にこそ。
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……まだ、誰も。




